高殿円のレビュー一覧
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百貨店の外商部員の奮闘を描くシリーズの二作目です。
今作も、前作に続き大変面白く読み進めることができました。それは私が主人公の静緒を好もしく思っているからだと思います。
専門卒のたたき上げで、百貨店の製菓・食品のバイヤーから各所を転々としながら、それぞれで様々な企画を行ってきた実績のある(ただし手柄は横取りされてほとんど手元に残っていない)彼女が、今作では一体何を仕掛けてくるのか、話が進むたびに楽しみになります。
そして、彼女のフラットシェアメイトの枡家も魅力的です。仔犬味があるというか、要領はいいけれど手がかかる弟というか、静緒に気を許している面が出てきたからか、彼も随分と可愛らしく感じます。いや、これは主人公である静緒が枡家青年を可愛らしいところもある、と感じているから読み手もそのように感じるのかもしれません。どちらにしても、奇妙な形でスタートした同居生活は、お互いに居心地のいいところで落ち着いているようで、それが今作の中で騒動に発展していくのも納得です。
催事の新企画、お孫さんのことで悩むおばあ様、妊娠してヤクザから逃げたい愛人、連絡のつかない憧れの人。今回も盛りだくさんの難題を抱えて、目まぐるしい日々の中で、彼女が彼女らしく立ち向かっていく姿はとても眩しいものに思います。
エピローグで、『あなたもまた、磨かれた石だ』と言われたセリフがとても心に残っています。
何ものでもない原石だった彼女が、自らを磨き、さまざまな出会いや経験から更に磨かれ、宝石足り得る強さを身につけてきたことが、その一言に込められている気がします。
まだ続刊が出ているこのシリーズ、続きを読むのがとても楽しみです。 -
Posted by ブクログ
312ページ
9月29日〜10月1日
バツイチ独女の静緒と、わけありセレブ男子の桝家。二人は不思議な同居生活を続けながら、外商員として仕事に励む日々。ある日、桝家の実の母が訪ねてきて、静緒にこのまま同居を続けてほしいと圧迫してくる。静緒の顧客、ヤクザ御子柴の愛人である珠理が妊娠し、御子柴のもとから逃げたいと相談する。新たな催事、ご縁プロジェクトも動き始め、忙しさに拍車がかかる静緒。お客様の様々な要望に応えるべく奮闘する。
静緒と桝家の不思議な同居生活の今後も気になるし、仕事の行方も気になる。続きが出てるのか、と調べてしまった。珠理の身勝手に付き合って、危険な目に合う静緒。どんな修羅場も潜り抜けられる気がする。外商というものにますます興味がわいた。 -
Posted by ブクログ
加速度的に面白さを増していく上流シリーズ3作目。
トッカン!から読み始めて、高殿さんの濃ゆすぎるキャラ作りにうさんくさい目を向けたのも今や昔。脳内を所狭しと駆け巡る「好き」がもう止められなくなっている。
営業成績を追う日々のかたわらで、離婚、終活、ジェンダーレス、LGBTQなどベンチスタートのライフイベントがわさわさと主人公を取り巻く。濃厚なキャラと相まって、なぜか雑味のない最高級ボロネーゼが完成して出てくる仕上がり。なぜか全部おいしい話に見えるのは私だけか。
これまでジェンダー問題では、アレルギー全開の人(田嶋陽子さんのイメージ)に対するアナフィラキシーが私の中にあり、そこにスッとフレーズが落ちてきた。
──何事も特権的であってはならない
このたったの一文。もしかするとこれかもしれないと足を止めて考える。単にニュアンスだけど、女性蔑視ではなく男性優位社会。社会的に抹殺してきた負の側面も認識した上で、自分のベクトルをピタッと言い表した表現に見えた。おなじだろ!と言われれば仕方ないけど。この一言に逆差別的なマイノリティ疲れが癒えた思い。
紳士服屋ひとつとっても男は優遇されとったんやね。
さらにバブルの恩恵にギリ与れずに上の顔色を窺うようになった′70世代、という表現も過酷ながら妥当と思える。圧迫面接デフォルトの就職氷河期をくぐり抜けて、自分には特権なんて何一つないと思ってた。氷河期を逆手にとった子ども部屋おじさんも、様々な作品で問題化されていると思う。
そんなおじさん一名でも配慮すべき余地はまだあった。
お互いを認める社会。とは。
それはただ、「居ていい」という無自覚なのかな。
なにも押し付けられていない。その地点からヨーイドンできる社会実現が理想。 -
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バツイチアラフォーと乙女なゲイとの2人が、人生の寂しさ回避について本音と本音をぶつけ合う。
そんなフラットメイトの迷コンビがリッチマダムな富裕層に立ち向かっていく様は、もう勇ましくすらある。元気もらえる。Iは面白かったけどⅡでさらに円熟を増した感。
高殿さん作品は、登場人物同士のハイスペックすぎる会話に喰らいつくだけで必死になる。だけど、憧れる。自分にはないものに共感できてしまう不思議さを感じる。ゆるやかな上昇志向とでも言うか。
こんなに高回転で話ができる相手って、それだけで信頼してるってことだよねーとか、妙にニマニマもできる。
今回さらに、仕事としての楽しさを一切見出せない(私見)営業について、深い洞察を導き出している。
── いわゆる一つ上のポジションを狙ってるオジサンたちが困るんだわ。彼らは成功したいわけではない。失敗したくないだけなのだ
── 会話もしたくない相手からは何も買わない。会話ができないのは成績に自信がないから。手堅く売れるものしか置かない。つまり遊び心がない(要約)
失敗はしたくない。遊び心がない。じゃあどうすればいいの?というところに対し
── 結局は人生を楽しんでいるかどうかじゃないのかな。人の魅力や人生の厚みは会話に出る。それがサービス業の真髄─
もうバサーっと袈裟切りされた感じがした。それそれ、40代半ばも過ぎて浮上した人生楽しんでない疑惑。手堅く生活しちゃってる。厚みのある会話できる人が羨ましいよ!
