太田忠司のレビュー一覧
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名古屋「賑わっていない方の口」に存在する昭和レトロな喫茶店『ユトリロ』にはユトリロの絵(伝・複製画)が飾ってある。
東京生まれの鏡味龍(かがみ とおる)は、祖父母が経営する住居兼喫茶店「ユトリロ」の住居部分にこの春から下宿している。
個性豊かな常連さんたちは、おおむね高齢。
にぎやかなおしゃべりの中から、龍はたびたび「謎解き」を持ちかけられる。
いろいろ中途半端な気もしないでもないが、ゆるく楽しめる。
とくに、名古屋の食文化が謎に絡めて紹介されており、これは、一度まとめて食べにいかないといかん!という気になる。
明壁麻衣先輩の個性が際立っていて、「さし色」的存在。
オチはやられたわ~
第一 -
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表紙とタイトルのインパクトにつられて購入しました。四半世紀以上前の作品とは思えないくらいみずみずしく読めた作品でした。他人の憎悪や執着がこんなにもリアルに迫り来る作品は初めて読みました。読んでいる間、ずっと心臓が痛かった。ラストにつながるシーンはほんとにゾクゾクしました。蝶の姿は当分見たくない。
「自分はだれだ?」だれもが思うアイデンティティについての疑問を、こんなにも、悲しい形にしてしまうのは残酷だと思いました。裕司がこれからどう生きていくのか。知りたいけれど、知りたくない気もします。いつか彼が記憶を完全に思い出したら、彼はしあわせになれるのでしょうか。 -
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20年も前の傑作がこうして読めるのはありがたい。夢中で謎を追っていた。最後の終わり方も良い。なぜ彼は似ていたのか。本当に似ているのか。あの断片的な記憶はどこまで正確なのか。想像が尽きない。
あらすじ(背表紙より)
五歳のとき別荘で事件があった。胡蝶グループ役員の父親が階段から転落し意識不明。作家の母親は自室で縊死していた。夫婦喧嘩の末、母が父を階下に突き落とし自死した、それが警察の見解だった。現場に居合わせた僕は事件の記憶を失い、事業を継いだ叔父に引き取られた。十年後、怪しいライターが僕につきまとい、事件には別の真相があると仄めかす。著者長篇デビュー作、待望の復刊! -
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ネタバレレストアの続編となる本作は、前作同様に穏やかなリズムで物語が進んでいく。この穏やかでしんしんとした雰囲気が太田作品のなかでも際立っている。それが主人公がオルゴール修復士であり、作品のキーアイテムにもなる「オルゴール」の音色を思わせ、独特の作品世界を形づくっている。
前作では、主人公の雪永が負った心の傷に救いが与えられるところで結末。本作では、そこからどのような展開を迎えていたのかという楽しみがあった。いきなり雪永が結婚しており、いきなりの惹き込み。肝心のストーリーも、人の心を綺麗に切り取り描く太田作品らしい、素敵なミステリ作品。