あらすじ
舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説」「ふたり」「新宿の名人」など8編を収録。
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バーテンの仙田を主人公に新宿の夜の世界に生きる人々の人情話による短編連作。プロに対してこういう言い方は大変失礼なのだが、本当に小説が上手い作家だなぁというのが率直な感想。文章に安心感、落ち着きのようなものがあり、それがまた描かれる夜の世界の人間模様にぴったり合っている。作者は作家になるまでバーテンを含めいろんな職業を経験されたそうだが、この小説はその経験の中で常にアンテナを張り人間観察を続けた賜物ではないだろうか。
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直木賞作品の表題作を含む8編の連絡短編集。第1話の「おさせ伝説」を読むと、さすが「戦国自衛隊」の作者だけあってSF的作品が連なるのかと思いきや、残りは昭和の古き良き新宿を舞台にした酒と人情の世界を描いた作品ばかり。
どの短編にも登場するのがベテランバーテンの仙田。彼が主人公や狂言回しとなり、様々な新宿の夜の顔を紹介する。
ちなみに、作者曰くバーやクラブ、キャバレー、スナックに違いはないとのこと。その店が名乗れば、それはバーとなり、スナックとなる。こうした境界のない混沌した世界を、住民たちは堪能する。
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新宿。Bar。男女の間で揺れ動く心の機微。
都会の喧騒の中で、実は人情深い登場人物たち。
飲食提供店の内部事情も見え隠れしていて、興味深い。
この作品が直木賞を受賞したのは、40年以上前だが、今も尚、面白い。
舞台となっている1970年代の新宿。
その人情風情が、現在も残っていることを願う。
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表題作は今から40年前の直木賞受賞作らしい。半村良の伝奇SFを好んで読んでいた時代があったが、まだ若かった故に、本作のようなオトナの世界を描いた作品には手を出さなかった。まあ、あの時代に読んでとしても面白さは解らなかったと思う。
何とも良い雰囲気を醸し出している連作短篇集である。新宿の歌舞伎町でバーのオーナー兼バーテンダーの仙田を中心に様々な人間模様が描かれる。
最初の短篇『おさせ伝説』はエロチックな伝説SFのような結末で、この作品全体がこのトーンで進むのかと思ったら、『ふたり』からしっかりとオトナの世界が描かれる。やはり、表題作の『雨やどり』が絶品。ラストに見せた男らしい未練の描写はなかなか描けるものではない。
全8編を収録。
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半村良さんの「酒場小説」の大傑作。バー「ルヰ」のマスター仙田を中心に、新宿のホステス・マダム・マスター等など酒場暮らしの面々の日常を描いた人情小説。
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「古き良き新宿」という知らない世界の話。かつてバーにはお姉ちゃんがいたらしい。キャバクラとクラブと分化してなかったとか。へーって感じ。
抑制の効いた大人の人情話という感じで好きだった。男に騙されても女に利用されても、きちんと傷ついて泣いて悲しんで、そのうち元気になってまた人生頑張っていくという当たり前の営みが丁寧に描かれている。超然とした傍観者になりがちな狂言回しの仙田が現役のプレイヤーとして女で甘々なしくじりをしてしまうなど、少し意外な方向に展開するのが面白い。例えば『バーレモンハート』みたいな酒場ものを読んでいたつもりが、いつの間にか群像の中を彷徨い歩いており、周りを見回すと仙田ともはぐれてしまっている、というような感覚。自分も飲み屋街をそぞろ歩く一人になってしまって、これからどの店に行こうかと考えているときの懐かしい匂いが鼻の奥に蘇る。
好きだった、読んでよかった。
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半村良さんといえば伝奇ものが有名だけど、こういう人情物が捨てがたい。
「忘れ傘」と本作「雨やどり」が一体となっている気がする。
新宿のBarを舞台に繰り広げられる人間模様、エアコンが程よく効いているのに湿度が感じられる作品、何度読んでも飽きない。
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なんだかしみじみとした昭和歌謡が聞こえてきそうな、そんな雰囲気が全般的に漂っていまして。
だがそれがいいんですよね。理屈とかより、人情先行の湿っぽいお話が。
治安も良くなくて危うさをはらんでいるけれど、温もりが残っているような世界観。昨今、絶滅危惧種状態のそんな界隈が、体験したこともないのに何故かノスタルジックに感じられるんですよね、この本。
活字だけでその雰囲気を味わわせてくれる本作。それは作者の技量故なんでしょうかねぇ。ちょいと新宿の馴染みの店に行きたくなってきちゃいました。
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SFの時とは、空気感も全く異なる大衆小説。序盤もしかしたらSFになるのでは?と思うところもあったけど、
戦後復興の夜の新宿での義理人情の連作短編集。
新宿だって昔は土地安かったんだろうなぁ
めちゃめちゃ面白いという感じでもないのだけど、設定のわりに生暖かい安心感があった。こういう昭和美化、修辞は心地よい。
なんだかんだでサラッと読んでしまった。しかも時間が経ったほうが、懐古小説として面白いんではないでしょうか。
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半村良といえば「戦国自衛隊」だけど、まずは、1975年直木賞作品。
半村良といえば、SF。若かりし頃、何作か続けて読んだ記憶。「雨やどり」は、夜の新宿を舞台にした艶っぽい人情小説。
新宿のバーでバーテンから人脈を築き、店を持った男仙田を主人公とした連作短編8編。
「おさせ伝説」のみにSFっぽさが仕込まれている。
「雨やどり」が直木賞受賞。
決まった女性を作らなかった仙田が、店を持ちマンションを買い、さてこれからという時に 彼のマンションで雨やどりをしていた女とのあれこれ。
情は深いけど後腐れもない新宿の粋な男の生き方。
夜の新宿のことは、今も昔も知らないけれど、カラオケなるものが世に出る前の世界観なのでしょうか。
ペンネームが、イーデスハンソンからっていうのは、誰かのイタズラみたい。
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新宿歌舞伎町の夜の世界を、連作短編で描く。
1990年に文庫化されているので、古き良き時代?
人情や仲間意識が強く、何かあると皆が集まる。
バーのオーナーやバーテンダー、ホステス。
みんな何かと訳ありである。
そんな一昔前の夜の世界を垣間見ることができる。
2019.10.10
Posted by ブクログ
昭和の時代の隙間から新宿の夜の街に流れ着いてきた人たちが、人情で繋がっている。かつてこういう時代があったのだなぁと思ったが、今も形を変えて息づいているのかもしれないな。
新宿の夜の街という舞台がみんなの逃げ場所であるようにも思えるし、結果的にただ少し時間を潰しただけの人もいれば、次第に浸かりきってしまう人もいるのだろう。どちらにしても夜の世界のこと、男と女の駆け引きはよく分からないことだらけだ。