意思決定を行う上での「方法論」ではなく、「心得」についての本。平易な言葉でわかりやすく、とても読みやすいが、語られている内容はとてつもなく深い。手元において何度も何度も読み直したい一冊。ぜひオススメ。
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【読書メモ】
●意思決定12の心得
第1の心得:意思決定に必要な三つの力(「直観力」「説得力」「責任力」)を身につける
第2の心得:衆知を集めて、独りで決める
第3の心得:感覚を磨くのではなく、論理を究める
第4の心得:経験を積むのではなく、体験に徹する
第5の心得:ただ進むのではなく、退路を断つ
第6の心得:論理を語るのではなく、心理に語りかける
第7の心得:説得するのではなく、納得をしてもらう
第8の心得:計画への信頼ではなく、人間への信頼を得る
第9の心得:リスクを避けるのではなく、リスク体質を改める
第10の心得:リスク分散だけではなく、リスク最小化の手を打つ
第11の心得:失敗を恥じるのではなく、失敗を率直に語る
第12の心得:意思決定を精神の成長の機会とする
●「直観力」「説得力」「責任力」という三つの能力をきわめて高いレベルで身につけています。そして、それらの高度な能力を身につけているからこそ、「衆知を集めて、独りで決める」という意思決定のスタイルを、見事に実践することができるのです。
●論理的に考えて、考えて、考え抜くことによって「論理を究める」ことができるならば、その極限において、必ず、直観力や洞察力、大局観の世界が開けます。すなわち、直観力や洞察力、大局観とは、「感覚を磨く」ことによってではなく、むしろ、「論理を究める」ことによって身につけることができるのです。
●「徹底的に考え抜く」ことをメンバーに求める「組織文化」を生み出す
●我々は、言葉にて語り得るものを語り尽くしたとき、言葉にて語りえぬものを知ることがあるだろう
●我々は「経験」が与えられたとき、その経験を深く「反省」することによって、それを「体験」にまで高めることができるのです。
●「反省」という方法の最も深い本質は、「言葉で語られること」にあるのではない・・・「言葉にならないこと」にこそ、大切な何かが潜んでいるのです。もとより、それは最後まで言葉にならないのですが、我々の深層意識のなかでは、それを言葉にしようとする努力を通じて、何かの形を生み出していくのです。そして、それが、ある日、直感や洞察という形で表層意識へと浮かび上がってくるのです。
●なぜ「反省」が重要か。それは「反省ノート」に書かれたことだけに意味があるのではない。その「反省」という方法によって、言語化できる知の領域を照らし出すだけでなく、さらに、言語化できない知の領域にまで光を当てることができるからです。そして、それが、「体験に徹する」ということの真の意味に他ならないのです。
●追い詰められたとき、本当の直観力が働く
●小さなプロジェクトや組織のマネージャーである時代から、「自分が決めなければ、誰も決めてくれない」という覚悟を持ち、一つひとつの意思決定に挑んできたマネージャーは、いつの日か、大きなプロジェクトや組織の意思決定者の立場に立たされたときにも、それに必要な直観力を発揮することができるでしょう。
●非常に高度な直観力が求められる意思決定の局面において、最も大切なことは「いかなる選択肢を選ぶか」ではありません。最も大切なことは「いかなる心境で選ぶか」なのです。・・・騒々しい心境で意思決定を行ったときには、直観力が曇り、誤った判断に流されてしまうからです。これに対して、「無我夢中」「無心」の心境にあるときには、不思議なことに、直観力が閃くからです。
●直感は過たない、過つのは判断である・・・あれこれと考える「判断」には、様々な「エゴ」が混入してくるからです。
●私心を「捨てる」のではなく、私心を「見つめる」ことです。・・・私心やエゴというものを、ただ何の価値判断もなく「見つめる」とき、不思議なことに、それらは動きをやめ、静かになっていくのです。
