乾石智子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ本棚を整理した際、未読本として出てきました。
タイトルと表紙に惹かれて(本との出会いは一期一会だったりしますので)購入したものでした。それからおよそ7年を経てようやく頁をひらくこととなりました。
まず、とても読みやすいことがあげられます。翻訳ものにありがちなどことなく存在する違和感がない。最初から日本語で書かれたからであろう、異国の名称もぎこちなさを感じない。しかし日本で書かれた洋風ファンタジーのような「なんちゃって」な空気もない。遠い国で編まれた物語が長い旅路を経て届けられた重厚感がそこにある。それは筆者の圧倒的な「魔力」というなの言語力に基づくものでしょう。
本編でわたしたちは幾人もの -
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Posted by ブクログ
文庫刊行当初より、このやや妖しげで蠱惑的なタイトルに惹かれ、ずっと読みたいと思いつつ数年、やっと読むことができました。
エズキウムの地で、右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠と三つの品をもって生まれてきたカリュドウは、産婆をつとめた女魔道師エイリャに引き取られ、育てられました。
十二歳のある日、カリュドウの目の前でエズキウムの支配者にして魔道師長アンジストにエイリャが惨殺されます。
カリュドウは隣国パドゥキアに逃れ、復讐の決意を胸に魔導師の修行に励みますが、取り返しのつかない失敗を経た後に、「夜の写本師」を志すこととなります。
育ての親の復讐譚かと思えた物語は、一千年にも及ぶ、そして三つ -
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Posted by ブクログ
前回の夜の写本師から連続で読みました。
全体の構成として、主人公の人生と、主人公にまつわる人物の人生が交互に入れ替わることで中だるみなども一切なく読み切ることが出来ました。
過去と現在が行き来することで短編集を読んでいるかのような軽さと、濃厚なストーリー展開と伏線が読み終わってもしっかりと心に残り、まるでそこにいたかのような鮮明なイメージが今でも思い出されます。
景色の描写や登場人物の心情が密に表現されているのにも関わらず、ごちゃごちゃせず透き通った文章に収められ気持ちよく読めました。
作中のあるキャラクターが別の作品で主人公になりそうだなと思う場面があり、個人的に気に入っているキャラクタ -
ネタバレ 購入済み
『オーリエラントの魔道師たち』を読んでて、イスルイールってどんな人だっけと思い、再読。
テイクオク、プアダンの呪法、それに指なしカッシまで出てきて、思わず声を上げそうになる。最初に読んだときには気にも止めてなかったことが、ちゃんと別の物語の中でも活きてて、それを踏まえて読むのも面白い。 -
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Posted by ブクログ
乾石智子氏のファンタジーはすべて読んだ。
読み始めるととまらない…まるで作品そのものに
魔法が封じ込められているかのように。
正直、心がずたずたにされそうな悲しい話も
たくさんあった。
でもこれだけは言いたい。
この作品は彼女の最高傑作だと私は思う。
これまでの彼女のファンタジー作品の数々には
どこか矛盾や受け容れ難い設定や
直視できない残酷さにまみれて
どうしても好きになれないものが含まれていたが
この作品を読み終えて このような素晴らしい世界観に
包まれたエンディングなどに出会えたことの幸せが
胸の中に溢れるのをどうにもとめられず
読み終えてすぐにレビューを書いている。
繰り返 -
Posted by ブクログ
ネタバレ母にいらない子など言われ続けて育ってきたシエラが自分の境遇や憎しみなどと立ち向かい成長していく話。
楽な方向にいきたくなるのはすごくよくわかるし、わざわざ苦しい方向に進む勇気はわたしにはないなと思うので、シエラが羨ましいです。
何度も何度も誘惑されながらもいろんなひとに支えられて最後は見事に閉じることができ、イオーロともときどき会えてハッピーエンドでよかった。いずれは母と対峙するときがくるけどここまで戦ってきたシエラなら乗り越えられますね。
欲をいえば、イオーロとの関係を後日談でもう少し読みたかったような。文庫になるときは付けてくれたらうれしいです。