松本俊彦のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
子どもの自傷・自殺について、わかりやすく、丁寧に紹介されている一冊。
自傷はどんな状況で行われているのか、
自殺と自傷の違いは何か、
自傷をする子どもの身の回りではどんなことが起こっている可能性があるのか、
等々、まさに支援者が知りたいことについて紹介されています。
注意を要するのは、
「リストカットでは死なない」としても、
「リストカットする奴は死なない」とはいえない
という点。
自傷を自殺関連行動と見て、どのように接していけばよいのかを、
視点の持ち方、
声のかけ方のポイントとともに、
具体的に紹介されています。
一番大切なことは、
子どもが「助けを求められる人」になっていけるよう、援助していくこと。
そのために、私たちは「信頼できる大人」であること。
子どもの支援に携わっている方々に、広くご紹介していきたい一冊です。 -
Posted by ブクログ
文学と哲学の交錯と融合が示される"はじめに"で、早くもわくわくが高まる。
なるほど、オートエスノグラフィーは当事者の確かな違和感から始まるのだということが、よく分かる。
外部からの観察のみによるラベリングだけはもちろん不充分かつ不正確というのは間違いなく、そこに当事者の分析が統合されることで高まる学究的な価値はとても大きいだろう。
病跡学なる分野があることを初めて知り、また、発達障害や精神疾患に関する診断において、白か黒ではないスペクトラムという捉え方が広く敷衍していることも不勉強ながら本書で教えられたが、実情に即した合理的な考えで、非常に良いことだと思った。
私はかねて、理系・文系で人のタイプをざっくり分けたり行動を分析したりすることを甚だナンセンスだと感じているが、本書で言及されているカントやニュートン、ライプニッツといった近代科学の礎を築いた巨人たちの名を見て、またプラトンやアリストテレスが生きた古代に思いを馳せ、人の思弁はそのように峻別できるものではないと、改めて思いを強くする。
時代が下るごとに分業化が進んでしまっているだけで、文学も哲学も物理学も医学も、突き詰めた先の到達点は同じところなのではないか。
この本の真骨頂は、横道誠氏と各人との対談パートにある。
何気なく交わされる彼らの言葉の中に、深い気付きに至る金言がどれだけ溢れていることか。
私も診断こそ受けていないが、きっとASDでありADHDであるだろう、と自認して50年以上生きてきたが、本書を読んで「うーんまだまだ甘いかも…」と変に自信喪失(?)してしまった。
苦言ということでもないが、石原真衣氏との対談で横道氏は"文化人類学はまず難解な議論を先出しし、後から読み物がやってくるという構成が衒学的だ"と批判されているが、「えっ、この本こそ…」と突っ込んでしまったのは私だけだろうか?
「どうしていい歳をした大人が、『読書感想文』を粉飾したような作品内在解釈にいそしんでいるんでしょう、それが『高級』だという価値観を維持してるんでしょう。」
「ASDがあると凝り性になって、ADHDがあると飽き性の傾向になるんですよね。」
「自分を研究や観察の対象として見つめて、必要があれば他者と共有していいんだという考え方に、すごく大きな扉が開かれた気がしました。」
「最近は認知科学が進んできて、多くの定型発達者でも、疲れたり不調だったりすると、衝動性が増したり、鬱っぽくなったりして、発達障害的なグラデーションの中を生きていることがわかってきました。発達障害者はある部分の特性が強烈に出ているだけで、相対的な違いに過ぎない。」
「分刻みでアポ取って動いている人なんか誰もいない。一時間ぐらい遅刻しても誰も何も言わないし、みんなで車で出かけて三十分走ったころに『忘れ物した!』と言っても、『ああそうか』って平然と取りに帰ってくれる。そういう世界って、楽ですよね。」
「とにかく自分を信用しちゃいけないというのは合言葉ですね。」
「自分は自分を裏切りますからね。体も心も裏切りますからね。」
「子どもの頃の価値観からあまり変わってないんですよね、自閉スペクトラム症(ASD)の『同一性保持』という特性です。」
文学にとって、賢くない人たちを描く世界は未開の地で、そこに可能性がいっぱいあると思います。」
「ASD者は身体的にも精神的にも成熟してなお幼児のような印象を与えることが知られている。」 -
Posted by ブクログ
松本さんの文章が好きだ。語り口が好きだ。他の著作も読みたい。
以下笑ったところと、私なりの解釈。
…個性的な指導医だった、脳外科医としての腕は確かな人ではあったが、おそろしく無口なのだ。最初のうち、私は、昼休みに一言も話さずに黙々と食べる彼を前にして、「一体何に怒っているのか」と不安になったのを覚えている。それが一転、いざ緊急手術となると、たとえ深夜であろうと嫌な顔ひとつせずに馳せ参じ、手術室に大音量でワーグナーを流して、やけにハイテンションな状態で執刀にとりかかるのだ。
いまでも鮮明に覚えているのは、麻酔をかけられた患者の上空で、ローエングリン前奏曲の、ストリングスと金管が織りなす華々しい音が響きわたる光景だ。これはいささか悪趣味な取り合わせだった。なにしろ、当の患者は、剃髪された頭部を三点の巨大なピンでがっちりと固定されていて、両瞼には角膜の乾燥を防ぐためにパッチが貼られ、口には気管チューブが挿入されていたのだ。(p.155)
ローエングリンの前奏曲は、本当に脳内麻薬がドバドバ出る曲だから、すごくわかる。。むしろ本書で紹介されていた覚醒剤に近いと思っていて、どんなに疲労が溜まっていても、この曲を聴くとハイテンションになってアドレナリンが出て、動けるから。まあ私は聴くたびに泣いちゃうので手術はできないんですが -
Posted by ブクログ
【目次】
自分を傷つけてしまう人へ
自分を傷つける行為はつながっている
自分を傷つける人たち
1.自傷行為とは
自傷行為とは
直接的な自傷行為
摂食障害
物質乱用、依存
その行為をやめさえすれば問題は解決か?
