阿部暁子のレビュー一覧
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心温まる物語。
私自身が、子供を持つことは素晴らしいと疑わない気持ちがあったけれど、この世の中自体に不安感を抱いていて子供を無責任に産めない、と考える人もいるんだと思った。
そして、そう思わせてしまうようなことが起こっていること、悲しくなるし、そういう人に手を差し伸べたいね。
どんなに親しくなっても他人は他人で、全てわかりあうことはできない。このことはしっかり覚えておきたいな。味覚障害を明かさない弟、びっくり。
薫子が養子縁組やパートナーシップを、せつこに提案するのは、かなりお節介だし踏み込んでいると思うけれど、やはり人と人の繋がりは大事なんだと思った。 -
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ネタバレ読んだあとには、あたたかい気持ちになった。
初めから真ん中くらいまでは、ハラハラ、ドキッとする場面もあったけど、途中で意外な事実が出てきて、そこからは人物像が180度変わったりして… サスペンス読んでたっけ、と思ったり笑
後半は涙が出た。誰にも、見えていない一面があって、人を完全に理解するのは無理なんだな。でもそれでも、理解しよう、一緒に生きよう、とすることが支え合うってことなんだと思った。
法務局に勤めている薫子さんが、12歳下の弟の春彦くんをなくし、その遺言書に書かれた、元彼女のせつなさんと会う。せつなさんは、ぶっきらぼうで愛想のない、穏やかだった春彦くんとは合いそうにない家事代行サービ -
Posted by ブクログ
4章から一気に話が進むが、それまでに飽きたりすることなく読みやすい。温かく切ない気持ちになる。人の見た目や態度だけで判断してはいけない、見えているのは今の状態だけでその人の今まで生きてきた人生や思いの全てを知らないから。人の辛いという気持ちは数値化できないし、本人以外の誰も理解することはできないし、理解しようとする姿勢さえも重荷になることもある。でも心が病んでいると知った時、その人を支える人が1人だけでもいなければいけない。1人だけでは生きていけない。そんな事が食や生活を通して身に染みてわかる1冊だった。また絶対読みたいし、周りの人にも読んで欲しい1冊。
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Posted by ブクログ
ネタバレ遅ればせながら、拝読。
本屋大賞の本が大好きな理由のひとつに、曖昧な表現が多用されているというものがある。
繊細な表現が物語の輪郭を創り出し、そうして読者の脳内に人物像や見取り図を作る。
『春風が突き抜けるような』と繰り返し表現される春彦の話し方と声はどんなものだっただろう。亡くなった今、残された薫子やせつなに知る術はないが偶然にも、いや必然的に出会った2人は彼の願ったものだったのかもしれない。
私が知っているあの人のことは、その人の100%のたったの1%に過ぎない。
久しぶりに読んだ本屋大賞の本が、カフネで良かったと心から思う。 -
Posted by ブクログ
まず「カフネ」とは、作中で家事代行サービスをする団体のことを指します。弟を亡くし、不妊に悩み生活が荒れてしまった野宮薫子。弟のパートナーだった小野寺せつな。弟の遺した遺言書をきっかけにこの2人が出会い、物語が展開していきます。カフネの活動、弟の死の真相、それらを通して気付かされる家族、友人、恋人、との関係の在り方。2025年本屋大賞作品、その賞に恥じぬ素晴らしい作品でした。現代に疲れた方にもぜひ読んでいただきたいです。
(ちなみに読んでいる時イメージしたのは、薫子が江口のりこさん、せつなが池田エライザさん、春彦が岡田将生さんでした。映画化が楽しみです。) -
Posted by ブクログ
ずっと積んでいた1冊、とっても良かった〜。
不妊治療がうまくいかず、夫と離婚し、弟まで突然失った薫子はアルコールに頼るようになるが、弟の遺した遺言状をきっかけに弟の元恋人のせつなと再会し、一緒に家事代行サービスの仕事を手伝うことで再生していく物語。
薫子の気持ちが分かりすぎて胸が締め付けられるけど、せつなやカフネを通じて知り合う人たちとの交流によって自分の人生を取り戻していく姿が力強い。何度も「私は不屈の努力で人生を切り開いてきた女だ」と自分を奮い立たせる薫子が最高。
だれかと仲良くなりたい、もっと知りたいと思うとき、どこまで踏み込んでいいものか迷ってしまって難しい。でも人間関係を築くには、や