初野晴のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレハルチカシリーズ第4巻。3巻で感じた、書きすぎない技術に増して、一人称視点の書き方が飛躍的に向上しているように読める(何様)。前巻でも片鱗は見せていたが、この巻では「私」がいつも「現在のチカちゃん」ではないため、いきなり出てくる「私」が誰だかよく考えながら読み進める必要がある。その上プロットツイストで時間、空間が飛び回るため読み応えが抜群に良い。
この巻で草壁先生の空白の年代が明らかになるかな、と思っていたのだが、スナフキンが出てきた程度で、まだまだ謎に包まれている。焦らし上手な上にオチが斜め上なので先を読まずにいられない良書。
巻末の「解説」にも書かれているように、「千年ジュリエット」のテーマは継承。戦争、政治、家族、継承。この巻の4遍は前作までとも被る社会問題が取り上げられている(これも継承?)。遺産相続+家庭崩壊+障害、引きこもり+部活相続、人種+血統+戦争、入院病棟+引きこもり+LGBTQ+。相変わらず、盛りだくさんすぎます。シリーズ物でここまで段々と良くなる小説が他に思い浮かばない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ巻を重ねるごとに良くなっていくハルチカシリーズ第3巻。著者の「書きすぎない技術」が向上している気がする。読み手の受け取り方に任せきって、文章が重くなりすぎないようになっている。深く考えずに読めばさらっと読めるし、いろいろ考えながら読むとゾクっとするような情報が隠れている。ここでそれぞれの短編が取り上げているのは、調停離婚+子供、遺産相続+血縁、家庭崩壊+依存症、オレオレ詐欺+家庭崩壊、、とここまで書いてようやく1冊に「家族とは?」というテーマが貫かれていたことに気づく。ハルタの姉が登場し、チカちゃんは大人になった将来を意識するようになる。
戦争、政治、家族と続いて、4巻はどんなヘビーパンチが待っているのだろうか。世界、国、家族と来たから、このままだと個人の大問題が発生しそうだ。そろそろ草壁先生の謎が明らかになるかな?
あーそうそう、初野氏には、もう少し建築と音響について勉強していただきたい。ヴァナキュラーモダニズム、面白かったけどツッコミどころも多すぎた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作「退出ゲーム」も面白かったが、こちらの方が読みやすい上に想像力を掻き立てられるため、読んでいて気持ちが良い。音楽を主題材としながら、光や匂いなど五感に訴えかけてくる描写が巧いからだろうか。現実と空想の融合がとても綺麗にはまっていて、すぐに惹きこまれる。相変わらずリアルな問題を取り上げていて、ここでは病気+夢の挫折からの回復、自宅警備員+老人介護、盗撮+過去の汚点解消、全共闘/連合赤軍など60-70年代の話題から。こう見ると、「回復」が一貫したテーマになっていることに気づく。今回も最後の表題作でハルタくんが高校生離れしすぎてしまっていて、少し現実に引き戻された。先の3作品はギリギリ本当の高校2年生にいそうなラインを攻めていて、そこが良いキャラクターを作っていると思う。空想オルガンが楽しみである。
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過去の世界を彷徨う少女の魂を救うため、タイムトラベルに挑む勇介とそのパートナー枇杷の活躍を描くSFミステリー。
初野さんの作品、特にファンタジー要素のあるミステリを読んでいて強く感じるのは登場人物たちの優しさと彼らが抱える痛さです。ただ優しいだけじゃ何も救うことも、変えることもできず、そのための代償として必ず痛さが伴う、ということを読むたびに意識させられます。
今作の登場人物たち、特に主人公コンビは本当に優しい。児童養護施設出身で、施設を出ることになった後も施設の子どもたちを案じる勇介。そして施設で特別に境遇が似ていた少女を救うため勇介は過去に行く選択をします。
そして過去に戻る力を持つ枇杷。言動は子どもぽかったりするのですが、彼女も本当に優しい。常に人を憂い穏やかなタイムスリップするまでの彼女の様子は、読んでいて心地よくなるほど。本当にいい子たちなんです。
しかし、ストーリーはそんな二人にも容赦なく襲い掛かります。二人が向かうのは中世ヨーロッパの魔女狩りが横行していた時代。人権も何もなく、理由のない恐怖と不信が渦巻く時代で二人は肉体的にも大きなダメージを負い、そして精神的にも辛い選択を何度も迫られます。その痛々しさは本当に読むのが辛くなります。
そのため事態が収束に向かっても、どこかうら淋しさや痛切さも残ります。でも一方でそれだけじゃない温もりも確かに感じられます。それは二人が物語の中で勝ち取った絆を感じさせられるようにも感じられました。そんな冷たさと温かさが絶妙にミックスされた不思議な読後感の残る作品でした。 -
Posted by ブクログ
少年時代の締め付けられるような思い出で始まる序章。。。
貯水槽に消えた同級生と、消えない心と身体の傷。
27年後、暴力団の組長代行としての世界。
次々に組員が眠ったまま死んでしまうという謎のテロをしかけられる。
ガネーシャから届く殺人予告には、奇妙なメッセージが。。。
寂れた街を舞台にすすむ『上側の世界』
それと交互に語られる『下側の世界』
下水道に住む6人のホームレスと王子と呼ばれる少年。
記憶を無くした女が迷い込み、街の下に存在していた暗渠に変化が起こる。
この女は何者なのか。
上側と下側の世界はどこで交わるのか、最後まで予測できなかった。。。
重く苦しい結末に思わず深い深いため息が出た。。。
しかし、すぐに始めに戻り読み返していた。。。