詠坂雄二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ『5A73』がそれなりに反響があったのか、詠坂雄二さんの過去作品が重版され、煽りの帯が付いていた。その中から、年末ランキングで見かけた記憶がある本作を手に取ることにした。過大な期待はせずに読み始める。
過去ランキングを確認してみると、2010年版『本格ミステリ・ベスト10』第13位、2010年版『このミステリーがすごい!』第20位。微妙な順位である。読み終えてみると、まあそのくらいの順位かなあと妙に納得してしまった。
一部地域で根強く語られているという「電気人間」の都市伝説。語ると現れ、真相に近付く者は死んでいく。事件性なしと判断された3人の死に、電気人間が関わっているのでは? ライターの柵馬が謎の解明に乗り出すが…。
序盤の展開は、『5A73』に似ている印象を受ける。謎の後始末をどうするのか。『5A73』以上に、合理的な解決に持っていくのは困難では。『5A73』は幽霊文字というアイデアの秀逸さで興味を持続できたが、本作は電気人間だぜおい。
内容よりも登場人物の癖の強さが目立つ。死んだ3人。中でも高校生の彼はかなりヤバい。つっけんどんな小学生。そして、棚馬に協力を依頼される、作者と同姓同名の作家・詠坂雄二…。本気なのかふざけているのか悩ましい。
固定した探偵役がいないのが一つの特徴と言えるだろう。それぞれに謎に迫った面々。多重解決物と言えなくもない。最も確からしいのは詠坂説かもしれないが、残りページ数は少ない。このまま消化不良で終わるのかと思ったら…。
ある意味、この手の怪異ネタを扱った作品としては、意表を突いた結末と言えるだろう。追い打ちをかけるような最後の1文に唖然とする。何だそりゃ。続きを読みたいような読みたくないような。続きが書かれることはないだろうが。
失礼ながら、正直滑り気味な本作だが、解説はもっと滑っていると言わざるを得ない。解説者泣かせな作品だとは思うけれども。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私立吏塚高校の屋上で葉群という男性生徒の遺体が見つかる。遺体には墜落死の痕跡があり、犯人が屋上から落とした後で再度持ち上げたという疑惑が出るか・・・。最も疑わしい校舎に残っていた人物から無罪証明を依頼される「吏塚の名探偵」。喉を煙で焼きながらハードボイルド風の意妙な学園ミステリ開演。
後に遠海事件を書く詠坂雄二のデビュー作。事件としては死体が持ち上げられた以外は平凡、殺されてもおかしくない学生が屋上から突き落とされた。打って変わってあまりに異質すぎる登場人物達、煙草で喉を焼く「吏塚の名探偵」、「情報屋」、愛と体を切り売りする「売春生徒」、等身大の青春から大きく離れたリアリティの薄い設定になっている。それでハードボイルド調の物語を展開するのだからびっくりだ、この湿ったドロッとした感じを高校生で出すのだからすごい。
主人公は自分が犯人であることを殊更隠そうとしてないのだが作者によって最後のページまで核心に至る記述は省かれている。主人公は写真のネガの在りかと観鞍の男装の理由、そして観鞍の無罪証明の依頼の為に動いているのであって真相究明は既に終わっていたのである。全てが明らかになっても「吏塚の名探偵」の人物像は見えてこない。葉群の殺しも脅しを恐れたのか、単純に流出される根本を消しにかかったのか分からない。父に言った殺しの告白も冗談なのか、或いは過去に場数を踏んでいるのかも分からない。謎は謎のままで不思議な魅力を残して物語は終わった。 -
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ネタバレ有能な書店員として過ごしてきた彼の裏の顔は86人もの人間を殺したシリアルキラーだった。 証拠も遺体も完璧に処理し、警察に事件とすら認識させない彼の仕事の中で、唯一異端とも言える事件が「遠海事件」。 遺体の首を切って持ち去るという謎の行動、殺人鬼佐藤誠はなぜ首を切断したのか? 直球なワイダニットがここに。
ここまでワイダニットに凝った作品は珍しい、どうしてもハウやフーに比べると謎の大きさという点で劣りがちだが本作は申し分ない出来である。
佐藤誠、本事件を解くには彼を知る必要があった。 平凡な名前を活かした後付けのアリバイは面白いと思いましたし(実際は行っていないが)、首切りの真相は恩師の名誉と会社の防衛という一見すると立派なようでそこには死体を目の前にしながらも自分にとっての最善の結果を求めるという冷静で利己的な86人殺しに相応しい動機が隠れていました。 単に首切りの談義ではなく、一人の人間に焦点を当てて初めて解ける真相は佐藤誠に関するワイダニットとして非常に完成度が高くなっています。 -
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ネタバレ○ 一言感想
○ レビュー
主に,「Press Start」(通称プレスタ)というゲーム雑誌で記事を書いている柵馬朋康という人物が主人公という短編集。一応,ミステリではあるが,ミステリ要素は少なく,ゲーム業界やゲームについてのうんちくが豊富に描かれている。
小学校の頃にファミコンが登場し,まさにゲームとゲーム雑誌に囲まれて成長してきたので,この作品はまさにどストライク。確かに,ひと昔前にはプレスタのような雑誌が結構あった。ゲーム雑誌やゲーム雑誌のバカ記事が減ってしまったのは悲しい限り。
