あらすじ
東京パラリンピックまで、あと数ヶ月。車いすテニス選手の宝良は女子の代表候補として注目を集めるが、昨年末から不調が続き苦しんでいた。勝利を掴むため、宝良は親友の百花が働くメーカーの競技用車いすを採用。夢に向かい努力する百花や小学生みちるとの交流を経て、競技への思いを強くする宝良。そして、世界の強豪選手が勢揃いするアジア最高峰の大会ジャパンオープンの幕が上がる! 感動の青春スポーツ小説!
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Posted by ブクログ
Side百花の続編。そして車椅子テニスプレイヤーの宝良目線でのお話。
試合の臨場感が伝わる。テニスをやっていたからかな。実際に見てるくらい、応援しながら読んでいた。
女王との試合が終わった後の2人のやり取りに涙。お互いをヒーローとして尊敬できるなんて素晴らしい関係性だな。
新しいコーチもいいキャラしてる。
Posted by ブクログ
2冊セットの物語。主人公は車椅子テニスをつくる百花(ももか)と、車椅子テニスで活躍する宝良(たから)のそれぞれの視点から書かれたもの。
2人は中学高校の同級生。大人しく友達のいない百花と、テニス部でインターハイまで出場する宝良が何故か友達になる。2年の時、交通事故で脊髄損傷し、車いすでの生活を余儀なくされた宝良を救ったのは、百花が勧めた車いすテニス。
宝良は日本代表チームに選出されパラリンピック出場を目指し、百花は競技用車椅子をつくる会社に入り、宝良のためにエンジニアとなる。
Side百花では百花が車椅子エンジニアとして成長していく一方で、宝良が世界ランキングの選手に駆け上がっていくのが描かれ、Side宝良では世界大会で宝良が繰り広げる試合の様子、またそれを見守る百花やお世話になった人たち…この2人のピュアさに10回は泣かされました。
素晴らしい、素敵な小説です。
Posted by ブクログ
あなたは、『一般テニス』と『車いすテニス』の違いを知っているでしょうか?
小田凱人選手の活躍もあって、広く世の中に知れ渡った『車いすテニス』。時速130キロにもなる球を打ち返すだけでも凄いことなのに、選手は『車いす』を操作しながらラケットを振っています。これはやれと言われてできるものではありません。その裏にどれほどの練習の日々が必要とされるのか。考えれば考えるほどに驚くべき舞台裏が想像もされます。
“ツーバウンドでの返球が認められるなどの多少のルールの差異を除けばほぼ一般テニスと変わらない”
冒頭の質問に対する答えがこれです。なんとバウンド一回分の差しかないという『車いすテニス』。そんな事実を知れば知るほどに興味は増すばかりです。では、そんな『車いすテニス』の舞台裏にはどのような世界があるのでしょうか?コートの上を縦横無尽に『車いす』を操る選手たちは、どのような思いを胸にプレーし続けているのでしょうか?
さてここに、一人の『車いすテニスプレイヤー』に光を当てる物語があります。交通事故により、それまでの『経験を一度すべて捨てて、何もかも最初からやり直して』、『車いす』でプレーする主人公を描くこの作品。そんな彼女を支える『車いすエンジニア』の存在にも光が当たるこの作品。そしてそれは、「パラ・スター」という二冊で一つの物語が描く”スポーツ小説”な物語です。
『鼓膜を引き裂く急ブレーキ音に足をすくませた瞬間、トラックのヘッドライトに目を焼かれ、まっ白に塗りつぶされた一瞬の中でものすごい衝撃に撥ねとばされた』。『落ち着け。夢だ。あの事故は五年も前のことで、私はちゃんと生きている』と、『額に冷たい汗がにじむ』中に『ベッドの真上の天井を凝視』するのは主人公の君島宝良(きみじま たから)。そんな宝良が『冷えきった手を動かし、自分の右大腿部にふれ』、『爪を立てるように力を入れても、痛みは感じ』ません。『最悪の気分を断ち切るために大きく息を吐き、身体を起こす』宝良は、『起床後にまず行わなければならないのが排尿…』と『毎朝のルーティン』をこなします。そして、『いつもなら練習用のウェアに着がえるところを』『パンツスーツを出し』た宝良。『急なことで恐縮ですが「スカイウォーク」様より取材依頼があり、一月二十四日にお時間を取っていただくことは可能ですか?』と『SCCトレーディングの広報担当、諫見から』連絡を受けた宝良は、自ら車を運転し、渋谷にある会社へと向かいます。『SCCトレーディングに「アスリート採用」枠で入社したのは二〇一八年。奇しくも百花が藤沢製作所に就職したのと同時期のこと』という宝良。