國分功一郎のレビュー一覧

  • 目的への抵抗―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    『権力は「例外状態」あるいは「緊急事態」というものを巧妙に利用して、民主主義をないがしろにしたり、人々の権利を侵害していくことがある。』

    コロナ禍でアガンベンが上げた危機感の話は、自分が不安に思っているさまざまな状況にとても似ている感覚がある。自由や制約、受け入れてしまう状態など社会状況と個人が地続きになっていて今読んでいる『奪われた集中力』ととても親和性があるように感じる。

    ベルリンの壁のドキュメンタリーは見てみたい。
    後半は『暇と退屈の倫理学』の復習で改めて自由と責任について考える。質疑応答がとても興味深い。

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    2025年09月11日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    國分先生の講和シリーズで「目的への抵抗」に続く一冊。「楽しむ」とはどういうことかを考えるもの。「〇〇のために楽しむ」のは一見当たり前なのだが、単純に、自然に、楽しむことから離れているのでは。「浪費」ではなく「消費」させられていることも主客逆転。時々こういうことを考えるのは大事だなあと思う。

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    2025年09月07日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    自由意志の否定、行為は意志を原因としない
    言語は思考の可能性を規定する
    選択と意志の区別は明確である
    権力と暴力
    出来事を描写する言語から、行為を行為者へと帰属させる言語への移行
    中動態は主語が過程の内にあるのか外にあるのかを問う別のパースペクティブにおいて理解されねばならない
    異なった仕方の変状
    完全に能動たりうるのは神のみ。われわれは純粋な能動になることはできないが、受動の部分を減らして、能動の部分を増やすことはできる
    変状の画一的な出現を避ける
    中動態の哲学は自由を志向する
    妬んでいる時人は相手に自分を見ている
    人間は自分自身の歴史を作る。だが、思うままにではない
    善の性質を身に纏うこと

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    2025年09月06日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    ネタバレ

    100de名著のスピノザ「エチカ」、暇倫に続いて國分功一郎先生の本は3作目になる。

    1番難しかった。再読が必須レベル。たぶん25%も理解してないし頭に入ってない。

    暇倫よりもっと荒削りな書き口で、暇倫より前の作品かと思ったレベル。國分先生の中でも書き起こすのが難しかったんやろうと思う。

    中動態ってのも初めて聞いたし、結果この未知の態についてよくわかったのかわかってないのかも不明。矢印ではなく丸っと帰ってくるイメージのみ残った。

    ここ最近、悪手悪手で自滅するような人たちが多い。そういう人たちは責任を取れないのかなんなのか?と思っていた。広陵高校野球部のフロント陣とか、フジテレビの経営陣と

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    2025年08月30日
  • はじめてのスピノザ 自由へのエチカ

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    「エチカ」というスピノザの著作について、その存在を知ったのは、わたしの場合やはりPodcastからだった。
    知ってからもルソーの「エミール」とよく混乱した。カタカナのエで始まるなんか短い名前の本っていう括りだからかな。

    本で、活字で、ちゃんと読む…というのは、わたしにとってはとても意義がある行為なんだな、と今回改めて感じた。
    たぶんもう「エミール」と間違えたりしないと思う。

    さて、そんなわたしにとっては
    「暇と退屈の倫理学」以来2冊目の國府功一郎さんのこちらの著作、17世紀オランダの哲学者、スピノザが残した「エチカ」についての解説本である。
    「NHK100分de名著」に新たな1章を書き加え

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    2025年08月25日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    「目的への抵抗」の続きのような哲学講話だったので、読んでみたくなりました。

    楽しむとはどういうことだろう。楽しいって何なのだろう。と十数年考えてこの本を書いたと言う。

    カントのタバコ論からはじまり
    嗜好品、享受の概念についての解説。

    スポーツや旅行を楽しむことも含まれるかと思っていましたが、タバコやお酒、お茶、珈琲などを楽しむことについてなので、あくまでも嗜好についてでした。

    前半は専門的な語彙が多いので分かりづらいところもありましたが、後半は東大での講話はとてもわかりやすく、腑に落ちました。

    カントの嗜好や享受の説明で、五感によるレベルがあるようで、触覚と視覚と聴覚はレベルが高くて

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    2025年08月24日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    シリーズ前作に比べると、前半部は論考の形を取り後半部がそれを受けた講話という構成もあるが、内容自体もカント哲学の辺縁から嗜好や享受についての考察ということでなかなか骨の折れる内容。(JT関連との共同研究)
    言われてみると、嗜好品やアディクションへの考察が社会学や生理学的に説かれるものは目にしたが、それを哲学上の議論で目にかかることも少なく、込み入った話になりがちなのかもしれない。
    朱喜哲氏の連載に、似たような話があったような。

