【感想・ネタバレ】世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?のレビュー

あらすじ

「スマホもゲームもやめられない」「市販薬を飲む量が増えてきた」「本当はリスカをやめたい」……誰もがなりうる「依存症」について、最前線で治療にあたる精神科医がやさしくひも解く。

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Posted by ブクログ

困った子は困っている子
この言葉がすごく印象的だった。

昔教室で悪さばっかりして先生も泣かしてた子、学童終わりにお母さんがその子をおうちに一緒に車で送っても、いつもその子の家は夜になっても誰もいなかったのがすごくこわかったのを思い出した。
あの子は転校して行ったけどそのあとどうなったんだろう、シンナー吸って歯がボロボロだった先輩はどうなったんだろう、あの子は本当は摂食障害だったのかな、色んなことを思い出して考え直した本だった。

依存はいつも私たちの人生にぴったりくっついてはいるんだろうと思う。依存性になるか、嗜好で終わらせられるか、私だって危なかった時がたくさんあった
誰にでも起こりうるからこそ敬遠しない、気を使いすぎない、特別に思わない、でもしんどかったよねいつでも話してねって言ってくれる人がいてくれるだけできっと一線を超えなくて済む
いつも一緒に泣いてくれたり笑ってくれたり、黙ってご飯誘ってくれたり、話聞いてくれた友人たちに本当に感謝だ
頼れることは大きな財産だよなあ

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2025年10月06日

Posted by ブクログ

依存症の項目がいくつかあったんですが、まあ数としてはやや足りませんが、依存症の本質という点においてば充分に読む価値があります。
私はリスカ組じゃなくて買い物依存なんですが、こうして読んでみるとリスカ組に近いメンタリティですね。
誰にも依存することが出来ずに生き残るために1人で戦ってきた人間、それが依存症患者の正体です。
ことに、自傷癖については自傷ノートをつけろという、なかなか有効そうなアイデアが書かれていて、実際効果はあったようです。
それは病院に行ければラッキーでしょうが、この種の苦しみの根本は、金を払えば治る,などという簡単なものではないです。
本質を知ることで、「あなたはこの世にあなたしかいない」という事実を受け止めて欲しいです。

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2025年04月02日

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依存症になる多くの人が人間関係の歪みを経験している。そして、ひとたび依存症となれば、周囲から差別や偏見を受け、ますます孤立を深めやすい。

筆者は社会のあり方について提案している。何に依存しているかということよりも、根本的な生きづらさに着目すること。世の中から依存はなくならないものとして、心の痛みに寄り添い、依存からの回復を迎え入れること。

