鮎川哲也のレビュー一覧

  • 人それを情死と呼ぶ

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    鬼貫警部の「アリバイ崩し」モノです。
    犯人のアリバイトリックはリスクが大きのにも係わらず実行出来たのは首を傾げたくなりますが、それでも完璧に作り上げたアリバイを小さな嘘から少しずつ着実に暴かれていく展開は秀逸です。何気ない伏線が次々と真相に繋がる構成も素晴らしいです。
    お話自体はかなり地味ですが、印象的なラストと、二重の意味が込められたタイトルが深い余韻を残してくれます。あまり知られていないようですが、間違いなく代表作の一つに数えられると思います。

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    2015年09月23日
  • 黒い白鳥

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    漠然とした手掛かりを頼りに、東京から京都、大阪、更に福岡まで飛び、執念で容疑者を絞りこむプロットはとても読み応えがあります。
    鉄道を利用した二つのアリバイトリックは独創的で秀逸です。特にメインのアリバイトリックは単純にして大胆。伏線もきめ細かく、申し分のない出来です。
    前半のストライキや新興宗教の部分はやや冗長な気がしましたが、作品の完成度は高く、探偵小説のお手本のような作品だと思います。

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    2015年09月23日
  • 黒いトランク

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    メイントリックの他、地名のトリックやすり替わりのトリックなど、幾つも盛り込まれているのでとても読み応えがあります。複雑なのに破綻なく構築しているところが凄いです。
    また、探偵役の鬼貫警部は何度も壁にぶつかりますが、ごくさり気ないところからトリックを解体していくロジックが圧巻です。
    全体的に地味ですが、アリバイトリックの最高峰に位置する作品だと思います。

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    2015年09月23日
  • 黒いトランク~鬼貫警部事件簿~

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    本格ものの傑作、という評価は聞こえていたが、今頃になってようやく読んだ。
    確かに、古き良き時代の本格という感じ。
    時刻表トリックって、今の時代には無理だよなぁ、と、年中止まる山手線に乗る度に思う。

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    2013年07月30日
  • 黒いトランク

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    ネタバレ

    文春の「ミステリー100」の上位にあったもので、
    偶然古書店で発見。名作と呼ばれるものはやはり期待してしまう・・・

    分刻みで、XとZが やら 
    時刻表によると人物XがQに・・・やら
    私の頭が理系にできてないせいもあり、何やらややこしい。
    トリックの素晴らしさに付いてゆけないまんま、流されてしまいました。


    犯人、被害者、刑事、その他容疑者、かかわる人々、
    みんなが大学時代の同級生だなんて無理やり感全開ですが、
    これで違和感ないのでしょうか?

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    2013年04月22日
  • 太鼓叩きはなぜ笑う

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    4- 

    全体的にとても面白かったのだが、「白い手黒い手」だけ妙に唐突な展開で、会話文も噛み合っておらず、謎もいまいちな上、筋立も強引に感じられる。特に「竜王氏の不吉な旅」の切れ味鮮やかなラストの後に読むと、かなり物足りない。単純に発表順に並べたのだろうと思われるが、5編中の4番目にこれがあるのはあまり印象は良くない。

    「よろめき」という言葉が頻出するが、三島由紀夫など読んだこともないので、それが流行語だったとは知らなんだ。今では当時の意味ではほとんど耳にしないが、「不倫」以降は死語か。

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    2013年02月27日
  • 謎解きの醍醐味~ベストミステリー短編集~

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    ネタバレ

    『離魂病患者』
    同期でありライヴァルの柊屋との恋の争いに勝って映子と結婚した曾根。ある飲み会の後電車で女性と一緒にいる曾根を目撃したという柊屋。出張中に曾根にプレゼントを持ってきた女。謎の女・石田照子と心中したと思われる曾根。曾根と照子の写った写真。曾根に謎の女の事で相談を受けていた作家・杉の推理。

    『夜の断崖』
    ミナが打ち合わせに行った翌日に断崖から転落死した作家・茅野。遺体の身元確認のために病院を訪れたミナ。ミナが気がついた違和感。前夜に来ていた浴衣に残っていたはずの焼け焦げの痕が無くなっている。茅野の妻の証言。眼鏡なしで行動できない茅野の残された眼鏡。ミナの同僚・吉岡が話したサングラス

