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Posted by ブクログ
ブク友さんの本棚で見つけた、細密画のような表紙の絵、「夜の写本師」という何とも引き込まれるタイトル。気になってしようがなかった。
右手に月石。
左手に黒曜石。
口のなかに真珠。
カリュドゥは三つの品を持って生まれてきた。
と始まる。これはもう読み進めるしかないでしょう。
そんな意味有りげな不気味な状態で生まれてきたカリュドゥ。怯える親から産婆でもあり、女魔道師でもあったエイリャがカリュドゥを引き取り、育てる。
ある日、エイリャの前に悪名高き魔道師長アンジストが表れ、エイリャと女友だちのフィンをカリュドゥの目の前で無惨に殺してしまう。
エイリャとフィンの仇を撃つことを生き甲斐とし、カリュドウは魔道師の修行を始めるが、余りに魔力が強すぎるために写本師への道を勧められる。
カリュドウが写本師の修行を積んだパドゥキアという国は世界一の写本師のいる国。魔道師同等の魔力を持つ本を作ることができる。それが出来るのは「夜の写本師」。
カリュドウはパドゥキアでの修行を終えると生まれた国、エズキウムで「夜の写本師」になる。アンジストに仇を撃つために。
カリュドウは写本師として働きながら、書庫でせっせとある本を探す。エイリャに、全ての秘密が隠されていると言われていた「月の書」という本。やがてその本を見つけると、その本の中に取り込まれ、500年前、千年前の自分に関係するある三人の魔女たちの悲しい運命を体験する。
この本で、何より魅力的なのは、写本師の仕事の描写だ。まだ切り取られていない、一枚の仔牛皮紙を広げて、写本達はページのとり方を考えて書いていく。使うインク、ペン…写本達それぞれにこだわりの道具がある。文字の書き方や装飾模様にも写本師によって拘りがある。特に魔力をもった本を作るには、インクも何かの鳥の血となにかを混ぜたものとか、特別のものを使わねばならないのだ。そして、本の背の閉じられた部分で読者の目に入らない所(ノドのところ)の一枚一枚に写本師それぞれの印章みたいなものを書いておく。
魔道師という言葉もいい。魔術では“魔道”。“道”なのだ。何十年、何百年の修行が必要。そして、魔力を発揮するには、魔法のバトンのようなものではなく、生き物の血や骨や時には死にゆく人間の怨念までが必要なのだ。魔道師になるということは“闇”を支配するということで、“闇を支配する”ということは“闇に飲まれる”ことと隣合せであるということだ。
深い。そして文字より構築された文学の世界も救いでもあり、闇にもなる。深い。
Posted by ブクログ
たぶん、ネットで見かけて。
酔った。酔わされた。
昔から車酔いにも酒酔いにも弱かったが、
この本の陶酔感と浮遊感はなんだろうか。
踏みしめている大地が、いや世界が揺り動かされたからなのか、
飛び散る血しぶきの匂いにむせたからのか、
入れ子になっている生と死を、駆け抜ける速さに振り回されたからなのか。
「魔法」やファンタジーに対する考え方だけでなく、
人生観といっても大げさではない観念を大きく揺さぶられたから、
ということなのかもしれない。
いや、もっと感情的な、驚嘆と畏怖の混じり合った何か。
あまりの衝撃に言葉にならない。
かつて子供の頃、「指輪物語」をはじめて読んだ時は、
その世界観に圧倒されながらも、それは受け入れるものだった。
時を経て、幾多の物語を読みながらも、
これほどに酔うことができて、しびれるほど幸せだ。
Posted by ブクログ
文庫刊行当初より、このやや妖しげで蠱惑的なタイトルに惹かれ、ずっと読みたいと思いつつ数年、やっと読むことができました。
エズキウムの地で、右手に月石、左手に黒曜石、口の中に真珠と三つの品をもって生まれてきたカリュドウは、産婆をつとめた女魔道師エイリャに引き取られ、育てられました。
十二歳のある日、カリュドウの目の前でエズキウムの支配者にして魔道師長アンジストにエイリャが惨殺されます。
カリュドウは隣国パドゥキアに逃れ、復讐の決意を胸に魔導師の修行に励みますが、取り返しのつかない失敗を経た後に、「夜の写本師」を志すこととなります。
育ての親の復讐譚かと思えた物語は、一千年にも及ぶ、そして三つの石にまつわる3人の女魔道師が関連する、壮大な魔法と復讐の物語へと展開していきます。
魔道師同士の戦いの描写は残酷で血腥く、目を背けたくなる描写も多々あり、全編を通して流れるダークな雰囲気にも慄かされます。
ただ、それにも増して、カリュドウ自身とその復讐の行く先が気になって、夢中になって読ませられてしまいました。
ラストに出てきた少女は、そんな物語の中での、期待と希望の象徴ということになるのかなぁ?
素直に続いていく話とは思えないけど、「オーリエラントの魔道師」シリーズ、続けて読んでみたいと思わされました。
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