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2025年01月14日

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ネタバレ

・人間は追い詰められると、「止まった瞬間、落ちこぼれるのではないか」と不安になるもの。しかし、泳ぎ続けなければいけないマグロでもあるまいし、そんなことはない。「若い時に怠けると、その後の人生が悲惨だぞ。」という決まり文句がありますが、ほんとうでしょうか。
・依存症の多くの人の特徴が「助けて」と声をあげることが苦手な人ばかり。
・依存症の治療プログラムでは、どんな時に、どんな場所で、何がトリガーになっているのかを過去の経験から探り、そういった場面を避ける方法を考える。
・人が一生のうちに安全にお酒を飲める量は決まっている。
・依存症とは、脳みそをハイジャックされた状態。
・人間の生命に関わることは、必ず「快感」がセットになっている。
・新しいことを学ぶことは、誰にとっても厄介なこと。ただ、こうした古老のプロセスを乗り越えた先には、「すっきり」「すがすがしい」「うれしい」といった快感がまっている。脳がこのことを覚えているから、コツコツ勉強したり、しんどい練習に耐えることができる。
・依存性のある薬物は、報酬系回路を直接刺激して快感をもたらす。よって前段階のもどかしさやしんどさをすっとばして、いきなり快感をもたらす。そのためその快感を求めて繰り返し、依存状態になる。
・依存症になりやすい人は、決して快楽のために薬物を使っているのではない。どうしよもない悩みや苦しみ、心の痛みを抱えて、薬物がそれを和らげてくれることを発見してしまった。和らぐのはほんの束の間にすぎないのですが、それでも心の空洞を埋めてくれるような気がして、手放せなくなる。
・依存症の人が必要なのは、刑罰ではなく、治療と支援。
・WHOがゲーム依存症を病気と認めた。
・ゲーム依存の問題を加速させたのは、スマホの普及。いつでもどこでもできる環境が恐ろしい。
・リアルな人間関係につまずいている児童は、ゲームに依存しやすい。どうしようもない不安や焦りを、一時的に追い払おうとゲームに没頭してしまう。
・著者もゲームに依存した時期があったが、仕事が面白くなってくると自然とやめられた。
・親に内緒で何かを始めるというのは、自我の目覚めでもある。
・心のストレスと食欲は密接な関係にある。
・自傷する人の多くは、誰にもいえない、だけど手に負えないほど辛い気持ちを抱え、じっと耐えている。そのため、普段は海の深くにもぐって息を止めているような感覚で生きている。それが、切った瞬間だけは水面に浮かび上がり、息継ぎができる。ほんの束の間とはいえ解放感を味わう。この解放感のことを「気持ちがいい」「ほっとする」と彼らは表現している。
・つまるところ、事象とは自分の体を傷つけることで、忌まわしい記憶や言葉にするのも悍ましい感情に、心の中で蓋をする行為。蓋をして、無かったことにしたうえで、さらに蓋をすることすら忘れる。こんな手を込んだことをするのは、自分の心を守るため。そういう意味では自傷にもメリットがある。たった1人で手に負えないほどの苦痛に耐えている人が、今、この瞬間を乗り越えるために手段なのです。
・自分の体を傷つけてまで生き延びようとした。僕は、その行為を否定しません。それはきっと「逃げ」ではなく「戦い」だったはずです。けれど、一時のしのぎ戦法をずっと続けることはできない。誰かに頼り、誰かに助けを求め、なるべく早い段階で治療と支援につながってほしい。
・言葉にみんな救われている。心に蓋をするよりも、「むかつく」と言葉にしたほうがまだまし。なぜムカついたのかともっと具体的に言えるようになったら、もっと楽になる。
・依存症の根っこには必ず「歪んだ人間関係」が潜んでいる。「否定される関係」「支配される関係」「本当のことを言えない関係」の3つのタイプがある。
・「ありのままではダメだ」という窮屈な価値観を植え付けられると、逃げ場所をもとめる。その先が依存性をもつものと結びつきやすくなる。
・ラットの実験。自由なコミュニティと檻のコミュニティ。きれいな水とモルヒネ入りの水。自由なコミュニティはきれいな水を好み、檻のコミュニティはモルヒネ入りの水を好む。このことから分かるのは、人間関係と依存物質は深い関係にある。
・依存症になった人の回復にとって大事なことは、その人を一人ぼっちにしないことである。差別したり排除したりするのではなく、手を差し伸べて、関わり続け、孤立させない。どんなに強力な薬物であっても、それは人とのつながりを凌ぐものではない。
・1人で歯を食いしばって頑張ることが自立ではない。誰にも頼らずに生きている人などいません。
・マスコミの情報は、依存患者の治療の妨げになる。
・何に依存しているかというよりも、根本にある生きづらさに目を向けて、それを生み出す社会のあり方を疑問視するべきである。

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2024年05月06日

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依存症について、優しく書かれていて、とても読みやすかったです。依存症は人に頼れないことで生じる病であり、自立は上手にいろんな人に頼れるようになること、という言葉に深く頷きました。それだけ人を信頼する、信頼できる人間関係を作るのには時間がかかるし、大変ということなのかなと思いました。