『競技生活者なら誰でも直面する問題、つまりは金』、『とにかく競技生活にかかる費用には際限がない』という中、『日本車いすテニス協会の強化指定選手になっ』たものの『それだけでは心もとない』と悩む宝良は、『障がい者スポーツ選手の雇用サポートを行っている会社を紹介され』『SCC』に採用されました。『遠征費用の心配をすることなく一年を通してツアーを転戦できるようになった』という宝良は『年に数回』、『出社して業務に当た』ります。そして、始まったインタビューで『テニスを始めたきっかけは』、『東京パラリンピック開幕まであと七カ月…現在の心境は』等、さまざまな質問に答える宝良。『東京パラの代表選手』に『選ばれるように、三月から本格的に始まるツアーを戦っていきたいです』と決意を語る宝良ですが、『ただ』と言葉を添えます。『最有力候補と期待していただけること自体はうれしいですが、今の自分には不相応とも思います。このところ、満足のいく戦績をまったく残せていない状態ですので』と続ける宝良は、『まるで泥沼にはまりこんでしまったかのように、一試合も勝てない日々』を送っています。そして、インタビューを終えた宝良。
場面は変わり、『ひさしぶりだな』とコーチの雪代とカフェで会話する宝良。肺がんを患い休職している雪代に、復帰されたら『また私とテニスをしてもらえますか?』と訊くも『無理だ』と答える雪代は『俺とは違う考え方とやり方でテニスを見つめてくれる人間と組んだほうがいい』と言うと志摩コーチの名前を出します。『がんばれ宝良』という言葉が『さよなら宝良、と言われた気がした』宝良。
再度場面は変わり、『とにかく志摩と話そう』と結論を出した宝良は、『昭島駅近くの居酒屋の個室で彼と向き合う段に』なります。いろんな会話をする中に志摩はこんなことを言い出します。『今のあんたの能力に、今の車いすって合ってるのかな』。タブレットを操作する志摩は『とある企業のホームページ』を表示させます。『車いすメーカー藤沢製作所株式会社』と表示された画面を指し、『ちなみにこの藤沢製作所は千葉県の ー』と語り始めた志摩の言葉を『いえ、知っています。…よく』と遮る宝良は、『なにせ、十年来の友人の職場だ』と思います。新たに志摩をコーチに迎え、そして百花が働く『藤沢製作所』の車いすを携えて、来たるべき『東京パラリンピック』出場を見据える『車いすテニスプレイヤー』宝良の苦闘の日々が描かれていきます。
“東京パラリンピックまで、あと数ヶ月。車いすテニス選手の宝良は女子の代表候補として注目を集めるが、昨年末から不調が続き苦しんでいた。勝利を摑むため、宝良は親友の百花が働くメーカーの競技用車いすを採用。夢に向かい努力する百花や小学生みちるとの交流を経て、競技への思いを強くする宝良。そして、世界の強豪選手が勢揃いするアジア最高峰の大会ジャパンオープンの幕が上がる”と内容紹介にうたわれるこの作品。2020年2月20日に「パラ・スター」と名付けられた作品が刊行され、一ヶ月後の3月19日にやはり「パラ・スター」という書名でこの作品が刊行されています。その違いは書名に付された「Side 百花」、「Side 宝良」という記載です。そうです。これら二つの作品は二冊で一つの作品となる続編ものなのです。しかし、「Side 百花」のレビューにも記しましたが、内容紹介を含めどこにもこの説明がなされていないため注意が必要です。このレビューを読んでくださってこの作品に興味が湧いたという方は
「Side 百花」→「Side 宝良」
この順で作品を手にしてください。逆順でも楽しめないこともないかもと「Side 百花」のレビューには記しましたが、両作を読み終えると、もうこの順以外には考えられないことがよくわかりました。圧倒的な感動を呼ぶこの作品の結末を味わうためにも、あまのじゃくな気持ちを起こされずに(苦笑)、この順番でこれら二つの作品を手にしていただければと思います。
さて、そんな二冊で一つのこの作品は、書名に付された二人の女性に順番に光が当てられていきます。このレビューでもまずはこの二人をご紹介しておきましょう。
● 二人の女性主人公について
・山路百花: “短大の健康科学部”を卒業後、『車いすメーカー藤沢製作所』に就職。”日常用車いす”を製作する”第一工場”に一年勤務した後、”競技用車いす”を製作する”第二工場”に異動。
→ 『車いすエンジニア』になることが夢
・君島宝良: “高校二年の秋”、”帰宅途中にトラックに撥ねられ”、”脊髄を損傷して””へそから下の感覚”を失う。元々『テニスプレイヤー』だったこともあり『車いすテニス』の世界へ。
→ 『車いすテニスプレイヤー』としての活躍が夢
