あらすじ
歓楽街の下にあるという暗渠(石造りの下水道跡)。そこには、〈王子〉〈時計師〉〈ブラシ職人〉〈楽器職人〉〈画家〉〈墓堀り〉〈坑夫〉と中世オランダの職業名を持つ七人の浮浪者が住み着いていた。ある日、怪我をした〈わたし〉は〈王子〉に助けられ、彼らの世界へと連れて来られたが――。眠ったまま死に至る奇妙な連続殺人事件。ふたつの世界で謎が交錯する超本格ミステリ!! 横溝正史ミステリ大賞受賞後の第一作。
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Posted by ブクログ
少年時代の締め付けられるような思い出で始まる序章。。。
貯水槽に消えた同級生と、消えない心と身体の傷。
27年後、暴力団の組長代行としての世界。
次々に組員が眠ったまま死んでしまうという謎のテロをしかけられる。
ガネーシャから届く殺人予告には、奇妙なメッセージが。。。
寂れた街を舞台にすすむ『上側の世界』
それと交互に語られる『下側の世界』
下水道に住む6人のホームレスと王子と呼ばれる少年。
記憶を無くした女が迷い込み、街の下に存在していた暗渠に変化が起こる。
この女は何者なのか。
上側と下側の世界はどこで交わるのか、最後まで予測できなかった。。。
重く苦しい結末に思わず深い深いため息が出た。。。
しかし、すぐに始めに戻り読み返していた。。。
Posted by ブクログ
「王子」という言葉が大好きなわたし。題名に惹かれて手にとった初・初野晴が、「漆黒の王子」でした。
幻想ミステリーなのでしょうか。上の世界としたの世界の物語が続く中、次第につながっていく二つの世界・・。でも、下の世界って現実なのだろうか・・・。何度も読み返したくなります。
氷の剃刀のような紺野は、可哀想でかっこよくて、冷酷。素敵^^
私の勝手な脳内イメージでは、紺野は豊川悦司さん、高遠は堺雅人さんです。
文章まとまらず、すみませんm(_ _)m
Posted by ブクログ
この本はかなり救えない作品です。
それは「ある人」が抱えた凄惨な過去です。
だけれどもこれに関しては注意深く読んでいけば
誰を指すかが分かってくる筈。
本当に暗い、救われない。
だけれども一人だけ光がいます。
そう、ヤクザらしからぬ心を持つ、水樹が。
彼は本当に不思議な奴です。
そしてガネーシャの真相ですが…
これまたあまりにも凄惨な過去が…
これはネタバレになるので明かしません。
ファンタジー色がかなり強い作品です。
Posted by ブクログ
うわ、これすんごく好き! 前作「水の時計」もそうだったのだけれど、寓話的要素の絡み方が絶妙だわこの人。雰囲気にとんでもなくやられた~。暗渠の中の物語が特にものすごーく好み! これぞ現代のお伽話という感がある。
「眠りながら死に至る」謎の事件や脅迫メール、犯人「ガネーシャ」の正体といったミステリ部分も魅力的。メールの暗号は得意分野なのでだいたい解けたけど、こういうのも好きだなあ。そしてタイトル「漆黒の王子」の意味も……うわあ、とにかくこれは雰囲気の勝利だ~(もちろん雰囲気だけじゃあないけど)。随所に挿入されたエピソードも、ラストには綺麗に結びついちゃって感動。少し残った謎もまたまた魅力的。個人的評価としてはとことんべた褒め。
Posted by ブクログ
読み終えたあと、しばらく虚脱状態に陥っていました。
『水の時計』とはまた違う怪しい雰囲気の物語。残酷なんだけど、どこか哀愁を漂わす文章にただ脱帽。
Posted by ブクログ
おもしろかった。こんなところから人を見るなんて不思議だ。今まで感じたことのないさびしさが、読み終わった後にも残る。色々感想述べるほど読めてないと思う。もっと読まなきゃ。いや読みたい。久々のヒットで読書熱が冷めない。
Posted by ブクログ
内容はヤクザの抗争と復讐譚+オペラ座を彷彿とさせる暗渠の、どこか童話のような世界の二部構成。この人の話にはいつも「弱者」が出てくるんですが、体だろうと心だろうとみんなどっかに痛みを持っていて偽善の入る隙間はなし。切ないなあ。でも最後に星はどうなったんですかね…
Posted by ブクログ
む…難しかった…
もう一回読まないとわからないなぁ
しかしもう一回読むには辛い厚さだ
復讐をする生き物は人間以外にいないのかな?
