石持浅海のレビュー一覧
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いい!座間味くんがさくっと解決するのには違和感があるけれど(そもそも当たっているという証拠はない)、驚きを感じられてこれぞミステリって感じです。
表題作の『心臓と左手』なんてまさにミステリ好きが食いついちゃう要素だらけではないですか!もうもう!殺し合い、切られた左手、心臓を食べることで力を継ぐ怪しげな宗教…それなのにしっかりミステリ。Rのつく月~を思い出す食事風景にもそそられます。最も前作の『月の扉』との繋がりを感じさせる最後の作品はいまいちだったかなあ。終わりがぱっとしなくて続編をアピールするために無理矢理入れたような気がしてなりません。でも、全体的には満足です。
ただひとつ。警察がただの知り合いに事件をべらべら話すのはどうなの?座間味くんが犯人になったらおもしろそうなので、シリーズを続けてほしいです。 -
Posted by ブクログ
石持浅海さんの新刊は、本格的な官能小説だという。ついに来たか。石持作品にはしばしばエロスの要素が取り入れられており、素養はあったのだ。
最初に言い切ってしまおう。本作は官能要素があるミステリーではなく、ミステリー要素がある官能小説である。いや、ミステリーの部分はおまけのようなもの。石持さんはミステリーではなく官能小説が書きたかったんだっ!!! 間違いないっ!!!
このジャンルに詳しくはないが、迫真の描写は老舗のフランス書院文庫とかでも十分に通用するのではないか。通勤電車内で読むには適さない(読んだけど)。AVを文章化したみたいで、冷静に考えると笑える。明るいエロ描写とでも言おうか。
でも、背景はどろどろしていてちっとも明るくないわけですね。「待っている間に」。石持さん得意の会社ものと官能小説の合体。こんな会社あるかっ!!! と思いたい…。「相互確証破壊」。倒錯した趣味の理由とは。それしか手段はなかったのか…。
「三百メートル先から」。石持さんご自身のある作品群に連なるものを感じるが、彼のレベルではあの団体に採用されないだろう。「見下ろす部屋」。月に一度の会議のおかげで、堂々と不倫を楽しむ2人。しかし、まさかの落とし穴が待っていた…。
「カントリー・ロード」は散々快楽に耽った末にビターな結末が突き刺さる、本作中一押しの1編。いや、他の各編もビターだっけ。最後の「男の子みたいに」は、何と説明したらいいのでしょうか。性の嗜好は人それぞれとだけ書いておきましょう。
それにしても、男たちのおバカさん加減に泣けてくる。女の方がドライで強かだ。現実には、男が女を泣かせるケースの方が多いんだろうけども…。ここに描かれたのは、1人を除いて反面教師とすべき男たちということだ。
男の姿がすべて加藤鷹に思えるのは困った…。 -
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漂流して生死の境を共に経験して以来、強い絆で結ばれた6人。
ダイビングには必ず6人で行き、その後は飲み明かす。
いつもと同じだと思っていたその日、皆が酔い潰れた後、彼女は自殺した。
遺書もあり、警察の捜査でも自殺と断定されたが、彼らは不可解な点に気付く。
ただの友人ではない彼らだからこそ気付いた疑問。
遺書には語られなかった彼女の死の真相とは・・・?
本格ミステリですが、着眼点というか、今までに見たことのない角度に驚きました。
独特の感性をお持ちというのでしょうか。
石持さんの作品は、良い意味で変わってますね。
自殺に見せかけた他殺を暴くというものはよくありますが、自殺した人の心情を知るために議論するというものは初めてです。
信じる心と疑う心。
他人の心情を探るというのは、すごく難しいことだと思います。
ただ、お互いを心の底から信じ合う6人の関係は、すごく素敵で素晴らしいものだと感じました。
あたたかく、そして哀しい物語です。 -
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南アイルランドの宿で、武装勢力NCFの副議長が殺された。
NCFは副議長の殺害を殺し屋に依頼していたが、殺され方が殺し屋の手口と違い戸惑う。
宿泊客は、NCFの以外にアメリカ人大学生やオーストラリア人など様々。
その中の一人、日本人科学者が事件を解いていく。
果たして犯人は殺し屋なのか、それとも…?