百花と宝良は同じ高校の『テニス部』だったという接点を持ちますが、その繋がりがどのように築かれていったかは「Side 百花」に詳述されており、この作品には一切触れられていません。私は「Side 百花」のレビューでこの作品が”青春物語”でもあることに触れました。阿部暁子さんと”青春物語”の相性は抜群であり、その視点からも素晴らしい作品世界がそこに展開しています。また、百花に光を当てる「Side 百花」であるが故に『車いすメーカー藤沢製作所』で働く百花の”お仕事小説”の側面を強く感じる物語が描かれていました。一方で、この「Side 宝良」は『車いすテニスプレイヤー』の宝良に光が当たる物語ではありますが、百花も登場するため、『車いす』の”お仕事小説”の一面も見ることができます。では、『キャスターがちょっと調子悪いみたいで。見てもらえますか?』と依頼を受け、『車いす』に向き合う百花の描写を見てみましょう。
『まずは外観から点検していく。車輪外側のゴム部分やホイール部分に損傷は見られない。ただ若干糸くずのようなゴミが絡まっている…小さなゴミがキャスターの中心部に入りこむと不調の原因にもなる』。
↓
『ベアリングをとり出し、指先で外輪をつまみつつ、内輪をつついて動きを確認する。かすかに、みそ汁のあさりを食べて砂を嚙んだ時のようなジャリッとする感触がある』。
↓
『ベアリングの動作に違和感がありますし、若干ですが変色も見られます。ベアリングを交換するべきと思うのですが』
『腕組みして監督している小田切を見上げ』ながら作業を進める百花が描かれるこの場面。「Side 百花」の物語の先に、経験を積み重ね、確実に成長を続ける百花の姿を見ることができる物語は、「Side 百花」で彼女に感情移入した読者にはたまらないものがあると思います。しかし、この「Side 宝良」の中心に描かれていくのは圧倒的に”スポーツ小説”としての側面です。私は今までにも”スポーツ小説”を多々読んできました。その中で一番多いのは、”駅伝”を描くものです。瀬尾まいこさん「あと少し、もう少し」、額賀澪さん「タスキメシ」、そして三浦しをんさん「風が強く吹いている」といった”駅伝”を描く物語を読むと”駅伝”と小説の相性の良さを強く感じます。また、その他のスポーツとしては、自転車ロードレースを描く近藤史恵さん「サクリファイス」、カヌーを描く武田綾乃さん「君と漕ぐ」、そして競歩を描く額賀澪さん「競歩王」と、日本ではメジャーとは言えないスポーツの面白さに光を当てる物語は、この国では陽の当たらないスポーツに意識を向けるきっかけを与えてくれるものがありました。その一方でこの作品が描くのは『テニス』です。野球やサッカーほどではないにせよ『テニス』はこの国で人気のあるスポーツのひとつであることに意を唱える方はいらっしゃらないでしょう。しかし、この作品にはその名前の冒頭に三文字がつけ加わります。『車いす』です。そうです。この作品では、『パラスポーツ』としての『車いすテニス』の世界が描かれていくのです。
この作品で主人公となる君島宝良は元々『テニス』のインターハイに出場するほどの実力を持った高校生でした。しかし、交通事故によって『脊髄を損傷』し、『車いす』が彼女の足代わりになった今を生きています。下半身が動かなくなった衝撃と、そこからの立ち直り、そして『車いすテニス』との出会いは「Side 百花」でたっぷりと描かれています。そして、続編となるこの「Side 宝良」で描かれるのは上記で挙げた他の”スポーツ小説”と同じく、勝利を目指して自らの感情と向き合い、苦悩の日々を送る宝良の姿を描く物語です。
『先は見えない。どこまで進めているのか、本当に進めているのかさえもわからない。けれどそれでも、這いずるように進むしか今できることはない』。
物語には、「Side 百花」で描かれた交通事故によって下半身の自由を奪われた宝良が苦悩の日々の先に『車いすテニス』に出会い、『「彗星のように現れた新鋭」とか「スーパールーキー」とか「氷の王女」とかいろいろ言われ』る中に、衝撃的なデビューを果たしたことが語られています。
『初出場の全日本マスターズでいきなり最上涼子選手を破って準優勝。二〇一七年にはマスターズは3位となり』、『国内ランキングでは2位、世界ランキングは14位に急上昇』。
『テニス』の経験者とは言え、『一般テニス』と『車いすテニス』では求められることが大きく異なります。その両者を知る宝良の言葉にそのことが記されています。
・『車いすテニスもテニスです。でも同時に、一般テニスとはまったく別の競技でもあるとも思っています』。
