山内昌之のレビュー一覧
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著者の山内昌之氏は、中東・イスラーム史や国際関係史を専門とする歴史学者。
本書は、中東で進行する第二次冷戦とポストモダン型戦争が複雑に絡む「中東複合危機」を、歴史や地政学の観点から分析するとともに、その危機が第三次世界大戦をもたらすというシナリオを検討したものである。
著者はまず、現在の世界の状況を、自由主義対共産主義、資本主義対社会主義というイデオロギーの差異を基本とする国家のブロック対立を特徴としていた「第一次冷戦」に対して、中国、ロシア、イランのような、均質なイデオロギーを持つわけではないが、独裁や権威主義的な統治様式に依拠する国家群が、米欧本位で作られた国際政治経済・国際法のシステムに -
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古来組織と嫉妬は背中合わせでありました。
インテリジェンスの世界でも「歴史についてよく勉強すること。歴史は相似形をかたち作ることが多いのでそれを見逃さないために。加えて動物行動学的なものと嫉妬についてもよくよく勉強すること。人間の行動原理がわかるから」といったことがよく言われるようで、この本は嫉妬の歴史についてひも解いている本であります。
嫉妬というとプライベートの領域では女性と同一視されることが多いですが、仕事・業務・権力と紐付いた嫉妬というのは男性女性関係なく凄惨なものとなります。古来中国の宦官や大和王朝の公家に代表されるように、男の嫉妬は女性よりもむしろ陰湿さ激しさを増す場合が多いよう -
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げに恐ろしきは、男の嫉妬…。この本には男の嫉妬にまつわる妨害、追放、殺戮にまつわるエピソードが古今東西に渡って収録、紹介されてあって、読みながらおなかいっぱいになってしまいました。問題作だと思います。
あんまり具体的なことは書くまいと自分に 戒めているが、僕がとある出来事から学んだことは、男にとって嫉妬という感情が自分という人間を焼き尽くしてしまいかねないくらいに度がし難い感情であるということでした。やはり、嫉妬というものは女性のそれよりも男のそれのほうが何倍も激しいものなのだということを実感した次第でありました。
この本はそんな「嫉妬」というものについて、古今東西のさまざまなエピソード -
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東京大学大学院総合文化研究科教授の山内昌之氏の新刊。
本書はちくま新書の企画として『政治学の名著30』と同時期に出版されたものだが、内容はタイトルの通りである。『史記』『ガリア戦記』『読史余論』などの古今東西の歴史の名著がずらりと並んでいる。
名だたる歴史家がいかなる眼差しで時代をとらえ、語っているのかを本文を抜粋しながら、ごく簡単に説明されている。
ただ、恥ずかしながら私はこの本で紹介されている「古典」をほとんど読んだことがなく、自分の無学さ、不勉強さに恥じ入る次第である。しかし本書を読めば、たとえ時間がかかってもこれら「古典」に挑戦し、歴史の面白さを体感したいと思うようになるの -
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国際政治や外交については20年前の本であっても、今の日本を語っているように感じる
中公叢書 山内昌之 歴史と外交
イスラームとヨーロッパの関係を読んで〜異なる価値観を持つ人 との付き合い方は、相互主義を前提として、その人の宗教や思想は 尊重しつつ、自分は それを受け入れる自由 と 受け入れない自由 を持つこと、と解釈した
著者の歴史観は現実的。「歴史は 複雑に入り組んでおり、推測と主観性を消し去ることはできない 」とした上で
「ナショナリズムは、歴史の推測や主観性を増長させる」とのこと
日本と中国の歴史観の違い
「自由と多様性のある日本の歴史家には、データの細部にわたり一致 -
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リーダーシップの本質は、フロネシス(賢慮)ないし実践知と定義している。
"フロネシスの中身を一言で言えば、個別具体の物事や背後にある複雑な関係性を見極めながら、社会の共通善の実現のために、適切な判断を素早く下しつつ、自らも的確な行動を取れる「実践知」のことを言う。そうした知を備えたリーダーがフロネスティック・リーダー"
フロネスティック・リーダーの能力
①善い目的を作る能力
②場をタイムリーにつくる能力
③ありのまま現実を直観する能力
④直観の本質を概念化する能力
⑤概念を実現する政治力
⑥実践知を組織化する能力
典型はチャーチル、目的が共有できなければミッドウェイのように -
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新聞や週刊誌に寄稿したもののまとめなので、一つ一つの文章が短く読みやすかった反面、内容が今ひとつ頭にはいりづらかったです。
リーダーシップと言うよりも歴史に学べと言う方に重点が置かれているように感じました。
リーダーシップも特に政治家に関するものが中心で、学びがないわけではないのですが、サラリーマンなど会社組織におけるリーダーシップを期待していると微妙かもしれません。
ロシアのウクライナ侵攻による学びについては、中東問題と絡めながら、今後どのような事が起きる可能性があるのか?と言う内容は勉強になりました。
リーダーシップと言う観点では、言葉と言動の一致の成功例としてのニュージーランドでの -
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歴史学者である著者が、歴史を学ぶことの効用を伝える一冊。2016年に出版された書籍で、当時の日本の政治に関する著者の見立てが語られている。与党が自民党から民主党政権に移行後、再び自民党になるような時代。過去の歴史から、世の中を見通してみようという試みを感じた。
4章:歴史という武器から学ぶ
が特に印象に残った。
国が最も必要とするのが国民の強い意志であり、「大規模な一丸となった行動」
これを実現するため
①国民向けの公共教育の充実、②道路や橋から光ファイバーや各種ネットワークにいたるインフラの絶え間ない現代化、③高度の学術知識を持った移民の受け入れ、④研究開発と政府の援助、⑤民間の経済活動へ -
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「嫉妬」という言葉を聞いて良い感情だと感じる方は少ないだろう。だが時に自身を奮い立たせる原動力になったり、その気持ちを抱いた後に来る自身に対する嫌悪感から、より精神を高度に成長させる糧にもなったりする。斯く言う私もビジネスの世界では同僚や後輩の昇進に内心平然ならぬ感情を抱いたり、学生時代には好意を寄せる女性が他の男と話をしているのを見ては、自分は大して好きじゃないという想いとは逆の態度をとりながら自分の精神を無理やり平静に保とうとした事を思い出す。これは絵に描いたような嫉妬である。
本書は歴史上の人物にも見られた嫉妬と、それを要因に発生した政変や粛清などを取り上げている。
それは古代ローマ時代 -
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歴史学者である著者が、歴史を学ぶことの意義について論じている本です。
著者は、司馬遷やヘロドトスから現代の歴史学者にいたるまでのさまざまな歴史にかんする議論を紹介し、人間が歴史に対してどのようにかかわり、歴史からなにを学んできたのかということについて考察をおこなっています。
まず目を引くのは、著者が社会史に代表される現代の歴史学の動向に対して批判的なスタンスをとっていることです。著者は、歴史の叙述が生き生きとした文章によってわれわれにその魅力を示すということは、歴史にとって些末なことではなく、むしろ歴史の本質に属するものであると考えており、頼山陽の『日本外史』のような作品についても無礙にあ