半村良のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
伝説シリーズかつ、主人公は一般人で特殊能力を持ったりしていないので、おもしろいパターン。
バーテンをしている店にバイトとして連れ込んだ親友が目の前で銃撃され、一命を取り留めるのだが、その親友にいろいろと不思議な過去が…。その後主人公は広告代理店に入社しながらSFを書いていくという、作者と重なってくる部分が面白い。
厳密に言ってしまうと、SFではなく、SFのアイデアの部分だけで書いてしまったような話。というのも「多分特殊能力」というだけで、あとは特に明かされない程度である。
SFらしさは殆ど無かったり、大きな事件に巻き込まれることもなかったり、SF談義の中では、他の半村作品が引き合いに出さ -
Posted by ブクログ
絶滅危惧種の虹色の半村良。日常にちょい足しのSF短編集なので、世代を問わず楽しむことが出来る1冊。で、半村良というと「なんか途中でダレる」が問題なのですが、本作ではそういうダレる作品が少なくなっています。
なんでダレるのかと分析しながら読んでいくと、目につくのが「ビー」という作品。ビー玉のルールをひたすら淡々と3ページにわたって解説してくれるんだけど、これをもってダレない人がいたらお目にかかりたい。つまり、風景や状態の描写が過激なのだ。
他の作品でも、「建物の隣には何があって、その横の道がどんな様子で、その店にこんな女将さんがいて」と非常に事細かく説明があり、紀行文なのかな?と錯覚するよう -
Posted by ブクログ
歴史や民俗学にからめた話が目立つ伝奇SF短編集。かなり古い作品ですが中身は古臭くなくて面白かったです。かなりユニークな話がそろった短編集。
お気に入りは初めの三編
『わがふるさとは黄泉の国』
表題作。自殺した片思い相手の出身が主人公自身のルーツでもある「自殺村」とわかり、主人公は黄泉の国とも言われるその村を訪れ不思議な体験をする。人と関わるのが苦手な主人公の内面描写がぐさぐさきて痛いです。
『農閑期大作戦』
最高。パワフルでコミカルで面白い。東北の田舎から出稼ぎにきた主人公たちは、工事現場で拾った金属板のために、太古に地球に飛来した宇宙人同士の争いに巻き込まれる。そこには土着の日本の神々の思惑 -
Posted by ブクログ
ネタバレこれは多分歳をとってしまったからだと思うのだけど、今まで以上にベタな市井人情ものが好物になっている。ノアールを読みたいと思うこともないではないが、それ以上に下町の人情に触れたいと思うのである。鶏唐でがっつり生中呑み放題より、菜っ葉の炊いたんでほんのり上燗チビチビとみたいなもんである。
さて、俺の読書歴のなかで半村良と言えば、伝奇小説もしくは日本で(世界で?)2番目に長いSF小説ぐらいしかなかったのだけど、なかなか市井人情モノのいけるじゃないかと発見できたのが今作。とある貧乏長屋を舞台とし、そこに住む人々の日常とちょっとした事件を追いかけていく連作集。
連作と言っても1作1作は小説というより -
Posted by ブクログ
表紙のイラストを見た時には、一瞬読むのをやめようかと思ったが、諦めてしまわなくてよかった。
章は戦国時代から始まり、以降、江戸、幕末、昭和と下っていく。
中盤辺りまで読み進めるまでは、あまりに奇抜なごった煮感にいささか面喰らい気味だったが、終いまで読めば物語がきちんと一つの連環のなかに収まり、完結していることが分かり、カタルシスを得る。
とにかくスケールの大きな着想によって描き切られた作品だ。
歴史小説、伝奇物としての側面が、SFという輪郭で包まれているような。
また、作品が発表された1973年という当時の時代性も強く映し込まれている。
高度経済成長が終わりを迎えようとしており、その代償として -
Posted by ブクログ
ネタバレ知らないうちに「完本」3巻になっていたので、何年か振りに再読。
江戸時代、神道に対する形で発展してきた鬼道衆達が信奉する「外道皇帝」がこの世に生まれ落ちたところから始まる、大伝奇大河SF。
その皇帝は実はポータラカから来た宇宙人で、あるメッセージを全宇宙に発するために地球の進化に介入した。それで、地球は他の天体とは全く異なる、生命同士が喰らいあう妖星になってしまった、という壮大なお話。
何度読んでも、あまりのスケールの大きさに圧倒され、皇帝が地球の進化を促進する為にセックスに快楽を与えた、などという発想のすごさに感嘆。人生観を変えてしまうまでの作品ですが、最後があまりにまとまりすぎててちょ