半村良のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
半村量のおそらく初期短編集。戦後間もないひもじい時代を乗り切ってきた話をベースにしたSFというか怪談話から、炎に取り憑かれた戸籍のない少年が、火葬場の少年と出会う話など。怪談が多い。
落語や講談的な短編『箪笥』がどうにもインパクトが強く、この本の紹介を見てもほぼ『箪笥』なのはちょっと残念な感じ。ただ、現代では絶滅したとも言える、日本海側の方言のままト書きまで書かれ、読みにくいが印象の強い作品だ。
松本清張も書きそうな復讐劇『白鳥の湖』や表題のもとになった作品など、純文学と事件という、SFの半村良らしからぬ、強いエネルギーの空回りが感じられる作品群である。
作品としては面白いものが多いが、 -
Posted by ブクログ
SFマニアの仲良し4人組が、どこからかふらっと帰ってきた親戚の足跡を追っていたところ、亜空間に飛ばされた。亜空間内の世界はは、人間のいろいろな能力をテストするために仕切られていた。
話の大筋は、ディックなども書きそうな人間の弱さを強調した世界で、制限が多いだけにそれなりに楽しめる。ただ、のっけから引っかかるのが4人がSFマニアであるというところだろう。
この本に関しては、読み方はいくつか有る。世界の終わりを予想しながら読んだり、素直に冒険もの、ジュブナイル的なものとして読んだりすることが出来、それぞれそれなりに面白く読めるだろう。
もう一つの読み方として、古典幻想小説や古典SFのパロディ -
Posted by ブクログ
ワタクシにとっての半村良というと、この本だ。中学以来の再読だが、その1回めに読んだ時には、表題作の途中で挫折した。
表題作はタイトルのとおり。江戸時代の発明家で戯曲家の山東京伝の資料を漁っているうちに、明らかに辻褄の合わない文言にぶつかる。そこで出てくる「およね(米)」が昭和にタイムスリップしてくる?
ちなみに、長編ではなく、短編集。ただ、表題作も京伝について、思い入れを延々と語り尽くすため、まあ読みにくい。これこそ半村良スタイルなのだが、この歳になると読めてしまうのですが、中学生には厳しかろう。
表題作の他にも、コピーライター/CM作家を主人公にした半村良主人公の作品が並ぶ。時に落語調 -
Posted by ブクログ
戦争によって孤児になってしまった少年たちの物語。読んでいてつらい描写や境遇がたくさんあったけど、少年たちは明るい。本当の戦後もこんな風に身寄りのない子達が身を寄せ合って、でも力強く生きていたんだろうか。結局は運やお金の力も大きいわけで、運のないほうとしては「火垂るの墓」を思い出す。屋根があるところで眠ることができて、ご飯があって、当たり前に学校へ行けることがどれだけ幸せか。
夫が昔寝食を忘れて読みふけったとすすめてくれたので読み始めた一冊だけど、時節柄もちょうどよかったかもしれない。本日広島に原爆が投下されて70年。子どもたちが平和な世の中で生きていけますように。 -
Posted by ブクログ
前半はSFというか、怪談。死んだ人たちが生き返って、日本を軍国化して活性化するという、最近紹介したら、勝手にいろんな解釈を入れられそうなお話。その中途半端で突然、第2章に飛ぶと、全く別の話が始まる。
第2章は、1章と別の話すぎて、しばらく全く違うストーリーなのかと思っていたところ、8割位読み進めたところで、突然1章とのリンクが始まる。
死者が生き返る話以外は、全体にSF的な要素は少なく、生き返るメカニズムが明らかにされるでもなく、解決するわけでもない。生き返った連中が、なぜ現世で活躍できるのかもわからないものの、調度よいタイミングで事件に巻き込まれるため、読んでいて飽きさせない。
しかし -
Posted by ブクログ
悪夢からくるパラレルワールド(?)から始まり、超能力を中心に描く、ちょっと怪談チックなSF短編集。超能力と言っても、テレパシー的なものやちょっとした未来予知という、現実離れ度合いは少なく、ほぼ現代ミステリといった作品がほとんどである。
その昔、仲間内でSFブームがあった際に、半村良も読まれていたのだけど、一部の作品は評価が高く、それ以外はそうでもなかった。本作は「そうでもなかった」の類なのだろう。超常現象によるダイナミズムが僅かで、人間関係の難しさや怖さといったところが本論になっている。
この歳になったら、怖さがわかるようになってきたので怪談として読めるが、導入の地味でドライな人間模様の描