─日本人が日本に居続けるように、上流階級の人は生まれつきそこにいるだけ
妬むつもりはないんだけど1巻に出てきた「教養」という言葉は、最低限身につけておきたいなぁと思った。
逆にその方が、人生を本当に楽しめるような気がする。 -
Posted by ブクログ
333ページ
720円
10月31日〜11月4日
富久丸百貨店の外商員として働く鮫島静緒。美容整形に興味があり静緒に試させる女性資産家、息子の中学受験に巻き込む元CA主婦、「強い」宝石を集めるイラストレーターの訴訟事件。引っ越しを考える静緒に、ヘッドハンティングの話も。同居する桝家との関係も落ち着きを見せる。
外商員としてやり手になってきた静緒の成長がみられた。桝家との関係も落ち着いてきて、このまま同居を続ければいいのにと思ってしまう。訴訟事件の腹立たしいことや、中学受験の大変さなど、今回の話も楽しませてもらった。ドラマ化すればいいのにと思っていたら、どうやら竹内結子さん主演でされていたらしい。続きがあれば早く読んでみたい。 -
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ネタバレ前作『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』でも二人の関係性にクスッとして、ほっこりニヤニヤしたのを今でも覚えています。
今作はどうなるの?と思いながら、読んでみましたが…
・二人の関係性の変化
・有名ミステリーをどうこねくりまわしてくるか
を軽々とクリアしていました…!
予想外の角度から切り込まれていてワクワクしてときめく。
おいおい!そうくるのか!面白いじゃないか!と思わず、興奮。
高殿円さん…とても良いです。
とはいえ、3巻目まで買う必要ある…?と事件解決後、あと数ページで読み終わる頃になって気になった私。
ですが、見事に3巻も読まなきゃー!!と思わせる展開がありました。
いや、もうジョーって何者?と思わず目がカッと開いちゃいました。
次も読ませていただきます…! -
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矢継ぎ早に繰り出される大阪弁が、耳元でずっと聞こえている。
京橋という街で存在感を放つキャバレーの、きらめきと喧騒が目に浮かぶ。
ルーのたくさんの言葉や、行間からさえあふれ出てくるような強い気持ちが熱くて、応援したい気分になりながらぐいぐい読んだ。
仕事に誇りを持ち、性別による差が社会の中にあると分かりながらもひざを折らないルーの、なんとまぶしいことだろう。
「にせもんでもいい、あれは光や。あの光の行き着く先はカネで、だけどカネになると不思議とちいとも光らん。――可能性、望みこそが光だ。」
キャバレーというビジネスの栄枯盛衰が描かれているのも興味深かった。戦後の発展、バブル、不景気。家電の登場やさまざまな新しいモノにより、キャバレーだけでなくたくさんのビジネスが変化し生まれては消える。どの時代でも止まることのない経済の流れの中で、ルーはひたすら前を向いて歩いて(走って)いた。
そして、そんなルーと対照的な真珠ねえさん。あらすじや帯文では真珠の抱える秘密がフォーカスされているが、実際ルーがそれを探ろうとするのは後半の後半。ひとにはそれぞれ事情がある、ただそれだけのことと思ってお互い干渉しすぎずにふたりはずっと暮らしてきた。
ある意味戦後から離れられなかった、立ち止まってしまった真珠の姿は、理由を知れば悲しいものだけど、歩き続けるルーのオアシスでもあった。長屋での生活を持っていたからこそのルーのまぶしさであると思うと、やさしいあじさい、たたずむ地蔵さんのような真珠との強い結びつきこそが、悲しさよりもずっと、胸にしみる。 -
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ネタバレパラパラ読んだときに花隈の地名が目に入って、学生時代を神戸で過ごしたので懐かしくなって読んでみることに。
飛行機で自身の会社を宣伝するという大胆な導入場面。利一が興した会社はまさに発展していくその時でそれを見ながらハナはいっそう利一が愛おしくなるのだった
この場面が疾走感と希望いっぱいのキラキラ感がすごい 高殿円さんが描写すると眼の前に浮かんでくるよう
全部読み終わってから思ったけど、この場面は利一と離れることを決めているところなんよね
ほんまに愛おし!と言いながらもう一生会うことはないって決めている
自分はこれからどんどん大きくなる利一の邪魔にしかならないから…
切ない!!
