あらすじ
「ハードボイルドに生きてね。どんなことがあろうと、いばっていて。」最後になった電話でそう言っていた千鶴。彼女のことを操り返し思い起こす奇妙な夜を描く「ハードボイルド」。死を待つ姉の存在が、ひとりひとりの心情を色鮮やかに変えていく季節を行く「ハードラック」。闇の中を過す人々の心が光り輝き始める時を描く、二つの癒しの物語。
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Posted by ブクログ
ハードボイルド/ハードラックどちらも、じんわり心にしみた。やっぱり吉本ばななさんの書く独特の文章表現、物語好きだな。
ハードラック、境くんの、「今はだめだね。でも、とにかく、今はだめだというだけだよね?」が忘れられない。自分も過去を振り返ってみると、そんな場面でそんなことを言える人でありたかったなと思う。後悔にも近い。
今、重くて暗くて歪んだ時間の中にいるとしてもその時間は永遠には続かないよ、いつか終わるときがくる。苦痛の日々の中にも心をあたためる契機やほんの少しでも前を向ける時間はあるはずだよ、それらは自分次第で、作ろうと思えば作れるかもしれないよ、と教えてくれた気がしている。
……言葉にしたとたん全部違うような気もしてきたが、読後のこの妙な感覚だけは忘れないように、一応記しておく。
Posted by ブクログ
「バードボイルドに生きてね。
何があっても、いばっていて」
心が折れそうになる時、
何度も思い出す。
私はもしかしたら、
へらへら笑ってごまかしてぺこぺこする生き方しかできないかもしれないが、
好きな人には
いつも自分を曲げないでハードボイルドに生きてほしいと思う。
次の一歩を踏み出す好きな人にいつもかける言葉だ。
Posted by ブクログ
これから何度も読むことになりそうな作品との出会い。
いくつも気になるフレーズはあったけど『ハードラック』のこれは妙に頭に残っている。なんでだろう。
"「お姉ちゃんな、もうすぐ呼吸器はずすってよ。」
それは、ほとんど、昔飼っていて父にいちばんなついていた犬が死んだ時の、
「ポチ死んだぞ。」と変わりがなかった。そのくらい悲しみも深いということだった。"
Posted by ブクログ
『私は泣けなかった。
今も、ちゃんと泣けていない。後悔を、何度もした。今もする。でも、何回も思い直す。
きっと私たちには、あれ以上何もできなかった。
最後まで、楽しかった。呪文のように、そうくり返す。』
ハードボイルドは、同性愛の話。
そしてその恋は終わっていて、相手はもう死んでしまった。
その恋人の命日の不思議な一夜。
涙が出てくるのになんだか爽やかでありがとうって、
恋してよかったって思える話。
ハードラックは若くして
植物状態になってしまった姉の死と生の微妙な狭間で
生死と愛を考える人々の物語。
『世界はなんていいところなんだろうね!』
悲しみで前が見えなくても、やっぱり世界は美しい。
Posted by ブクログ
「ハードボイルド」と「ハードラック」の2作。どちらも生と死とその境界線とがマーブルになったところの物語。それを怖くもなく神秘的でもなく、普通に描いているのがばなな流。底がないくらい優しい。
Posted by ブクログ
どうしてこんなに空気を感じるんだろうなあ。でも別に、私だってものごとを見たり、聞いたりと感じているはずなんだけど、ものすごく違う世界のように感じる。
Posted by ブクログ
よしもとばななさんを読む時には、覚悟が必要だということを忘れていたな…。あまりにも好きな作家さんなので軽々と読み進めてしまったけれど、読み終わったあとも考えてしまうたちの私には重く暗いものがのしかかってくる、それすら作品の一部として楽しめるのだけれど、、、。時間がある時に読むべきでした
Posted by ブクログ
ハードラックが不運、不幸って意味だと初めて知った。
ホテルのおばちゃんみたいな大人になりたい。
吉本ばななさんの静かでスルスル入ってくる文章、世界観が好きです。
Posted by ブクログ
「死」との向き合い方を考えさせられる作品。どちらの作品も身近な人の死を乗り越えて未来を開いていくイメージが強い印象を受ける。そのため、全体としては暗いというか静かな流れだが、あることをきっかけとして徐々にその傷心が癒えていく様子を紡ぎ取っている。
薄い本ではあるが、読んだ後の余韻に浸る時間が長い。
Posted by ブクログ
身近な人の死についての2つの物語。
ハードボイルドはかつての恋人の死。
夢で何度も彼女が出てくる。本当はとっても大切にしてた毎日だったと思う。彼女からたくさん影響を受けてたんだと思う。
見えないものが見えたり、普通の人が感じれないことを感じ取ったりすることも彼女からの影響が強い?
