梶山あゆみのレビュー一覧
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ネタバレ内容については言うに及ばず、和訳が良い。本書は下記のような注釈から始まる:
"本書は現在「アルツハイマー型認知症」と呼ばれる疾患の研究について記述しており、この疾患名が頻出語となるため「アルツハイマー病」と略記する。また、「若年性」「家族性」などの断りが特にない場合は、弧発性アルツハイマー型認知症を指す。"
本書は「アルツハイマー病とは結局、なんなのか?」という本なので、和訳にあたって慎重に言葉を定義するのは極めて誠実な姿勢と考える。自分は原書をあたっているわけではないので原書と和訳書の比較まではできないが、この注釈が最初にあるお陰で全編にわたって安心して読み進めることができた。
アルツハイマー病とは何なのか、については、自分の認識としては「アミロイドβの蓄積を特徴とする、認知症のごく限られた一類型」(=この世で観測される認知症の大部分はアルツハイマー病ではなく、老化の一類型に過ぎない)というものだったが、本書を読んでその認識はそう的外れではないと感じた。筆者の主張は、「現実としてアルツハイマー病の定義が極めて拡大されている以上、くくったものを正確に描写した要素を定義とすべきである=アミロイドに固執すべきではない」というもので、至極尤もであり首肯する。というか、次第に「アミロイドβの蓄積を特徴とする、認知症のごく限られた一類型」が実在するのかも疑問に思えてきた。アミロイド蓄積が治験の主要評価項目というのは妥当ではないと感じる。
基礎研究に公費を投じるにあたっての「選択と集中」については本邦でもたびたび(否定的な文脈で)議論に上がるが、医薬品開発のグローバルリーダーに見える米国でも同じような悩みは尽きないというのは面白い。 -
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今回は歴史の覇者はだれか、という話。
まず人類の歴史は果てしなく続く文明同士の対立だというクラッシュウーマン。しかし文明の対立は出会いでもある。こうして世の中はグローバルに発展してきた。
次はサイクル。しかし地球全体から見れば、1万年前には地球上に一万を超える別々の世界があったが、現在はほぼ1個になってしまった。サイクル説は視野が狭い。
そして帝国レディエンパイヤ。帝国主義は民族の一体化や壮大な文明の成立にも大きく関与し、現代の国家観を形成するうえで大きな効果を与えたことは否めない。史上大きな成功を収めた帝国は、多数の異なる文化を混ぜ合わせ、新しい文明を作ってきた。さらに民主主義・市場経済・人権ですら、たとえ軍事力を使っても全世界に広めることが、道義的義務だと考えられている。
それでももっと強大な力を持つのはキャプテンドルであろう。いかに対立する経済体制、宗教、思想であろうと$を手に入れたい。なぜなら貨幣は精神の革命で、全人類の共有された想像の中にしか存在しない。現在でも誰もが信頼している魔法だ。お金を信じることが出来る、この能力が人類の歴史の覇者。素晴らしい。そして最後には市場が世界を支配する不安もあるが、そうはならない。市場自体も道徳的価値観が頼りだからだ。
では宗教のスカイマン。日本では宗教はさほど重要視されていないと思う。これは神道が原始宗教のまま来ていることが大きいと考えるが、一時期はそうでなかった。日本は近代化を進めるにあたり、神道も作り替えた。国家主義的で人種主義的な思想と結びつけ、さらに仏教・儒教と武士の伝統的考え方を少しづつ放り込み、仕上げとして太陽神女神の直系子孫である天皇を採り入れた。これは魔法のように上手くいき、日本人は恐ろしいスピードで近代化を進めながらも、他の近代国家とは全く異なる独自性を保ち、しかも国家への狂信的忠誠心を持つことに成功した。そして近代的科学技術と猛烈な信仰心を組み合わせれば並外れて強力なカクテルが出来ることを世界に広めた。ロシア・ポーランド・イラン・サウジ・イスラエルそして北朝鮮など日本の例に倣ってきた政府が続出してしまったと書かれている。
世界では宗教というものが、かなり重要な位置を占めることは明らかだ。宗教とは人間を超えた秩序を信じることに基づく、人間の規則・規範・価値観の体系だ。
スカイマンもかなり強力だったが、次回科学革命のサイエンティフィック。この話に度肝を抜かれない人はいないと豪語する。何万年も続いてきた人類が、わずか500年で原子力・遺伝子工学・AIを進歩させたのか。
私たちは次にどこに向かうのか、次号期待大! -
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アルツハイマー病の本。面白い。
アミロイドβやタウタンパク質をターゲットとした治療(なかなか上手くいってない)に固執している業界への批判が多くあるがフラットな視点で描かれている印象。またアメリカローカルな話題は少し退屈だった。
以前読んだ下山進さんの「アルツハイマー征服」も面白かったが、アルツハイマー病研究で面白いポイントは原因とされる病理について結論がでておらず、日々のニュースでアデュカヌマブなどの新薬についてプロセスが追うことができること。
・アルツハイマー病の定義は何?