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    2025年08月23日
  • スピノザ 読む人の肖像

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    先日『はじめてのスピノザ 自由へのエチカ』をaudibleで聴いて、オーディオブックで受け止めるには限界があるなと感じていたのですが、性懲りもなくこちらもaudibleに出ていたので聴いてしまって、案の定難しかった笑
    スピノザ哲学のポイントを掴めた感じはまだまだしないので、その内紙版で読み直したいなと思うが、國分先生のガイドでスピノザという人物自体にも触れることでこれまでと少しイメージが変わる部分があった。特にスピノザの「神」についての理解や表現について、「神即自然」というスピノザの表現を微妙な時代状況の中でのレトリック的表現なのかなと捉えてしまっていたけれど、宗教的な側面を含めたスピノザの生

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    2025年08月18日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    能動態-受動態の対立する枠組みで物を考えることは現代人にとって至極当たり前のことに感じられる。しかしながら、歴史を遡ると言語にはより古いところに能動態-中動態という対立軸があった。
    能-受の対立に強く結びつく意志と責任の概念が、能-中の対立のもとで批判され、意志概念の不可能性が明らかになる。
    さらに、補遺では意志なき能-中的世界観の中における責任とは何かの論考が追加されており、論のさらなる進展が見られる。
    「暇と退屈の倫理学」と比較して言語的な分析が大半をしめており、ある程度言語哲学に慣れていないと読むのは少し大変かも。

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    2025年08月11日
  • 目的への抵抗―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    コロナとアガンベンについてなど把握していない話は興味深く、『移動と階級』を読んだあとで掘り下げ方としてこういう思索のほうがやはり楽しめた。國分氏の著作では「講話」ということもあって読みやすい。

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    2025年08月10日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    カントの「快」に対する分析(快を①端的に善いもの、②美しいもの、③崇高なもの、④快適なものに分類)をベースとして、目的のために手段化する傾向の強い現代社会の問題を指摘し、④快適なもの(目的のための手段としての快ではなく、それ自体を楽しむ享受の快)の重要性を説くもの。

    カントについては名前を知っている程度で全く知識がなかったので、カントの議論を分かりやすく噛み砕いて説明されていて勉強になった。

    前半:論文をベースとしたもの、後半:講演をベースに文章化したものという構成であったため、前半パートでは難解であまり理解できなかったところもあったが、後半パートを読むことで理解が深まった。

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    2025年08月05日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    何かに駆り立てられるように生きている、何かに駆り立てられるように何かをしている、それでいて人間自体は虚しさを感じながらカラッポな状態で行きている。そのような現代社会の病理のようなものに言葉を与え、その解決として提案されるもので我々の生や思考に一つの道筋を提案する。

    目的とも手段とも切り離された快を享受することで、所謂精神的な満腹状態に達し、消費社会、資本社会の構造に抵抗する、そして主体を取り戻す、ということがシリーズを通じて繰り返し述べられる。

    「楽しむ」という卑近なテーマからスタートする思索であるが、巻末でも述べられているように、このまま行くと人間が、依存症に陥ることに留まらず、取り返し

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    2025年07月27日
  • はじめてのスピノザ 自由へのエチカ

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    すごい平易な言葉で説明されてるっぽいのにむず〜、何度も寝落ちしかける
    でも面白いので進む時は進む
    そしてまたしばらくして読み始めるとどこまで読んでたかわからなくなり1章分くらい意図せず振り返ることになる

    107p
    受動と能動
    一般的には行為の方向性を指すが、スピノザはその行為が誰の力を示しているかで判断する
    親の虐待への復讐心で戦争に走る青年は結局のところ親の力を示しているので受動