主人公が1人で訪れた場所でもそういうものを感じたり、もういない人がみえたり。
そのもういない女の人の亡くなったエピソードも悲しかったなぁ。心中しようって決めて相手だけ死なれたら辛いなぁ。でも女の人はそれでも相手に生きてて欲しかったんだよな。それは愛なんだろうな。
ハードラックは姉の死。
わたしも身近の人が突然亡くなった経験があるから、すごく読んでて泣きそうになった。
婚約者の逃げ出したい気持ちも分かる。
徐々に死を受け入れていく自分も分かる。
大切な人がなくなっても時間は流れて
止まってはくれないし、生きていかないといけないから。
最後に私の頭で流れる音楽は何かなって考えたなぁ。
とっても素敵な本でした。
Posted by ブクログ
ハードトラック がすごく好きだった。よかった。
〈ハードボイルド〉
「あなたはまだわかっていない。いつだって、自分がいちばん大変で、自分さえ助かって、楽で、いちばん楽しければいいと思っているんだもの。」
「人は、自分が相手に飽きたから、もしくは自分の意思で、あるいは相手の意思で別れたのだと思い込むものだ。でも、それは違う。季節が変わるように、時期が終わるのだ。ただそれだけだ。それは人間の意志ではどうすることもできない。だから逆に言うと、それが来るその日まで、楽しく過ごすことも可能だ。」
↑「食べ物に旬があるように、人と人との関わりにも旬がある」と例えてる?
この台詞が好き
「いろいろなことがあると思う。でも、自分を責めちゃだめだよ。ハードボイルドに生きてね。どんなことがあろうと、いばっていて。」
※ハードボイルド…非情。無情。無感傷的。冷めている。感情を押し殺し、表面に出さない。固茹で。(⇄ソフトボイルド…半熟)
〈ハードラック〉
「世界はなんていい所なんだろうね!」
「あのね、経験したことがないことを、わけ知り顔で語るのがすごくいやなんだ。あまりコメントしないけど、ごめんね
〜
わからないけれど、どういうことが起こっているのか、一応自分の目と耳で見たこと、感じたことについてはつかんでいることもあると思う。すごく言いたいことがたくさんある。だけど、それは口からはどうしても出てこないんだ。」
「誰にも、わかってほしいとも思わない。でも、優しくしてくれているのはわかるよ。」
「俺も君もついていないわけじゃないよね? この空気にのまれているだけだよね? 今はだめだね。でも、とにかく、今はだめだというだけだよね?」
「冬の星は誰と、いつ見上げても決して変わらないでそこにある。変わってゆくのは私だけだ。」
吉本ばななの物語を読むと、ゾーンに入るというか。
自分がその世界に行ってしまう。現実の世界、周りが全く視界に入ってこなくなる。いわゆる、引き込まれる。だから、疲れていて癒されたいとき、現実を見たくないとき、頭がいっぱいいっぱいで何かに没頭したい時、一度現実から離れてみたいとき、に読むのに合っている。
語順が、正しくないので理解するのに時間がかかることがある。
その正しくない語順が物語の味を出しているのかな。
私はその正しくない語順と、言い回し、思わぬ!マーク、句読点(特に「、」)の使い方、台詞の言葉、長ったらしい台詞、彼女の物語に出てくる登場人物、がすごく好きだ。
吉本ばななの物語は、純文学にも分類されることを最近知った。
言葉や情景の表現、登場人物全てが美しい。
やはり、彼女の物語が本当に好きだと改めて思い、彼女の物語は、彼女の独特の世界がある、他の何にも変えられない、唯一無二の、一つの文学だと思った。
私にとって吉本ばななは、特別な小説家だ。
次はエッセイも読みたい。
彼女は一体どんな人生を歩んできたのかな。
Posted by ブクログ
ハードボイルド
不思議な愛しかただなと思った。千鶴さんの気持ちはわかった。千鶴さんは素敵な人だと思った。サッパリとした物語だった。
ハードラック こんな風に人を失くしたことはないので分からなかった。闇の中から抜け出す光の入り口に差し掛かった間合いの物語。「これから姉と同じで香水に変えよう」ってところが決別でも執着でもなくて良かった。境くんの放つ光が際立った。
Posted by ブクログ
「ハードボイルド」
奇妙な夜の出来事が描かれている。
人と別れることはすごくつらい。けどあらゆる罪悪感から抜け出して、ハードボイルドに生きなくちゃ、という前向きな気持ちにさせてくれる。
奇妙だけれど、不思議と癒される。
「ハードラック」
姉の死と向き合う家族の物語。
姉との思い出や、これからの日常について、時間について、主人公の立場になって考えてみると、自然と心が浄化されてゆくような気持ちになった。
Posted by ブクログ
「ハードボイルド」あらすじだけだと思い切り怪談。そんな奇妙な一夜に主人公が思い出す人生のハイライトがなんだかセピア色の映画の回想シーンみたいだった。