●「すべてが論理的に解決できる」といった発想そのものが、硬直的で危ういのです。
●「論理」を語るのではなく、「心理」に語りかけることです。自分の「論理」を中心に語るのではなく、相手の「心理」が理解しやすいように語ることです。
●プレゼンテーションにおいて最も大切なことは、「自分が何を語りたいか」ではなく、「相手が何を聞きたいか」です。
●「相手の最も理解しやすい順序で語る」「相手がイメージしやすいように語る」
●「論理」を語りたがる人間は、論理的に物事を考えることができるという優れた能力を持つ反面、ともすれば「自己中心的」になってしまうという過ちに陥るのです。・・・「論理を語る」とは、「自分にとっての真実」を中心に語ることなのです。これに対して、「心理に語りかける」とは、「その人にとっての真実」を考えながら語ることなのです。そうした意味で、「論理を語るのではなく、心理に語りかける」という心得は、これまでの「一元的価値」の時代のマネジメントを、これからの「多元的価値」の時代のマネジメントへと、さらに深化させていくために、大切な心得でもあるのです。
●実は企業や組織において「説得力」がうまく発揮できないときには、この「操作主義」が原因となっていることが多いのです。すなわち、「相手を説得してやろう」「相手を動かしてやろう」という意図が強すぎると、かえってうまくいかないのです。
●「説得するのではなく、納得をしてもらう」という心得です。すなわち、相手を「説得してやろう」と考えるのではなく、相手に「納得をしてもらう」という考えを持って、語るべきなのです。
●「説得力」というものの本質が、「いかなる説明の技術で語るか」よりも、むしろ、「いかなるこころの姿勢で語るか」ということにあることを知るのです。
●実は、我々が誰かの発言や言葉に納得するときというのは、その発言の論理の整合性やレトリックの美しさに納得するのではなく、むしろ、無意識に「彼が言うのだから」と考えて納得することが多いのです。そして、周りのメンバーが「彼が言うのだから」と考えるのは、やはり、それまでのその人間の「実績」が創り出している「人間そのものに対する信頼感」なのです。
●あるマネージャーが提案する計画に対して、経営トップがそれを承認したり、関連部門のマネージャーがそれに合意するときというのは、表面的には「計画」が承認され、合意された形に見えますが、実際には、そのマネージャーという「人間」が信用され、信頼されているのです。・・・意思決定における「説得力」を考えるとき、「計画への信頼ではなく、人間への信頼を得る」という心得が大切である理由は、まさに、この点にあります。
●大切なのは、「何を語るか」ではありません。大切なのは、「誰が語るか」なのです。
●我々マネージャーがリスク・マネジメントに取り組むとき、まず、最初に行うべきは、この「仕事のスタイル」のチェックです。そして、そのとき求められるのは、部下の仕事の表面的な「成功」と「失敗」だけに目を奪われることなく、あくまでも「仕事の基本」を見つめる力です。表面的な「成功」のなかにも、将来の「失敗」の目が含まれています。表面的な「失敗」のなかにも、将来の「成功」の芽が含まれています。それらを見抜く力を磨くことこそが、リスク・マネジメントの基本であると言えます。
●ポートフォリオ戦略の弱点・・・それは、「局地戦」には使えないということです。すなわち、「この戦線ではなんとしても勝たねば!」という状況では、あまり役に立たない戦略なのです。従って、ある特定の戦線での敗北が、他の戦線全体に致命的な打撃を与えてしまうような状況では、役に立たないのです。
●リスク・リダンダンシー戦略・・・戦略的な打ち手に敢えて「冗長度」(リダンダンシー)を持たせ、それらの打ち手を重層的に連ねていくことによって、「リスク最小化」を図ろうとする戦略のことです。分かりやすく言えば「二の矢、三の矢を準備しておく」という「重層戦略」のことです。「念のため、手を打っておく」という言葉に象徴される戦略と言ってもよいでしょう。
