芹澤恵のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
23編収録の短編集。
これは日本人男性作家じゃ書けなかった作品だな、とそれぞれの短編を読んでいて思いました。アメリカの様々な姿を舞台にしている、というのもその一因ではありますが、一番の理由は話の内容です。短編という制約があるからかもしれないですが、一切の迷いや、ややこしい表現もなく、ストレートにハッピーでロマンティックなエンディングを用意、男女の愛の成就を描く点です。
イメージですが日本の恋愛ものは、一直線に愛の成就を描くのではなく、良くも悪くもうじうじした男女が右往左往し、言外にメッセージを込めつつ恋愛を成立させる、というイメージがあります。O・ヘンリーの作品たちはいい意味で非常に分かりやすく恋愛に向かっていきます。それがロマンティックさの理由のように思います。
そうしたロマンティックさのイメージと裏腹なシニカルな短編も何編か選出しているあたりも、この短編集の良さだと思います。作品集の最後に近づくにつれ「また幸せな結末だろうな」と油断しながら読んでいて見事に転ばされたことが何度かありました(笑)
しかし、それを最後の『賢者の贈り物』でチャラにするどころか、見事にロマンティックさを取り戻します。これは作品の並び順も結構計算されているのかな、と考えてしまいますね。
このロマンティックさは、有川浩さんファンの方が読んだら案外はまるんじゃないでしょうか? 一編一編のページ数も少なめでとっつきやすいと思うので、いろんな女性層に読んでもらってときめいてほしいな、と思いました。 -
Posted by ブクログ
フロスト警部、第5弾。
今回は1月です~いつも冬なので、タイトルが区別しにくいけど。
猥雑だけどあったかい、テンポのいい展開は、安心して読めます。
楽しみにしていました。
いつも同じよれよれのレインコートにえび茶色のマフラーという格好のフロスト警部。
だらしなくて下品なジョークばかり飛ばし、年中サボリたがっているが、いったん事件となれば被害者にも加害者にも(ダメ警官にも!)人間らしい目を向ける。
頼りになる叩き上げの人情警官なのだ。
アレン警部の留守に代理となっているリズ・モード警部代行は、若くて美人、まだ捜査は新米だが仕事熱心な野心家。
万年巡査部長のウェルズとはいがみ合う関係。
フロストが「張り切り嬢ちゃん」と呼ぶリズは捜査の指揮を執りたがっていて、フロストはいつでも喜んで仕事を譲り渡そうとしているから争いにはならない。リズはある事情を抱えていて‥
気取り屋の署長マレットは現場のことはわからず、会議に出ては上層部にいい顔をして人員を回してしまう。
おかげで、デントン署は圧倒的に人手が足りない。
行方不明の少女の事件は解決しないまま、娼婦殺しは連続事件の様相にと事態はかなり深刻。
怪盗枕カヴァーというふざけた事件に、ショットガンを振り回して自分も撃ったらしい強盗。酔ったフーリガンの一団を他署の依頼で署長が受け入れてしまったために、署を占拠する有様になったり。
部下のモーガンはおそろしく無能で、辞めさせたほうがいいのではと思うほど。憎めないキャラだけど、あちこちで彼のミスがとんでもないことに‥
事件は絡み合って、ひょんなことから解決したりするので、何が幸いするか、まだわからない!
フロストの采配は?
下巻も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
好きだなあ、フロスト。何でこんな、二言目には(いや一言目から)下ネタセクハラ発言ばっかりのさえないオヤジが好ましいのか、自分でもわからん。この新作は本当に楽しみにしていて、一気読みできる日まで寝かせておいたのだ。
で、フロストは相変わらずフロストだった。捜査は行き当たりばったり、大嘘ついて自白を迫り、くだらなーいジョークを連発し、不眠不休のワーカホリック、よれよれの風体で顰蹙を買いまくる。このシリーズはどれもいわゆるモジュラー型で、大小取り混ぜいろいろな事件が起こるのだが、今回はシリーズ最長だそうで、次から次から事件のてんこ盛り、デントン署は大忙しだ。
もちろん最後にはどれも解決するわけだけれど、別にフロストの推理がさえていたからとか、勇敢な行動があったから、というわけではない。そこが面白い。勝手に犯人の方から自白してくれたり、棚ぼた式に一丁上がりとなるものもあったりして、ニヤニヤしてしまう。どの「真相」もなるほどと思うもので、まったくうまい。
もちろん、そうして「解決」するのはちいさなヤマで、娼婦を狙った連続殺人事件と、子どもの行方不明事件はそういうわけにはいかない。ここではフロストの直感と、絶対に諦めないブルドーザーのごとき突進力がものを言う。今思ったのだが、あの刑事コロンボをうんと下品にして、名推理を抜いて、後先考えない行動力をくっつけたら、フロストのイメージに近いかも。いやあ、とんでもないな。
それにしても、読むことそのものがこれほど楽しいミステリーもそうはない。大小の事件の決着がどうなるかという興味だけではなくて、フロストの言動一つ一つに、おかしさと人間味があって魅力的だ。フロストが、殺された旧知の売春婦セアラの若い日のことを語る場面と、九死に一生を得たリズ・モード警部代行に示した思いやりが心に残った。 -
Posted by ブクログ
上下巻まとめて。
久々の新刊です。やっぱりおもしろい!でもデントン署にフロスト警部一人ってちょっと人員少なすぎでしょう。そりゃあいろいろ手が回らなくても仕方ない。仕方ないけど世論は行方不明の少女誘拐事件や娼婦連続殺害事件の解決を今か今かと待っている。事件解決は早くて当たり前で早すぎるということはなく、被害者が出た時点で遅すぎるのだから警察官というのは難儀な仕事だなあと思います。
今回はうるさ型の理解のない、実に利己的で鼻持ちならない上司に加えてことごとく足を引っ張る部下まで追加されてそれでなくても大変なフロスト警部さらに大変な事態に。おまけに自殺まで出ちゃうし。でもフロスト警部が見せるわかりやすい正義感と被害者と犯罪者に同様に向けられるシンパシーというかいたわりの感情にぐっとくるのです。こういう警部なら本音を話せるのかもしれない。間違っても犯罪を犯して露見した際、マレットさんには担当していただきたくないですが。(まあマレットさんなら露見しないかもしれませんが)
最後はりきりお姉ちゃんの私生活も少しうまくいきそうでよかったかな?続きも楽しみですが…最後の一冊になるかと思うと寂しいです。