・『車いすテニスを始めたばかりの時は、ラケットを持ったまま車いすを動かすことさえ困難でした』。
・『経験を一度すべて捨てて、何もかも最初からやり直して、そうやって「車いすテニス」というテニスがようやくまともにできるようになってからです、昔の経験を生かせるようになったのは』。
昨今、小田凱人選手の世界的な活躍もありテレビなどで『車いすテニス』の試合の様子を見る機会も格段に増えました。「Side 百花」で語られた通り、
“ツーバウンドでの返球が認められるなどの多少のルールの差異を除けばほぼ一般テニスと変わらない”
それが、『車いすテニス』の世界です。足を使うことができない中、両手だけで『車いす』を操作しながら、ラケットでボールを打つという一連の動きが要求されるスポーツはそう簡単にできることではありません。この作品では、『車いすテニス』の世界で生きることを決め、『商品の輸出入を手掛ける専門商社』である『SCCトレーディング』に『「アスリート採用」枠で入社』、『一年じゅう世界各地を転戦』する日々を送る宝良の姿が描かれていきます。そんな宝良は、作品冒頭で『まるで泥沼にはまりこんでしまったかのように、一試合も勝てない日々』を送っていることがまず描かれます。そして、「Side 百花」でタッグを組んできたコーチの雪代から離れ、新たに志摩をコーチとしてタッグを組んでいく宝良の姿が描かれます。そこに、この作品を愛するすべての読者が待ちに待ったであろう瞬間が訪れます。
『今のあんたの能力に、今の車いすって合ってるのかな』
そんな志摩の言葉の先に百花が勤める『車いすメーカー藤沢製作所』に『車いす』を発注することになる展開です。この展開の先にどのような未来が待っているのか、これはこの作品の一番のお楽しみです。ここではこれ以上の詳述は避けますが、作者の阿部暁子さんは読者が懸念するような安直な展開をそこに用意されたりはしません。強い説得力のある穏当な展開の先に感動的な物語が描かれていきます。そして、それ以上に圧巻なのが〈第4章〉をまるまるかけて描かれていく『二〇二〇年度飯塚国際車いすテニス大会、通称ジャパンオープン』の場面です。少し見てみましょう。『歳は宝良より三つ上で、国内ランキング3位、世界ランキング13位』という彼女のライバルの一人である最上涼子とのプレーです。
『最上が高々とトスを上げた瞬間、宝良はハンドリムをプッシュして走り出した。まっすぐで迷いのない美しいトスから、最高のサーブを叩きこんでくることはもうわかっていた』。
↓
『パァン、と響きわたった美しい打球音。火花が散るような速さで飛来する黄色の球。データと理論を重んじる志摩の予言が的中した。センター。渾身の力でリムを押す』。
↓
『繊細な調整を重ねて身体の一部になった車いすは意識を共有しているように望んだポジションに運んでくれた。肉薄する球。ラケットを振る』。
↓
『どんぴしゃ。インパクトの瞬間、確かな手ごたえがあった。球は狙いどおり最上がいるのとは真逆の左サイド奥深くへ』。
↓
『だが最上もこちらの狙いを読んで、すでに球の軌道上へ走っていた。瞬時に球に追いつき、バックハンドで強打。標的はこちらのがら空きの左サイド、しかもベースラインぎりぎりのコーナーを狙った超攻撃的ショット』。
↓
『猛然とリムを押して球を追い、間合いに入ると同時にラケットを振る。ダウン・ザ・ラインを抜くつもりだった』。
↓
『左のリムをもう半プッシュし、手首をひねりながら力ずくで球の軌道を変える。最上の左サイド前方に刺さった球は、大きく弾んでコート外に転がった。「0 ー 15」』
手に汗握るような試合の場面がひたすらに描かれていくのはまさしく”スポーツ小説”の醍醐味です。「Side 百花」でも試合の場面は描かれていますが、内容、分量共に圧倒的に「Side 宝良」が上です。『車いすエンジニア』を目指す百花の”お仕事小説”の側面を前面に出す「Side 百花」とこの作品では、作品としての役割分担が上手く整理されているとも言えます。どちらが上、下といったことはもちろんありません。「Side 百花」の物語があってこその「Side 宝良」であり、その逆もまた然りです。そういう意味でもやはりこの作品は二冊で一つ、どちらも欠くことはできない物語、そういう言い方はできると思います。
そして、そんな物語は、宝良の『車いすテニスプレイヤー』としての日々を描いていきます。
『たーちゃんはパラリンピックにも出るくらいの、最強の車いすテニス選手になって。わたしは、たーちゃんのために最高の車いすを作るから』