●リスク・リダンダンシー戦略をとる経営者や戦略マネジャーは、「戦略的大局観」と「戦略的反射神経」という二つの能力を磨いていかなければなりません。そして、経営者や戦略マネジャーにとって、こうした直感的能力は、これからますます大切になってくるのです。なぜならば、これからの市場においては、リスク・ポートフォリオ戦略よりも、むしろ、リスクリダンダンシー戦略が重要になってくるからです。その理由は、現在の市場が、いわゆる「複雑系市場」(complexity market)としての性質を強めていることにあります。
●複雑系市場においては、むしろ、リスクリダンダンシー戦略のような、直感的能力を駆使して不測の事態にも対処し、いくつもの打ち手を連ねることによって能動的に「リスク最小化」を図っていく戦略こそが有効なのです。
●「プロジェクトが成功したとき、その成功の原因をメンバー全員に対して話すのは、決して自慢話をしているのではないのだよ。それは、メンバー全員が、プロジェクトを成功させるための方法を学んでいくのに必要なことだと思う。しかし、メンバーが学んでいくということを大切にするのならば、プロジェクトが失敗したときにも、その失敗の原因を明確に語らなければならない。失敗したときのほうが、むしろ、よい勉強になるのだからね・・・」
●「学習する組織」を本当に実現していくためには、最新の情報システムを導入するよりも、最先端のナレッジ・ベースを構築するよりも、大切なことがあるのです。それは、「メンバー全員が互いに学びあう」という組織文化を生み出すことです。・・・マネジャー自身が「面子」を捨ててメンバーに率直に語ることです。自分の小さな「エゴ」にとらわれず、語ることです。
●「原因を追究する」ということと、「責任を追及する」ということの混同
●ビジョン、戦略、戦術というものは、組織のメンバー全員に共有されたとき、初めて、ビジョン、戦略、戦術と呼ぶことができるのです。・・・メンバーが、「仮説」としての戦略や戦術を共有し、刻々と変化していくビジネス環境に対して臨機応変に行動していく。その行動の結果を踏まえて、ときに戦術の見直しをする。場合によっては、戦略そのものを大転換するときもある。組織とメンバーは、そうやって学び、成長していくものなのです。
●マネジャーは語り続けなければならないのです。自らの胸中にあるビジョンを、戦略を、戦術を、分り易い言葉にして、メンバーに語り続けなければならないのです。しかし、それは、決して、マネジャーの意思をメンバーに「周知徹底」するためではありません。それは何よりも「衆知結集」のためなのです。マネジャーがメンバー全員の声に「耳を傾ける」ためなのです。そして、メンバー全員の「智恵を集める」ためなのです。
●組織としての行動をとる前に、マネジャーの考えている「仮説」としての戦略や戦術をメンバーに語り、メンバーからの「反論」を聞くためなのです。そして、組織としての行動をとった後に、メンバーからの「反省」を聞くためなのです。そして、それが、「学習する組織」を生み出すために大切なマネジメント・スタイルに他なりません。
●我々マネジャーが為し得ることは、そして成すべきことは、それが「答えの無い問い」であることを知りつつ、それでも深く「答え」を求め、一人のマネジャーとして、全身全霊を込めて意思決定をしていくことに他ならないのです。
●「意思決定をする」ということは、決して「割り切る」ということではありません。その「深き矛盾」をこころに把持したまま、自らの内なる声に導かれて「腹を定める」ということです。そして、もし我々マネジャーが、この「答えの無い問い」を前に、「割り切り」によって逃げることなく、意思決定の後もなお、その問いを静かに問い続けるならば、おそらく、我々の精神は、ある深みへと向かっていくのでしょう。そして、そのことに気がつくとき、マネジャーという職業が、我々のささやかな生涯を捧げて歩むに値する素晴らしい職業であることを知るのです。そして、そのマネジャーにとっての意思決定という役割が、我々の精神を、鍛え、深め、限りなく成長させてくれる素晴らしい役割であることを知るのです。