導入がまんま怪談だったから、youtubeで怖い話見たあとに手に取って、しまった!と思った。怖さを打ち消したかったのに吉本ばなながまさかの怪談調。主人公が言っていた、妙な雰囲気の夜に入り込んでしまったその感覚を体感できる小説でした。
「ハードラック」は身近な人の死を近くから真っ正面に捉えた作品。
Posted by ブクログ
これまでに読んだよしもとばななさんの本の中で1番好き。
ハードボイルドも不思議な雰囲気が好きだけど、ハードラックは主人公の気持ちがリアルに響いてきて泣きそうになった。
Posted by ブクログ
短編、ものすごい短編だけど、心にしみた。
「人は、自分が相手に飽きたから、もしくは自分の意志で、
あるいは相手の意志で別れたのだと思いこむものだ。
でも、それは違う。
季節が変わるように、時期が終わるのだ。
ただそれだけだ。それは人間の意志ではどうすることも
できない。だから逆に言うと、それが来るその日まで、
楽しく過ごすことも可能だ。」
『ハードボイルド』はオカルト系。
『ハードラック』はライフ、恋愛系。
なんだかすごく切なくなる話だった。
Posted by ブクログ
一度読んだ本を再読する事がほとんどないのですが、この本はなぜか再読してます。さらりと読みやすいページ数ながら別世界へ連れて行ってくれます。
二つの物語とも身近な人の死に直面した主人公のストーリーです。最初の「ハードボイルド」はホラーの要素がありますが終わりは爽やかな気持ちになれました。「夜は伸び縮みする」というフレーズが印象的でした。ふとした表現で笑える表現もあったりするところも好きです。
Posted by ブクログ
吉本ばななの本、そんなに陽を求めて読むことはないけどそれでもこの本は陰の要素が強め。8月の真夏に読むような本じゃないなと(ある意味涼しくなるような不気味さ)。なかなか、前に進められなかった。
でも9月に入ったしと思って、残り一気読みして本を閉じたとき、読み始めたときには想像もしていなかった温かさが残った。ただ過ぎ去る毎日にスッと一筋の光が差すような。それは、真っ暗な部屋に、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んで、その部分に手を当てたら、そこだけ温かい、微かだけどそこに確かにある温度を肌で感じるような本。
Posted by ブクログ
心霊的な体験から亡き同性愛パートナーへの想いを蘇らせる話。
脳死した姉を見送る話。
どちらも大切な人を亡くした切なさと残される人はそれでも前を見て、その人の記憶と共に生きていく不思議と前向きな気持ちを思わせる短編二つだった。
Posted by ブクログ
同性愛、死といったテーマをハードとは対照的にゆるりとした雰囲気で展開していくのが吉本ばなならしい
小説の中に入り込むというより、不思議な空間にワープして読んでる気分になる
Posted by ブクログ
ちょっとスピリチュアルな「ハードボイルド」と、脳出血を起こした姉が脳死になり亡くなっていくまでの、残された者たちのこころのありようをやさしく、哀しいことばで包み込む「ハードラック」の2編。
「ハードラック」が特に好き。
大好きな姉が亡くなることを主人公が受容していくその過程が、簡単だけど深いことばで綴られていく。
吉本ばななの作品は、言葉の宝庫。なんということもない、エピソードも音もなく降る優しい雨のように、心にしみこんでくる。
だから、読み終わったあとは、本を閉じてそっとため息をつきたくなるのだ。
Posted by ブクログ
ばななさんの小説はいつも「死」が近くにあります。悲しいのは死んでしまうことじゃなくて、もう会えないことだなと読むたびにいつも感じます。つらい状況でも過去でも先でもなく、「いま」に足をつけて、小さなひかりを見つけるのが、とても好きなところです。
Posted by ブクログ
初めて読む作家さん。森博嗣『MORI LOG ACADEMY』シリーズに、たびたび登場していたので試し読み。
すごく不思議な物語。ホラー?幻想?恋愛?
ものすごく淡々とした文章が印象的だった。
もう何冊か読んでみようか。
Posted by ブクログ
生と死の間の時間、空間、雰囲気。言葉で表現できないような時を描いている感じ。一応両タイトルは対になってるのかなぁ。亡くなった人側とこれからの人側とで(・ω・) たまにはミステリ以外も読もうと手に取った本なのですがよかったっす。
Posted by ブクログ
なぜか昔にTUGUMIを読んで、ちょっと合わないなと思ってからずっとこの作家を遠ざけてきました。
でも、ちょっとしたきっかけで手に取ることになり読んだのがこの本です。
今の私には、この人の文章がとても心地よく、すんなり受け入れられています。
この本の話は、実際結構ハードな内容だと思いますが、やさしさがみちていて読後感が良かったです。