あらすじ
古代アトランチスの謎を秘めたクロノスの壷。この壷の展示会こそ全ての悲劇の幕あけといえた。美しい人妻の失踪、人間の能力を遥かに超えた狼男の暗躍、美男美女の秘密グループが行う性の狂宴(サバト)――これら次々に起こる奇怪な事件こそ、永遠の生命を求める暗黒の野望のうごめきであった……。そして今、古代イスラムより歴史を貫いて脈々と生きる恐怖の秘密の全貌も明らかにされようとしていた……。壮大なスケールで描くSF伝奇ロマンの最高傑作!
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Posted by ブクログ
この表紙じゃないんだよなあ。角川の横溝正史と半村良の素晴らしい表紙はもっと評価されるべきだと思う。
さて、長いし内容も重いんだけど、これぞ半村良の集大成というべき作品だ。100mを6秒台で走る謎のミイラ人間、暗殺教団とアトランティスから続く巨石信仰。
その辺でしばらくスタックされ、退屈な話で終わるのかと思いきや、古今東西の政財界を牛耳る謎の集団、古代ヨーロッパの石像が出てくる意味、世界各国の吸血鬼伝説に奇病に伝播メカニズムと、てんこ盛りの上のてんこ盛りで、良い意味で半村良らしい展開となる。幕切れもよくあるコンパクトなオチになっていないあたり、非常に良い。
全般に、知識をこれでもかと登場人物に喋らせるところと、特に後半に集中するエロ描写の連続には、うんざりしなくもないが、個人的に「半村良作品といえばコレ」と推せる1冊である。
Posted by ブクログ
ミステリーと伝奇小説が混在した作品。
ある策略が判明するまではミステリー、
その後は伝奇系に色が変わります。
これは人の消えることのないある欲求が
テーマとなっております。
それがために多くの人が犠牲になり
隅田の周りの人もこの陰謀の駒となります。
ですが、それに異を唱えるものの
工夫した行動によりその計画は
悪い形ではあったものの
消し去られます。
でも、すごく悲しい物語。
人の欲は時に暴走します。
なのでこの本を読んだ後
今あがっている大きな問題を思い起こさずには
いられませんでした。
Posted by ブクログ
国枝史郎、山田風太郎の系譜を引く伝奇小説。
半村良の小説の中でも群を抜く完成度を誇っている。
吸血鬼の設定を日本に持ち込むとこうなる。
犬神伝説や不老不死の伝説とも絡めてとても興味ぶかい。
SFXの特撮の進化した現在、映画化が待たれる一作でもある。
エロスやサスペンスもふくめて、一級のエンターテイメントである。
なぜ『戦国自衛隊』ばかりが人気なのか、わけがわからない。
半村良といえば、まず『石の血脈』か『妖星伝』である。
Posted by ブクログ
始めての半村良。冒頭の銅線泥棒のところを読んでるときは、地味な話じゃないのかと心配だったけど、いきなり100メートルを6秒3で走る男(女?)が出てきてからは、バッチリ。アトランティス、暗殺教団なんかの大仕掛けもいいけど、一般人の生活から史実を元に想像を膨らませていくという「超」のつかない伝奇小説は、菊地秀行とかの最初から爆走しちゃってる「超伝奇小説」を読んでた身には逆に新鮮に感じられる。これ面白いよ。「ヴァンパイヤー戦争」とか「総門谷」とか、モロにこれの影響を受けてる感じだし、菊地秀行や夢枕獏の小説にセックスシーンが多いのはこの人のせいじゃないかという気がしてきた。
柘榴のママが席を立つ描写とか、ちゃんと後の事件を暗示していてうまい。今さら俺がいうことじゃないけど、やっぱうまい人の小説はいいよ。マキとのセックスシーンとか、菊地・夢枕に比べると過激な描写ではないんだけど、なんともいえない色っぽさがある。ただ香織に関してはあんまりいい女だという気がしない。ちょっとした仕種の描写を積み重ねたりするのがやっぱり重要なのかな。
病気に感染すると性欲が異常に高ぶってずっと乱交してるとか、兄弟で移った場合は狼人になるとか、石化してから3千年後に不死になるとか、石化をとめるために血を飲む必要があるとか、設定がメチャ魅力的。巨石文明や暗殺教団の歴史的事実との整合性の取りかたも見事。血というか情の部分でも、姉に犯されて狼人になる次郎とか、自分を愛していると思っていた香織が実は自分の親友の伊丹を愛していたとかおいしい展開だし。久しぶりに大当たりを読んだという気がする。
ラストがちょっとあっけない気もするけど、比沙子のところでちょっとホロっとさせられたから、まあいいでしょう。でもこの終わり方だと、続編もありそうだけどね。他の作品に続いてたりするのかな?
それはそうと<クロノスの壺>のオリハルコンはどうなったんだろうね。
独創的な吸血鬼小説という意味では群を抜いてる。「フィーヴァードリーム」も問題じゃないね。
Posted by ブクログ
ヴァンパイヤから狼人間、メガリス、宗教の発足といった要素をこうもうまく説明しえる説…まさに小説。こういうプロセスを経るなら、不死者が今も世界に数人くらいはいても不思議ではないのかも、と思える。