百花との約束の先に『車いすテニスプレイヤー』として『世界各地を転戦』する日々を送る宝良ですが、そこには乗り越えるべきライバルの存在が浮かび上がります。
『宝良は息を吸い込み、動揺を呼気と一緒に吐き出した。いや、相手は女王だ。今さらどんな神技を見せられても驚くことはない。ただ、持てる限りの力で戦うだけだ』。
それぞれが全力でぶつかる試合の場で繰り広げられる真剣勝負の中で全力を賭して試合に臨む宝良。上記した圧巻の試合の場面が描かれていく一方で物語は宝良の心の声を拾ってもいきます。
『だからモモ、あんたのために戦うとは決して言わない。私は、私が勝つと泣きそうになって喜ぶあんたを見たい私のために戦う…私は、誇りを持って生きたい自分のために戦う』。
その一方で、もう一人の主人公である百花にも視点は移動します。そこには、百花の思いが描かれます。
『あなたが乗るその車いすは、あなたが誰よりも速く、誰よりも自由に走れるように、エンジニアがあらん限りの力を注いで作り上げたあなただけのマシンだ。あなたがどんな動きを求めようと必ず最後まで応え抜く。だから走って、どうか諦めずに』。
試合には勝者と敗者が必ず生まれます。この二冊で一つの物語の結末に阿部暁子さんがどのような結末を用意されるのか。物語は、宝良の、そして百花の思いの先に極めて密度の高い物語が展開していきます。そんな物語が至る結末、そこには『車いす』にそれぞれの立場から思いを込める人たちの熱い、熱い想いを感じる物語が描かれていました。
『私は、車いすテニスプレイヤーとして生きる…ひたすらに球を追い、打ち返し、どれほど必死になろうとも無駄になどならない相手と対峙する時、私の命は報われる。一度は遺えかけた私の命を、生きる意志を、必死に取り留めようとした人たちに、報いることができる』。
そんな思いの先に『車いすテニスプレイヤー』として試合に臨んでいく宝良の姿を描くこの作品。そこには、百花との約束の先に『車いすテニスプレイヤー』として生きることを選んだ宝良の人生をかけた物語が描かれていました。『障がい者』と『パラスポーツ』の存在に目を向けさせてくれるこの作品。”スポーツ小説”として『車いすテニス』に圧巻の読み味を提供してくれるこの作品。
『車いす』に込めるそれぞれの想いを感じる物語。胸を熱くさせられる瞬間が何度も押し寄せる、これぞ傑作だと思いました。
Posted by ブクログ
パラ・スター百花と対になる作品。百花編ではわからなかった宝良の内面が描かれ、車いすテニスにかける思いが伝わってきました。後半の試合描写は、映像が現れ、リアルな試合を観戦しているような気持ちになりました。
Posted by ブクログ
パラスター、side宝良です
(まだside百花を読んでない方はそちらから読んでください!)
あぁ、、、胸熱!!!でした
2冊目ということですでに設定も登場人物も把握できてるし、すぐに物語に引きこまれました。(だからシリーズものとか続編って好き!!)
スランプに陥る宝良。
百花目線では、かっこよくて完璧な宝良の、見えなかった迷いや葛藤が明らかになります。
宝良の目線ということでテニスの試合の場面が多いです。
この試合の描写がすごい。
まるで試合を見ているかのようでした。
いや、たぶん実際にテニスの試合を見ても私はちんぷんかんぷんなので、それより試合を楽しめたと思います。
あんまりテニスって見たことないんです、、、いやあんまりっていうかほとんど見たことないんですけど、ものすごい試合長いんですね(そこからかい)
その長時間の試合の中、体力も精神力も保つのは並大抵のことじゃない、、、すごいです。
もうね、最後はめちゃくちゃ泣いてました。
すごく読みやすいし、物語の流れとか、展開とか、予想通りに進むけど、それでもただただ胸が熱くなりました。感動しました。
出てくるキャラクターもいいんです!
それぞれ熱い思いがあって、こっちまで胸が震えます。
いやーいい作品だった!!!
ひま師匠、まきさんありがとうございます♪
もう少し阿部暁子さん追いかけます!!!
Posted by ブクログ
手に汗握る!
いやぁ、ね?
すごいよね
文字だけで手に汗握るってすごいよね
臨場感がエグい
やっぱりね
スポーツものはね
結局なんだかんだ言って試合の描写が全てですよ
ここがショボいと感動も何もあったもんじゃないですから
ここでテンショングワーッと上げてくれないと
感動しませんから
試合に向かって行くところの盛り上げも含めて
めちゃくちゃ良かった
アスリート同士のこのガチコンな感じ
夢と夢がガチコンってぶつかるのよ
いいね〜
譲れない夢を持った同士のガチコンね
いやだからガチコンって何よ!