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2024年01月03日

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依存症について勉強したいならまずは本書。
ほんとに「世界一やさしい依存症入門」の本だと思う。とにかく読みやすい。本書では、依存症とは何かに「ハマる」こととしている。現代ではハマる対象は豊富にあり、ハマるハードルは低い。そんな中、なんの知識ももたなければ、些細なきっかけで何かにハマるリスクは高い。中高生だけでなく、保護者や支援者にもおすすめしたい一冊。自分が文科大臣なら教科書に採用したい。

「依存症になりやすい人は、今が苦しくて、さびしくて、孤立している人」

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2023年10月15日

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中学生を想定して書かれているという本書。

「こんな大人であれたら」という姿を思い描きながら読みました。

物質依存、行為依存、どちらについても事例も用いながら紹介されています。
困っている子どもさんの姿が浮かび、内側で起きている苦しさも伝わってくるようです。

誰かを罰するのではなく、叱責するのでもなく、その苦しさに思いを馳せ、寄り添うこと。

そのことの大切さが伝わってくる一冊でした。

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2023年09月10日

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ネタバレ

依存症なこと、「困った子は困っている子」のフレーズは印象的だった。
薬をやっている人は1人になってはダメ。
マウスの実験は興味深い、仲間がいれば依存症を改善できるの可能性があるのがすごいと思った。

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2023年08月12日

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依存症は 依存できない病。相談先があること、気軽に相談できる相手であること、今苦しみの中にいる人を頭ごなしに叱ったり遠ざける事なく話を聴ける体勢を整えておくこと。

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2023年06月28日

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依存症という言葉に引っ掛かりがあるなら、まず手に取るべき書籍。
動機としては自分自身依存していると自覚のある行為をやめたいモチベーションがあって、依存症について調べたかったのがきっかけ。

結局依存は治療するものではなく、いかに上手に人生のパートナーとして付き合っていくかということに尽きるなと思った
一つの答えとして「別のものに依存する」こと。語弊があるかもしれないが、シンプルに言うとそういうことだと思った。
社会生活を営むのに支障が出るような依存には、医療の力を借りながら周囲の人間がチームで向き合っていくしかない。ゆえに孤独は一つ大きな障害になるのだなと思った。

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2023年05月31日

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めちゃわかりやす〜い
易しいし優しい

実際に依存している/しそうな人にも
周りにそういう人がいる人にも
どちらの人にもおすすめできる良書

中学生に理解できる語彙に砕いて話されているのも大変良い

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2023年03月17日

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読み始めてから子供向け(14歳の世渡り術シリーズ)と気づく。でも大人こそ読んだ方が良い。
後半泣けてきた。10代の1割がなんらかの自傷経験があるという。

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2023年01月19日

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依存症について学びたいと思いこの本を読みました。
読み始めてから、思春期の世代(14歳)に向けた本であることに気づきました。
そのため、その世代に語りかけるような、わかりやすい言葉を選んでいるため読みやすいです。

どんどん量が増えていく、やめようとすると禁断症状が出るといった依存症の怖さや、ドーパミンの仕様についてはすでに知識がありました。
しかし、依存症がどうして起きるかの根っこの部分である「孤独」「悲しみや怒りを抱えながらもどうしようもできない状況」「今の自分を否定する気持ち」といった部分が依存症を引き起こすということはこの本で知りました。

そこに関連した楽園ネズミと植民地ネズミの実験結果も興味深いものでした。結局は人と人との繋がり、自分を否定しないで受け入れてくれる存在、ありのままの自分を認めることができるのが大切なのだと学びました。

過去常識と言われていたことが現在はありえないこととされている、勉強しすぎたり本を読みすぎたりしていても依存症とは呼ばれないのはある意味不思議、国が違えば規制内容も違ってくるという、思い込みを外すような視点も与えてくれて、若者向けの本とは言えども学びが多かったです。

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2023年07月06日

Posted by ブクログ

ゲーム依存だなって思って買ったこの本。
自分のゲーム依存に対してもそうだけど、それ以上に自分以外の依存症に対する人への目線が変わった。

依存症になる人って、心が弱い人なのかなってそう思ったけどそうじゃないんだって分かった。そりゃあそうか。
「困った子は困っている子」本書に書かれていた言葉ですごく好きな言葉。