人間の敵は人間
人間の味方も人間
人類を滅ぼすのに細菌やウィルスがいるけれど、一番人間を殺しているのは人間なんだろうな
眠り病いいな
眠ったまま死にたい
ガネーシャは緩やかな死を与えた
死神より女神に見える
暴力団みたいな死が身近にある環境でも未知の死より暴力の死のほうがいいのかな
僕は未知の死のほうがいいけど
理解しきれなかったからもう一回読んだ
出てくる人は可哀想な人ばかりだ
世界を憎んだ人ばかり
人間の天敵同士が打ち合って死んでしまったら人間の天敵がいなくなってしまうじゃないか
みんな初めは優しい心を持っていたのにそれを捨てるくらい辛いことばかり
王子は最後にガネーシャを引き取ったのだろうか
死に場所として自分達の世界を提供したんだろうか
墓掘りがガネーシャの墓を掘ってくれたんだろうか
名もなきガネーシャの位牌にはなんとかかれたのだろう
Posted by ブクログ
おもしろかった。
表題より、ブラックファンタジーものかと思ったのだが、
冒頭のいじめられた少年のエピソードにより、
現実ものと知る。
が、本編、上の世界、と下の世界、との二重の語り。
特に下の世界での、「王子」「時計師」などの呼び名によりファンタジー感あり。
この二つの物語は同時進行なのかと思っていたのだが、
最後まで読んでみると、
下の世界の話は時間軸でいうとラストの一瞬のこと、とゆーことになる。
しかも、本当にあったのかなかったのか、いや、あった、のか??とゆーよーな読後感。
冒頭の少年たちは紺野と高遠だろうなあっとは察しはついた。2人が再会してからの物語なのかと思ったが、
関係は既にできあがっており、再会した二人がどのような時間を過ごしてきたのか、なぜいまのようになったのかはあまり語られることはなく、
結局のところ、男2人と女2人の対立項による物語だったといえるかも。
それぞれの絆と、それぞれの過去。
そして、傷つけられた者たちが選んだ道の先にあったもの。
とりあえず、拷問やらなんやら、オソロシイことになっているので、12禁くらいでしょうか。まあ、最近はこのレベルの残酷性はどこにでもあるような気もするが・・・。
唯一の良心キャラクター水樹くん。
読み進めるうちに、どうかこの子だけは生き残ってくれ、と切に思っていたので、どうやらその願いだけは叶い、よかったよかった。
これで彼まで死んでたらどこにも救いないわー。
上の世界と下の世界、
おもしろい組み合わせのお話でした。
Posted by ブクログ
こ・・・こえぇ。
「怖さ」の定義づけをするとしたら、高遠曰くの「衣食住を奪われた時」なんだと。交差する上側と下側。ガネーシャが何者なのか。
そして、時間軸が交差しているのか、どうなのか。
ミステリっぽくもあり、バイオレンスモノっぽくもあり。
理不尽なチカラ関係が垣間見えたり。踏まれたほうは覚えているのに、踏んだほうは・・・。というのがネ。
★冲方丁「黒い季節」
Posted by ブクログ
暗い。
社会的マイノリティに焦点を当てた話なのは1/2の騎士と同じだけれど、これはさらに暗部、救いが見当たらないような、人間の醜さとか愚かさとかが溢れた悲しい話だった。。。
地下と地上の話が交互に来て、時間軸に混乱するかも。
でも、こういう話をズドンと底まで落とさず、ファンタジーな雰囲気を保ったまま終わってるのは凄いと思う。
私は嫌いじゃないな、この本。
Posted by ブクログ
『
砂の城の哀れな王に告ぐ。
私の名はガネーシャ。王の側近と騎士たちの命を握る者。
要求はひとつ。
彼ら全員の睡眠を私に差し出すこと。
』
プロローグは陰惨きわまりなく、さあこれから読もう!という気をねこそぎ持っていってしまうほど、陰鬱な虐めから始まります。
私は一度プロローグで気力を失いました。
やくざの構成員が眠ったまま死んていく。そんな事件が短期間に同じ組織内で三度も起これば誰だって警戒するし、殺気立つ。
そして幹部に送られた不可解なメール。
それはどう見ても脅迫文とは言えない、クレイジーな文。しかし、送り付けられた紺野と高遠ははっきりと脅迫文だと言い切ってみせる――
南国の鳥が異常繁殖した地方都市で始まった大量殺人事件は、ガネーシャを捜せを号令に展開していきます。
上側の世界――やくざ。血の気の多い秋庭と代行預かり水城。
下側の世界――記憶と名を忘れた女「わたし」
その三人の視点が入れ代わり立ち代わりしながら事件が真相へ突き進んでいきます。
『
<王子>には贖罪がある。<時計師>は十二時間おきに目印の燭台に火をつける。<ブラシ職人>は目印の絵を描く。<楽器職人>は三本指の奏者。<墓掘り>には守るものがある。そして<坑夫>は……。