Posted by ブクログ
パラスターの宝良編。宝良中心に進展していく。東京パラリンピック出場を目指す宝良であるが、不調が続いており、ついに百花の働くメーカーで車椅子の改良を頼むことになる。
涙腺崩壊間違いないですね。
Posted by ブクログ
車椅子テニスだから、しょう害があるから「かわいそう」と決めつけたストーリーではなく、もがき苦しみながらも前を向く宝良の姿に胸が熱くなりました。
高校生のときに事故で突然車椅子の生活を余儀なくされた。
それでもすがるような「テニスを続けたい」という声に全力で応えるコーチ、一番の友人でありファンであり続けてくれる友人、そして元々のコーチが勇退し想いを引き継ぐ新たなコーチ。
主人公が心の強い人だということもあるけど、周りの素晴らしい人たちの力も感じました。
Posted by ブクログ
Side百花に続いて、興奮と感動の後編です。みんな心に弱さを抱えながら、そして支えあいながら、前を向いて頑張っています。障害の有無と関係なく、力と勇気をもらえる一冊でした。単なるスポーツ、単なる困難を乗り越える小説かと思いながら手に取りましたが、傑作でした。最後の大盛り上がりのゲームの前から、涙が止まらないシーン満載でした。
Posted by ブクログ
文句なしで本当に面白かった!!!。
宝良の少し不器用で、でもテニスに対してはものすごいストイックなところがとても愛おしく感じた、そして前回の主人公である百花との友情がとても素晴らしかった。
2巻通して感じたこととしては、今回の登場人物の多くが根から悪い人間がいないというところだと感じた。人生を生きる上で、どうしても悪い人間に出くわしたりそれによって自分の気分が害されたりすることが多々ある。ましてや勝負の世界ともなればそのような事は日常茶飯事だろう。しかし、今回の登場人物は口こそ悪いものの自分の信念を全うし(不器用なところは多々あれど)、戦い抜いているというところがこの二つの小説のキャラクター達にはある。そんなところがこの小説をより面白くする仕掛けなのかもしれない。
最後にもし彼女たちの物語に続きがあるならば是非読んでみたいと感じた。
最後にこの小説をアニメ化したときの声優陣を自分なりにキャスティングしてみたので読む際に参考にしてください。
山路百花:安野希世乃
君島宝良:小松未可子
小田切夏樹:細谷佳正
雪代和章:関俊彦
志摩:榎木淳弥
藤沢由利子:園崎未恵
君島紗栄子:椎名へきる
七條玲:上坂すみれ
ローラ・ギーベル:村川梨衣
最上涼子:遠藤綾
三國智司:杉田智和
佐山みちる:小原好美
佐山佳代子:平野文
Posted by ブクログ
とっても良かったです
オリパラで盛り上がっている時に書店に並んでいるのが目に入って興味本位で買ってみたのですが、正直当たりだったなと思いました。
パラリンピックを観て、この2冊(side百香とside宝良)を読み終わって、見る世界がちょっとだけ広がったように感じます。
青春スポーツ小説(?)としても楽しめますが、パラ競技がどんなものか、環境、支える技術者を知るきっかけになりました。
Posted by ブクログ
読み始め 2021.8.7
読み終わり 2021.8.21
パラ•スター(Side 百花)の続きで読んだ。宝良の視点メインで描かれている。高2の時に事故で下半身不随となった宝良が東京五輪に出場するまでの、軌跡を書いたスポーツ小説。テニスの試合の描写が事細かに書かれていて、リアルだったし、幼馴染2人の会話や宝良とコーチとのやり取りは感動する場面もあった。お気に入りのシーンは、雪代コーチと宝良がコンビを解消する場面。雪代コーチの病気をきっかけに雪代から志摩コーチに代わるところ。宝良は幼い頃から雪代の元で教わってきたから、すごく辛い別れだったのだと思う。しかし、雪代とは別の視点から教えてくれる志摩を信頼して、練習して、物語終盤のジャパンカップでは七條との熱戦を繰り広げており、すごかった。
とにかくたくさんの感動をもらった1冊だった。
Posted by ブクログ
序盤の雪代コーチと車いす選手 宝良とのくだりで、早くも作品に引き込まれました。
無愛想でクールと言われる宝良と表情豊かな親友の百花。エンジニアの小田切さん他、登場人物がみんなすごく魅力的。
宝良と百花の関係も素敵♪
面白くてページをめくる手が止まりませんでした。
宝良の一途に夢を追う姿に圧倒される。
感情移入するあまり何度も涙したし、読後は感動と爽快感でいっぱい!