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    2012年06月25日
  • 灰色の動機~ベストミステリー短編集~

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    ネタバレ

    『人買い伊平治』
    金貸しの老人を殺害した容疑をかけられた若尾道春。死に際に残された「桐生」という言葉と「WM」のイニシャル。海外に逃亡した若尾からの手紙。シンガポールの娼館で人買い伊平治の下で働く若尾。娼婦との恋。殺害された娼婦の復讐。

    『死に急ぐもの』
    雪の道から転落した車。運転していた会社社長・福田の死。福田の所持していたワンピース。和服しか着ない後妻。

    『蝶を盗んだ女』
    デパートで蝶の標本を盗んだ女を目撃した若林慎一。万引きした女・大村みゆきに体の関係を強要した若林。関係が深まり恋に落ちた二人。若林の元に二人がホテルに入る写真を持ち込み金を要求する探偵。離婚に追い込まれた若林に仕掛け

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    2012年05月08日
  • 黒いトランク

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    論理、論理、また論理。ロジックミステリ好きには堪らないかと。

    だいぶ都合のよい部分も見受けられるし、突飛なトリックでなければ“ウケ”ない現代には少々古めかしく映るところもあるけれど、裏を返せば、こんなにシンプルな謎をここまで緻密に、懇切丁寧に絡ませ解く推理小説、今はなかなかないんじゃないだろうか。

    読んでいる最中、ほんの少し息切れしてしまったけれど、完走してみると不思議と別の作品も読みたくなっていた。鮎川魔力。今度は短編にも手を出してみよう。

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    2012年04月18日
  • 人それを情死と呼ぶ

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    箱根の山中で発見された一組の男女の死体。警察は汚職事件の果ての心中と断定したのだが……。
    鮎哲お得意のアリバイ崩しものにして鬼貫シリーズの代表作。精緻に作りこまれているため、トリックそのものものよりも、捜査により謎が徐々に解きほぐされてゆく様がとにかく愉しい作品。特に中盤、ある事実が発覚し事件の様相が一変してからの展開は圧巻の一言。
    タイトルに込められた意味が明らかとなるラストの描写の美しさも素晴らしい。

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    2011年11月23日
  • アリバイ崩し~ベストミステリー短編集~

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    ネタバレ

    タイトル通り全編アリバイ崩しの短編集。それぞれ趣向が異なり、エッセイも2本挟まれていて充実した内容でした。

    【北の女】タイトルがサスペンスっぽくて好きです。ある事が思わぬ方向を示して、そこから一気に真相が引っ張り出されていくのが気持ちいい。
    【汚点】アリバイ崩しに鉄道ミステリと贅沢な一編。トリックを見破った瞬間、その場所で犯行時の映像がありありと浮かんでくるような様がぞくぞくしました。用意周到で冷酷な犯人のラストが感慨深いです。
    【下着泥棒】下着泥棒事件の瑣末な事が殺人事件の解決に繋がっていくのが流石。濡れ衣を着せられた記者がなんとも哀しい。
    【霧の湖】発見者だったり、温泉旅館の叔父さんだっ

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    2011年09月07日
  • 準急ながら

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    鮎哲お得意のアリバイもの。一見無関係な出来事がひとつの事件に結びついていく過程がスリリング。トリックそのものは単純なものながら、緻密な構成のため、捜査・推理の過程が抜群に面白い。自信満々にアリバイを披露する犯人も可愛いw

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    2011年11月23日
  • 悪魔はここに~星影龍三シリーズ~

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    ネタバレ

    4話収録された短編集。
    どれも現場や事件の状況が異様で、質の高い本格物でした。
    遊び心も随所にあり楽しいです。

    【化師の檻】消えたピエロが不気味でいいです。消失トリックも楽しいものでした。
    【薔薇荘殺人事件】これは見事にやられました。最後の作者の稚気も嬉しい。
    【悪魔はここに】現場の不可解な状況が魅力的です。犯人はわかりやすかったかも。
    【砂とくらげと】鮎川と星影の仲の悪さに笑います。

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    2011年09月07日
  • 黒いトランク~鬼貫警部事件簿~

