吉上亮のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ作家さんがそれぞれ違うのに、全ての短編で岸辺露伴のイカレっぷりがいい塩梅で表現されてて凄いなと思ったし、どんな場面でもヘブンズドアーを駆使して乗り切れる精神力の強さもそれぞれの表現がされてて色んな露伴を知れた。
「くしゃがら」と「オカミサマ」の北國ばらっどさんは、言い回しがとってもジョジョで、臨場感があってよかった。生き生きした岸辺露伴。
短い中に露伴の「好奇心がわくと探求するのを止められない衝動」が詰まってて、「そうだよね〜〜!露伴ならそうだよね〜〜!!」ってなっちゃう。
スタンド能力じゃなくて都市伝説とか超常現象に首を突っ込む話なので、全体的にホラーチック。苦手な人は苦手かもしれない。けど四部自体が「日常に潜む悪、崩れる平穏」って感じの話だったから、この短編のテーマはとても合ってるなぁと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ北國ばらっどさんの作品が素晴らしいです。
岸辺露伴だけじゃなく、奇天烈で愛着が湧くキャラ、奇妙で不気味な話作り…
とくに、オカミサマは、傑作だと思います。
『時は金なり』……メインキーワードとなるこの言葉を物語の最初明示する際に、誠子が岸辺露伴に対しての感情を説明する際に使うので、
実際はものすごく重要なんだけど、さりげなく提示されてて無駄がない。
締めも素晴らしいですね……露伴が、これを機に少しは出費を抑えてみるか……とちょび反省する終わり。
ただ、奇妙なものに遭ったで終わるわけでなく、キャラクターの心境に影響を与えているところが、物語が生きている〜っ!て感じがします。 -
購入済み
新手のスタンド攻撃っ!
実写ドラマ化と言うので予習に購入。
何人もの作家が岸辺露伴を主人公に短編小説を書く。
凄くJOJOっぽい小説もあるし、そうでないのもある。そうでないのも凄く面白い。
文章を読んでいるのに漫画が頭に浮かぶ。これはも早新手のスタンド攻撃! -
Posted by ブクログ
上下巻を一気読み!!!!めちゃくちゃ面白かった!!!!!!!!!!
まさに超弩級のハードボイルド・アクション・ミステリー・エンターテインメントの傑作!
アクション・エンターテインメント小説を読んで、こんなに興奮したのは福井晴敏氏の『亡国のイージス』や『終戦のローレライ』を読んで以来ですね。
舞台は2020年の東京オリンピックを間近にした、ごくごく近未来の東京。移民・難民受け入れを決定した日本は、移民大国としての道を進みますが、そこに冷や水をぶっかけるような事件が発生します。
クルド人難民が東京都知事を狙撃したのです。幸い、東京都知事は一命を取り留め、犯人も早急に逮捕されました。取材で狙撃現場に居合わせた大手新聞社の記者天宮理宇は、犯人がクルド人難民であったことに違和感を覚え、調査を開始しますが、上層部から圧力がかかり、新聞社を去ることになります。
天宮はフリージャーナリストとなり、独自に都知事狙撃事件の調査を継続します。天宮は、調査を進めるうち、逮捕された犯人が真犯人でないことを確信します。そこに「アル・ブラク」と名乗る謎のクルド人から真犯人の手がかりがもたらされます。天宮が事件の核心に近づけば近づくほど、この狙撃事件の裏にはさら大きな事実が隠されていることに突き当たるのです。
警視庁公安部の暗躍、絶大な権力を握る大手新聞社の社主、狙撃されたことで不死身の英雄として担ぎ出された若き政治家・火神-東京都知事、そしてクルド人で元傭兵のアル・ブラク、そして在日難民組織「シリア、トウキョウ」。
いくつもの大きな渦に巻き込まれながら天宮は「本当の真実」にたどり着けるのか?
ストーリーもラストも完璧。
登場人物達もみなキャラクターが立っていて非常に魅力的。特に天宮の行動をつかず離れず監視する警視庁公安部の謎の女性刑事・刈谷。彼女の存在が、このハードボイルド小説の中で、ふと気持ちを緩ませてくれ、良い味を出しています。
そしてなんと言ってもド迫力なのが、クルド人で元傭兵のアル・ブラクの回想シーンで描かれるシリア内戦でのエピソード。あまりに壮絶かつリアリティ溢れており、この回想シーンだけでハリウッド映画一本作れるんじゃないかというくらいの迫力があります。
著者・吉上亮の作品はアニメ『PSYCHO-PASS(サイコパス)』のスピンオフ小説『PSYCHO-PASS ASYLUM』と『PSYCHO-PASS GENESIS』シリーズは全部読みましたが、本書のようなSFではない本格的エンターテインメントミステリーを読むのは初めてです。
「ユートピアに最も近いディストピア」な近未来・日本を描いたPSYCHO-PASSシリーズも無骨で読み応えがありましたが、現実世界を描いた本作は、難民問題というテーマにもしっかり切り込んでおり、単なるエンターテインメントだけに止まらない社会派小説という一面も持っています。
巻末の膨大な参考文献の数から、著者がシリア情勢やクルド人の状況、最近の難民問題を相当研究したことを伺うことができます。
著者は2013年デビューでまだ30歳。若手とも言える作家ですので、著者「吉上亮」という名前もほとんどの人は知らないと思いますが、ミステリー・ファンを自認する読者の皆さんにはぜひ読んでみて欲しい一冊です。
本書は何らかの文学賞、例えば大藪春彦賞が取れるくらいの実力を間違いなく持っていると僕は信じています。
