松本俊彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
精神科医・松本俊彦氏と文学研究者・横道誠氏の往復書簡形式による、依存症について語った本。
(特別対談として、田中紀子さんが巻末で対話形式参加しています)
御二方が「当事者目線」で語る内容は赤裸々で、編集さんたちから「大丈夫かな?」と心配されるほどだった様子……
往復書簡の形式をとったことで、
よくある対談形式とは違って、話が流れたり横道にそれて本筋がわかりにくくなる(あるあるですよね?)ことが抑えられていて読みやすく感じました。
本書が訴えていることを私なりに解釈すると、
・依存事態が悪いというよりも、依存の背景を知ることが大事(自己治療的な依存が大半)
・誰もが、なにかに依存していて、それは「依存症」となっていないだけ(程度問題)
・無意識のうちに自分を生かすために適切(?)な対処法を取っていることがある
ということなのかな、と思います。
特にラッパーと大麻のくだりは「そうなのか!」と目から鱗でしたし、そこから転じて(ここは私が勝手に考えたことですが)コーヒーをがぶ飲みしていたり、音楽ガンガンの中で作業している、常に何かをクルクル回している、といったようなことは、突き詰めていくと脳の特性を生かした対処方法なのかなと感じました。
途中で差し挟まれた「靴を踏む」のくだりには、衝撃的なフェミニズムの非対称性を見ましたし(私は女性でフェミニズムの本は沢山読んでいますが、あの方がそんな人だとは思わずビックリしました……)、横道氏の「女性が怖い」という気持ちの文脈を追うことで、「これって女性が男性に抱いているものと、本質的に同じことだよな」「でもそのことは社会的にはないことにされている。これって歪だよな」と素直に思いました。
依存症は本人だけの問題だと社会側は思っているし、当事者たちにそれを突きつけてくるのですが、本当のところは、社会の側が歪だから依存症になってしまう人たち(敢えて言語化するなら"被害者"である人たち)が出てきてしまうんですね。
家族観の価値観共有もそうだし、過去のトラウマ、脳の特性、社会から求められるジェンダーロール、生きてきた時代、など様々な要因がそこら中に転がっていて、「他人事」では済まされない現状を見たと感じました。
市販薬の乱用が社会問題としてニュースになったりもしましたが、御二方の話を聞いている限りでは、日本は状況を好転させる対策はできていないんだな、と……。
どうにかならないものかな、と「ああでもない、こうでもない」と考えを巡らせた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
精神科医の松本先生の優しい視線と治療に向かう姿勢。先生自身のコレまでの経験から固まってきた医師としての心意気に胸打たれました。
困った人は、困っている人。
薬を出し話を聞くだけの治療ではなく、その人の人生に寄り添う治療の大切さ。
精神科医が処方する薬によって依存症患者が増える、、という事実にもきちんと向き合い、ご自分の仕事でも薬を減らすようにしている経緯。詳しく、読者にも納得できる書き方でした。
私も子供にたくさん薬をお願いする時がある。精神科ではないけれど、気をつけなくてはと思った。
日本での依存症患者さんへの偏見はひどすぎるな。
知らん奴がガタガタ言うて、心に傷を負って薬物に頼るしかなかった人たちをさらに追い詰めている現実。
勉強になりました。
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Posted by ブクログ
物質依存(薬物、カフェイン、アルコール、ニコチンなど)
行為依存(ゲーム、ネット、買い物、性行為、自傷など)
「やめたいのに、やめられない」
依存症の正体とは?
