半村良のレビュー一覧
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昭和十八年から平成二年まで、葛飾は立石の長屋の人々が、故人の命日に集まっては酒を酌み交わしつつ往時を偲ぶ。しかし時は容赦無く過ぎていく。敗戦をむかえ、高度経済成長のなかでそれぞれが必死で生き抜いていこうとするが、年をとっていくことはどうしようもない。かつて集っていた面々が、ひとり、またひとりと旅立っていく。そして、あの酷い、誰も望まなかった戦争を始めた、とてつもなく罪深い者も下血して旅立ち、元号が変わる。土地に刻まれた人々の暮らし。人々は移り変わり、土地もまた姿を変えていく。誰の記憶にもやがて残らなくなっていく日々の営みは、しかし、かつて、その土地に確かにあったのだ。
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Posted by ブクログ
50年前の小説。書店にキャッチーな装丁で平積みにされているのを見かけるまで、半村良というSF作家を知らなかった。
表題作長編2作と、ショートショートレベルの短編3編。エッセイ1編。
メインはもちろん長編。
SFなのかなと思っていたら、「不可触領域」の方がかろうじてSFテイストを残しているものの政治をからめたエンタメ小説。
とりわけ「軍靴の響き」は、戦後における再軍備をめぐる社会シミュレーションのような感じ。
重苦しいテーマだけれども、会話を使って飽きさせず、わかりやすく伝えてくる筆力は見事。さすが直木賞作家。
戦争の記憶が我々よりも強く世の中に残っている頃の作品を、戦争が完全に対岸の火事になってしまった現代、そしてその対岸ではリアルタイムで派手に火事が起こってしまっている現代に読むことの意味。考えさせられた。
私のように、装丁のかわいい女の子に惹かれて軽い気持ちで手に取って、しっかりと考えさせられる人がもっと増えたらいい。 -
Posted by ブクログ
「古き良き新宿」という知らない世界の話。かつてバーにはお姉ちゃんがいたらしい。キャバクラとクラブと分化してなかったとか。へーって感じ。
抑制の効いた大人の人情話という感じで好きだった。男に騙されても女に利用されても、きちんと傷ついて泣いて悲しんで、そのうち元気になってまた人生頑張っていくという当たり前の営みが丁寧に描かれている。超然とした傍観者になりがちな狂言回しの仙田が現役のプレイヤーとして女で甘々なしくじりをしてしまうなど、少し意外な方向に展開するのが面白い。例えば『バーレモンハート』みたいな酒場ものを読んでいたつもりが、いつの間にか群像の中を彷徨い歩いており、周りを見回すと仙田ともはぐれてしまっている、というような感覚。自分も飲み屋街をそぞろ歩く一人になってしまって、これからどの店に行こうかと考えているときの懐かしい匂いが鼻の奥に蘇る。
好きだった、読んでよかった。 -
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シリーズ18巻、最終巻だが、全く面白くなかった。半村良氏は、この後どんな展開を構想されていたのだろうか?よくわからない。ぜひともこのシリーズの続きを書いてもらいたかったが……。なぜかこの18巻だけが、私にはよく分からない。つまり面白くなかった。と言っても昔の作品なのだが……。と超速読みでは思ったが、再度ゆっくり読んで見ると、なかなか面白かった。シリーズ17巻のその後の新しい展開となっている。
ブリンコ軍を撃破したアムの鳥人カゲルが、3国の聖王マール王となったその後の世界。タリム国の田舎の村長の末息子タルボの成長とラ・ムーへの限りなくあこがれ。その為に、ネプトの船団へ乗り込みラ・ムーを目指す物語。途中またしても、デギルの影が近寄ってくるが……。
再度、この後の物語が読みたかった。しかし作者はもういない。未完の大作。そしてこの作品に流れる生まれながれの差別。格差。選ばれし者と選ばれざる者。アムの持つ念力(キマ)は、その選ばれた者の象徴。選ばれざる者は、どんなに努力や修行しても、キマを持つことはできない。アムが世界を支配する世界はどうなるのだろうか?という作者の一つの例:理想を読んで見たかったのだが。それはもう読む事はできない。 -
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▼サラリーマン一家で育ち自分も会社勤めで、まして転勤族な上に海外でも暮らしたような人(僕とか)には、実はこういうのって一種、SFのような神話性がある気もする小説です。
▼半村良、というとSF小説家だという偏見が自分にありましたが(素直な意味での)、これはなんというか、「山口瞳風の正統派人情現代劇(書かれた当時の)」。
山口瞳さんの小説が分からない人も多いと思いますが・・・。
ある時期以降は椎名誠さんもこういう人情モノ書いてたかなあ・・・。
▼1988年の本だそうで、まあバブル時代ということなのでしょうか。
語り部の「私」が浅草に引っ越してきます。小説家で、中年の男性、独身。
浅草の近くで育ったけど、浅草の人間では無い、みたいな距離感。
で、本の作りは連作短編で、「私」は、お金はあるし独身、小説家として浅草を取材しようという意思もある。そして時代はまだネットなんかなくて、携帯もない。つまり足を運んで人と会うより他に無い時代なんですね。
▼この「私」の背中越しに、ちょっとしたディープ地元系の浅草というか、そういう
「浅草で自営みたいに、水商売みたいに、働いている男女の体臭みたいなもの」
とでも言うか、そういうものが味わえる一冊。
▼「だからなんなのよ」と言えば突っ込みどころは満載で、居酒屋、酒、男女、下町、歳月、水商売、みたいなことへのロマンチズムが、臭いと言えば臭いとも言えます。
▼でも、こういうことを書きたくて、こういう風に一冊になる。そういう意味では小説家としての技術は確かだなあ、と思いました。あと、時代というか・・・風俗の移り変わりを期せずして楽しめるのも、小説というカタチの愉しみ。そういう意味では深い味わい。