お薦めの作品です♪
『強いって、悩まないことでも、傷つかないことでもないんだと思う。それは、何度でも自分の弱さから立ち上がるってことなんだと思う』
『学校に行くことそのものが一番大事なわけじゃない。一番大事なのは、どうしたらあなたが幸せに生きられるかってことで、学校はその手がかりを探しに行く場所だよ。』
Posted by ブクログ
どこまでもクールビューティな宝良がカッコ良すぎる!
世界一の車いすテニスプレイヤー玲との死闘は圧巻!
百花と好対照。
百花と宝良の関係がほんと泣ける。
Posted by ブクログ
胸が熱くなる物語だった、ジーンとくる。
自分の過去に向き合いながら、葛藤しながらも、意志を確かにプレーする選手があまりにかっこいい。それをサポートする車椅子メーカーの面々もかっこいい。
Posted by ブクログ
不調に苦しんでいる君島宝良が復調し、東京パラリンピックの代表選考に重要な意味を持つジャパンオープンに挑む姿を描く。
車椅子での生活の大変さや、車椅子スポーツの現状など感じられ、ストーリーも良かったが、文字だけでスポーツの試合を表現することの難しいんだなと改めて感じた。漫画の方が熱さとか伝わるなと。
Posted by ブクログ
後編はより車イステニスの試合をリアルに感じられました。スポーツって素晴らしいですね。また、それに携わる裏方の人たちの支えがあって、素敵な大会になるのだと思いました。とても爽やかな物語でした!
Posted by ブクログ
かっこいいなぁたーちゃん!サイドももかの前編とは対照的で、でも彼女の方もやはりももかを意識して彼女のベストを尽くしてる、その2人の関係がとても素敵だと思った。テニスルールよくわかってない自分でも七条選手とも、その前のギーベル選手とも、手に汗握ってページを巡るのが止まらない圧巻のシーソー小説でした。
Posted by ブクログ
『パラ・スター』<Side宝良>編です。車いすテニスプレイヤー・宝良の視点で、<Side百花>編では無愛想な宝良の内面が、丁寧に描かれていきます。前編との視点の違いだけでなく、百花との置かれた立場・状況の対比が際立ち、興味深いです。
百花にとって宝良は憧れ・ヒーローでも、宝良にも百花と同じように焦る気持ちや壁があるのでした。見た目の印象は、当然ながら決して本質を突いてはいないのですね。
支える側の上に立って支えてもらうのが選手で、目立ち脚光を浴びるけれど、選手はいろんなことを背負って戦う訳で、やはり関係者を含めたチームだと思わされます。
支える側、応援してくれる人、自分‥。全ての想いが重なり、大きなうねりになって高まっていく展開に引き込まれました。
課題改善の練習方法、相手の試合運びの分析、対応・戦術の練り上げ、さらにクライマックスの試合は臨場感あふれ、手に汗握る読み応えでした。
競技用車いすのメカニックへ興味が湧き、パリ・パラを別の側面から観る楽しみが増えたような気がします。何よりも、障がい者スポーツの理解・普及という点でも、本作の価値は高いと感じました。
少女向けとかライトノベルなどと侮ること勿れ! どうしてどうして、深みのある秀作でした。百花編→宝良編の順に、2冊とも読むべし! オリだけでなく、パラも応援し楽しむべし!
Posted by ブクログ
Side百花が面白かったからすぐ読もうと思っていたのに時間が経ってしまい若干うろ覚えだが、百花編より少し後の時間軸だと思う。そもそもの出会いが描かれるのも百花編なので、読む順番としてはこれで正解かと。百花編が車椅子業界やユーザー中心でこちらはテニスプレーヤーとして。どちらも素晴らしい良作
Posted by ブクログ
競技用車椅子を製作する側と、車椅子テニスする側それぞれ視点の話でした。スポーツの熱さ、友情、仕事や夢への情熱、そして事故からの立ちなおる葛藤。たくさん盛り込まれた良い話でした
Posted by ブクログ
「Side百花」に続き。どちらも良かった。テニスも知らないし興味もなかったが、文章だけで試合の緊迫感や興奮が伝わってきた。何度か泣けた。2人とも弱さも抱えつつ、ひたすらな姿勢が綺麗だったし、性格の違う2人の友情も良かった。競技用車椅子にも興味がわいた。ぜひ中高生に勧めたい。
Posted by ブクログ
誰しもが何か一つのことを必死に追い続けている。登場人物はみんな何かに夢中だ。テニスの頂点を目指したり、最高の車イスを作ることを目指したり。性格は全く違うのに。
主人公の宝良は、とてもクール。試合前日に親友から応援メールが届いても「早く寝ろ」と返すくらいだ。でも、勝利に対する貪欲さは誰にも負けない。大切な人の笑顔を見たいがために、血の滲むような努力をする。誰よりも冷たいのに、誰よりも熱い。そんな人間らしい「温度差」が心を震わせる。
そんな「夢への貪欲さ」と「望みを叶えたい人の欲求」を存分に味わうことができる一冊。
誰しもが夢を追いかける世界で、自分が勇気を与え、与えられながら走り続ける人生を送りたい。そう思いながら、本書を閉じることができた。好き。
Posted by ブクログ
百花編も良かったが、こちらもいい。
もがいて苦しんで、それでも前へ進もうとしている登場人物たちがとても愛おしい。
頑張れ、よく頑張ったね、と思わず声をかけたくなる。
解説にも書いたあったが、泣ける箇所が何個かあるわけではなく、
何かもう常に涙がじんわりとしているのだ。
とてもいい本だった。
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宝良の様々な葛藤や母との関係などが宝良らしく描かれ読み応えあり!車椅子の方の日常のケアなどにも触れていて考えさせられた。小学生みちるにへの接し方が生ぬるくなく、さすが宝良!と心地よかった。臨場感あふれる試合の描写は迫力満点!