2.なぜ自分を傷つけるのか
誤解される自傷行為
自傷行為をする理由
やめにくい自傷
自分を傷つける、大切な人との間に生じる3つの関係性
自傷と発達障害
危険な解離状態
3.検査と診断
自傷を病院で治療するということ
医療機関との関わり方
病院で行われる検査
医療機関で治療する
薬物治療の基礎知識
心理療法
入院による治療
治療のゴール
4.家庭でできる工夫
家族による支援
家族への支援
本人ができること
置換スキルを身につける
支援を求める
生活について
再発に備えて
5.回復への道のり
回復へのロードマップ
自傷からの回復
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「歴史が示してきたように、依存症はごく普通のことである。人生の喜びと痛みを伴う道筋であり、苦痛に対処するという人間の大切な仕事を大切な仕事を体現している。依存症が人間性の一部であるなら、それは解決すべき問題ではない。私たちは依存症をなくすことはできないが、それとうまくつきあう方法を見つける必要がある。ときには優しく、ときには力強く、しかし決して敵対的ではない方法で。なぜなら、自分自身の本質に戦争を仕掛けても何も生まれないのだから。」
本書は、アルコール中毒で治療を続けながらも医師として治療を行ってきた筆者の半生とともに依存症の歴史を外観していく。
歴史を語りながらも主観的な描写に否応無く感情移入させられる。
冒頭の文は結論からの引用だが、内容の濃い本書のメッセージを的確にまとめ切った文章だと思われたので、取り上げさせていただいた。 -
Posted by ブクログ
精神科医とグループワークをする人の交換日記形式の書物。具体的で読みやすかった。グループワークする人は宗教2世で、今もアルコールをばっさばっさと飲む「経験者」だから、話が綺麗事じゃなくて実にリアルである。
人間誰でも条件が揃えば依存的になる。他人事ではない。推し活も立派な依存だと思う!
生活に支障が出るほどの依存が病気と呼ばれるのであって、何かに執着するのは趣味の範囲なのかなと思う。程度の問題。
【内容から学んだこと】
・アディクションの本質は孤立にある。なぜ続けてしまうかというともっと元凶にある原因から本人が逃げなければ生命の危機に関わるから。マインドを一時逃避させるために何か別のものに頼る。その方法は過食、アルコール、薬物、セックス、自傷行為など。
そこから脱出するには、0 100でいきなり0にするのではなく、安全な方法で摂取を続けて、患者自体が辞めたいと思うことが辞められるきっかけになる。
・グループ療法のアノニマス系は、依存する先を神様にすることによって、健全に依存先を転換するやり方を使う。宗教2世など宗教で悩んだ人にはアノニマス系は苦しいものになる。別の手段が必要。
・回復するには、仲間作りが大事。(支援者、同じ境遇の人)
。。。
依存を作る原因
・HALTの状態がアディクションを生み出しやすい
Hungry, hungry lonely, tired
・「家族は病気の温床」
人が集まれば感染症の温床となるが、心理的にも密となれば、メンタルヘルス問題の温床となる -
Posted by ブクログ
三宅香帆さんがオススメしていて、身近な話題で内容に興味が湧いたので購入
アルコール、カフェイン、タバコの薬物ビッグスリーはなぜ合法で、大麻、コカインなんかはなぜ違法なのか、市販薬、処方薬の恐ろしい現実など、考えさせられる内容でした
私は、タバコは吸いませんが、アルコールとカフェインは結構摂取します、法律で規制されるとたまりません、と言うことは依存性があると言うことを身をもって感じているのだと、改めて実感できました
ビッグスリー、その昔は頑張って、今では考えられない手法(拷問や処刑…)規制をかけたりしていたみたいですが、依存性の強さには勝てず、知らぬうちに課税して国の財源にしたりとか…
市販薬は古臭い成分で、まともな医者だと処方しないような成分が入ってたり、依存性を高めるため?と言わざるを得ない、不要なカフェインが混ぜられてたり、と言う話も知らなかったので驚きでした
カタカナの成分の名前がたくさん出てきて少し付いていけないこともありましたが、知らないことだらけの内容だったのでとても勉強になりました
再三出てきますが、「良い薬物」、「悪い薬物」という分け方はできなくて、「良い使い方」、「悪い使い方」でしか分けられない、というお話がとても印象的でした
アルコール、カフェイン、恐ろしい部分も知ることができましたが、それでも辞めないやろなぁ、と思いました、まさに依存してるなぁ 笑