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大叔父が遺した博物館は、時間旅行の秘密の実験場だった。天涯孤独になった勇介は、過去を彷徨う大切な人の魂を救うため、危険な旅路に出る。パートナーは碧い瞳の不思議な学芸員枇杷。「命綱」は堅くつないだ手。この手が離れれば二度と現代には戻れない。過酷な旅が今、始まる。新感覚ミステリー長編。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
過去の世界を彷徨う少女の魂を救うため、タイムトラベルに挑む勇介とそのパートナー枇杷の活躍を描くSFミステリー。 初野さんの作品、特にファンタジー要素のあるミステリを読んでいて強く感じるのは登場人物たちの優しさと彼らが抱える痛さです。ただ優しいだけじゃ何も救うことも、変えることもできず、そのため...続きを読むの代償として必ず痛さが伴う、ということを読むたびに意識させられます。 今作の登場人物たち、特に主人公コンビは本当に優しい。児童養護施設出身で、施設を出ることになった後も施設の子どもたちを案じる勇介。そして施設で特別に境遇が似ていた少女を救うため勇介は過去に行く選択をします。 そして過去に戻る力を持つ枇杷。言動は子どもぽかったりするのですが、彼女も本当に優しい。常に人を憂い穏やかなタイムスリップするまでの彼女の様子は、読んでいて心地よくなるほど。本当にいい子たちなんです。 しかし、ストーリーはそんな二人にも容赦なく襲い掛かります。二人が向かうのは中世ヨーロッパの魔女狩りが横行していた時代。人権も何もなく、理由のない恐怖と不信が渦巻く時代で二人は肉体的にも大きなダメージを負い、そして精神的にも辛い選択を何度も迫られます。その痛々しさは本当に読むのが辛くなります。 そのため事態が収束に向かっても、どこかうら淋しさや痛切さも残ります。でも一方でそれだけじゃない温もりも確かに感じられます。それは二人が物語の中で勝ち取った絆を感じさせられるようにも感じられました。そんな冷たさと温かさが絶妙にミックスされた不思議な読後感の残る作品でした。
精神のみタイムスリップという設定がまず面白いと思いました。 過去へのタイムスリップは情報という武器がある分、スーパーマン的な話になりがち。 しかしこの作品では、情報を持つことによって生じるデメリットの方が、際立っていたように思います。 なので読んでいて新鮮さは感じました。 推理ものとしては、解説ペ...続きを読むージが用意されたのが、個人的には残念でした。
ユウちゃん…!よくがんばりました(・ω・)ノ なんだかティーンのハートを垣間取り戻せたような気分。
『水の時計』『漆黒の王子』と同様のダークファンタジー。 (吹奏楽部の青春を描くハルチカシリーズとは大違い) 天涯孤独の身となった中学生の主人公勇介。 そんな彼に大伯父は博物館を遺すのだが、 そこは脳死状態となり精神の時間旅行に出てしまった患者を 救い出す実験を行う場所だった。 ある日、自分のこと...続きを読むを慕っていた幼いナナが交通事故に遭い、 脳死状態となってしまう。 博物館の学芸員で時間旅行の要となる枇杷と勇介は手を繋ぎ 中世イングランド、魔女狩りの時代へと旅立つ。 現代に戻るためには絶対に離してはならない手。 果たして、ふたりは手を繋いだまま、ナナを救い出し 還ってくることができるのか!? 説明・描写が上手で物語の世界に入り込みやすい展開でした。 ファンタジーとしてはとっても大事な部分ですね。 枇杷が最初から勇介を快く思っている理由とか 勇介の持つある能力のこととか、 いくつか説明不足なのではと思う部分もあったし、 冒頭に書いたように「ダーク」なのでちょっと読み進めるのを 控えたくなるような展開もあった。 それでも、なかなか爽やかな読後感という不思議な感じ。 できることなら、時間旅行に出る話をいくつか読みたかった。 一回だけの長編にするにはもったいない位の設定の上手さでした。
簡単に言うと脳死者の魂を取り戻しにタイムスリップする物語。 せっかく個性豊かなキュレーターがいる博物館という素敵な設定にしたのに、長編一冊で終わるのはもったいない。途中のトリック解明のところは中弛み気味だったので、もう少しシンプルな中編集にすれば良かったのに。
両親を亡くし児童養護施設で育った雄介のもとに、ある日存在さえ知らなかった大伯父が訪れた。 ようやく家族と暮らすことができると安堵した直後、その大伯父も事故死してしまう。 雄介に残されたものは、大伯父が館長を務めていた奇妙な博物館だった。 それぞれ一風変わった学芸員たちの中に、何を専門としているのかわ...続きを読むからない青い瞳の女性・枇杷がいた。 施設で妹のように可愛がっていたナナが事故で脳死状態となってしまったことで、中世ヨーロッパに迷い込んだナナの心を取り戻すため、雄介は枇杷と共に命懸けの精神の時間旅行に挑む… 初野晴さん、初読…じゃなかった、2冊目。「退出ゲーム」を読んでいた。 タイムトラベルものは数あれど、精神だけをとばして、過去の人物に憑依するというのは珍しい。 雄介と枇杷の絆が重要なのは伝わってくるが、枇杷の姉のことが解決しないままで、少しスッキリしないラストだった。 悪くないんだけれど、どこか少しずつ、ちょっとだけ、描きたい場面に夢中になって、何か枝葉の先が大雑把な感じがする。 これが若さか…という感じかなぁ。
なんて過酷で壮大なタイムトラベル。読みながら疲れを覚え、少しずつ息抜きしながら読みました。 とはいえど、どんどん核心へ近づいていく場面ではハラハラドキドキの連続でぐっと引き込まれ、ぐいぐい読み進めました。 自分が枇杷さんだったらこんな行動がとれるだろうか。 そんなことを考えつつ、彼女の勇気と知恵...続きを読むと優しさに感心、脱帽。 「アルドゴンドとアレフ」の章で涙。
初野晴の、ファンタジーミステリ長編。 子供向け風の世界観・展開ではあったが、描写が巧みで軽快なので、引き込まれた。 YA向けの冒険小説として魅力的。 求めていたものではなかったが。 3-
どっと疲れたけど良かった。 博物館・時間旅行・ミステリーと面白そうな題材揃いだったので読んでみたが、想像以上に過酷だった。 天涯孤独だった勇介に突然遺された大伯父の博物館。彼は不思議な学芸員、枇杷と出会い大切な人を救うため過酷な旅に出る。 時間旅行の目的。博物館である理由。癖者ばかりの学芸員たち...続きを読む。 重い雰囲気で気軽に面白かったとは言えない読後感だけど読み応えありました。 なにか裏がありそうな博物館と、残虐な魔女狩りが横行する中世のイングランドを舞台に展開されるスリルあるファンタジー+ミステリー。
帯の文句につられて。 小、中学生くらいの年に読みたかった。 枇杷の姉についての続編を期待しときます。
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