北方謙三のレビュー一覧
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意外とあっさりしていた。
北方さんのハードボイルドな作品は主人公が男か女かで物語の印象や後味も大分変わってくる(気がする)。主観が男性的か女性的かで感情移入にも差異が出る。結構それは重要で、その違いが作品にはっきり表れている(気がする)。
作の主人公はド派手にカーチェイスはするわ、暴力にも屈しないわの男勝りな女。でも味としてはどうしても薄口。北方作品はあっさりより男臭いくらいコッテリとした方が好き。
主人公が女性だから悪いというわけではないが、なんとなくスッキリしないというか「おぉ!」という高揚感は前回読んだ北方作品に比べれば弱かった。個人的に。 -
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異変が伝えられたのは、19日の早朝だった。
仙蔵は、すでに出かけていた。伝えてきたのは、仙蔵が連れていった板場の若いものである。
「そうか」
ほかに言葉はなかった。
利之は部屋に戻った。お勢が、火鉢に炭を足していた。
「洗心洞から、隣の屋敷に大砲が撃ち込まれたそうだ。それから外へ出たらしい。門弟数十人。それが、次第に増えているという」
「どういうことでございます、それは?」
「つまり洗心洞の叛乱に加わろうと、人が集まり始めているということだ」
叛乱という言葉に、お勢は息を呑んだ。言った利之も、背筋が寒くなるような心地がした。
「洗心洞の建物は燃えている」
「まあ」
「洗心洞から出た連中は、救民 -
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瀬戸内の海賊となって乱をおこした藤原純友の事蹟を描く。
同時期に乱を起こした平将門に比してやや知名度はおちるが、当時の政治の中心の藤原一門からなぜ、反乱がと不思議に思っていた。
著者は、純友をものに捕われない自由な心の持ち主として、その勇躍する姿を描いている。同著者の「破軍の星」では、清冽なる天皇中心の人民国家のあり方を主人公は追い求めていたが、本作品では、海の自由を求めて純友は戦っている。高麗などとの海外の交易を独占しようとして、海に生きる民を抑圧する藤原宗家との壮大な戦いに挑む藤原純友の勇姿には胸躍らされた、痛快な物語である。
本作品のエピローグでは、戦い終えた「純友」は、海上の貿易商人と -
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中央集権を進める藤原政権に対し、土地に縛られずに生きる海の民の生きる様を描いた作品。おもしろかった。海賊だけでなく、山賊も出てきて、政治の表舞台に登場しない少数民をよく描けていた。世界とつながる海の民のあり方、貿易のもたらす富のあり方についての中央集権政府と藤原純友の考え方の違いや、平将門の叛乱と藤原純友のそれとの違いなど、よく研究されていて厚みがあった。
ところどころに、「男なら!」という無茶苦茶論理が出てくるのは、まあ、北方謙三氏だからしかたないか。その部分は、あんまり物語とは関係なかったので、そんなに気にならずに、海賊の物語を楽しめた。