詠坂雄二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
★2.8
「暃」。JISコード"5A73"。
読みも、意味もない、幽霊文字。
なのに、連鎖的な自殺事件の傍に、「暃」。
謎めいた記号の正体と、それを取り巻く人々の暗い心模様が絡み合う物語は、じわじわと不気味な空気を醸し出す。
刑事の捜査パートと自殺者の回想パートが交互に進み、読み手は少しずつ真相に近づく構成は巧みだ。文字自体の細かい考察も知的好奇心を刺激し、作品に厚みを与えている。
と思いきや、だ。
最後に待っているのはオカルト的な超自然要素と、作者自身が物語に介入するメタフィクションの展開。
いいのだが、ミステリとしての爽快な謎解きや論理的な解明を期待していたわた -
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Posted by ブクログ
一部の地域で子どもたちに噂され、名前を呼ぶと現れて人を殺すなどとされる電気人間。民俗学の観点から卒業論文のテーマに選んだ赤鳥。電気人間発祥の地と思われる防空壕に入るが、その直後に変死する。外傷も無く心不全とされて処理されたが、それに疑問を感じた幼馴染の日積は、赤鳥の足跡を追いかけていくのだが…。
何だこれ?ミステリとしておくが、解決するんだかしないんだか、怪しい人、危なそうな子供たちに終わらず、とうとう作者(詠坂氏)まで出てくる始末。
前半は電気人間の怪談ぽい話で、怪しい人物などは出てこない。話自体も読みやすいのでスルスルと進んでいく。
後半になると、解決に向かって進んでいくようにしか見 -
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ネタバレ「電気人間って知ってる?」
一部の地域で語られている都市伝説。語ると現れ、人の思考を読み、電気で人を殺すという。真相に近づくものは次々と死んでいく、電気人間は実在するのか。
ライターの柵馬もまた謎の解明に乗り出すが……。
特定の地域だけで語られる都市伝説、「電気人間」をめぐる噂と事件を描いた一冊。
ホラーなのかミステリなのか何なのか、一言でジャンル分けするには難しい本ですが、意外と楽しく読みました。
小学生のキャラクターは、大人びすぎていてあまり小学生っぽくないかな? 中高生でも良かったのではと思わなくもないですが、彼らが語る「普通でない理屈」の話や、作中で出てくる都市伝説論も興味深く面白 -
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※
奇妙な事件を題材にした犯罪ミステリー
かと思って読んでいたら、ラストで違う
方向に方向転換した後に着地して驚きました。
何なのか分からないものを調べ続けることや
解がわからないとこを考え続けること、
ひとつの物事に囚われて思考も行動も
身動きが取れなくなるって、ある種の呪い
と呼べるのかもしれない。
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一見して自殺とも考えられるが、
体に不可思議な形を記した死体が
続けて発見された事がきっかけで
別々と思われていた事件が一本に繋がっていく。
共通点は読みも意味も分からない形、
目にしたことがあるような気がする一方で
何なのか判別がつかず、特定ができない
不思議なもの。
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Posted by ブクログ
ネタバレ漢字一文字にここまで連想して世界を膨らませられるのはすごいと思ったし、読んでいて文学部の研究者の気分になった。漢字一文字でもこんなに見る人の立場や人生によって変わってくるんだなあ。この世の中で、誰一人として同じ景色を見ている人はいないんだろうなと思った。
読みながら薄々感じてはいたけど、幽霊文字5A73の意味は結局納得できる形では終わらなかった。実際に幽霊文字なんだから、その意味は確定させず終わるのは納得なんだけど、結末がオカルトというか非現実的で、驚きというより「あーそういう感じかー」ってなった。
自殺していく人たちが、段々元々自殺を日常的に考えていない人たちになっていくことが、よりなぜ