國分功一郎のレビュー一覧
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対談形式なので読みやすい。もっと雑然とした内容かと思っていたがそうではなく、しっかりまとまっているのは構成が速水健朗さんだからか。IKEAやコストコに行ってみたことで消費論について語ったり、これからの農業について、コミュニティについて語ったり、食や保育、政治参加にまで話が及ぶ。こうして読むと哲学というのは無用のものでいて、世間にどう相対して解釈するかの基準を作ってくれるのだなあと思う。
國分さんは著書を読んだ時、人としての感情がないくらいに超絶頭が良さそうに思ったが、実際はドライながらもかなり暖かそうな人のようだ。
とにかく頭が良い人同士の対談。面白かった。 -
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小平市における都道建設に伴う住民投票を中心に、参加型民主主義の在り方について論じた本。
たとえば道路を建設する際には、東京都などの自治体が計画を策定し、小平市などの基礎自治体に照会した上で建設が決定され、住民向けの説明会が実施される。
このプロセスについて、おかしいと感じるかどうか。つまり、決定されるまでのプロセスには住民の意思が介在する余地はなく、説明会は建設が決定事項として一方的に通達されるだけである。
小平市においては、この都道建設計画に反対するというよりも、プロセスに主権者たる住民の意思が反映されない民主主義の在り方に疑問を持ち、住民投票が行なわれるまでの流れが描かれている。
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政治とは、複数の人間(多)と単数の決定(一)を結びつける営みであり、多と一を結びつけるためには、何らかの権威が必要。かつては宗教的権威や伝統的権威がそれを担ったが、近代の政治体制では、国家という権威に民衆を従わせなければならず、編み出されたのが「主権」という概念だった、つまり、主権に基づいて定められた法律が統治者を拘束するということで、主権とは立法権に他ならないと考えられていた。
しかし、現代の国家は極めて複雑で、立法権によって社会を統治するということは困難になっている。にもかかわらず、民主主義は立法権をコントロールすることで社会を統治しようしていて、行政権をコントロールする仕組みがない。(パ -
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スピノザを専門とする哲学者が、地域開発計画への個人的な関わりを題材にして、民主主義についての考察とその実践への手掛かりについて、新書読者層へ訴えた本。國分は、武蔵野の風情の残る雑木林が、道路新設計画で無くなろうとすることに反対し、行政との折衝を通じて、「民主主義」が人々には誤った形で認識されていると考えるに至った。間接民主主義における議会は、立法府として主権を表わす機関には違いないが、そこでは法を作るのであり、実際の行為を意思決定するのは行政である。ところが主権者である地域住民が、個別の事案で行政に対して対等に交渉できる仕組みがない。
これを解決するために、住民投票の制度の改良や、ファシリテー -
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車両通行が減りつつある中で、なぜか東京都小平市に50年前の道路建設計画が復活。住民の憩いの場をつぶして幹線道路を作るという計画に住人が反対、住民投票が行われるが…
住民の生活に直接影響を与える決定は、議会よりも行政で決定されている現実があって、従来では住民の行政への参加は首長の選挙という形が取られてきた。
しかし、ここに来て住民投票やオンブズマン制度などの行政への参加法が確立されてきたが、さらに多くの手段が必要なのではないかというのが筆者の主張。
議会制民主主義を肯定して、新たな制度を作ることを「強化パーツをつける」と表現している。革命は必要なく、変化が必要なのだというのがすごく腑に落ちた