一点だけ、ちょっと気になったことを書かせてもらえるなら、著者には日本の司法手続きや警察の取調べのことをもうちょっとだけ勉強してもらったら良いのかなとは思いますね。
例えば警視庁の刑事による取調べのシーンで被疑者が手錠をかけられたまま取調べを受けてたり(しかも手錠の鎖が取調室の机に固定されているとか、「どこの国の警察だよ!」と、僕は実際に電車の中で本に向かって突っ込んでしまい、他の乗客の皆様から吹雪のような冷たい視線の一斉掃射を浴びて蜂の巣になりました・・・)、あるいは警察が被疑者を起訴する、しないを判断するような描写があるのですが(実際は、逮捕・送致された被疑者の起訴・不起訴の判断は検察官がします。この小説では検察官の存在がすっぽり抜けてしまっています)、このあたりは少し現実とかけ離れていますね。
目の肥えた多くのミステリー・ファンの方々は、こういった方面の知識を信じられないほど豊富に持っていて、こういう描写を読まされてしまうと一気に興ざめしてしまうことが往々にしてあるので・・・。
筆者の得意なSFでしたら、「未来の警察はこうなっているんだ!」と逃げることができますが、本書はあくまで2019年から2020年というリアルに現在の話なので、そこはもう少し慎重に書いていただければ幸いです。
ただ、筆者がこの作品を書くためにシリアの状況や難民問題について相当の研究をされていて、これだけの作品を完成させることができる能力をお持ちなので、日本の司法手続きなんか、その方面のモノの本を2、3冊読んでいただければ、すぐにご自分のものにしてしまうでしょうから全く心配はしていません。次回作は本格的な警察ものを読んでみたいですね。
最後につまらないことを書いてしまいましたが、こういった点でこの本の価値が下がるということは1ミリも無いので、ご安心を。
最初にも書きましたが、本書はハードボイルド・アクション・ミステリー・エンターテインメント小説の傑作です。
たぶん、来ますよ、この作者。いや、絶対、来ます、吉上亮。うん。間違いないです。
という訳で、この本の中から飛んできた流れ弾の7.62×51mmNATO弾で最近「中二病」気味だった僕の脳みそ、きれいさっぱり吹き飛ばされちゃったので、これからちょっと病院に行ってきますね☆ -
Posted by ブクログ
文字通り、伊藤計劃トリビュートの作品集である。文庫本で700ページを超える厚さであるが、作品数は8つの中篇集である。どの作品も伊藤計劃の影を感じさせる作品であり、作家らがいかに伊藤計劃氏の影響を受けているのか感じられる。しかもどの作品も驚くほど面白い。各作品に引き込まれるように読んだ。ページ数は多いがあっという間に読み終えてしまった。特に面白かったのは、「仮想の在処」「南十字星」「未明の晩餐」「フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪」。
以下、個別作品の感想。
◎公正的戦闘規範(藤井 太洋)
格好いい話だ。ドローンや歩行兵器などが登場し、さらに戦争の規範を訴える。無人兵器が実用化されている現代において、生身の人間がどのように戦闘行為に携わるか、戦争の正義を提案しているとまでは言わないが、現代のノールールな戦争より少しはましな状態を描いていると思う。
◎仮想の在処(伏見 完)
「ハーモニー」を彷彿とさせる物語。人間の意識とは、人格とは、存在意義とはなどを考えさせられる。伊藤計劃の作風に近い小説であり、彼の作品を読んでいるかのような感覚になった。
◎南十字星(柴田 勝家)
伊藤計劃っぽさはあまりないけれど、作品自体は面白い。少女との出合い、少女の死、仲間の死、自我の死、いろいろな死が平気でまわりに存在する中で生きている自分。意識がある自分、他人と同化した自分、自分ではない自分、意識と生命の存在を意識したところはやはり伊藤計劃っぽいのかな。
◎未明の晩餐(吉上 亮)
死刑囚に最後の食事を作る料理人の話。読んでいてどんどん引き込まれる。素直に面白い。哀しくもありハートウォーミングでもあり、見事な作品だと思う。
◎にんげんのくに Le Milieu Humain(仁木 稔)
ジャングルで生活する少数民族の話。部族に所属する“人間”と部族出身ではない異人がどのように生活するのかを描いている。普通に読んだだけでは、現実にある少数民族の普通の話のようにも読める。SFとして読むのは無理があると感じたのだが、他の人はどのような感想を持ったのだろうか。
◎ノット・ワンダフル・ワールズ(王城 夕紀)
生命の進化とはを問う物語。その定義を作品に語らせている。おそらく学術的な進化とは異なる解釈がなされていて、「へぇ~なるほど」と思わせる。「ハーモニー」を思い起こさせる作品である。
◎フランケンシュタイン三原則、あるいは屍者の簒奪(伴名 練)
実に面白い。「屍者の帝国」を思い出す。三原則についてはどこかで聞いたようなものもあるが、最初に出てきた原則を読んで瞠目した。確かに意識があるとかないとかはどのように判別するのだろうかと。それを疑問に思ってしまうと、自分自身が生きているのかどうかさえ疑ってしまう。この恐怖に震えてしまった。
◎怠惰の大罪(長谷 敏司)
人口知能(AI)が出てくるものの、それ以外でSFを感じさせる要素はない。ストーリーはキューバを舞台にした麻薬がらみの裏世界を描いたもの。ゴッドファーザーを思い出させる。長編作品の第一章が掲載されている。SF要素を楽しめるのは、第二章以降なのかもしれない。