14歳の世渡り術シリーズとして、中学生に語りかけるように身近っぽい事例を挙げて平たくやさしく、それでいて、しっかりと依存症のしくみと歴史なども説明してくれています。
『否定される関係、支配される関係、本当のことをいえない関係。3つに共通しているのは「自分を傷つける関係」だということです。依存症になる人の多くは、日々こうした関係の中に身を置き、自分を大切に思う気持ち、人を信じる気持ちを失っています。彼らが人に頼れないまま、一人でもがいていたのはこのためです。つまり、依存症とは「人に依存できない病」なのです。』(p.177)
『歪んだ人間関係の中で心に痛みを抱え、それを放置したまま薬物あるいは特定の行為で一時しのぎをつづけ、いつしかコントロールできなくなって生活が破綻してしまう。これが依存症の全貌です。つまり、依存症という病気は、僕たちがどんな人間関係を築き、どんな社会をつくっていくのかということと直結しているのです。』(p.204)
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Posted by ブクログ
タイトルだけ読んで、毒物の雑学本かなあと思って手に取り読んだら違った。後になってサブタイトルに気づいて、なるほどと納得した。
薬物に良い悪いはなく、あるのは良い使い方悪い使い方だという論が展開している。著者が喫煙者と言うこともありタバコに関してやや擁護的なのが、なんか人間ってしょうがねえなあなどと感じた。幼少期に喫煙者の父のタバコ臭とだらしない汚しように嫌な経験をしているから、タバコ擁護者には良い感情がないからこの項目には賛同出来なかったが、他の項目はかなり興味深く面白かった。
著者は精神科医なため、薬物そのものの歴史については正確だと思うが、歴史的社会背景については推測の語が多いように感じられた。 -
Posted by ブクログ
違法薬物依存はたしかに「犯罪」ではあるが、それ以前に「病気」なのだ
河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの中の一冊です。中学生向けに易しい文章で書かれていますが、大人が読んでも十分な読み応えがあります。医学的な専門用語は必要最小限に抑えられ、分かりやすい例えを使っているので、最後まで興味が途切れませんでした。とくに脳のしくみをいちご大福に例えているパートは、輪切りのいちご大福の図解もあり理解が進みました。
実際に松本先生が診た症例がエピソードとして紹介されています。とりあげる依存症はエナジードリンクやカフェイン錠剤、アルコールなど違法でないものから、大麻などの違法薬物、あとはゲームやスマホなど依存性のある行為など広くカバーされていて、依存症についての入門書にうってつけです。裏社会の匂いのしない、一般の人でも陥りやすい依存性について丁寧に解説している印象でした。
まず依存症になるそもそもの素質として、人間関係に端を発した強い苦痛や不安があるとのこと。それを一時的かつ強制的に和らげる、依存性のある物質をとりいれ(もしくは依存性のある行為をおこない)、脳の報酬系を刺激しドーパミンの放出が増え、それを繰り返すことで脳はそれ以前の脳ではなくなってしまう。簡単に言うとこのようにして人は依存性になってしまうんだそう。
脳が変質している、ということはまごう事なき病気です。根性や精神論でなく、適切な治療が必要なのです。違法薬物に手を出し捕まってしまった人への風当たりは強いですが、罪を責めつづけるより大事なのは医療サポートだという松本先生の意見には同意します。違法薬物依存は確かに犯罪です。犯罪ではありますが、それ以前に「病気」なのです。
これまでの人生で(物質に頼らない)天然のドーパミンの心地よさを多く体験していれば、薬物のドーパミンを体験してもそれほどのめり込まないというのも、なるほどとうなづける部分でした。幼少期におかれた環境が非常に辛いものだったがゆえにドーパミンを受け取る機会がなければ、若いうちからアルコールや薬物に手が伸びる確率も高いと。
若ければ若いほど、毎日が新鮮な体験に満ち溢れ、天然のドーパミンを得る機会が多いもの。「若さ」という、自分を成長させ、感受性を高められる大事な機会を、依存性になってドブに捨てるのは勿体ないことです。ただ生まれつき脳のドーパミンを出す機能が低下している病気の方もいるらしく、やはり依存症になりやすいとのこと。
大人になってからでも心身に強いショックを受け報酬系のメカニズムを破壊されてしまうと、依存性になる可能性が上がるとも書かれています。辛い別れを経験した後でタバコを吸うようになった知人がいるのでとてもよく分かります。
また人類史と依存性物質との関わりも、ごく簡単ですが紹介されていてとても興味が湧きました。ヨーロッパの酪農家はアルコールの抗菌効果を重宝し、アメリカ大陸ではタバコを儀式や医療につかい、南米はコカの葉を。アフリカではコーヒーでカフェインを。中国もお茶のカフェインを(人類史において薬物をもたないのは、植物が育たない寒冷地ツンドラのイヌイットだけ!)。世界で最初のアルコール依存症自助グループの誕生も希望を感じるエピソードでした。
日本も戦後すぐくらいまではヒロポンが出回ってたみたいだし、いまでも違法薬物は裏で売られているし、人間の歴史から違法薬物がなくなる日はないかもなあ〜宗教的なレベルでも、個人使用のレベルでも。
また依存性のある行為として自傷・リストカットが紹介されていました。自傷行為については「死ぬこともできないくせに」と冷たく罵られることもありますが、自傷は自殺と根本的に異なるとのこと。辛い現実から一時でも解放されたくて自傷をしている、つまり死に近づくためでなく、必死にサバイブするためにやっているのです。
過食症や拒食症などの摂食障害も、狭義の依存性とは異なりますが触れられていました。
・交感神経→活発、緊張→食欲の抑制
・副交感神経→リラックス→食欲の増進
上記のメカニズムよりわかることは、拒食症のひとは常に緊張、ストレスフルな状態にある。そもそもの下地に、強い不安があるということ。なるほど。
松本先生は友人が仲良くしているのでお話しはうかがっていましたが、今回本を読んでとても優しさを感じました。各エピソードから、何でもかんでも禁止するのでなく、まずは相手のがんじがらめの心を解こうとする姿勢が見えました。
"dope" "dopamine" "doping"は同じ語源。一度の人生をドーピングで得たドーパミンでドープしてしまわぬように、、、