乾石智子のレビュー一覧
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ここで闇と呼ばれているものは何だろうと考えると、生命力そのものではないか、と思った。
大地から生える黒い樹。太古の闇。無ではなくカオスをイメージする表現だ。何もないのではなく、すべてが混沌としている。
魔導師は闇を持たなければならないと作中では言われる。魔法とは、世界に干渉して世界をーー価値をーー変容させる、意志の力だ。生きることで必然的に抱える善悪の相克を見据え、とりもなおさず自分の座標を定める、その覚悟がなければ、モノの価値を変えることなどできない。
生きているものは生きなければならない。生き続けなければならない。
どんな存在もこの世に生じた瞬間から呪縛される。生命が持つ絶対的な指向の -
Posted by ブクログ
“オーリエラントの魔道師”シリーズと銘打たれていて、 前に読んだ「夜の写本師」と同じ歴史の流れと世界観に属するこの本、紐を様々に結ぶことで魔法をかけていく紐結びの魔道師リクエンシスの冒険譚。
冒険と書いたものの派手な活劇の場面は少なく、どちらかと言えば、悠久の時を生きる魔道師の人生と彼とともに生きた人に対する振り返りのお話。
後半に行くに従って内省の色が濃くなるが、300年もの生を受け、自分より後に生まれたものに先立たれ、人生を回顧し、その生の虚しさに倦んだエンスが、再び生への執念を燃やす『子孫』や『魔道師の憂鬱』が味わい深くて良かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレディアスが国を離れてからの展開が
早すぎる気もしたが、この物語で
最も心惹かれたのは ファンズと
共に生きる北の民の限りない誠実さと
その暮らしの掛け値ない正しさ。
アラスカの原住民族から着想したのだと
思われるが それ以上の生命力と誠実さに
本当に心が洗われた。
ディアスとイェイルの交感の中で
このファンタジーを貫く生と死の思想が
幻想的に語られる。
…そんなこんなよりも気になったことを
やはりどうしても書きたくなった。
この物語に出てくる架空の食事たちが
やたらに美味しそうに見えるのですよ。
それからディアスが南に向かう時
イショーイが寄こしてくれた護衛の名は
タンダとい