何かに依存しないとやっていけないくらい、現実が苦しい。それは孤立してしまっている現状なんだと。自分のことを誰も分かってくれなくて、誰も理解してくれないことからくる孤独感が、依存へと繋がっているんだと知った。

僕は僕で、ゲームをやり過ぎてしまうことを重く受け止めすぎるのではなく、気軽に向き合っていこうと思うし、大事な人には素直に話していこうと思う。

そして周りで何かに依存していて、それに悩んでいる人には、支えになってあげたい。その依存を否定するのではなく、受け入れてそして、少しずつ前を向けるようになるまで、一緒に歩んでいける人でありたいと思った。

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2022年11月08日

Posted by ブクログ

『14歳の世渡り術シリーズ』

ほんと自分が14歳のときに出会いたかった本。笑

とても読みやすく分かりやすい!
依存症について理解したい中高生はもちろん、身近な支援者の方にすすめたい本。

きっと依存症へのイメージがかわると思う。

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2022年11月05日

Posted by ブクログ

『誰がために医師はいる』を読んでから読んだ。
主旨は『誰がために』と同じであるが、こちらは中高生向きなので、薬物依存よりゲームやリストカット、カフェイン依存や摂食障害が中心に書かれている。
また文章も構成も中高生にわかりやすいように書かれている。

リアルなエピソードとともに、患者である若者がどのように回復したかもきちんと書いてあるので、読んでいて希望が持てる。
親は子どもが依存症になると、心配のあまりゲーム機やスマホを取り上げたり、嘆き悲しんだり、「二度とリストカットしない」と約束させたりして監視する。しかし、それがいい結果を招くことはない、ということがこれを読むとよくわかる。悩んでいる親にもぜひ読んでほしい。

特にリストカットがやめられなかった女の子が、行動記録をつけることで、自分がどんなタイミングでリストカットしたくなるのかを理解し、感情を吐き出せるようになって変わった、というくだりは感動的。こういうことは親ではできないなと思う。「リストカットしてもいいよ」とは言えないから。やっぱり松本先生のような学識と経験と愛情のあるお医者さんに(親には言えないようなことを聞いてもらいながら)継続的にやったから回復できたのだと思う。

依存症になった人を「切り離し、辱め、排除するのか。それとも心の痛みに寄り添い、回復を支援し、もう一度迎え入れるのか。」(p207)
今私たちに問われているのはそこだと思う。

イラストがとても良かった。(秦直也)
こういうYA向けはマンガ・アニメ風のイラストが多い。つまり中高生が好きな絵柄。
でも、これはモノクロのネズミで依存症患者を描いている。人間でなくてネズミなので、生々しくない。ビールを飲むネズミ、ゲームをするネズミ、カプセルがいっぱい詰まったリュックを背負うネズミ。
これが人間だったらどんなに可愛い絵柄でもいたましい気分になっただろう。
とくにいいなと思ったのが、大きな絆創膏を2つ背中に貼ったネズミ。自傷を表しているのだと思うけど、なんだか可愛い。自傷をする人の繊細さを描いているようにも思える。このイラストレーターに頼んだ編集者のセンスも素晴らしい。

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2022年04月23日

Posted by ブクログ

14歳に向けて書かれたものだけど、いろんな年代のたくさんの人に読んでみてほしい本だな、と。
薬物やゲームやリスカ…いろいろなものへの依存症があるけれど、そこに陥るそもそもの原因はなんなのか。それは本当に自己責任なのか。晒し者にしたり、責め立てたりすることで解決するのか。
依存症について考えることで、ひとが人の群れの中で生きるにあたっての、あらまほしき姿とはどんなものなのか?ということも一緒に考えることになる、本当に「やさしい」本だった。
しんどい時に、しんどいって話せる人、私は何人いるだろう。しんどいって打ち明けられるような人に、私はなれているかな