暗渠の中で暮らす七人の浮浪者たち。
街の浮浪者の仲間に入れてもらえない彼らは、中世オランダで実在した職業名にそった仕事を<王子>に与えられ、街の下にあるという暗渠で過ごしていた――。
』
「わたし」がその七人に会えば会うほどに記憶を取り戻していく、下側の世界。
悲惨な過去がおぼろに輪郭を見せはじめ、俄かに鮮明になる怒りに、一瞬、プロローグが過ぎりました。
とにかく重苦しい作品です。ヘビー。
結末はもう予想は出来てましたが、本当にそうなるとアレな感じで。
ものすごいいきおいで人が死んでいきます。
水の時計を書いた人と同一人物とは到底思えない致死率です。
眠ってはいけない、眠ったら死ぬ――構成員たちは、襲い来る眠気と極度の緊張、沸騰しきった怒り、ぞろりと背筋を這い登る恐怖で、覚せい剤に手を出し始めたりします。
高遠の、狂った一面を見たときには嫌悪と爽快のシンメトリーに、私自身が硬直。
とにかく世界に引き込まれて、周りがどれほど喧しかろうが関係なく読める本でした。
面白かったことは面白かったのですが、読後感は、言うまでもありませんが、悪いです!
Posted by ブクログ
上の世界も下の世界にも弱者が一杯で、のっけから心が辛い。帯を見てファンタジーかと思って読み始めたのがいけなかったのか。
読み終わってから時系列に気を配ってもう一度読まないといけない本かもしれない。
Posted by ブクログ
ミステリーというか、半ファンタジー?
私が脳内で謎解きを頑張らないタイプなのでファンタジーっぽく感じるのかな?
最初は全く別世界のように思えた上の世界と下の世界の話が、ドンドン絡み合って最後に出会うのが良かったなー。
続きを期待するが故に読むのを止められない面白さ。
最後がいまいちしっくりこなかったのは、何か読み落としてるのかも。。。
時間を置いて、もう一度読むのもいいかも。
Posted by ブクログ
社会的弱者と強者ってのは、もしかすると紙一重で、ある日突然に入れ替わってしまうものなのかもしれないな。地上と地下。二つの物語が交互に語られる。地上では地方都市で勢力を伸ばしている暴力団の代行紺野の周辺で組員が眠ったまま死ぬという不可思議な「事故死」が次々と起こる。そして謎の人物ガネーシャから届く暗号めいたメール。病死か殺人か。殺人なら誰が何のために…地下では暗渠となっている古い地下施設に住み着く住人達と、そこに紛れ込んだ傷だらけの少女。狂気に見える住人達の言動。彼らはなぜ地下で棲み続けているのか、傷だらけの少女は何から逃れて地下に来たのか…二つの謎が時に近づき時に離れ、徐々に絡まり合い一つの点へと集約していく。血なまぐさく戦慄するような「戦い」が終わりを見せたとき驚愕の秘密があばかれる。あぁ、初野さん! 読んでて辛かったす。辛いのに止められなかったす。
Posted by ブクログ
ヤクザもの。
正直あまり惹かれなかった。帯に書いてある内容から、もっとファンタジックかと思ってた。唯一感心したのは殺人方法。ヤクザならではの方法だった。
Posted by ブクログ
都市の地下の暗渠には誰にも顧みられず暮らす人々。地上では異国の鳥が飛び交い脅迫メールを送りつけられたヤクザの組員が睡眠を奪われて次々と不審死をとげる。
Posted by ブクログ
地上と地下で物語が並走・リンクしていく。ばったばったと人が死んで行くのに驚いた。このリンクのしかたが面白くて、二周目に「なるほど」となる。ダークな雰囲気でちょっと怖い。
Posted by ブクログ
藍原組のヤクザが連続突然死を遂げる。眠ると死ぬ、というメッセージを残す謎の殺人犯「ガネーシャ」。
また、とある暗渠に入り込んだ「わたし」はそこで「王子」と名乗る浮浪児に助けられて・・・
二つの物語が交錯していくうちにそれぞれの真相が明らかに・・・
あらすじ適当です。
いや結構面白かったです。なんていうのかな?謎とか伏線とかがすごくいい感じのペースで明らかになっていったりするのが。時々急展開すぎてついていけなくなりそうな時はありましたけども。
Posted by ブクログ
うわー、ダメだ、この謎解きは最初っから(めんどくて)お手上げです。今ある知識じゃ太刀打ちできません。悔しい。
内容はなんか、結構救いないし、時系列こんがらがる?かも。
Posted by ブクログ
淡々と進んだ。
登場人物に温度をあまり感じなかった。
あれはガネーシャの夢だったってことかしらん。でも夢で終わるわけでもないと?
