あらすじ
1949年12月10日、東京・汐留駅に届いた大型トランクのなかから、男の腐乱死体が転がり落ちた! 容疑は当然、九州からトランクを発送した近松千鶴夫にかかったが……彼もまた、瀬戸内海上に漂う死体として、岡山県で発見されたのだった! 真犯人が構築した純度百%の難事件。鬼貫警部に勝算はあるのか……鮎川哲也の実質的デビュー作にして本格推理の最高峰。
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時刻表トリックというと、どんなものなのか具体例もわかなかったけれど、一気にこれでイメージが良くなった。
伏線から論理を組み立てた先に時刻表があって、非常にロジカルに使うものなのだと本作で思った。
本作でも、些細ながらも重大な齟齬が伏線として描かれ、それの意味するところを考えた結果、反転が起こり、それから論理的に考えた結果、時刻表を読み取る。
とってもクール。
しかし、この凄まじい構築力。読み返したら細かい部分でさらに圧倒されそうな予感。
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本格物の推理小説として、私が読んだ作品が少ないとはいえこれ以上の作品は今まで読んだことがありません。トリックの精巧さは言うに及ばず、解決に至るまでの物語の展開も絶妙。主人公の得た事実から導く推理が一貫して純粋に論理的であることが、何より強烈に感情と思考を移入させます。
評価は最高の星5としましたが、他の作品の評価を下げるかどうか検討するほど別格の面白さです。
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5
美しき詰め将棋。非常に硬質な、磨かれた水晶の如き輝き。
2002年に復刊された初刊本バージョン。誤字等の最小限の修正に止めたとのことだが、それでも誤字はなくならない。第三者視点で語られる地の文に、1度だけ唐突に“俺は〜”という一人称が出てきて面食らう。前後の流れから“彼は〜”の誤りであることは明確だが、念のため創元版で確認したところその通りであった。まあ重箱の隅の話である。
*****
黄→緑→赤→黒→?
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俺はミステリー小説が好きだが、ミステリー小説の嫌いな面といったらこういうのを言う。
難しすぎてわけがわからない。
やってることはわかるが、犯人側はどういう意図で行動したかいまいちつかめない。一回だけじゃわからないようになってるのよね。
絶賛されてる短編集”五つの時計”も同じ状態といえる。
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複雑で緻密なトリック。作者の苦労が感じられる力作である。純度100%のトリックまさにその通りである本格ミステリであった。クロフツの「樽」好きとしては、このプロットは至高。
最強犯人のシナリオ。鬼貫警部との対峙。結末…勿論、私は真相にたどり着けなかったが、敬服する。只々恐れ入りましたと頭が上がらないのであった。
真相に近づけた読者はいたのだろうか?解説の図をみて、大体の構図を理解できたくらい難解であった。
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学生時代、私がミステリに多少なりともハマっていた頃には鮎川哲也さんの作品はそのほとんどが絶版あるいはなかなか入手困難で、作品の存在は知っていても読むことが出来ませんでした。
その後、『黒い白鳥』や『リラ荘事件』『ペトロフ事件』などは復刊され読むことが出来ましたが、この『黒いトランク』は鮎川氏の事実上のデビュー作でロジックの精緻な積み重ねのアリバイ崩しの傑作という評は知っていても未読だったのですが、このように光文社文庫から2002年に復刊されていたのですね。
舞台は1949年。戦後わずか4年。今となってはその時代設定自体がエキゾチック(?)(当然ノスタルジックではない(笑))な魅力ともなり、贅沢な読書時間を過ごさせてもらいました。
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本格ものの傑作、という評価は聞こえていたが、今頃になってようやく読んだ。
確かに、古き良き時代の本格という感じ。
時刻表トリックって、今の時代には無理だよなぁ、と、年中止まる山手線に乗る度に思う。
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記念碑的作品。読んだけど、今ひとつトリックがわかりにくかったなどと言ってはいけないのだろう。この文庫版に収録されている作者のあとがきによると、黒いトランクという作品が成立するまでの紆余曲折がよくわかる。作品のストーリー顔負けなくらいに面白い。
引用部分の通り、テンポは決してよくはないし、トリックは難解を極める。簡単に言えば被害者が殺される為に動き、トランクが交差することによって読者を欺くわけだが、図解してもらってようやく理解した次第。犯人の遺書が挑戦状という趣向はあまりいただけなかったので、記念碑的作品とわかっていながら★を一個減らしてしまった。
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トリックの派手さはないご、アリバイ崩しとしては傑作と言っていいのではないか。緻密に組み立てられていて、読み終わっても、中々全てを理解するのは難しかった。時間があったら何回か読み返してみたい。
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鮎川哲也 「黒いトランク」を読みました。
うーん時刻表がでてきました。
私の今迄のミステリー読書で意外にも初めてでした。
今まで西村京太郎も読んでいませんから。
何しろ未知なる挑戦なのですから。
ミステリーベスト◯をすべて読みたいと思ったのがきっかけでした。
まず入手しなくてはいけない本リストに入りました。運良く本をゲットしました。
それから数ヶ月、次何を読むか気分とか、タイミングとか、目についたものだとか、手近にあったりなどの末、お待たせしました。完読しました。
鮎川哲也 本屋とかではあまり見かけません。
しかし有名です。名前は以前から知っていました。
ミステリーの重鎮のような方。本格推理小説。
他の作品も入手しなくてはならないリストにはいりました。
まず鮎川哲也と見たらゲットします。
Posted by ブクログ
本格推理もの。舞台は1949年で終戦後すぐ。まだ日本文化が色濃く残っている。旅行ものとしても面白い。人物描写は抑制が効いていてうるさくなくそれでいて特色があって面白い。トリックはかなり凝っているが蓋を開けてみれば単純だ。
当時の時刻表・九州の地図をなんども見返した。そうして実際自分がそこにいるような楽しみ方をした。時刻表をみたり地図をみたりする楽しさが味わえた。
トリックはちゃんと読んでいけば追いつけるので、巻末のトリック解説表がなくても大丈夫。あったほうがわかりやすいが。なので発表当時ではなく洗練されたものが読みたい人は創元推理でもいいと思います。
ただ、序盤にある北原白秋の話などが他のバージョンでは削られているらしく、創元推理版もないかもしれない。こういった話が面白いところなので、光文社版を選んで良かったかも。