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2022年03月20日

Posted by ブクログ

「こころ」関連の本は色々読みましたが、YA(Ts?)ジャンルでは今のところ一番良い本だなぁと思いました。著者が読者や依存症に対して寄り添ってくれるような筆致にほっとした気持ちになりました。本を読む事が苦手な人でも読みやすいと感ました。

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2022年02月28日

Posted by ブクログ

依存症とはどんなきっかけで始まるのかということに興味があり、読みました。
それに加え、10代の娘が精神的に不安定になることがあるため、今の若い人の生きづらさや困難なこと、心の動きがわかるヒントになれば、と思いました。

正直、親の立場で読むと、自分は子供にとって良い親であるか、良い関係であるかどうか、悩み、落ち込んでしまいました。
例えば、子供がスマホばかり触って、ダラダラしていることにイライラして、頭ごなしに叱ってしまいます。本にあるように、自分が10代の頃はどうだったか?同じようにダラダラしていました。頭ごなしに叱っても、意味がないことはわかっているのですが…
親として、反省することばかり書いてありました。
つらいことや悩んでいることをひとりで抱え込まずに、話してもらえるような親になりたいです。

そして、この本にあるように、薬物などに手を出して逮捕された人のことを、たとえその後克服したとしても、ずっと偏見の目で見ていました。
そこも改めたいと思いましたし、さらに大人に向けて書かれた本も読んでみたいと思いました。

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2025年08月19日

Posted by ブクログ

物質依存(薬物、カフェイン、アルコール、ニコチンなど)
行為依存(ゲーム、ネット、買い物、性行為、自傷など)

「やめたいのに、やめられない」
依存症の正体とは?

14歳の世渡り術シリーズとして、中学生に語りかけるように身近っぽい事例を挙げて平たくやさしく、それでいて、しっかりと依存症のしくみと歴史なども説明してくれています。

『否定される関係、支配される関係、本当のことをいえない関係。3つに共通しているのは「自分を傷つける関係」だということです。依存症になる人の多くは、日々こうした関係の中に身を置き、自分を大切に思う気持ち、人を信じる気持ちを失っています。彼らが人に頼れないまま、一人でもがいていたのはこのためです。つまり、依存症とは「人に依存できない病」なのです。』(p.177)

『歪んだ人間関係の中で心に痛みを抱え、それを放置したまま薬物あるいは特定の行為で一時しのぎをつづけ、いつしかコントロールできなくなって生活が破綻してしまう。これが依存症の全貌です。つまり、依存症という病気は、僕たちがどんな人間関係を築き、どんな社会をつくっていくのかということと直結しているのです。』(p.204)

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2025年05月18日

Posted by ブクログ

違法薬物依存はたしかに「犯罪」ではあるが、それ以前に「病気」なのだ

河出書房新社の「14歳の世渡り術」シリーズの中の一冊です。中学生向けに易しい文章で書かれていますが、大人が読んでも十分な読み応えがあります。医学的な専門用語は必要最小限に抑えられ、分かりやすい例えを使っているので、最後まで興味が途切れませんでした。とくに脳のしくみをいちご大福に例えているパートは、輪切りのいちご大福の図解もあり理解が進みました。

実際に松本先生が診た症例がエピソードとして紹介されています。とりあげる依存症はエナジードリンクやカフェイン錠剤、アルコールなど違法でないものから、大麻などの違法薬物、あとはゲームやスマホなど依存性のある行為など広くカバーされていて、依存症についての入門書にうってつけです。裏社会の匂いのしない、一般の人でも陥りやすい依存性について丁寧に解説している印象でした。

まず依存症になるそもそもの素質として、人間関係に端を発した強い苦痛や不安があるとのこと。それを一時的かつ強制的に和らげる、依存性のある物質をとりいれ(もしくは依存性のある行為をおこない)、脳の報酬系を刺激しドーパミンの放出が増え、それを繰り返すことで脳はそれ以前の脳ではなくなってしまう。簡単に言うとこのようにして人は依存性になってしまうんだそう。