・主犯は誰?
現在進行系の問題のため本書でも結論は無い。
頭を切らずに観測しやすいアミロイドβをまずターゲットにして駄目なら次行こうって感じなので時間はかかっても前には進んどるやんとは思う。続報に期待。 -
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とても面白かったです!
1〜4部まであり、その中でさらに章立てがしてあるのですが、3部までは著者がずっと怒ってます。本当にずっと怒っているので、読み手もいつのまにか引き込まれ「そうだそうだ」という気持ちに…。怒りは人を煽動するのだと本旨とはあまり関係のない感想を抱きました。
とはいえ、もちろん内容も素晴らしかったです。アルツハイマー病の研究で何が間違っていたのか、今後どうすればいいのか、通説への鋭い批判が気持ちいい。あくまで過去の研究そのものへの敬意は感じられ、著者はアルツハイマー病という人類にとって大きな危機に誠実に向き合っているだけなのだと思いました。
しかし、アルツハイマー病研究の構造をメタ視点で見ると、どうしても構造的問題によって現状があると言わざるを得ないと思います。スタート地点から目標を見誤り、気づいたときにはゴールへ向かって組織や資金などなどが整備されていて、走り出した研究はちょっとやそっとじゃ止められない。コンコルドの誤謬とは少し違うけれど、人間の感情がこの方向性を大いに決定づけていると感じました。
単純に新しい知識も増え、今後のアルツハイマー病の病理仮説についても理解することができ、読んでいて楽しかったです。今後のアルツハイマー病の研究についても動向をチェックしていきたいです。 -
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ホモサピエンスがどのように我々に変化していったのかを、描くサピエンス全史の漫画バージョン。今回は「歴史の覇者」編です。
歴史の方向性はどのように決まったのか?なぜ対立がずーとあるのか?誰かが言うように陰謀があるのか?裏で誰かが糸をひいいているのか。
なぜ、ホモサピエンスがその他の動物と違って今の隆盛を誇るようになったのかを色々な観点から考察していきます。なんか、堅苦しい感じがするが、漫画なので楽しいです。
歴史上バラバラだったホモサピエンスがどのように統一されてきたのか?
その有力な原動力として 帝国 貨幣 宗教 をあげて検証していきます。
はたして、どの要素が世界をわりと一つにしたのでしょうか?かんがえてみてください。 -
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2024/06/21 読み始めた
失敗の科学に次ぐ失敗シリーズ。「失敗」の蓄積は自分の一大テーマである。
2024/07/03 読み終わった
第1部でアルツハイマー病の病理?的な話が多く、ちょっと面食らう。難しい〜!と思ったけど、そこはなんとなくの理解で読み進めることができた。
詰まるところ、アミロイドとアルツハイマーの相関関についての初期の研究結果があまりにも良かったため、その後アミロイドの研究ばかりが注目された(医学的にも政治的にも経済的にも)。しかしその後の研究の成果は目覚ましくなく、他の可能性も考えておけば良かった、という話。
ではなぜそのような事態になったか、が第2部と第3部。アカデミズム、製薬産業、研究機関の3者からの視点で紐解いていく。この章は多分に政治的であり、打算的であり、世の中で起こりそう!という感想。
特に面白かったのは、アルツハイマー病の定義の拡大について。アルツハイマー病はその研究の歴史の中で3度定義が拡大されたとあり、そのうち一つの拡大の理由は、「老いに関する公的研究機関が研究(運営?)費を欲しかったから」というもの。つまりアルツハイマー病を老いと関連づければ老いについての研究機関がこの病気の研究をできる=補助金をもらえる、という図式。
もちろん、みんな真面目にアルツハイマー病について研究したかったし、治したかったし、世の中を良くしたいと、(少なくとも少しは)思っているはず。なのに、こういうことも起こるんだ。 -
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ネタバレ脳の可能性を開拓し続ける超名著。
