阿部暁子のレビュー一覧
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『なんて素敵にジャパネスク』を愛読した者としては似たテイストの作品で、ある種の懐かしさを感じながら読み進めた。
背後の歴史的背景を踏まえつつ北朝・南朝方の登場人物がそれぞれ丁寧に描かれており、彼らの信念や想いもきちんと伝わってくるため、皇女が吉野を抜け出して敵地の都に単身乗り込むというラノベ展開ではあるけれど、大人でもエンタテイメントとしてそれなりに楽しく読み進められると思う。
どちらかが絶対的な悪というわけではなく、北朝・南朝共にそれぞれの立場・信念・事情があり、その中でそれぞれが精一杯己の信じるものに従って行く。その過程で多くの人が争い、そしてそれが生み出す悲劇を主人公の皇女は目の当たり -
Posted by ブクログ
ネタバレ冒頭の数頁までは室町時代に舞台を借りたライトノベル調の内容が展開されるのかと思ったが、いい意味で予感が外れた。特に中盤以降、犬夜叉(世阿弥)や義満、楠木正儀などの登場人物たちが主人公のおてんば皇女・透子に対して語る内容は、南北朝末期の二朝の対立や陰謀渦巻く幕府の内情、民衆文化の盛り上がりなど、当時の世相を踏まえよく練られているように思う。
北方謙三の楠木正成、北畠顕家(破軍の星)、懐良親王(武王の門)を読んだ後に本作を読んだことで、南北朝時代のおおまかな展開を最初からほぼ最後まで追うことができ、1本の糸がつながったような印象。そして南朝びいきになった(笑)
カバーの可愛いイラストからライト -
Posted by ブクログ
「香り」で謎解き、というのが面白い。
鎌倉を舞台に、香りに鋭敏な少女が身近な謎に関わっていくシリーズ、1作目です。
高校生の咲楽香乃は、香り専門店『花月香房』の店主の孫で、土日は店にも出ています。
香乃には、香りで人の感情を感じとる不思議な能力があるのですが、そのためにいろいろあって親元を離れ、祖母と暮らしていました。
大学生の雪弥は、土日はバイトに来ている大学生。
二人は子供の頃からの付き合いで、香乃の想いは伝えられないまま、静かに時を育んでいます。
店に来た人のために尽力していると、特殊な能力を生かすことが出来る場合もあります。
感情がわかるだけで、すべてが見えるわけではないのですが。 -
Posted by ブクログ
高橋さんの話が本当に良かった!いつもにこにこ笑っているけどその裏にはいろんな事情を抱えていて、でも周りの家族や友達がいたから笑ってられるんだと思いました。それと同時に雪弥さんが高橋さんのことを誤解というか、こういう人だと知らず知らずのうちに決めつけてしまっていたことで受けるショックも大きかったんだろうなと思います。それでも雪弥さんが高橋さんの友人でいたことは大きかったと思います。いつも笑っていられる人は強い人。
それと文化祭の染師の方の話がぐっときました。花はまだ咲かなくても茎にはその色が詰まっていることは初めて知ったし、希望ある言葉だと思います。