石井光太のレビュー一覧
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石井光太氏の書かれるノンフィクションは紛いも無い。
常に取材する人の側に寄り添うような
一切の感情を交えない簡潔な文章が好きだ。
第二次大戦が落とした様々な影をメディアが扱い
語り継がれていく中で、何も無かったかのように
葬り去られるのが、戦後の『浮浪児』について。
空襲によって、家を無くし、家族を無くし
1人で生きていくこととなった浮浪児たち。
わずか5歳から12歳ぐらいまでの子どもたち。
養護施設『愛児の家』の裕さんが語られた
戦後、浮浪児となり施設に入った子どもと
現在、施設に入っている子どもの強さの違い。
がむしゃらという尊い言葉。生き方。 -
Posted by ブクログ
一昨日前に叔母が亡くなった。お通夜と告別式にバタバタと出席した後はポカンと心に穴が開いた感じ。終始涙が枯れることがなかったが、それは綺麗にお化粧を施された叔母の顔を見て、生前を思い出すからだった。そんな綺麗なお化粧を施してくれるのが納棺士であり、あの静かで美しい所作が叔母の最期を彩ったのだ。
自分の最期は自分では選びとれない。選びとれない以上、周りの人間がどれだけ気を配れるかが大切となる。本書は劣悪な環境、精神状態ながら、圧倒的なプロ意識で遺体に向き合う職人たちの話である。
本書に描かれる遺体は、叔母のそれとは比べ物にならない程状態が良くない。ただ良くないながらも、手を抜くことなくベストを -
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本書は、様々な戦場で生まれた都市伝説を紹介、その背景を解説し、最後に著者の考察を添えるという形式で書かれている。ウガンダの内戦、ベトナム戦争、湾岸戦争等から生まれた都市伝説を経て、最終章は第二次世界大戦における日本軍の行為にまつわる都市伝説が紹介されている。個人的には、イラク戦争に関係する「僕を助けてください」と、ベトナム戦争に関わる「掘り起こされた棺」が特に心に残った。
ある夜中、イラクに駐留していた軍医トムは電話の音に起こされる。頭を撃たれて危険な状態のイラク兵士を手術してほしいと言う。トムが駆けつけると、手術室には誰もおらず、ナースは運び込まれた兵士などいないと言う。
二日後の夜中 -
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著者である石井光太さんがアジアの国々の物乞いや障害者を訪ね歩き、その体験をまとめた本。
東日本大震災の被災地を訪ねた「遺体」を読み、深く心に刺さったので彼の本を他にも読みたいと手に取ったが、読みながら何度もつらさに手が止まった。
彼が出会う人々は実に様々だ。
戦争によって障害を負っていたり、先天的に障害を持って生まれたり、そして貧しさ故に障害を負わされた場合もある。障害を仕方のないものと受け入れる人もいれば、これは自分の業が悪いのだと諦める人、乞食という仕事にさえ誇りを持つ人もいる。
特に胸がつまったのは、インドのレンタチャイルドの実情だった。
彼らは幼い頃に誘拐され、物乞いする大人たちがよ -
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ネタバレ絶対貧困とは「1日に1.25ドル以下での暮らし。この金額以下で暮らしている人は世界で6人に1人いる。この人たちが貧困なのはよく分かる。しかし、日本は世界で第3位の貧困大国だと言われると。ピンとこない。これを理解するには相対貧困という概念が必要になる。
相対貧乏とは「等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満の世帯員」とされる。日本の場合国民の約16パーセント、つまり6人に1人が相対貧困となっている。日本が貧困大国だと言われるのは、他の先進国に比べてこの相対貧困率が高いためだ。
絶対貧困には生活するためにいろいろな制限や苦労がある。と同時に相対貧困にも絶対貧困とは違う問題がある。
多くの人に読んで -
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1日20体弱の死体が日本から海外へ運ばれている。棺の内側は金属コーティング(韓国行きのみなぜか木製でも可)。死体とドライアイス類以外は不可(大使館員立会いで確認)。病院の死亡診断書、パスポート、受け入れ国の入国許可書、葬儀社の梱包内容証明書、受け取り人の連絡先、葬儀社のエンバーミング証明書、全て揃わないと不可。
エンバーミングで12〜20万、ドライアイスや書類作成、人件費を加えると20〜40万、空輸代で10〜60万、空港から遺族自宅までを含めると数百万になることも。
イスラーム墓地では幽霊は出ない(死は最後の審判までの仮眠期間のため)
韓国内での売春規制強化により日本に売春婦が大量流入、価格 -
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東日本大震災を取り上げた、2011年発表のベストセラー。2014年文庫化。2013年には西田敏行主演で映画化された。
震災後の岩手・釜石の遺体安置所をめぐる極限状態を、自ら現地へ入り、地元民生委員、医師、歯科医師、市職員、消防団員、陸上自衛隊、海上保安部員、地元住職、市長らと行動を共にして綴った、壮絶なるルポルタージュであり、マスメディアでは絶対に報道されない、最も凄惨な現場の描写には、なんとも形容しがたい、胸をえぐられるような思いである。
一方で、本書は2012年の講談社ノンフィクション賞にノミネートされたものの、著者の過去の海外ルポの小説的文体を使った手法があまりに「フィクション」的と、立 -
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本書を読むまでは、石井光太氏はジャーナリストだと思っていた。そのため、世界の国々の惨状を伝えるべくカメラを向け、言葉を紡いでいるのだと勘違いしていた。しかし、その惨状の中でも希望を見いだし生きていく人たちの力強さと美しさを伝えたい。その気持ちを胸に執筆していたことを本書を通して初めて知った。
繰り返しでてくる一人一人にとっての「小さな神様」
想像もできないほどの絶望や状況の中で、人は何を胸に抱いて生きていくのか。そんな著者の真摯な眼差しに心うたれた。
ー私は他者を見つめるさいに大切なのは、相手がどんな小さな神様を抱いているのかを知ることだと思います。(中略)
小さな神様を見つけるためにはどう