舞台がアイルランドなので、少し背景がわかりにくい部分がありましたが、日本人が客観視されているのが逆におもしろく思えました。
伏線がたくさんあり、読み進めていくのが楽しくて仕方なかったです。
作者に見事に踊らされた感じ。
こういうの、好きです。 -
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す・げぇーな。
ものすごく溜めて、本心こう思った。声も出ちゃった。いやまじで。
石持浅海さんの作品は基本、シチュエーションにそって論理の構築力で読ませる、独特の技の美しさにあると思っている。人はあまり死なない。大きな事件は起こらない。
例えば青井夏海さんや加納朋子さん、坂木司さんの作品もそうと言えば、そうね。状況が提示され、条件が与えられ、実際にことが終わったあとで、始めて探偵はそこに現れ、ひとつひとつの手がかりを拾っては違う、そう、と分別しながら仕分けをし、真相を見つけ出す。スタイルはその点、非常に近いと思う。ただ石持浅海さんがそれらと全く異なるのはおそらく、石持さんが男性である点(これ、ちょっとバイアスかかってるかも?)と、彼が会社員だと言う点だと思う。
青井・加納・坂木の3氏の作品を図式化するとしたら多分:
解決にいたるロジック&アプローチ=論理+人間心理を斟酌した誤謬の排除
比較して今回の作品に顕著な石持氏のアプローチは:
解決にいたるロジック&アプローチ=論理+(会社員としての常識+会社の論理)を
斟酌した誤謬の排除
だったんだと思う。
いやこれ、すげーわ。正直会社員でかつ、割としっかりした組織に働いていない限り、判りづらい所もあると思うけど、もしこの本を読むあなたがその「資格」を持っていたならば、底意地の悪いカイカンとともに、この本の良さがじわじわ判る、そう思います。
本当にものすごく、目の前で丸め込まれるカイカン。すげー。しかも前段の言葉を翻すようでなんだけど、多分読者は何度か、おいおいそんなにうまくいく訳ないじゃん、所詮出てくるのは「偶然紛れ込んだ」パワポ資料(しかも事故報告書と書いてあるたった一枚の「表紙」)だけなんだよ?大の大人が?と、思うだろう。もちろんその通り。だけどこの物語がすごいのは、おそらく作者もそれがわかっていて、ノン・サラリーマン読者へもきちんとフォローしてくれているのだ。補ってあまりある、ワトソン役の女性の素人視線によって。
彼女が何度も何度も繰り返し感じる違和感、それの昇華を追体験することで読者はきちんと、作者がどんと転がしてくるこのロジック戦争に被弾せずに、なんとかストーリーに戻してもらうことができる。いやはや。ここまで懇切丁寧な推理小説がかつて、あったんだろうか?
すんごいなこの話。サラリーマンなんてクソ面白くもない、ってぶつぶつつぶやく人に一度、読ませてあげたいね。あたしが社長なら新入社員にこの本、研修で読ませてもいいと思うわ。
どんだけ会社ってくだらないのか。
どんだけ人って愚かしいのか。
どんだけ人って操られるのか。
つまりは逆に、それが判ってプレイできれば会社って場所は、多分すごく面白い知的なゲーム会場(あるいは戦いのコロシアム)なんだって、判ると思うんだけどね。
なんて、会社に対する尊敬とか愛とかが、さっぱりない発言、失礼しました!
サラリーマンがつまらない、と、嘆く前に、ぜひご一読を。 -
Posted by ブクログ
8月15日。お盆真っ只中で会社ものんびりムード。
そのはずだった。。。
深雪は例年この日に行われる役員報告会議に
課長のサポート役として出席することになる。
それはいつものぬるい会議になるはずだったのに、
「工場事故報告書」が紛れ込んだせいで
なぜか役員同士の競争を煽る場と化して・・・
同じ日、深雪の恋人、拓真は別件で立ち寄った総務部で
万年係長が部長に詰め寄っている場に出くわす。
そして、なぜか係長に巻き込まれてその場から
離れられない状況になると、自分の上司もやってきて
さらに逃げ出せない状況に。
そんな中、会議の最中のはずの深雪から救いを
求めるような無言の電話が。
拓真は覚悟を決め、恋人を救うために論理の闘いの場に
身を投げ出していく。
いやー、面白かったです。
こういう論理の展開が繰り広げられるミステリはいいね。
どっちかというと、「とりあえずやってみよう」という
タイプの自分じゃできないけど。
論理の展開に関わる社員たちが有能過ぎる。
そんな気がしないでも無いが、そんなのは些細な事だと
思えるくらいに、素晴らしい一冊でした。
主要人物、役員たちのキャラと名前が一致するまでは、
ちょっと苦労するかもしれないけど、そこにめげずに
ぜひとも最後まで読んでもらいたい!