國分功一郎のレビュー一覧

  • 言語が消滅する前に

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    中動態、勉強、コミュニケーション、エビデンス主義などなど、様々なトピックが、「言語」の横軸で横断的に議論されている1冊でした。とくに第3章「「権威主義なき権威」の可能性」が、示唆に富む内容が個人的に多かったです。

    現代的なコミュニケーションは、何でも明確に表出することを求める、明るみの規範化が問題となっている。そうではなく、人には「心の闇」が必要である。言語化できないような不合理性があることで、曖昧なかたちのままで自己を認識できたり、どこか他者を信じれたりする。

    それに関連して、エビデンス至上主義は、ある種の民主主義の徹底でもあるけれど、全てを明るみにしなければいけないとか、エビデンスだけ

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    2022年01月02日
  • 未完のレーニン 〈力〉の思想を読む

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    めちゃめちゃおもしろい!
    白井聡の初めての著書の文庫化だが、今文庫化してくれた講談社ありがとう!の気持ちが溢れる。

    レーニンの著書に明るいわけではないので、この読解が新しいのかどうか、判断はできない。
    でもはじめてレーニンのやりたかったこと、やろうとしたこと、やったことの意味がわかり、めちゃくちゃスッキリした。
    「何をなすべきか」をめぐる、フロイトを用いながらの「外部注入論」の意味
    「国家と革命」が解き明かす革命の必然性とその力の所在
    新自由主義の矛盾があらゆる意味で発露している今日読む意味が、レーニンには間違いなくある

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    2021年12月29日
  • 近代政治哲学 ──自然・主権・行政

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    めちゃくちゃ勉強になった。難解な哲学をかなりわかりやすく書いているし、何より現代に引きつけて例示をしてくれたりしているので、一層わかりやすい。もちろん全て簡単に理解できるものではないので悩みながら読む時間は必要だけれど、一冊読み終わった時には自分の認識がかなりアップデートされていることは間違いない。

    特に立法と行政の関係は、言われたら難しい話ではないのに目から鱗だった。現役の公務員とか、実践の現場にいる人たちにも読んで欲しい一冊。
    専門書という扱いではないけど、現代を生きるための大人の教養書、だと思う。

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    2021年08月15日
  • 原子力時代における哲学

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    国分先生の著作を数冊読んだけど、これだけ毛色が違うので躊躇ってましたが、原発事故10年かぁ、いい加減考えないとなぁと思ってようやく読みました。
     内容は思っていたほど難しくなくて、講義録なのもあって非常に読みやすかったです。途中のハイデッカーの引用は難しかったですが、要は結論を述べるんじゃなくて、対話の中から自然と結論に至ること、その過程が大事ということかな?
     これに似たこと安部公房が言っていて、「小説の要点が書けたら僕だってこんな長い文章書かないよ、書けないから読者に体験してもらう、そのために無限に読み込める航空写真のような小説を書くことになるんだけど、それを読者は迷路って思うみたい、要点

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    2021年05月07日
  • 来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題

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    来るべき民主主義
    国民主権は主権者である国民が立法権を持つことだと定義されている。近代国家は統治の規範を公開性の高い法に求めてきたためである。しかし、行政府が立法府の定めた法の執行機関に過ぎないという前提が崩れ、行政府が立法府を超えた権力を持つ現在において、現状の国民の政治参加の方法は十分に民主的であるとは言えなくなってきている。さらに、民主主義国家では国民がいかにして立法に関与できるかのみが議論されてきたため、行政への国民の関与は制度的にほとんど認められていない。本書では、このような民主主義の欠陥に関して、小平市都道328号線建設反対の住民投票が無効化されたという著者自身の経験から論じられて

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    2021年02月06日
  • いつもそばには本があった。

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    著者たちとあまり学生時代を過ごした年代が変わらないので、この本でふれられている”あの時代”の雰囲気はよくわかる。なぜか浅田彰の本がベストセラーになって、ドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』などという本が平積みになったりしていた時代だった。ちょっと前には「朝日ジャーナル」などという雑誌があって、”人文的な教養”が価値のあるものと考えられていた時代でもあった。この本はちょっと懐古的に感傷的になっているような印象もあるが、それを踏まえた著者たちの現代への問題意識もわかる。ただ、両者がバックグラウンドとする仏哲学が『知の欺瞞』後にどれだけアクチュアリティを持てているか、単なる”妄想”になってい