脳が変質している、ということはまごう事なき病気です。根性や精神論でなく、適切な治療が必要なのです。違法薬物に手を出し捕まってしまった人への風当たりは強いですが、罪を責めつづけるより大事なのは医療サポートだという松本先生の意見には同意します。違法薬物依存は確かに犯罪です。犯罪ではありますが、それ以前に「病気」なのです。

これまでの人生で(物質に頼らない)天然のドーパミンの心地よさを多く体験していれば、薬物のドーパミンを体験してもそれほどのめり込まないというのも、なるほどとうなづける部分でした。幼少期におかれた環境が非常に辛いものだったがゆえにドーパミンを受け取る機会がなければ、若いうちからアルコールや薬物に手が伸びる確率も高いと。

若ければ若いほど、毎日が新鮮な体験に満ち溢れ、天然のドーパミンを得る機会が多いもの。「若さ」という、自分を成長させ、感受性を高められる大事な機会を、依存性になってドブに捨てるのは勿体ないことです。ただ生まれつき脳のドーパミンを出す機能が低下している病気の方もいるらしく、やはり依存症になりやすいとのこと。

大人になってからでも心身に強いショックを受け報酬系のメカニズムを破壊されてしまうと、依存性になる可能性が上がるとも書かれています。辛い別れを経験した後でタバコを吸うようになった知人がいるのでとてもよく分かります。

また人類史と依存性物質との関わりも、ごく簡単ですが紹介されていてとても興味が湧きました。ヨーロッパの酪農家はアルコールの抗菌効果を重宝し、アメリカ大陸ではタバコを儀式や医療につかい、南米はコカの葉を。アフリカではコーヒーでカフェインを。中国もお茶のカフェインを(人類史において薬物をもたないのは、植物が育たない寒冷地ツンドラのイヌイットだけ!)。世界で最初のアルコール依存症自助グループの誕生も希望を感じるエピソードでした。

日本も戦後すぐくらいまではヒロポンが出回ってたみたいだし、いまでも違法薬物は裏で売られているし、人間の歴史から違法薬物がなくなる日はないかもなあ〜宗教的なレベルでも、個人使用のレベルでも。

また依存性のある行為として自傷・リストカットが紹介されていました。自傷行為については「死ぬこともできないくせに」と冷たく罵られることもありますが、自傷は自殺と根本的に異なるとのこと。辛い現実から一時でも解放されたくて自傷をしている、つまり死に近づくためでなく、必死にサバイブするためにやっているのです。

過食症や拒食症などの摂食障害も、狭義の依存性とは異なりますが触れられていました。

・交感神経→活発、緊張→食欲の抑制
・副交感神経→リラックス→食欲の増進

上記のメカニズムよりわかることは、拒食症のひとは常に緊張、ストレスフルな状態にある。そもそもの下地に、強い不安があるということ。なるほど。

松本先生は友人が仲良くしているのでお話しはうかがっていましたが、今回本を読んでとても優しさを感じました。各エピソードから、何でもかんでも禁止するのでなく、まずは相手のがんじがらめの心を解こうとする姿勢が見えました。

"dope" "dopamine" "doping"は同じ語源。一度の人生をドーピングで得たドーパミンでドープしてしまわぬように、、、

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2024年12月22日

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依存症ではないけど、我が子も何度叱っても嘘はつくし親の財布からお金抜くし…と困って読んでみた本。先生の語りかけがなんとも優しい。そしてわかりやすい。先生自身の体験など読んでいると、人間なんてそんなもんだと思えてくる。
第7章社会と依存のいい関係の、ありのままの自分を許すの話がとてもよかった。

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2024年08月25日

Posted by ブクログ

依存症には、タバコ、アルコール、薬物、ギャンブル、スマホ等、いろんなものがあるが、本書は14歳の読者向けに書かれたものだけに、その年代に最近流行し且つリスクの高い薬物依存に関してフォーカスし、原因や対応方法等を解説する。
依存症が専門の精神科医であるご自身の経験をベースにし書かれているだけに、説得力があり、また子どもに対する眼差しも優しい。