水樹が主役だったんですね…
Posted by ブクログ
テーマは社会派、なのにどことなくファンタジーな作品なのは『水の
時計』に同じです。重い現実を扱っているのに、不思議な透明感と浮遊感が物語り全体に感じられるのは作者の持ち味だと思います。こういう書き方を出来る作家さんはあまり見ないので、この路線で書いていって欲しいな。
Posted by ブクログ
ミステリーというよりハードボイルドみたい。殺人犯を追う暴力団と、暗渠に住みつく浮浪者たち。とにかく人が死ぬ。重いし暗い上に長いので、元気な時にしか読めそうにない。
2010/4/4
Posted by ブクログ
実は初野作品、未読でした。今作が最初の作品。
途中からミステリというよりはファンタジーだと意識を
切り替えて読み進めて正解だったかも。
ファンタジーというにはあまりにも黒く、哀しいストーリーでしたが
目を惹きつけて離さないオーラに満ち溢れた作品でした。
地面を境にして上下で繰り広げられる、そして、その
両方がかなり現実とはかけ離れた世界であるにも関わらず
両方のストーリーを追うことを止められない中毒性。
色々アレ? ここはどうなんだっけ? と読み返したくなる部分も
多いながら、勢いを殺ぎたくなかったので、とりあえず一気読みしてみました。
きっと自分の読み方の雑さには自信あるので、読み落としがいっぱい
あるんだろうなー。でも、そのあたりは置いておいても充分この
不思議な世界感の物語に浸った時間でした。
ちょっと...人死にすぎなような気もしますが(笑)。
Posted by ブクログ
眠ったまま死に至る原因不明の死…。勢力絶頂の地方暴力団の団員たちの間に広がっていくこの現象は、病気か連続殺人なのか?組長代行らに送られた脅迫文とも読める謎のメールとの関連は?一方、下側の世界…。身体中に怪我を負ったわたしを助けてくれた浮浪者たち。彼らは「王子」「時計師」「ブラシ職人」「画家」などの呼び名で真っ暗闇の巨大な暗渠のなかで暮らしていた。上側の暴力の世界では、高遠が仕掛ける人間同士の殺し合いの様子など残酷な場面がまず目につく。ひぃー。だが、彼らがふと漏らす話から、プロローグ以降の二人の過去---人々のどす黒い悪意に満ちた行為の犠牲となっていた子供時代---が垣間見られ、彼らの冷酷すぎる態度を裏付けているようだ。下側の不思議なルールに基づいた世界感は独特。真っ暗な状況下での独自の秩序が、ランタンで照らす一筋の道のような明るさを感じさせる。上側の世界と下側の世界がどう関わってくるのか。(これはある程度読み進めば予想できた)そして連続殺人の手口は?(読み返したら始めのほうでヒントは与えられてた。でも気づけなかった。自分が読んだ中では始めて出会った殺害方法)この2点が大きなミステリ要素といえる。読んでいる途中よりも、あとからじわじわ響いてくる感覚は、前作「水の時計」ほどではないものの、十分に大きな余韻を残した。