    お〜と思ったけど、一般的にもそうじゃね?
    脅されてお金を出すのが能動とはもともと思えぬ

    p45
    それ自体として善も悪もない

    これはそう
    最近仕事のチームメイトのやる気のなさ後向き発言にやられてるが、組み合わ

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    2025年07月24日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    「意志」とは何か、という哲学的なテーマを、〈中動態〉というかつてあった文法的な概念から読み解いていく。現在当たり前となっている〈能動態⇔受動態〉だけでは説明がつかないことも、中動態という概念が加わることで絡まった紐が解れる。「暇と退屈の倫理学」同様、このほどけていく過程を楽しめる一冊です。

    英語でも、受動態なのに能動的な意味の表現があったと思います。ああいうのも、中動態が歴史的に除かれていってしまったことによる弊害のようです。

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    2025年07月14日
  • 哲学の先生と人生の話をしよう

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    ネタバレ

    哲学の先生に対してメルマガの形で投げかけられた人生相談の回答をまとめた一冊。
    人生相談においては言われていないことこそが重要であり。人は本当に大切なことを言わないのであり、それを探り当てなければならない。
    この言葉にあるように、人の相談は文字にして読むと案外、何を求めているかは分かりにくい。

    哲学の先生が質問の一言をヒントに、本当に大切なことを本当に聞きたいことを紐解く様子が面白い。

    回答の中で、自分の人生においてもヒントになることがある。
    恋と愛の違い。
    幸せな人は心の穴を塞がない。折り合いをつける。
    未練とはサービスを提供したにも関わらずその支払いを受けていないと思うこと。
    自分の違和

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    2025年07月05日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    読み進めるのに苦労したけれど、最終章で急に理解しきれなかったここまでのことが、像を結ぶような感じがした。
    しばらく置いてもう一度読んでみたい。

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    2025年07月04日
  • はじめてのスピノザ 自由へのエチカ

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    【神即自然】
    ・神は無限である→すべては神の中にある。神は宇宙のような存在(自然)
    ・神すなわち自然は外部を持たないから、他のいかなるものからも影響をうけない→自分の中の法則だけで動いている

    【コナトゥス】
    ・個体を今ある状態に維持しようと働く力
    ・スピノザは、コナトゥスをそのものの本質と考えている。すわなち、物の形ではなく、物がもっている力を本質と考えた。

    【変状する力】
    ・刺激に対する反応の仕方も時と場合に応じて大きく変化する・
    ・変状(affectio):刺激による変化。あるものが何らかの刺激を受けて、一定の形態や性質を帯びること。
    ・欲望:刺激によって変化した状態が、自分にあること

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    2025年07月06日
  • 原子力時代における哲学

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    原子力は核兵器として利用される場合、反対されるが、「平和利用」という巧みなスローガンの元で発電に使われる場合は、長らく肯定されてきた。

    それが、チェルノブイリや3.11福島などを経て、急激に反対に傾いている。

    しかし、3.11以後も、事故が怖い、廃棄物質など忌避感情が強いにもかかわらず、再稼働への国家的な意志はうごめく。それはエネルギー問題に煩わずに生きたいという全能感への欲望だ。

    ただ、ハイデガーのみが肯定が大多数だった時代にも、その技術的特異性に注目し、警鐘を鳴らしていた。根本から考えようとする哲学の威力発揮である。

    原子力に取り憑かれないためには、考えることが必要だが、そのことを

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    2025年06月25日
  • 手段からの解放―シリーズ哲学講話―(新潮新書)

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    カントの三大「批判」書のエッセンスを、美、崇高、善、快適という視点で整理。
    現代は、快適なものが直感的なものとして楽しめず、目的を手段化してはいないか、と指摘する。
    健康であることさえ、手段化する。そこには、人間の作った資本主義、消費社会のシステムが見え隠れする。デジタル社会だから逃れようも無いとも言えようが、デジタルデトックスした状態で、暇と退屈を直感的に楽しむ余地は持っていたいと、つくづく思った。

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    2025年06月22日
  • 中動態の世界―意志と責任の考古学―(新潮文庫)

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    124ページすごい。ある、は主体的な行動であるとはみなされていない。よかった!本多勝一の日本語の本で主語に関しての議論をこの間読んだのとリンクしてた。ここら辺はやはり日本語使いの方が理解しやすいのだろうか。この間、日本語好きな香港人と話したんだけど、主語がないとか最高だから日本に永住したいって言ってた。意思と責任とかの議論もよい。

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    2025年06月27日