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蒸気機関シリンダーの寸法のムラをなくせ! 産業革命期に生まれた精密の概念を極度の高みに引き上げた技術者や、フォード、セイコー、インテルなどの企業の奮闘を描きながら、微細の極限を目指すテクノロジー物語を綴る。知られざる技術史を明かすマスターピース
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Posted by ブクログ
人にスポットを当てながら精密さがどのように進歩してきたかを解説する本。各章に公差が振られており、段々と精密さが上がっていくのが面白かった。 精密さを語るにつれて、長さの単位をどのように決めるべきかまで考える必要があるというのは確かにと感じた。
素描で認識される世界において、精密さが求められるのは、工学的な環境において。人間は完全なる再現性による安全安心、利便性を求めているからでもある。しかし、座標軸や時間軸の精密さは、人間や自然が、少なくとも今のコンピュータでは精密には規定し得ない存在だという事を却って浮き彫りにするようでもある。 素描...続きを読む的な世界とは、線にゆらぎがあり、陰影に曖昧さがある世界。一方、工学が求めるのはCAD的=コンピュータ設計的な厳密に制御された空間。 人間は常にこの両方を生きている。 感覚の世界と制度・構造の世界。 本書、『精密への果てなき道』は、この断絶を埋めようとした数世紀にわたる人類の試みの記録だ。精密さと基準が、現代世界のあらゆる技術進歩を可能にしてきた。時計や蒸気機関のシリンダーといった18世紀の工業革命の原初から、EUVリソグラフィーによる最先端の半導体製造まで、精密さの歴史を縦断していく。 ー 不正確で精密さに欠ける部品を、組立ラインの目の前を通っていく工作物に作業員が取り付けようとする。ところが受け付けられずにうまく嵌まらない…組立ラインは遅れ、つかえ、最終的には止まってしまう。作業場にいる工員全員の仕事が乱れ、自動的に送られてくる部品が不格好な山をなし、自動車の供給が滞る。生産全体が遅延し、文字通り歯車が軋むような音を立てながらゆっくりと停止することになる。いい換えれば、生産ラインという情け容数のない独裁体制を動かし続けるには、精密さが絶対に欠かせないのだ。一方、手作業で車を生産する場合、かならずしも精密さを最優先にしなくていい。精密さが必要になれば、手仕事の工程のなかで対処することができる。 教育にも「人間の規格化」という側面がある。故に人間は代替可能な労働力に成り下がるばかりか、人口増という規格化商品の量産化まで可能にしてきた。精密さは、効率化のための量産化に対しても、その鍵を握る。 曖昧な存在としての人間が、再現可能な世界を作り上げる事で自らを生きにくくしていく。長い過渡期とも言えるが、その純粋化の帰結こそ、ディストピア、シミュレーション世界なのかも知れない。
蒸気機関から錠前、帆船の滑車ブロック、時計、銃、自動車、ジェットエンジン、ハップル望遠鏡、GPS、半導体チップと現在までの約250年間の「精密」に対するエンジニアの取り組みと発展を描くノンフィクション。読むまでは技術系の本でハードルが高いように思ったが、筆者自身のエピソードを盛り込んだり、必要以上に...続きを読むマニアックな技術には踏み込まないが必要最小限の技術は分かりやすく解説したりと、非常にバランスが良く面白く読めた。 熟練工の多かったイギリスやフランスでは機械化が彼らに反対されていたが、その一方でアメリカには熟練工が少なかったため機械化工業が進展した、と良く言われているが、1853年にニューヨーク万国博覧会を視察したイギリスの「精密」技術者ホイットワースがこの時期にそれを予言していたのは凄い。この人の豪邸にあったビリヤード台は完璧な平面だったエピソードにはクスりとさせられた。 精密さが過ちを許されないほど高いレベルになると、ジェットエンジンの小さな部品一つで旅客機が墜落寸前に陥るといった、ごく僅かなエラーが大きな危険に発展する事にもなる。 有名なハップス望遠鏡はレンズ製作で使用された測定装置が僅かに狂っていたため当初は完全に失敗作であったが、後に宇宙で改修されたものというのを初めて知った。映画になり得る物語。精密の深刻なエラーは人命を脅かすが、現代の世界の文化文明の発展には欠かせないと感じた。 現在からすると「マジで?」と思わされるアプローチも面白かった。GPSは今では当たり前と思われている時間差計測ではなく、ドップラー効果を利用する設計思想だったのにも驚きだった。この章については、それまでの機械やレンズの「精密」ではなく、「精密」に場所を測定する技術について述べられている。 トランジスタの章で述べられている、有名な「ムーアの法則」が予言ではなく、その言葉が業界に法則に従う発展を促したという指摘は面白い。 最終章で「精密」と「不精密」の二つの概念を同時に大切にする人たちとして日本を取り上げている。日本人が工業製品に精密さを追求する一方で、職人技にも敬意を払うのが素晴らしいと絶賛しているが、量産機械よりも熟練した職人技の方が優れていると日本人が考えている事は知らなかったようだ。それだけ日本の職人が異常に「精密」に仕事をしているからだろう。
非常に読みにくい日本語だったが、読み物としては非常に面白かった。 「精密」の歴史についてわかりやすく述べられていて、精密さのレベルに応じた逸話も面白いものが多かった。 精密さを求めすぎることに対しての批判も述べられていたが、「工学」の視点によるものであり、そのアンチとして日本の手作りでの時計職人の話...続きを読むが述べられるなど、「人の手に負える」かどうかに重きを置きすぎているように思われる。 仕事柄、「精密」に触れる機会が多いためちょっとしたうんちく話にも活用できそうだ
2025-11-25 精密の歴史が思ったよりも短く、とんでもない速さで進化してきたのが一望できる。人間が実感できるスケールからあっという間に原子/量子のスケールまで進んでしまうという凄まじさ。 実はいちばん面白いのは「おわりに」だった。不変の物理法則に基づいた指標が完成したのが21世紀になってから(...続きを読むkg原器)と言う、技術と政治?のアンバランスさが印象に残る。
精密の概念はなぜ生まれ、どう育ち扱われてきたのかを時代と共にエピソードを交え追いかける。自動車やGPSの話が興味深かった。10章については日本人には腹落ちするだろうけど、別の文化圏の人にはどう受け取られるのか感想を聞きたい。
現代社会が如何に精密工学に寄っているかを、技術史の観点で詳述。 ヒトでは感知しえないレベルにまで、水準が進んでしまっている中、本当にどこまでやらないといけないんだろう、という疑問というか余韻が読後に残る。 一方、最後の10章はまるまる日本。精工舎の工場見学の結果のあれこれと、人間国宝という制度がある...続きを読む我が国は、伝統というかあいまいさと工学的な精密さを両方それぞれに意味を見出し、許容する日本社会について、言われてみればそうかと気づく。日本リスペクトにあふれた本。
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精密への果てなき道 シリンダーからナノメートルEUVチップへ
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サイモン ウィンチェスター
梶山あゆみ
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