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    2021年02月03日
  • 近代政治哲学 ──自然・主権・行政

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    主要な政治理論を明晰にまとめている。多くの学者がごまかしているロック政治論の欺瞞性を指摘しているのもよい。主権概念が立法権を中心に考えられてきたことを問題化し、強大な行政権力とどう向き合うかというところで終わる。個人的には、スピノザ・ルソー・カントの章がおもしろかった。

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    2020年10月22日
  • 哲学の先生と人生の話をしよう

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    単に質問にたいして、國分さんがそれに答えるというよりは、質問者の問いに秘められた欲望を明らかにして、質問者にそれを再提示するというやり取りが鮮やかで興味深かった。

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    2020年06月19日
  • 原子力時代における哲学

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    ネタバレ

    1950年代、核実験や核開発が進む中で、
    「原子力の平和利用」に関しては誰も警鐘を鳴らさなかった。

    ハイデッガーを除いては。

    誰もが「原子力の平和利用」や原子力発電に夢を見ていた時代にあって、どうしてあの哲学者、ハイデッガーは核戦争よりも「原子力の平和利用」の方が恐ろしいと看破することができたのか。

    とても興味深い考察です。

    「意志」の限界を考え抜くことができたからであり、
    「考える」ことができたからであり、
    それが「放下」へとつながっていく。

    哲学の姿勢でもって、
    そして西洋の影響を受けながら西洋を疑い、
    「放下」へ到る道に思いを馳せるとき、
    私たちがいかに原子力から逸らされている

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    2020年05月13日
  • 原子力時代における哲学

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    タイトルから敬遠していたが、読んでみるとさすが國分功一朗氏。単に原子力にNOを言いたい主張本ではなく、「原子力という困難な問題に向き合うために、人類が鍛えるべき思考や態度は何か」をハイデガーを中心に紐解いた実践的哲学書。
    ハイデガーが「会話劇」というスタイルで主張したかったことは何だったのか?というマニアックな話が、なぜ近代科学技術への批判へと接続させるのか?なぜ紀元前の哲学者の言葉がカギになるのか?…etc.

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    2019年11月06日
  • いつもそばには本があった。

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    新しい形式である。対談でもない。往復書簡でもない。同時代を生きてきた二人のなかで本を介した記憶や思想のネットワークがつながり、広がる。アクチュアルな哲学に興味のある人ならば、引き込まれるはず。いわゆるエッセイやガイド本ではない。

    ・アーレントは最後まで実存主義を離れなかったには目からウロコ。
    ・内田義彦の『作品としての人文科学』。論文としての人文科学ではなく。
    ・答えではなく、問いが人文科学。

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    2019年07月19日
  • 保育園を呼ぶ声が聞こえる

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    現状の保育園事情からも日本は世界の先進国より随分遅れているし、保育園のみならず、幼児教育のこと、子供の権利のことを真剣に考えられていなかったことにただただ驚く。保育園にただ子供を預けられればいいという話ではない。 実際に自分がいくつも保活で保育園を見学して、狭い、汚い、交通量が多い立地など、小さい子供を預けるのに躊躇する保育園がいくつかあったことを思い出す。しかしどこにも受からなければ、その躊躇したところにも預けざる負えなかったかもしれない。実際にそういうことも起きているのが日本の現状でもある。
    本当におかしい。子供は未来なのに。
    子供の権利、保育士という命を預かる専門職の待遇改善など早急に

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    2017年11月11日
  • 保育園を呼ぶ声が聞こえる

