山内昌之のレビュー一覧
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中東地域を中心に今も世界は危険な火薬の匂いに満ち溢れている。先の大戦ではヨーロッパではドイツやイタリアが、太平洋では日本がその混乱の中心となって、力で世界を圧倒しようとする、今でいう覇権主義の様な立ち振る舞いをした。勿論、結果が示す様に、それらの国々は大陸を超えて地域を超えて横につながる更に強力な連合体によりその野望を打ち砕かれ、最終的にはその際に勝利した国々が今も超大国として君臨する結果に繋がっている。そしてその時敗れた国が今となっては戦勝国と同じ様に世界のトップクラスのGDP国家として君臨しているのは、それらの国が国民性だけでなく地政学的にも本質的な強さを持っている事を証明しているのかもしれない。
本書は過去の2度の世界大戦に続く「第三次世界大戦」の可能性について、当時の強国とは異なる勢力として力を蓄えてきた第三者の登場から分析していく内容となっている。その主な勢力としては中東諸国及びその近隣に「火種」として存在する、国家の形を採らないイスラム勢力としている。前述した「中東の火種」だ。火種という呼び方は彼らに対しては失礼かもしれない。何故なら彼らにも自分たちの生存の権利と存在意義、そしてその為のやり方があるからだ。第三次世界大戦というとどうしても近隣諸国特に台湾に対する武力行使をちらつかせる中国の存在が気になる所だが、本書がメインに扱うのはそれではなく、イラン、トルコ、ロシア、シリアが中心となる。世界地図では西のヨーロッパ、東の中国、北にロシア、南にインドを望む地域であり、正に文明の十字路。そしてその地下には膨大な量の石油が眠る。この近隣では今もロシアとウクライナの戦争、イスラエルのガザへの侵攻など世界規模ではないものの、火事は発声中だ。そしてそれら国への経済的な措置を見れば、既に経済の世界では対立は世界規模であると言える。悲しいかなその戦果に巻き添えを喰らった多くの一般市民にも被害は出ている。
本書が扱う前述の4つの国だけを見れば、それらの指導者であるイランのハーメネイ氏、ロシアのプーチン大統領、トルコのエルドアン大統領、そして今となっては国外に亡命したシリアのアサド元大統領。彼らの名前がニュース報道を賑わせる事は多くあり、その世界に対する影響力の強さが大きい事がよく解る。加えてイスラム勢力のIS(本書記載時はテロとイコールになる程の世界の脅威であったが今2026年現在は弱体化)などが加わり、中東地域は正に多くの火種が存在している。その結果である今の混迷した状態を見るだけでなく、そこに至る歴史的な経緯、指導者たちの考え方、何より地政学的に見た地域の特性を理解する事は今後の未来を展望する上で重要だ。それがいつか世界規模の大戦につながりかねない事を、我々は日々理解しておく必要がある。エネルギー資源や食品の物価値上げも元を辿れば、こうした混迷や燻る火種の影響を受けている事を理解すべきだ。
こういった書籍を読んでいると、中東地域に限らず各国が(地理的に難しい国家は特に)恐らくは少なくとも数十年先、場合によっては100年先も見据えて自国の在り方を定義し、長期展望に基づく思惑の中で闘っていることがよく解る。相手型の出方は完全には読み切れないから、幾つものパターンを想定して状況に応じた複雑な舵取りをしている。側から見たら、それは騙し合いや演技にしか見えないこともある。だが国家の指導者たちは「歴史に名を残す」人物として死力を尽くしているに違いない(他国を侵略する指導者を礼賛するつもりはない)。ロシアのプーチン大統領もトルコのエルドアン大統領選をそうした人物の1人として見ていく事で、また違ったニュースの読み方になるのではないかと思う。自分の生活だけでなく、家族、友人、同僚の人生にも影響する自国の指導者の選択を誤らないよう、一人一人がしっかり考えることの重要性を再認識する一冊。 -
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歴史に関する書籍75冊の書評集。1冊あたり概ね2ページ〜4ページの短さで説明されていて読みやすそうに見えたが、意外と難しくて読むのに時間がかかった。私が聞いたことがない本・全然知らない知識・専門外の内容ばかりで難しかった。読むのが大変だったが、学びは多かったとは思う。
23ページ
ある一つの地域や時代に詳しいだけでは、物事を類比することはできない。自分が好きな領域だけに閉じこもっていては、その分だけ知識は増えるであろうが、歴史の大局的な見方はなかなか磨かれないのである。
