阿部暁子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「家族に愛してもらえなかった」と傷ついたまま大人になった人たちの物語だと思います。
登場人物たちは、良識的で自立した人に見えるけど、そんな生活は自分の本心より世間体を優先して営んでいるだけなのです。それが愛を与えられるのに必須だと信じて。内心は、自分らしく生きてそれを認めてもらえたらどんなに良いだろかと苦悩しています。
愛を一心に受けていた、自分とは対極にいたはずの達彦の死をきっかけに、それぞれがそれまで見ていた世界が崩れていく様は私まで胸がギュッとなりました。最初は点だった登場人物たちが線になり面になって、それぞれが影響を与えあっていきます。そして、「与えられる愛」を待つのではなく「自分が与 -
Posted by ブクログ
離婚、自殺、毒親、シングルマザー、不妊治療、ネグレクト、ディンクス、味覚障害など、少数派の方たちの生きづらさも伝わってくる内容です。
清掃と料理の家事代行会社のカフネですが、そんじょそこらの代行とは訳違う、こんな素晴らしい会社がほんとにあるのでしょうか。
とにかく、せつなさんが作る料理がほんとに美味しそうで、お腹が空いてきてばかり。
スタートは、せつなさんと薫子さんの仲の悪さは、遠慮なく嫌味なくストレートな掛け合いは楽しくもあります。
中盤になって薫子さんの不妊治療体験の話しはきつかったです。
段々とせつなさんと薫子さんの気持ちの変化がなんともたまりません。
男女の愛でもない、家族愛で -
Posted by ブクログ
登場人物たちの抱える痛みや迷いを鮮やかに浮かび上がらせていく。自分が幸せになりたい、相手を幸せにさせたい、誰かを守りたい、誰かを救いたい……という思いが複雑にすれ違い、幸福の形や優しさの形が人それぞれであることを思い知らされる物語である。
意外性のある終わり方に思わず息をのんだ。
読み終えたあとも余韻が強く残り、簡単には気持ちを切り替えられないほどの深さがあった。
甘やかすのも優しさ、甘やかさないのも優しさ。登場人物たちの選択を通して静かに胸へ染み込んでくる。
人間味あふれるやり取りの中にある葛藤や願いに触れて、思い通りにならない日々の中でも、足掻きながら希望を探していこうと思えた。
読 -
購入済み
カフネから
入ってきました
本屋さん大賞はホントにいい企画だと思います。
登場人物はダークなのに全員にそう思わせない
フォローの文面が入り著者さんの優しさが
溢れています
巻末の解説の方も書かれている様に
決して読者を裏切らない安心して読める作品
なのでは? -
Posted by ブクログ
何の前情報もなく読んだ本でした。読みはじめて、おっと…高校生の学園物だったか…っとちょっと残念に思いました。でも、読み進めていくうちにあれよあれよと一気に読み終えました。
小説って、当たり前ですが、今という時代がきちんと反映された描写がなされ(私の時代にはワイヤレスイヤホン等はありませんでしたし…www)
地方の高校生ってこんな感じなのかぁ~っと思ったり。
自分も通ってきたはずなのに、全く違った日常生活のようなとても新鮮な気持で読むことができました。
駅員の長谷川さんの立花への言葉、矢地先生の生徒への世の中というもののありようについての話。
とても深く胸を打ちました。
先入観を捨て、新しい世 -
Posted by ブクログ
2025年本屋大賞「カフネ」著者 阿部暁子氏の長編ミステリ。
カフネにはあまり関心がないままなのだけどこちらはミステリで興味津々。
ティーンエイジャーの心の機微の言語化が上手い。そんな感動を覚えた序盤から、加速し緊迫する中盤、正義感の強い主人公 春風・異彩を放つ高校生 錬・ヤングケアラー 理緒、三者三様の思惑で正体不明の詐欺師カガヤに迫る展開は読む手が止まらない。
不遇だからこそたとえ虚勢でも強く賢く、そうあるしかなかった彼らの満身創痍の生き様は読者の半生で感想が変わる作品。禍々しき過去を糧に幸福を手に入れてほしい。
またタイトルも良い。震える。