吉本ばななのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「私」とゲイである日出雄は、かつて2人と恋愛関係にあった喬がエイズで死期が近いことを知り、喬の長年行きたがっていたエジプトへ旅行を決める。
やはり視覚、嗅覚に訴えてかけてくる描写が最大の魅力。今回の主人公はアクセサリーデザイナーだったので、宝石とエジプトの景色を重ね合わせてちりばめられた珠玉の表現には読んでいるだけで癒された。
共に旅する友人たちの頬が夕日に照らされて、ピンクに青に、ゆっくりと輝くシーン。ピラミッドがオレンジに染まり、その稜線が金色に縁取られるシーン。
神がまだ生活に根付いているエジプトの神秘性と、布やアクセサリーなどの単純なのに複雑な色彩、香水瓶から香るエキゾチックな花の香りが、読み手を物語の世界へ誘い込む。
喬の抱えた運命は決して容易なものではなく、それを「私」も日出雄も重々わかっている。物語の根底には暗いテーマが流れているからこそ、エジプト旅の煌めきとのコントラストが余計に切ない。いざ現実へと、日本に飛行機で帰るシーンはほんのりと希望が感じられてほっとした。
エネルギッシュでありながら心の深層に優しく触れるような描写が最高だった。旅に出たいよう。
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Posted by ブクログ
新幹線でほぼ4時間分
第一部は、多重人格を治療中の少女マリカと彼女に残された最後の人格の少年オレンジ、そして彼女(彼)を10年来支えてきた元医者ジュンコでバリを訪れる話。第二部は、第一部を綴る上で作者が仲間たちと訪れたバリの思い出が日記になっている。
バリの明るく澄んだ風景とマリカあるいはオレンジの暗い過去や鬱屈とした心とのコントラストに引き込まれる。バリでの旅を通して、だんだんと心が解れていきジュンコとマリカの関係性が医者一患者ではなく人間一人間になっていく。
その過程で自ら離れていく第二人格オレンジもまた魅力的な登場人物だ。マリカを外界の恐怖から守る姿はまさに王子様そのものだった。オレンジがマリカの第二人格として過ごす最後の夜、エメラルド色のプールで泳ぐシーンは何度も読みたくなるほど美しかった。
追記)改定後は「私」が精神科医ではなく、主婦になっているようです。
第二部では、第一部で描かれた場所やものを作者たち目線で楽しめる。風景の描写が美しく、実際にバリに行っているような気分になれる。バリの濃い森の空気、神秘に富んだ風土を私もいつか体感したいと思った。 -
Posted by ブクログ
とてつもない悲しみも逆に喜びも同じ熱量でいつまでも続くものではなくて、だからこそ毎日そこにある当たり前の暮らし、日常の力はとてつもなくて、どんなに深い傷を負っても人類がここまで生命を繋いでこれたのはそのおかげなのか、と思った。それさえあれば生きていけるというのは本当だと思った。
このお話ではサイパンのように、日常とはかけ離れたところにある、時間の流れが日本の自分の日常とは全く違うゆっくりしたところで人生のいっときを過ごすというのも、自分の中に確固たる日常生活があるからこそ素晴らしい体験なのだと思った。後からその記憶を思い返すときに、その時に隣にいた人の記憶ごと懐かしめることは素敵なことだと思う。 -
Posted by ブクログ
最後に読んだのは大学生の頃だろうか。
覚えていないがとても昔のことだ。
吉本ばななさんの作品はこれまで沢山読んできたが、新しい作品ほどどうもしっくりこなくて一度手放してしまった初期の作品をもう一度手に取ってみた。
読んでしばらくして、あぁこの設定知っているとなった。
一度読んでいるのだから当然だが、私の場合読んで何年も経っている作品はすっかり忘れていることがほとんどだ。
それでもピンときたということは、やはり私は初期のばななさんの作品が好きだったのだ。
ばななさんの『良いことを教えてあげる』というスタンスのない純粋な小説になっていることが読みやすい。
これを機にまた初期の作品を読んでみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
きっとほんと少し違う立場、違う知り合いかた、違う場所、違う時代に話せたらきっともっと自然に友達になれただろうな、といつも思うのです。
どんなにすねた気持ちで死んでも、みんな、親しかった人たちが自分の裸より恥ずかしい何ていっても骨、を2人組でおはしで拾ってくれるんです。愛です。日本の葬式は優しい。でも親にそんな悲しい仕事、できればさせないほうがいいです。
人は人を、本質的には裁けないのですね。
好いたり、嫌ったり、憎んだり、愛したり信じたりするだけです。
知恵をしぼり、気をまぎらわせ、生きているうちにただ生を生き抜くしかないんですね。
自分の思っている自分、というのは自分が意識のスポットを当てている部分の自分であって、ほんの一部分です。しかもそれは人から見た自分、ですらないのですね。
笑い話になるのも、生きていて、お互いがそのことを話し合えるから。
年をとるのは美しい思い出を重ねることでもあるのだ。