→同意はするけどやはり知らない領域・苦手な領域を学ぶのは難しい。
71ページ『アルファフリー イスラームの君主論と諸王朝史)』
望ましい知識とは、「学問の専門家と相談し、当面する困難状態をそれによって克服することを可能にする程度に学問に親しむ」ことを意味する。政治家は学者になる必要がなく、必要なときに学者を活用すれば良いのだ。
→これも同意できる。現代でも同じことが言えるし、もっと言えば政治家と学者以外の組み合わせでも当てはまると思う。現実的で合理的な落とし所はここになることが多いだろう。
245ページ『ハイブリッド戦争 ロシアの新しい国家戦略』
日本人は軍事という観念をあまりにも狭くとらえがちな国民である。古典的な陸海空の戦争空間ではなく、宇宙・サイバーを通した挑発や衝突は稀な現象ではない。
→(主語が大きすぎるような気はするが、)主旨には気づきがある。昨今の海外からのDoS攻撃やフォームスパム送信の増加は国際的な攻撃であり軍事の一部と考えるべきというのはわかると言えばわかる。 -
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ネタバレフランスが犯した失敗の本質を的確にした指摘した上で、物は、祖国フランスの救済策を次のように書いている
強くなること
敏捷に行動すること
世論を指導すること
国の統一を保つこと
外国の政治から世論を守ること
祖国の統一を撹乱しようとする思想から青年を守ること
治めるものは高潔のある生活をすること
汝の本来の思想と生活方法を情熱的に信じること
戦時体制のアメリカ政府は、統合参謀本部を始め、軍のポストに多くの民間人を起用した。それが知のバラエティーを豊かにし、組織にバランス感覚を植え付けたのだ
学校での成績が重視される10日システムに象徴されるように、日本軍の組織人事は極めて硬直的なものであった
羽を和ませ、気分を一新させる場合、ジョークやユーモアも必要だ。いざと言う時、こうした知の潤滑油を使うことができるかどうか。
失敗からいかに学ぶかこれは軍隊に限った課題ではない。贈収賄や談合、粉飾決算、個人情報流出問題等と、今なお企業不祥事が後を絶たないのは、組織の失敗の拡大再生産と言う負の連鎖に陥っているからだ -
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太平洋戦争の日本軍の失敗に学ぶ本
組織論などで現代にもじゅうぶん通じる、ということは普遍的、本質的な話なんだろう
日本企業の組織あるあるではあった
作戦が失敗した
アメリカ→原因を分析、次の作戦に反映
日本→「気合が足りない」「次は勝てる」
無謀な意見が出た
アメリカ→ロジカルに考えて判断
日本→「あいつは本気だ、やらせてやろう」
第一陣が敗退したら、、、
アメリカ→コンティンジェンシープランを持っている
日本→「失敗するわけない」「失敗を考えるのは異端だ」
今時こんな古い考えの組織もなかなかないとは思うが、
ゼロではないだろうと思う。
少なくともうちの会社も忖度とかあるし、「あいつがあそこまで本気なんだから、一度やらせてみよう」みたいなのはあると思う。
ただ企業であれば、最悪倒産で済むけど、
こと戦争では、そのしょうもない判断で、何千男万の人間を殺すことになる点は忘れてはいけないと思った。
戦史の勉強にもなってとても良い本だと思います。
ただ、かなり難解な文章も含むので眠くはなる。 -
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第二次大戦時の帝国陸海軍が犯した数々の失敗を、個別の事例の丁寧な調査と解説で分析してくれている。この手の本の中でもとてもわかりやすいものだと思う。何を読んでも当時のお粗末な意思決定や視野の狭さに呆れるが、やはり他人事ではない。特に戦艦大和の特攻にあたっての意思決定では、米国留学経験のある知性派でさえ、今考えれば合理的でない決定をしている。本書の分析によれば、「敗戦が濃厚な状況で、大和を温存しておくことは、臆病者のレッテルを貼られるだけでなく、終戦後に大和が敵国の実験などに使用されることになり、これらを何より恐れた」とされている。当時のその立場であれば当然の意思決定かもしれないが、そのせいで数千人の戦死者を出したとなれば、同情できる話ではない。ただ、こういう「空気感」のなかで誤った判断をしていないかについては常に自省する必要があると感じた。
