北方謙三のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
意外とあっさりしていた。
北方さんのハードボイルドな作品は主人公が男か女かで物語の印象や後味も大分変わってくる(気がする)。主観が男性的か女性的かで感情移入にも差異が出る。結構それは重要で、その違いが作品にはっきり表れている(気がする)。
作の主人公はド派手にカーチェイスはするわ、暴力にも屈しないわの男勝りな女。でも味としてはどうしても薄口。北方作品はあっさりより男臭いくらいコッテリとした方が好き。
主人公が女性だから悪いというわけではないが、なんとなくスッキリしないというか「おぉ!」という高揚感は前回読んだ北方作品に比べれば弱かった。個人的に。 -
Posted by ブクログ
異変が伝えられたのは、19日の早朝だった。
仙蔵は、すでに出かけていた。伝えてきたのは、仙蔵が連れていった板場の若いものである。
「そうか」
ほかに言葉はなかった。
利之は部屋に戻った。お勢が、火鉢に炭を足していた。
「洗心洞から、隣の屋敷に大砲が撃ち込まれたそうだ。それから外へ出たらしい。門弟数十人。それが、次第に増えているという」
「どういうことでございます、それは?」
「つまり洗心洞の叛乱に加わろうと、人が集まり始めているということだ」
叛乱という言葉に、お勢は息を呑んだ。言った利之も、背筋が寒くなるような心地がした。
「洗心洞の建物は燃えている」
「まあ」
「洗心洞から出た連中は、救民