舞台は平成16年頃。ネットが普及して巷にはテキストが溢れ,ライターの仕事が減りだした頃。登場人物は,主人公の柵馬があこがれるライター流川映と,流川の知り合いという設定で登場する小説家の詠坂雄二。これらの登場人物がゲーム雑誌の記事の取材で,奇妙な出来事やちょっとした謎に遭遇する。
○ 穴へはキノコをおいかけて (★★★☆☆)
スーパーマリオブラザース発売20周年記念の記事を書くために,ツチグリという動くキノコを探す。柵馬は,奥多摩の山麓で,血のようなものを見付ける。柵馬が再度同じ場所を訪れると,血のようなものは消えていた。真相は,血のようなものは「変形菌」という胞子の残りだった。風で飛ばされて何も残らなかった。
ミステリというよりは世にも奇妙な物語系のちょっとした小話。マリオについてのうんちくがまぶされている。ゲームのウンチクは面白い。
○ 残響ばよえ~ん
プレスタの「ぷよぷよ15周年特集」のネタに困った柵馬が,中学校時代に同級生のミズシロという女の子と格闘ゲームやらぷよぷよやらをしていたというネタで特集記事を書いた。その話はぷよぷよの思い出。長い間勝ち越せていた勝負の最後で柵馬は負けた。もし勝てていたらどんな秘密が打ち明けられていたのかという話。記事は創作ではなく,大部分が実話。そして,その作品には,ミズシロが柵馬にぷよぷよで負けたら,どんな秘密を話していたのかという謎を解くカギが,柵馬が気付かないうちに隠されていた。
その謎は,ミズシロが色盲だったということ。柵馬が書いていたミズシロの中学校時代の様子は,全てミズシロが色盲だったと考えればつじつまが合っていた。
この小説をミステリとして見れば,色盲は使い古されたネタだし,伏線もあからさま過ぎる。しかし,ミステリとして読ませない,特に謎なんてない青臭い青春小説だと読ませるというミスディレクションが仕組まれている。そういった意味では割と完成度が高いと思う。悪くないデキ
○ 俺より強いヤツ
10年ほど前にストリートファイトをしていた犭(けものへん)という団体の3人の最強候補,泥犬,病狐,屍狼に話を聞いて,誰が最強だったかを解き明かそうとする話。3人はいずれも自分は負けたと言っている。最終的に誰が最強だったのかということを解き明かすミステリかと思えばそうではない。結局だれが最強だったかは分からない。3人が戦いを辞めた理由を聞いて,3人が戦いながら戦うことを上回る物語を見付けた。10年の歳月に洗われて残った真実として描いている。
これは,なんというか。ミステリとはいえない。残響ばよえ~んはミステリとしての完成度はともかく,ミステリでないと思わせるという作品全体のミスディレクションが面白い作品だった。しかし,これはミステリではない話と思わせて,実際にミステリ要素がない。失敗作ではないかと思わせる作品。なんだこれ。
○ インサート・コイン(ズ)
柵馬があこがれる流川映が逮捕される。同時にプレスタた休刊になる。柵馬は流川が持っていた仕事を引き継ぐように言われる。柵馬はかつて流川から「シューティングゲームの必勝法と文章のそれは一緒」と聞いたことを思い出す。柵魔へとして残されたPCの文章にあった「insert coin(s)」という英単語。コインを入れたあとに出てくるメッセージは「PRESS START」。休刊になった幻のプレスタ2008年11月号に載る予定だった流川記事のデータを見る。
オチらしいオチはないが,先人たちの誰も想像できなかった文章を書けば読者を圧倒できるという流川からのメッセージと,人生で1枚しか持っていないコインでゲームを繰り返すように進んでいけというメッセージと受け取ったという話
これもミステリ要素はあまりない。感動的な話にしようとしているのか,なんともつかみどころがない。確かに,マイナーなゲーム雑誌にはこういうような変な文章載っていたような気がするが。なんとも評価しづらいデキ。嫌いではないが,それほど面白くはない。
○ そしてまわりこまれなかった
柵馬の古くからの友人で,ゲーム会社に勤めていた宇波という友人から「ドラクエⅢで最大の伏線が何か分かるか?」とだけ書かれた年賀状が届く。その後,宇波が自殺したという知らせが届く。
宇波はなぜドラクエの新作を待たずに死んだのか。詠坂にも相談したところ,ドラクエⅢの最大の伏線はタイトル画面にテーマ曲がないこと。それと年賀状の関係。絵のない年賀状。なぜメールではなく年賀状だったのか。年賀状には余白にのたくる線があった。鉛筆でこすると「よしおはにげだした」の文字が。宇波はドラクエの新作が出る前に人生から逃げ出したのだ。そしてまわりこまれなかったのだ。
これはちょっとしたミステリとなっている。タイトル伏線となっている。柵馬の境遇と宇波の自殺。なんとも哀愁の漂う作品で,この作品の雰囲気は嫌いではない。
リロ・グラ・シスタ,遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?,電氣人閒の虞,といった外連味のあるミステリとは一味違った,ゲーム雑誌のライターというどこか哀愁漂う存在をテーマにした短編集。ミステリ的な要素はあまりない。ゲームについてのうんちくや,昔からよく知っているゲーム雑誌のライターという存在をテーマにし,ゲーム雑誌が減り,ゲーム雑誌でライターの記事を読むことがめっきりなくなった現在を踏まえた哀愁の漂う作品に仕上がっっている。ミステリとしては評価できないが,この雰囲気は嫌いではない。なにか心に残る短編集。★4で。