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2016年、安部談話が出た当時に出た本だ。時勢については、変化があるといえばあるし、そのまんまといえばそう見えなくもない。今読み終えるのは、古いかといえば、今に至る社会情勢の進展を知る手がかりという意味はあるんじゃないだろうか。面白かったしね。
一番面白かったのは最後の章、世界史のリーダー論だ。このあたりは、情勢に関係なく読める。チャーチルの評価が高く、それに対して東条英機は低い。その根拠は、歴史や文学への造詣の深さに基づく、洞察力や知性だ。以前読んだ保阪正康著『昭和の怪物』の中で、東条英機は文学など読まなかったと、側近の軍人から証言されている。「われわれ軍人は、小説を読むなんて軟派なことに関心を盛ったら、軍人なんか務まらないよ。」と。その証言は佐藤氏も山内氏も知らないだろうけど、それでも行動からわかるものだよね。
だからといって、小説や歴史を知っていたら、仕事ができるかといったら、またちがう話になりそうだけど。 -
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ヘロドトス、トゥキディデス、司馬遷から、網野義彦の『無縁・公界・楽』まで、歴史学の名著30点を紹介している本です。
近代以前の日本の本として、頼山陽の『日本外史』、慈円の『愚管抄』、北畠親房の『神皇正統記』、新井白石『読史余論』、伊達千広の『大勢三転考』が選出されており、いわゆる近代的な歴史学の枠組みに収まることのない、著者のメタ・ヒストリー的な関心が反映されたラインナップになっているように思います。
ただ、どのような読者に向けて書かれた本なのか、ややわかりにくいという気もします。学問としての歴史学を志す読者にとっては、本書にあげられている著作はいずれも古典的名著であることには疑いがないものの、歴史学を学んでいくうえでの手引きとして本書を利用することはできないでしょう。また、一般の読書人に向けて書かれた本だとすれば、本書の解説を通じて紹介されている本の歴史的位置づけを簡潔に押さえることができるかという点に若干の疑問がのこります。むしろガイド・ブックのような形式ではなく、古今東西の歴史書について著者自身が自由に思索を展開したほうがよかったのではないか、と思えてなりません。 -
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ネタバレ「将来の出来事をあらかじめ知ろうと思えば、過去に目を向けないといけない。なぜかといえば、時代を問わず、この世の全ての出来事は過去に極めてよく似た先例をもっているからである。つまり、人間は行動を起こすにあたって、常に同じ様な欲望に動かされてきたので、同じ様な結果が起こってくるのである。」これは、15~16世紀のイタリアの政治思想家マキャヴェリの言である。
同様に、17世紀のフランスのルイ14世の寵臣だった外交官フランソワ・カリエールは、歴史と外交との関連について示唆に富む発言をしている。「事実や歴史に詳しいと言うことは、交渉家が敏腕であるための大切な素養の一つである。何故ならば、理屈と言うものはしばしば不確かであるから、大抵の人間は前例に従って行動し、同じ様な場合にどうであったかを基準にして決心をするものだから」と。
同じ外交官である著者の佐藤氏も同様に過去と常に照らしながらこの先を見つめることが必要だと説く。
本書は、日本史だが、世界史との関連において日本史を見ていくという方法がとられている。日本の歴史の中で最も世界史の動きから影響を受け、かつ日本が世界の中で大きな存在感を示し、影響を及ぼした時代はいつかと言えば、やはり近代、明治以降になる。そこで本書は、近代日本の歩みに軸を置きつつ、そこから同時代の世界の激動を視野にいれて話を進める。
対談形式の書籍の良い所は、2者の考えのよいところとか、違いを考えながら読み進めれることだが、逆にデメリットもあり、それは、お互いが自分の言いたいことを言おうとするために、そして、自分の知識を悪く言うとひけらかすために、対談なのに、会話のキャッチボールが出来ておらず、読者の頭の中を混乱させてしまうところだ。それをしないためには、発行者の力量だと思うが、こと、本書でいうと、私の理解力不足もあるが、後者かなと思う。佐藤氏と池上氏の対談形式の書籍も読んだが、同じ様な感じだった。もう、対談形式の本は、よっぽどのことがないと買わないかな。二兎追うものは一頭も獲ずか。 -
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▼調べた単語
・翻って(ひるがえって):1 反対の面が出る。さっと裏返しになる。「裾が―・る」2 態度・説などが、急に変わって反対になる。「評決が―・る」
