あらすじ
「スマホもゲームもやめられない」「市販薬を飲む量が増えてきた」「本当はリスカをやめたい」……誰もがなりうる「依存症」について、最前線で治療にあたる精神科医がやさしくひも解く。
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Posted by ブクログ
・人間は追い詰められると、「止まった瞬間、落ちこぼれるのではないか」と不安になるもの。しかし、泳ぎ続けなければいけないマグロでもあるまいし、そんなことはない。「若い時に怠けると、その後の人生が悲惨だぞ。」という決まり文句がありますが、ほんとうでしょうか。
・依存症の多くの人の特徴が「助けて」と声をあげることが苦手な人ばかり。
・依存症の治療プログラムでは、どんな時に、どんな場所で、何がトリガーになっているのかを過去の経験から探り、そういった場面を避ける方法を考える。
・人が一生のうちに安全にお酒を飲める量は決まっている。
・依存症とは、脳みそをハイジャックされた状態。
・人間の生命に関わることは、必ず「快感」がセットになっている。
・新しいことを学ぶことは、誰にとっても厄介なこと。ただ、こうした古老のプロセスを乗り越えた先には、「すっきり」「すがすがしい」「うれしい」といった快感がまっている。脳がこのことを覚えているから、コツコツ勉強したり、しんどい練習に耐えることができる。
・依存性のある薬物は、報酬系回路を直接刺激して快感をもたらす。よって前段階のもどかしさやしんどさをすっとばして、いきなり快感をもたらす。そのためその快感を求めて繰り返し、依存状態になる。
・依存症になりやすい人は、決して快楽のために薬物を使っているのではない。どうしよもない悩みや苦しみ、心の痛みを抱えて、薬物がそれを和らげてくれることを発見してしまった。和らぐのはほんの束の間にすぎないのですが、それでも心の空洞を埋めてくれるような気がして、手放せなくなる。
・依存症の人が必要なのは、刑罰ではなく、治療と支援。
・WHOがゲーム依存症を病気と認めた。
・ゲーム依存の問題を加速させたのは、スマホの普及。いつでもどこでもできる環境が恐ろしい。
・リアルな人間関係につまずいている児童は、ゲームに依存しやすい。どうしようもない不安や焦りを、一時的に追い払おうとゲームに没頭してしまう。
・著者もゲームに依存した時期があったが、仕事が面白くなってくると自然とやめられた。
・親に内緒で何かを始めるというのは、自我の目覚めでもある。
・心のストレスと食欲は密接な関係にある。
・自傷する人の多くは、誰にもいえない、だけど手に負えないほど辛い気持ちを抱え、じっと耐えている。そのため、普段は海の深くにもぐって息を止めているような感覚で生きている。それが、切った瞬間だけは水面に浮かび上がり、息継ぎができる。ほんの束の間とはいえ解放感を味わう。この解放感のことを「気持ちがいい」「ほっとする」と彼らは表現している。
・つまるところ、事象とは自分の体を傷つけることで、忌まわしい記憶や言葉にするのも悍ましい感情に、心の中で蓋をする行為。蓋をして、無かったことにしたうえで、さらに蓋をすることすら忘れる。こんな手を込んだことをするのは、自分の心を守るため。そういう意味では自傷にもメリットがある。たった1人で手に負えないほどの苦痛に耐えている人が、今、この瞬間を乗り越えるために手段なのです。
・自分の体を傷つけてまで生き延びようとした。僕は、その行為を否定しません。それはきっと「逃げ」ではなく「戦い」だったはずです。けれど、一時のしのぎ戦法をずっと続けることはできない。誰かに頼り、誰かに助けを求め、なるべく早い段階で治療と支援につながってほしい。
・言葉にみんな救われている。心に蓋をするよりも、「むかつく」と言葉にしたほうがまだまし。なぜムカついたのかともっと具体的に言えるようになったら、もっと楽になる。
・依存症の根っこには必ず「歪んだ人間関係」が潜んでいる。「否定される関係」「支配される関係」「本当のことを言えない関係」の3つのタイプがある。
・「ありのままではダメだ」という窮屈な価値観を植え付けられると、逃げ場所をもとめる。その先が依存性をもつものと結びつきやすくなる。
・ラットの実験。自由なコミュニティと檻のコミュニティ。きれいな水とモルヒネ入りの水。自由なコミュニティはきれいな水を好み、檻のコミュニティはモルヒネ入りの水を好む。このことから分かるのは、人間関係と依存物質は深い関係にある。
・依存症になった人の回復にとって大事なことは、その人を一人ぼっちにしないことである。差別したり排除したりするのではなく、手を差し伸べて、関わり続け、孤立させない。どんなに強力な薬物であっても、それは人とのつながりを凌ぐものではない。
・1人で歯を食いしばって頑張ることが自立ではない。誰にも頼らずに生きている人などいません。
・マスコミの情報は、依存患者の治療の妨げになる。
・何に依存しているかというよりも、根本にある生きづらさに目を向けて、それを生み出す社会のあり方を疑問視するべきである。