松本俊彦のレビュー一覧
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アルコールと煙草漬けの両親に育てられ、自身もアルコール依存症のリハビリを受けたことのある精神科医が、経験談を交えながら酒や薬物に依存する人びとと社会の歴史を辿っていく。
依存症の経験を持つ医師が依存症治療の歴史をまとめた、いわゆる当事者研究というやつで、まずいきなり結構ヘビーな著者フィッシャーの入院体験とカミングアウトから始まる。
でもカタい本ではない。とてもフランクな語り口で、アルコールが自分をダメにしていると認められなかった逡巡の日々を綴ったエッセイとしても面白いし、酒と薬物という切り口で見たアメリカ史としても超面白い。最近読んだなかではレベッカ・ソルニットの『ウォークス』に編集意図が -
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ネタバレ・人間は追い詰められると、「止まった瞬間、落ちこぼれるのではないか」と不安になるもの。しかし、泳ぎ続けなければいけないマグロでもあるまいし、そんなことはない。「若い時に怠けると、その後の人生が悲惨だぞ。」という決まり文句がありますが、ほんとうでしょうか。
・依存症の多くの人の特徴が「助けて」と声をあげることが苦手な人ばかり。
・依存症の治療プログラムでは、どんな時に、どんな場所で、何がトリガーになっているのかを過去の経験から探り、そういった場面を避ける方法を考える。
・人が一生のうちに安全にお酒を飲める量は決まっている。
・依存症とは、脳みそをハイジャックされた状態。
・人間の生命に関わること -
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ネタバレ著者は依存症治療に関して著名な精神科医。現場経験ベースで書かれたエッセイで、とても読みやすい。
以下は内容の個人的なメモ/抜粋
- 生き残るために不健康や痛みを必要とする人が世の中にはいる。心の痛みを身体の痛みに置き換えてトラウマ記憶から気をそらす。かゆみが我慢できない箇所をつねってみたりするのに似ている。
- すべての依存性物質の中で個人と社会への害が総合的に最も大きいのはアルコールという研究結果がある。(Nutt D, Lancet, 2010)
- 「Yes to life, no to drugs.」が「ダメ、ゼッタイ」と訳されて定着してしまった。痛みを抱えて孤立している人が無視され -
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保健所の保健予防課で勤務する新人の精神保健福祉士・基 羊介は、「死にたい」と悩む人々の相談に日々応じている。
リストカットや自殺未遂を繰り返し、彼氏の“あるお願い”を断れない少女の彩花、「今から死にます」と保健所に電話をかけてくる男性の佐久間などを担当し、少しでも力になれるように寄り添っていく――。
精神保健福祉士の奮闘を描く2巻。
自殺未遂を繰り返し彼氏や精神保健福祉士の基に依存する彩花や仕事でつまずきうつ病を発症した佐久間に、周りに見捨てられ不信感を抱いた相談者に適切な距離感を保ちながらも相談者が抱える苦しみや絶望感や寂しさや生きづらさに寄り添っていく精神保健福祉士の基の奮闘が、過剰に基 -
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コロナ対応で一気に世間の注目を浴びた「保健所」。そんな保健所が、自殺対策もしていることは、意外と知られていない――。
基 羊介はある日職場の上司が自殺したことをきっかけに、脱サラして保健所の保健予防課に転職した新人の精神保健福祉士。
保健予防課では「死にたい」と悩む人々の相談に日々応じているが、その対応は一筋縄ではいかず――…。
15~39歳の死因第一位が自殺という日本で、「死にたい」と悩む方々に手を差し伸べる人たちが、ここにいます。
精神保健福祉士の奮闘を描く第1巻。
自傷行為を繰り返す引きこもりの少女、妻からのDVに追い詰められる定年退職したサラリーマン、相談者や相談者の配偶者や両親など -
ネタバレ 無料版購入済み
読むべき作品です
監修の松本俊彦氏は薬物依存治療等で活躍されていますので、それもあって読みました。
主に3例、出てきて、軽度の知的障害を伴っているケース、老夫婦で共依存関係になっているケース、不安型愛着障害等々、今時ありそうな症例ばかりです。リストカット、あと自殺未遂も実際の自殺者よりずっと多いです。
なおかつ日本の統計、OECD基準等では甘くて、実数はもっと多いのでは?とも聞きます。政治と行政等の諸問題もあるでしょう。この作品の舞台になっている保健所、この間ずっと減らしてきていますので。当然、行政サービスの質にも影響が出ます。
個々のケースにも絶対的な対処方法はなく、その都度考える必要もあるでしょうから簡単な -
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ネタバレ読んでて本当に胸が苦しくなる。あの甲子園の大スターで、西武時代はキラキラ輝いていた清原が、今はどん底でもがいている。観衆の大歓声を浴びてホームランを打つというのはなかなか経験できない快感なのだろうが、それを失って、彼の繊細な心や「男とはこうあるべき」という理想の高さがあいまって、このような結果を招いてしまったのか。
それでもなお、薬物で逮捕された有名人でここまで人気が高く、同情の声が多いのも彼ならでは。
この本を読んでも、彼を犯罪者として見る気持ちにはならず、正直に胸のうちを語って苦しんでいる姿に、同情や共感の心しか出てこない。
薬物の欲求としっかり向き合いながら、高校野球の指導者として、返り