・賢慮(けんりょ):賢明な考え。すぐれた考え。
・コンテクスト:文脈
・プラグマティズム:思考の意味や真偽を行動や生起した事象の成果により決定する考え方。19世紀後半の米国に生まれ、発展した反形而上学的傾向の哲学思想。
・涵養(かんよう):水が自然に土に浸透するように、無理をしないでゆっくりと養い育てることを意味する。「読書力を―する」
・インフォーマル:公式でないさま。形式ばらないさま。略式。
・逡巡(しゅんじゅん):(スル)決断できないで、ぐずぐずすること。しりごみすること。ためらい。「大学に進むべきか否か逡巡する」
・帰趨(きすう):(スル)物事が最終的に落ち着くこと。行き着くところ。帰趣。「勝敗の帰趨を見とどける」「人心の帰趨するところを知らない」
・フロネティック・リーダー:アリストテレスのフロシネス(賢慮)という概念に基づいて野中郁次郎一橋大学名誉教授が提唱したものです。この賢慮型リーダーシップには、①「善い」目的をつくる能力、②場をタイムリーに作る能力、③ありのままの現実を直観する能力、④直観の本質を概念化する能力、⑤概念を実現する政治力、⑥実践知を組織化する能力、の6つの能力が必要とされます。
・フロネシス:理念と実践の相互作用がなくして生成されることはあり得ず、その方法論は実践的推論です。実践的推論による結論は、演繹的三段論法のように論理的真偽ではなく、仮説検証型フィールドワークなどにより、仮説設定と修正を反復することにより導かれます。
・演繹(えんえき):普遍的命題から特殊命題を導き出すこと。一般的に、組み立てた理論によって、特殊な課題を説明すること。
・帰納(きのう):推理・思考の手続きの一つ。個々の具体的な事柄から、一般的な命題や法則を導き出すこと。
・拙劣(せつれつ):(技術や出来具合が)へたなこと。つたないこと。
・軍事テクノクラート:政治経済や科学技術について高度の専門的知識をもつ行政官・管理者。技術官僚。テクノクラット。
・狭隘(きょうあい):せまいこと。
・セクショナリズム:一つの部門にとじこもって他を排斥する傾向。なわばり根性。
・法匪(ほうひ):《匪は悪者の意》法律の文理解釈に固執し、民衆をかえりみない者をののしっていう語。
・悪弊(あくへい):悪い習わし。悪習。悪風。「悪弊を断ち切る」
・兵站(へいたん):戦闘部隊の後方にあって、人員・兵器・食糧などの前送・補給にあたり、また、後方連絡線の確保にあたる活動機能。ロジスティクス。「兵站部」
・拙速(せっそく):できはよくないが、仕事が早いこと。また、そのさま。
・巧遅(こうち):出来ばえはすぐれているが、仕上がりまでの時間がかかること。
・俊英(しゅんえい):学問・才能などが人より秀でていること。また、その人。
▼付箋をした箇所
P.15
実践知を形成するための基盤の一つは経験である。とりわけ重要なのは修羅場経験、そして成功と失敗の経験だ。
論理を超えた多様な経験が欠かせない。
手本となる人物との共体験も、リーダーシップの形成に大きな影響を与える要素であろう。
もう一方では教養(リベラル・アーツ)も重要な要素である。哲学や歴史、文学などを学ぶなかで、関係性を読み解く能力を身につけることができる。
そんな弁論術も含めた政治力は、フロネティック・リーダーの重要な要素である。
P.17
直観を概念化する能力を挙げた。換言すれば、暗黙知を形式知化する能力である。概念化、言語化できて初めて、組織的な共有が可能になる。それにより、組織からのフィードバックを得て、直観をさらに磨くことができる。このスパイラルアップのサイクルは、言葉によって起動されるのだ。
P.20
いま実行すべきは、サイロの破壊とタスクフォースの創設を通じた機動的な知の総動員である。それが日本企業復活のカギだと私は確信している、
P.44
哲学は「どうあるか」という存在論と、「どう知るか」という認識論で構成され、その両面から、真・善・美について徹底的に考え抜く。それによって、モノではなくコトでとらえる大局観、物事の背後にある関係性を見抜く力、多面的な観察力が養えるのだ。
P.45
フロネシスを備えたリーダーを、私はフロネティック・リーダーと名づけた。そうしたリーダーは、以下六つの能力を備えている。
①「善い」目的をつくる能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのままの現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
P.52