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    ネタバレ

     記念碑的作品。読んだけど、今ひとつトリックがわかりにくかったなどと言ってはいけないのだろう。この文庫版に収録されている作者のあとがきによると、黒いトランクという作品が成立するまでの紆余曲折がよくわかる。作品のストーリー顔負けなくらいに面白い。
     引用部分の通り、テンポは決してよくはないし、トリックは難解を極める。簡単に言えば被害者が殺される為に動き、トランクが交差することによって読者を欺くわけだが、図解してもらってようやく理解した次第。犯人の遺書が挑戦状という趣向はあまりいただけなかったので、記念碑的作品とわかっていながら★を一個減らしてしまった。

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    2011年05月09日
  • 戌神(いぬがみ)はなにを見たか~鬼貫警部事件簿~

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    ネタバレ

    アリバイトリックは見事。犯人が述懐するように自分が動いたり、遺体を動かしたりするアリバイは読んだことがあるが、なるほど、それが動くのは初めてだ。余談になってしまうが、この本以外でもこの作者の作品ではいろんな物を動かして、見事なアリバイトリックが披露されている。この作品では江戸川乱歩のふるさとが出てきたりと、一風変わった旅行気分も味わえるのがいい。一粒で二度おいしい感があったのでこの評価。

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    2011年03月14日
  • 人それを情死と呼ぶ

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    汚職事件を絡めたプロットは社会派を意識していますが、アリバイ崩しに二転三転する展開と、素晴らしい本格推理小説でもあります。
    情死とみられる男女の遺体発見からはじまり、哀切漂うラストシーンまで読んで、「人それを情死と呼ぶ」というタイトルが大変胸に沁みます。

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    2011年05月09日
  • 沈黙の函~鬼貫警部事件簿~

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    ネタバレ

    鬼貫警部シリーズ

    SPレコードの買い付けに北海道に向かった落水。北海道の会社社長宅に残された蝋管レコード。買い付けから戻らない落水。落水が北海道から送ったSPレコードの中から発見された落水の首。会社社長・米山の依頼した私立探偵・松木の調査。落水の共同経営者・茨木と秘書・昭子にかけられた容疑。丹那の尾行。ホステスのガス自殺から判明した犯人。コインロッカーに隠されたトリック。

     2010年12月22日再読

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    2010年12月22日
  • 時間の檻

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    《五つの時計》
    五つもの時計(の時刻)が立ちはだかる鉄壁のアリバイをいかに破るか。
    「それまでの四つの時計のトリックと違って、第五の時計の謎はアリバイ工作の大きな山」と鬼貫警部も言ったように、このトリックの謎は最も面白かったなあ。
    アリバイトリックが破られる前に、ソバの食べすぎで朱鷺子の腹のほうが先に破れはしまいか。…警部のこのジョークには笑いました。

    《道化師の檻》
    「五つの時計」とリンクしてるような作品ですね。応用発展形とでもいうか。
    “意図したわけじゃないのに”総合すると確かに、出口入口に人目があるトンネルの中からピエロが消失しちゃうのが不思議。
    それをまた“気絶”を糸口にして真相を解

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    2010年12月18日
  • 王を探せ

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    ネタバレ

    鬼貫警部シリーズ

    死亡ひき逃げ事件の現場を目撃され木牟田という男に強請られる「亀取次郎」。現金受け渡しの際に木牟田を殺害するがメモに残された「亀取次郎」の名前。しかし容疑者が多数。丹那刑事の捜査。俳優たちのアリバイ。夫婦で旅行をしていたという男。木牟田殺害の現場写真を写した川井。再びの強請りと殺害。「王」というダイイングメッセージ。電車の写真の秘密。車掌を呼び出した女の秘密。

     2010年12月17日再読

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    2010年12月17日
  • クイーンの色紙

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    鮎川作品は少しずつ読んでおります。重厚な長編もいいですが、本格ミステリのエッセンスがぎゅっと詰まった短編も好きですね。
    バー三番街のバーテンダーが探偵役となるシリーズ。時代を感じさせる部分もあるが、本格ミステリとしての面白さはさすがの一言。アリバイもの、ダイイングメッセージもの、密室に叙述トリックと贅沢な味わいです。伏線の張り方がさり気なく、しかも大胆なのが見事です。

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    2010年03月26日