Posted by ブクログ
2020年07月08日
「パラ・スター Side百花」は車いすを作る側から、こちらは車いすテニスプレーヤー側から描く。事故で下半身付随になっだがテニスに出会い、日本代表レベルにまで上達した宝良。しかし去年から負けが続いている。コーチが代わり、車いすも変えて、臨むはジャパン・オープン。不調を吹っ飛ばせるのか・・・
うーむ。...続きを読む百花の方も良かったが、こちらも負けず劣らずにいい。解説の北上次郎氏は泣きまくったそうだ。そこまで泣けたわけじゃないけれど、ラスト近辺では、湯船に浸かりながら読んだので、頬を伝わるのが汗なのか涙なのか分からなくてなってしまった。
「入院してるおまえの様子を見て、俺は正直、おまえとはもうこれきりになるだろうと思った。テニスに命がけで打ちこんできた分だけ、きっと走るどころか歩くこともできなくなったおまえは、つらすぎてもうテニスには一生近づかないだろうと。だけど、おまえはまたコートに来た。ジャージに着がえて、ラケットを膝にのせて、車いすテニスがしたいと俺に言った。あの時、心底俺は思ったよ。人間て何なのか。ここまで打ちのめされてまた立ち上がる強さは、生きようとするひたむきさはどこから来るのか」
もし自分が車いすに乗る生活になったらテニスをやってみたいと思わせる、そういう力のある小説だった。順序としては百花を先に読んだ方が時間的に順序よく読める。