イノベーションは、ある理論を前提とし、そこから論理分析的に正しい答えを引き出す演繹的思考では実現しない。完全競争状態の市場という理想郷を不完全状態に変えることで、企業は利潤を手にすることができるという考えをモデル化したのがマイケル・ポーターだが、そういうやり方では現実の延長線上にある戦略や革新ならぬ改善しか生まれない。
それに対して、個別具体の現実から出発し、新しいコンセプトや物事の見方を打ち立てようという強い思いから生まれる帰納的思考が、イノベーションには不可欠となる。帰納的思考は最後には必ず行動につながる。行動によってみずからの考えや判断の正否がわかるからだ。
P.217
「ああ、兵は拙速を尊ぶ。巧遅に堕して時機を失うよりは、最善でなくとも、次善の策で間に合わせなければならない」
P.218
「目前の悲惨に覆われて全局を忘れてはならない。これは洋の東西を通じ、いつの世にも変わることのない指揮官の統率である」
P.230
彼らに共通するのは、戦に臨む不動の信念であり、臨機に重大決断を下せる柔軟な頭脳であった。そのうえ闘魂と敢闘精神はアメリカ人さえたじろがせるほどだった。彼らなら、南雲のように優柔不断を繰り返すことも、致命的な判断ミスを何度も犯すこともなかったろう。
P.249
インフォメーションがあったことはほぼ間違いない。問題は、それを適切に分析し、情報(インテリジェンス)に転換して有効に活用したかどうかである。 -
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別に世界を駆け回る仕事をしているわけじゃなし。仕事や日常生活にそれほどかかわるとも思えないんだけど、興味をひかれ面白く読んだ。もちろん、世界情勢というのは、日常につながっているというのはわかるんだけどさ。でも、それって直観的な理解とはちがうと思うんだよね。理屈でいわれて、まぁそうだね、というような。でも、本書は面白い。なんだろうな。ひとつには、そこに人間同士のポジショニングというかなぁ。悪の指導者という一個の個人が、どのようnまわりに影響を与え、権力を得て基盤を作り、ひいては国を動かしていくか、という構図がみえるからだろうか。うん。個人の単位からスタートしているから、面白いのかもしれないな。プーチンといえど、スーパーマンではなく、実は集団間の利益調整によって存在が固められている、みたいなね。そういうのって、日常でもあるのかもしれない。
よく知らない中東の話や、あるいはニュースでよくみるトランプ、北朝鮮情勢もまた、別の意味で興味深く読んだけどね。 -
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エコノミストの『2050年の世界』、フリードマンの『100年予想』をここのところ読んできた。
フリードマンの方はまだレビューにまとめてないが…。
日本については両者の見解が大きく異なるのに驚いた。
依って立つ理論の違いによるのだろう。
エコノミストは人口動態学、フリードマンは地政学だ。
最近地政学をタイトルに謳う本が多い。
その一冊として、本書を手にしたというわけで。
で、本書は必ずしも未来予想の本ではないが、フリードマンと共通する認識もあった。
例えばポーランドの評価。
地勢的にヨーロッパの中で重要な位置にあり、大国とみるべきだ、と。
ショパンの繊細なイメージと結びついて、ソ連・ロシアとドイツに蹂躙されたかわいそうな国、という日本人によくある認識とはかなり異なる。
北極海航路の話は、エコノミストの方でも触れられていた話だったが、本書では日本への影響にも少し触れられていたところもあり、津軽海峡や宗谷海峡が今後地政学的に重要になる、とか。
それ以外でも、驚いたこともある。
まず難民問題。
シリアなどの難民が、ドイツのNGO、NPOにより突然片道航空券を持って押し寄せる事態が起こりかねないという。
労働力不足が解消される? いやいや、全く受け入れ態勢が整わないまま事態が進み、大混乱が起きるのだろうな。
シーパワーが変わらず力を持ち続けるという話を読むと、中国がなぜ今海洋進出を焦って進めているのかが腑に落ちる。
沖ノ鳥島問題というのも、びっくり。
海洋法条約では限りなく「岩」に近いため、中国の南沙諸島問題のカードにされかねないのだそうだ。
エネルギー問題についても、考えさせられる。
民需であれ、軍需であれ、飛行機、ロケットは石油でしか飛ばせない。
石油は今後、戦略物資として温存させられる国とそれができない国に分かれていく。
日本もエネルギーミックスで原発を積極的に考えよ、というのだが…。
これはどうなのか。
数十年後の戦争と、一億年先までの地球環境とをどう考えていくのがいいのだろう。