高殿円のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ存在は知っていたものの、文字通りゆりかごから墓場まで、お客様に寄り添う究極のサービス業である外商の仕事に驚嘆。シリーズ、読み進めたい。
「教養とは、頭の中に詰め込んだテキストではありません。教養とは、振る舞いです。手間ひまをかけた身なりと、正しい日本語と、落ち着き」
百貨店が最も重要視すべきサービスとして語られているけれど、何も百貨店に限ったことではなく、人と相対するすべての場面で同じことが言える。胸に刻みたい。
ところで、2022年には、伊勢丹新宿本店においては、5%の上顧客が売上高の50%をも占めている、とのこと。衣料品ブランドのデパートからの撤退が相次ぐ中、いまデパートを支えているのは、ほぼ外商と催事と食料品ということか。
もう、これ、立派な店舗の存在価値は…と、思ってしまうけれど、歴史ある実体あってこその上顧客、維持し続けなければならないたいへんさよ。 -
Posted by ブクログ
百貨店の外商として奮闘する主人公のシリーズ四作目です。
今作では、前作から更に少し時間が進み、主人公にも部下ができることに。一筋縄ではいかないその部下たちに、合併に伴ってやってきた食えない上司、増えるばかりの仕事に忙殺される日々。挙句いつの間にか社内政治にも巻き込まれてしまい、身動きが取れなくなってきた折、ハードワークが祟って身体が利かなくなってしまった主人公を助けてくれたのは……。
今作も、とても面白かったです。
前作を読んだ時にも思いましたが、同居人の桝家がどんどん可愛くなるようです。甲斐甲斐しい。そして頼りになる。頼った時に頼られたことを素直に喜んでくれる。第一巻を読んだ時には、あのキャラクターがこうなるとはとても思っていませんでしたが、恋愛とかそういうことではなく、誰かと一緒にいたいというのはこういうことなのだろうかと彼を見ていると考えてしまったりします。
そして、今回新しくお客様になった八田さんとそのご友人方がすごい。キャラクターが強い。勢いと圧がものすごい。オーディブルで読んだから尚更、なかなかのキャラクターとして目の前に迫るようで、思わず笑ってしまいました。わくわくして、とても心躍る文章でした。
身体を壊した時に、気付いてくれる人がいる。
心配して、大切にしてほしいと言ってくれる人がいる。
どうにもならなくなった時に、助けてくれる人がいる。
恋人がいなくても、親に先立たれたら一人きりになってしまうシングルでも、そんな人と一緒にいることができたなら、どれほどいいだろうと思ってしまいます。
主人公の静緒と年齢が近いこともあり、色々と似た悩みを抱えている彼女が何をどう選択するのか、今後の展開も楽しみです。 -
Posted by ブクログ
嬉しい4作目。もう表紙ですらテンション上がる。おまけに「つづく」ときて幸せいっぱい。
ついに管理職編きた。ジェンダーアイデンティティ(LGBTQ)からレイヤーを上げ「社会進出した女性」の圧が前面にでてる。生理とか子宮摘出とかおじさん戸惑う単語がドバドバ飛び交うし、怖いけど、嫌味じゃない。さすが高殿円さんが育てた教養あるキャラのおかげ。
むしろ戸惑ってないで全霊で受け止めなければ。
── (著作物を横領されて)怖い怖いと繰り返す。しかしその大半の恐怖は、女性であれば何度も感じたことのある馴染みのある感覚だ─
──世の女が受ける仕打ちにたった1人で立ち向かおうとしている。(中略)誰も進んだことのない暗闇で1人戦い続けるためにも、煌めくゴールドが必要なのだ─
こうして、人気イラストレーターは450万円のジュエリーをお買い上げになる。
ここで対決しようとしているのは、怖いオヤジ。もっと言うとオヤジ文化の社会・経済。男性の私が必死に想像をこらして読んでも、家でモラ夫の烙印を押されている身では限界ある。でも女性は、怖い思いをしているのだ。
結局、立場が強い「場所」で弱い者を搾取するスタイルが成立している。それは企業内だけでなく、家内のリラックス時間を搾取している、という点もきっと同様。
私の願望は、私に(も)時間を使って欲しい。それは、拘束ではなくベクトルの話なんだけど、コミュニケーション不全なのでハラスメント化している。
── セックスなしの夫婦とか、別居婚前提とか、お互いが合意の上であればいいわけなんだし。
──問題は俺(ゲイ)の場合、ある程度の実家の太さと外見と金銭感覚と体の相性と食の相性が合って、面倒な親戚もいなくて自立してる相手ってなると、ほぼいないことは分かってるんで、さて、どれを我慢すべきなんだ─
ほぼいない対等な相手か。
ハラスメントは受け取り側次第、という雑な議論ではなく、「寛容になりましょう」もそうだけど、思いやりとか安心感とかが大事になってくると思う。相手の犠牲にならない範囲で相手して欲しいわけだし。
範囲外に愛があるのかもしれないし。
LGBTQのどのカテゴリーにも入らない人がやりにくい中、男性優位の話はいじめの傍観者が多すぎる議論が進まない話。
この作品が女性活躍の元気玉になってほしいと思う。
タフすぎてアマゾネスっぽいけど。
分厚いけど。 -
Posted by ブクログ
百貨店の外商部で働く日々を描いたシリーズ三作目です。
主人公は、相変わらず高級マンションを同僚とフラットシェアしながら日々忙しく走り回っている。けれど、四十を目前にしてキャリアアップをあちこちから勧められて、転職してキャリアアップしていくことを目指すのか、このまま今の仕事を続けていくのかで揺れている。一人で暮らしている母親のことも心配で、いっそ母親と一緒に住むための家を買おうとするが、そのためには今住んでいるこの部屋は出ることになる。
様々な葛藤と、変化と、人間として成長することを感じさせる三作目の行き着く先に、本当に大切にしたいことが見えるような一冊でした。
静緒が今まで関わってきた人との関係にも少しずつ変化があったり、大きな『イベント』が起きたり、新たなお客さまとの大変な商売があったり。静緒の日々を追いかけているように一冊の中も盛沢山の内容で、忙しく充実した生活を一緒に体験しているようでした。
充実しているのだけれど、そこに満足していいのか。
四十を目前にした独女の自分は、これからどうしていくのがいいのか。
どうしたら、もっと生きやすくいられるのか。
自分にも他人事ではない状況に、改めて今の世の中の仕組みを感じずにはいられません。
このシリーズは、なかなかに好きな登場人物が多いお話なのですが、前作・前々作以上にシェアメイトの枡家が可愛いです。こんな可愛げと愛嬌のあるイケメンに甲斐甲斐しくされたら、ほだされてしまいそうなものですが、そこでブレないのが静緒のいいところだと思います。
関係性に名前を付けることができないからこそ、唯一無二の存在になることができない。そう言って嘆く枡家はとても可愛く、そしてこれは現代の『結婚していない』男女や同性カップルも抱える問題なのだろうと思います。結婚したいわけではない、ただこの人と一緒にいたいと思った時に、法制度上つけられる名前がない。同性カップルも認められるようには少しずつなってきましたが、カップルというわけではなくても、もしもの時に保険が下りたり、何かの時に病室に入ることができる権利というのは、なかなか簡単に認めてもらえるものではないので。
私自身、この先どこでどうなっていくのがいいのだろう、と思わされる部分もありました。自分の中での答えはまだ出ませんが、これからもきちんと考えていきたいところです。
今作もとても面白かったので、次作も読むのが楽しみです。