ディキンソンは「僕たちの脳は空よりも広い」なんて言ったわけだけど、まさしくそれを実感できる一冊でした。
『生物と無生物のあいだ』で福岡氏は、「生命とはなにか?」に対して「それは動的平衡にある流れである」と答えた。つまり、必須と思われている機能ですら無いなら無いなりになんとかするのが生物だってわけだな。
本書はそれを脳科学的に証明していて、脳はこの能力が特に強いというのが仮説の一つになる。脳が半分になったって、日常生活を変わらず遅れる人がいるのはそれが理由だ。
特に面白いのが、多くの人が学習しているパターン以外にも、脳は独自のパターン分けが出来るという部分かな。人工内耳やエコーロケーション、触覚系など、脳は勝手に学んで世界を理解できる形で整理してしまう。
そうした意味を含めて、脳は「ライブワイヤード(絶えず自らを改造する)」装置なのだと筆者は語る。難しい言葉になってるけど、つまり可塑性が高いのが脳ってことだな。
ああ、あと夢を見る理由に、睡眠を取らなくてはならない生物が、視野の脳領域を確保するため(他の感覚装置に領域を取られたくないため)というのは結構新しい視点だった。真偽はどうであれ、過去の記憶の整理よりは納得できる説だと思うかな。 -
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5~7歳になると死は例外なく訪れると全ての子供が悟る。増えたいという原始細胞の根源的な欲求。サーチュイン遺伝子。長寿に対する遺伝子の影響は低い。遺伝子を次世代に受け渡せる程度の寿命。老化は1つの病気。肺炎、インフルエンザ、胃腸病、結核が死因の半分以上。サーチュイン遺伝子。酵母すごいな。今井すごい。山中すごい。マウスすごい。寿命やワクチンも昔は違った。NMN。リプログラミング技術と倫理観。デザイナーベビー。新しい価値観を花開かせる要因としては旧来の見方に頑なにしがみついていたものが世を去るのが1番大きい。王立協会の紋章の下「言葉によらず」老化という診断を受けられるようになった!世界を変える勇気を持とう。ああ、生物学者になりたかった。もっと勉強すれば良かった。
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脳には、可塑性と言って、一生にわたって変化し続けるような性質があることは、知ってはいたけれど、この本を読むまで、そこまでダイナミックなものなのだとは思っていなかった。
本書に出てくる事例として、例えば、脳が半分だけになったとしても、人間の脳は、半分の領域の中で必要な回路を作り、日常生活にやや不便はあるものの、問題なく生活できるようになった人や、耳の聞こえない人のために、音に反応して皮膚を刺激するベストによって、やがて、脳は、皮膚の刺激によって「聞く」ことができるように変わっていく事例などが上げられている。
人間の脳は、あらかじめ、生まれながらに機能や回路が決まっているのではなく、
必要最低限の機能のみインプットされた状態で生まれ、自分の行動や周りからの影響によって、常に回路を書き換え、変化していく(筆者の言葉では「ライブワイヤードな」)ものである。
本書は、読みながら、とてもワクワクとさせてくれる、脳とテクノロジーの可能性の素晴らしさを見せてくれる本だった。 -
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老化の原因と若返りに関する研究家であり、知られるハーバード大学医学大学院で遺伝学の権威ですでもある、デビット・A・シンクレアによる著書で、「老化」に関する一冊。本書では「老子」は病気であり、抑制することができるという。前半はDNAや遺伝子など様々な研究からの知見が書かれており、理解はできないが生物の進化に関する「カークウッドの理論」の話はとても面白かった。中盤からは、実際に「老化」を抑えるためにどのような食事や運動、行動、また薬が良い効果をもたらす可能性が高いかが示されている。また、後半では、「老化」の抑制が社会にもたらすメリットとデメリットをあげ、この研究に対する世間や他の研究者からの批判にも真摯に対応している。
本書で紹介されている、健康寿命を伸ばすための行動を鵜呑みにするわけではないが、取り入れられるものは取り入れてみたいと思った。