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続いて宝良の話に入る。
宝良はSCCトレーディングという企業に所属するプロのテニスプレーヤーとなっているが、障がい者雇用率が来る3月に2.3%に上がる中、世の中の障がい者雇用の状況はまだまだ雇わなければならないから雇うという側面が多い現状。
ここに書かれている宝良の環境はかなり特殊な部類に入るが、とは言え、こういうところにもきちんと言及されているところは良いと思う。
みちるの話を通じて、障がい者もまた障がいがあるだけで同じ人間だということが分かる仕掛けだが、それぞれの人がそれぞれの特性に応じて活躍できる社会にしていこうという、この本のスタンスも好ましい。
物語は、スランプに陥った宝良が不調のどん底から這い上がりジャパンオープンに挑む姿を描く。
相変わらずウルウルする場面も多いが、それなりに人物やエピソードはしっかり描かれている。
何より『勝つことよりも、自分に恥じない自分を育てていくことが大事』という雪代の言葉が重い。
ラストの七條玲との戦いの描写には結構ドキドキ。
何より戦う相手が、玲にせよギーベルにせよ、宝良のことを認めて互いに高みを目指そうとしている人だと分からせてくれる件りがあるのが良い。
また、宝良とみちる、それぞれの母娘の関係を見れば、前巻にもあったように大変なのは本人だけでなく周りも含めてそうなのだと思わされる。
二人とも家の中にエレベーターをつけたり自分用に車いすをカスタマイズ出来たりする家庭の子だったが、そうでない場合はどうなるのだろうと考えさせられた。
作中『歯を食いしばりながら散らばった破片を拾い集め、つなぎ直し、長い時間をかけてやっと平穏をとり戻す。それでもまた隕石は降ってくるのだ、必ず』とあるが、人生の試練は、健常者にも障がい者にも、金持ちにも貧乏人にも、等しく降りかかってくるからな。
宝良が車いすを変える経過や試合会場でのリペアの仕事振りを通じて、今回もまた競技用車いすのことについて更に良く分かった。
どの競技にせよ道具の大事さというのはあると思うが、それにしても数ミリの違いが戦いに影響を与えるというのは想像を超える。メーカーやリペアの人も一緒に戦っているという感じだろうか。
また、車いすテニスができる環境は全国どこにでもあるわけではないということも良く知れた。
私が見たネット記事では『車椅子テニスの日本での競技人口は1,000人位で、その中で大会に出場するのは100人前後と言われている』とあったが、その中で国枝選手とか上地選手のような、私でも名前を知っている人が出て来るのは凄いな。
本の中では開催された2020年のジャパンオープンは、実際にはコロナ禍により中止され、今年の大会も既に中止が決まっている。
延期された五輪の行方も不透明なままだが、多くの人にとって良い形で開催を迎えられる日が来るれば良いと思う。そして、その時には車いすテニスも是非中継して欲しい。
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車いすでテニスをプレイする宝良の視点からの続編。
パラスポーツというより、ただの勝ち負けを競う一人のアスリートの物語だった。出てくる選手がみんな素敵すぎる。
これを読むと、東京パラリンピックを見たかったと思う。
いつかどこかでパラリンピックを見よう。
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百花を読み終え、百花と同様、宝良の強さをに期待した。気持ちが入り過ぎて、お願い勝って、立ち上がってって期待しまくった。
涙も。湧き出て来た。
テニス、車椅子でのテニスに釘付けになりました。街で見る車椅子もジロジロ見てしまいます。
優しい気持ちで早く読み終えました。