乾石智子のレビュー一覧
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ブク友さんの本棚で見つけた、細密画のような表紙の絵、「夜の写本師」という何とも引き込まれるタイトル。気になってしようがなかった。
右手に月石。
左手に黒曜石。
口のなかに真珠。
カリュドゥは三つの品を持って生まれてきた。
と始まる。これはもう読み進めるしかないでしょう。
そんな意味有りげな不気味な状態で生まれてきたカリュドゥ。怯える親から産婆でもあり、女魔道師でもあったエイリャがカリュドゥを引き取り、育てる。
ある日、エイリャの前に悪名高き魔道師長アンジストが表れ、エイリャと女友だちのフィンをカリュドゥの目の前で無惨に殺してしまう。
エイリャとフィンの仇を撃つことを生き甲 -
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Posted by ブクログ
ネタバレカタカナ名の沢山出てくる作品は、老化しつつある頭にはなかなか難解で、ついつい後回しにしていた。
初めのうちは何度も登場人物一覧のページに戻ったけれど、それももどかしくなるほどにぐんぐん引き込まれ、ページから目が離せなくなった。
幾つもの非現実的な場面は、美しく恐ろしく真に迫り展開され、闇も光も目の中に満ちていくかのよう。
世界一強力な悪が、深い哀しみから芽吹いたとしても、赦したり放置したりするのではなく、千年の転生の中で背負ったさらに強い闇で根絶する容赦なさ。
正義だけで出来上がったヒーローではないのが、人物像に広大な奥行きを作っている。
こう列挙しても書き切れないな。
すぐにでも再読したい -
Posted by ブクログ
ネタバレオーリエラントの魔道師シリーズの第三作。
兄弟間の争いのせいか、
道具や呪文がほとんど必要ない「大地の魔法」のせいか、
その魔法が山を吹き飛ばし、湖を創り出すような強大な魔法のせいか、
まるで神話のようだった。
そんな人間離れした物語のせいか、
このシリーズで初めてアニメ化してほしいと思った。
海に沈みし骸たちが操る船、
呪われしものが現れたお尋ね者の町の酒場、
姉の足元に隠れていた弟が正体を暴かれる場面、
亡くなった魔女の書庫を見つけた本好きのふたり。
実写化もアニメ化もしてほしくなかった「夜の写本師」と、
何が違うのかはよくわからないが、
見てみたいと思った。
ちらりと登場したエズ -
Posted by ブクログ
たぶん、ネットで見かけて。
酔った。酔わされた。
昔から車酔いにも酒酔いにも弱かったが、
この本の陶酔感と浮遊感はなんだろうか。
踏みしめている大地が、いや世界が揺り動かされたからなのか、
飛び散る血しぶきの匂いにむせたからのか、
入れ子になっている生と死を、駆け抜ける速さに振り回されたからなのか。
「魔法」やファンタジーに対する考え方だけでなく、
人生観といっても大げさではない観念を大きく揺さぶられたから、
ということなのかもしれない。
いや、もっと感情的な、驚嘆と畏怖の混じり合った何か。
あまりの衝撃に言葉にならない。
かつて子供の頃、「指輪物語」をはじめて読んだ時は、
その世界観 -
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購入済み
深い内容。
内容が深い。昨今のファンタジーのヒーローとは違い、泥塗れで闇に翻弄され苦しみながらも、そこから抜け出していく。だからといって、最後に真っ白なハッピーエンドが来ることなく、呪いを抱えたまま前に進んでいく魂を獲得する。これこそ人生。感動しました。