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    昨年は「保育園落ちた‥」のブログや、新規保育園の計画中止のニュースで「待機児童問題」という言葉を何度も聞いた。
    だけど「待機児童」の何が問題なのか?本当には分かっていなかった‥問題は、保育そのもの。安心して「保育」を受けられなければ、親は働くことができない。もちろんそれは二人であろうがシングルだろうが、すべての「親」のこと‥。どんな職場であれ必ず「親」がいる。考えてみれば保育の問題は、働く人=この国に暮らすすべての人にとっての問題なのだ。いやいや‥日本、大丈夫だろうか?
    この本はこどもが身近にいる、いないに関わらず、行政や政治家には課題図書にしてもらいたいし、なるべく多くの人(特に若者)が読ん

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    2017年09月26日
  • 哲学の先生と人生の話をしよう

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    相談者のメールにまるで推理小説のような明晰な洞察を加えて普通の人生相談を超えた内容の解答が素晴らしかった。知性の高い人ってこういう人の事を言うんだなぁと思った。

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    2016年09月22日
  • 原子力支援  「原子力の平和利用」がなぜ世界に核兵器を拡散させたか

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    原子力分野の二国間関係と国際機関のあり方について、学ぶには最適の本。国際政治の勉強をしようとする人には、本書を読むことを強く勧めたい。なぜなら、国際政治における、国家と国際機関のあり方を考える上での一助となるからだ。

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    2015年12月06日
  • 近代政治哲学 ──自然・主権・行政

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    緩い封建社会と宗教戦争から主権や自然状態といった概念が生まれ、磨かれ、近代政治哲学が構築されてきたんだけど、それからはみ出たところにある強大な権力を有する行政をどうしていくのか、それが現代の課題であり、近代政治哲学をさらに発展させていく必要性もそこにあるのかな。

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    2015年08月16日
  • 来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題

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    本来国民の声を幅広く聞いて実行するはずの政治が機能していない。
    特に身近に溢れているインフラ整備の問題などこれまでは自民党の主導で行われてきたが、ここにきてそれも限界を迎えそうな感じがする。
    本書はそうした社会構造の矛盾を市民の側から変えていく自らが引き受ける民主主義を体現しようとした若き哲学者の声である。この本に書かれているとおりにもっと市民の参加しやすい行政の構造改革が行われれば、今の任せて文句を言う体制から社会は少し脱却できるかもしれない

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    2015年08月12日
  • 近代政治哲学 ──自然・主権・行政

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    なぜ私の考えは行政に反映されないのかという疑問をもつ人の為の本。私と主権がどうリンクしているのか、そして主権の在りかは行政にどう働きかけるのか。主権概念の来歴を追うことで、現在の政治のあり方や主権国家システムを相対化することができる内容になっている。
    あまり古典の解説で聞かない内容があっていい。ホッブスの社会契約には二種類あることや、ルソーの一般意志は少数意見に容赦無いことなど。ただカントまでで章が終わっており、少なくともヘーゲルまで読みたかった。ヘーゲルには著者の持論を援用できる内容は少なかったということだろうか。

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    2015年07月29日
  • 来るべき民主主義 小平市都道328号線と近代政治哲学の諸問題

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    民主主義の欠陥に迫った一冊。何度も頷かされました。ぜひ誰しもに一度読んでみて貰いたいです。
    「哲学に携わる者の責任とは、配達されるべき言葉を配達することだ。」と筆者も言っているように、実にこの問題をデリダなどの思想と繋ぎながらわかりやすく伝えてくれています。
    優しく、熱い一冊。必読です。

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    2015年06月17日
  • 近代政治哲学 ──自然・主権・行政

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    我々のこの民主主義・民主制は、ある種の欺瞞のもと、何か別のものが民主的と呼ばれているにすぎないのではないかーー。そのような疑問から出発し、政治哲学の大家たちの論を紐解きつつ、彼らの「自然権」「主権」「立法」「行政」などの用語法の細かな異同に目を配りながら、何百年も前に提起された諸問題が今もなお熟慮に値することを明らかにしてゆく。

    初めて書店で見かけた時は硬くストレートな題名には好感を抱きつつもこれで本当に売れるのかと心配になったが、数ページ読んでそれが杞憂であることを確信した。とにかく解り易い。変に奇を衒った所は全くなく、極めて簡潔な文体で淡々と論が進められてゆく。あまりに噛み砕かれると却っ

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    2015年06月02日