子どもは吸収力が豊富だが、多感で傷つき易く、トラウマとなって成人に近づく頃から症状に現れることがある。
そう言う意味では、子育ては慎重であるべきだし親御さんにとっては責任が大きいと感じた。

依存症はれっきとした病気。ホルモン(報酬系を司るドーパミン)のバランス異常から発症するものなので、根性論で治そうと思っても無理。
人間は高等な動物とはうらはらに、その”こころ”の持ちようや持たせようが一度人の許容限超えると、一気に耐性がなくなってしまう。周囲の人たちがこのような現実を知っていれば、依存症も少なくなるのだろうな。
大人こそ、読むべき内容だと思う。

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2023年04月24日

Posted by ブクログ

依存してしまう「物」ではなく「心」に注目して書かれた本。とてもわかりやすい。個人的に脳をいちご大福に例えたところが好きでした。

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2023年04月01日

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依存症になる背景や、どんな人でもなり得る事が良くわかった。楽園ネズミと植民地ネズミがモルヒネ中毒になる割合、面白い。私生活が充実していれば、依存症にならないって言う事がわかった。私生活を見直す良い機会になった。

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2021年12月16日

Posted by ブクログ

依存症とは、人に依存できない病。
人に依存できないため、モノに依存したり、自分を傷つけたりしてしまう。適切に相互依存の関係を人と作っていくことが大事だと感じた。

ヒエラルキーがある社会で虐げられていると、依存症が発生しやすい。自分が活躍できる場所で過ごすことが依存症に陥らないためにも必要。その場所で切磋琢磨し続ける。集団の中で地位を築いていくことを学ぶ。自立するためには、頼れる人を複数人持つ。頼れる人がいる、ということが心の安心感になる。できるだけ範囲を広げることが大事。

自立とは、依存先を増やすこと。
色々な強い関係性があれば人はより安定する。

悪習は依存とされ、良習は熱中していて好ましい状態である。良習は未来への投資ができている状態。悪習は自己完結型であり、他人との関わりが少ない。

人付き合いが苦手で不得意だが、良習として、人と一緒に過ごす時間を増やしていく。スポーツ、音楽、仕事などで。ただ楽しむだけでなく金銭的な価値が生まれる行動が良い。

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2024年08月27日

Posted by ブクログ

当事者やその家族、友人にとって、とても寄り添った内容でした。よくありがちな「押し付け過ぎ」感や正論振りかざしてる感が皆無で優しい一冊。
特に親御さんや先生への言葉にジーンとしてしまった。

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2024年07月14日

Posted by ブクログ

本書はゲーム・市販薬・エナジードリンク・薬物・自傷行為などの依存症になった学生の実際の事例が書かれている。
依存症は人に依存できない病。と言う言葉が印象に残った。
依存症の根っこには歪んだ人間関係があり、何かしらの悩みや苦しみを抱えて困っている。しかし、人に頼ろうとせずモノや行為に頼る事を選んでしまう。それは、自分を大切に思う気持ち、人を信じる気持ちを失っているから。だから人に頼れないまま、一人でもがいている。
そう言う人たちに必要なのは人とのつながりを取り戻すことである。もし身近にそう言う人と関わる事があれば、否定するでも距離を置くでもなく、いつも通りに接する事。その人が何か悩みを抱えていないか親身に寄り添ってあげたいと思えた。

依存症について偏見を持つ人が減り、依存症になった背景を理解しようとする人が増えて欲しいと強く思う。

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2022年12月17日

Posted by ブクログ

感想
依存症は誰の責任か。たまたまある個人が依存症になったからと言って、その人を罰するのは正しいことか。それでも治療を施すだけで十分なのか。

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2022年10月26日

Posted by ブクログ

斜め読みになってしまったが、中学生の子供が自分がスマホ依存性なのではと心配だったらしくて興味をもって読んでいる箇所がありました。薬物依存は麻薬とか覚醒剤だけでなく市販薬でもアルコールでも起きるのが恐いですね。

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2022年02月13日

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