この本には色々と対になっている部分があると思った
整った顔立ちがよく似ているハナと利一
大家族を支えたいと都会で頑張る利一と朝生
仏様とキリスト教
ハナと利一の関係はもちろんのこと、利一と朝生も気になった
境遇も想いも似ていたのに2人の生き方はまるで違ってて 朝生は聖書を利用して私欲のために人々を陥れ、利一は真心を大事にみんなを幸せにする…
お寺の掃除に疲れて寝転がると、金色の仏様の飾りに囲まれているようだった
いつも仏様が見ている、だから真心を大事にしなくては、みんなを幸せにしなくちゃという気持ちで育っていけたのかもしれない 例え、学校に行けないほど貧しくても…
ハナも利一も心に大きな鉄の箱を持ってて、その中に自分の気持ちを入れてきた
花街に売られたくない、上の学校に行きたい…
年を取った2人が自分の気持ちを全部言うことができて、ただの狸の子だった小さな頃に戻れてよかった
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大阪人なら、行ったことはなくとも名前は知っている京橋グランシャトー。ずっと「グランシャトー」やと思っていたのに、えっ、「グランドシャトー」やったん!?と驚きながら読みはじめましたが、実存するのは「グランシャトー」ですよね。
どこまでがホンマなんですか。史実に基づいた小説を書くのがお得意な著者のこと、グランシャトーもそこで働く人たちにもきっとモデルがいらっしゃいましょう。
いわゆるお勉強はでけんかったとしても、人生の機微を知る人たちがここにおる。姫路から逃げてきて京橋にたどりつき、中崎町の長屋に居ついたルーと共に、何十年という時を私も過ごしたような気分になりました。
すべての光景を思い浮かべることができるからこそ浸れる小説だという気もします。大阪人以外の人が読んでも面白いのかどうかは聞いてみたい。 -
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大阪京橋のグランシャトーにまつわる物語であること、私自身長年大阪に住んでいること、京橋近辺の街並に多少思い入れがあったこともあり、思わず購入。
昭和も終わりに差しかかっていた子供の時分、大阪環状線の京橋駅を降りたときに感じた強烈なドブの臭い、地面にびっしりへばり付いているガムの吐き捨て跡と、あたり一面に捨てられているタバコの吸殻。こんなに汚い街があるなんて子供ながらに衝撃を受けたことを今だに覚えている。
大阪の汚い街と言えば西成のイメージがあるかもしれないが、自分の中では京橋こそが大阪で一番汚くてガラの悪い街というイメージだ。
こんな負のイメージが強い京橋だが、グランシャトーの曲は鮮明に覚えているし、何度か飲みに行ったこともある。(グランシャトーには行ったことはないが…。)
作中では「ルー」と「真珠」という源氏名のホステスを中心に、昭和30年代の高度経済成長期から平成初期のバブル崩壊までの時代の流れの中で、グランドシャトーの栄枯盛衰と2人の人生が絡み合いながら物語が進んでいく。
真珠との出会いをきっかけにグランドシャトーのキャバレーで働くことになるルー。だが、口が悪く喧嘩っぱやいルーはグランドシャトーの寮をすぐさま追い出され、No.1ホステスである真珠が住む長屋を紹介され、そこで真珠との共同生活を始める。
長屋の近くに天神橋筋商店街があるので、この商店街の描写も数多く出てくる。(自分も天神橋筋商店街は大好きな商店街だ。)商店街の路地裏にひっそりと佇む個人店や、古家の隙間から隙間にひょっこり移動していく猫は、古き良き時代が確かにそこにあることを思い起こさせる。
ここから物語はルーが東京進出して、グランドシャトーを立て直すといった流れになっていく。
時代の急速な変化の中で、悲しみ、時には喜びの感情を剥き出しにしながら生きるルーの逞しさに惹きつけられ一気に読ませてもらった。
作中でも語られるが、時代背景は高度経済成長からバブル崩壊にかけて描かれていて、街も人も戦争の傷痕を乗り越えたというよりは、無理やり金や豪華なもので塗りつぶして誤魔化しながら突き進んでいる。だから、街並に輝く光は全て偽物なのだと。いずれはそのツケを何らかの形で支払うことになる日がくるのかもしれない。
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Posted by ブクログ
この本は書店でタイトルを見た瞬間、大阪人なら買わねば。と作家名も何も確認せずに購入。ある一定年齢以上の関西人なら必ず知っているCM。京橋のレジャービル「グランシャトー」がモデルだとすぐにわかったからだ。
プロローグを読み始めてすぐに作品世界に吸い込まれ、最後まで読んで、再びプロローグに戻って読み、そのまま二周目を読んでしまうという、非常に奥が深い小説でした。
もう二度と戻らないゆったりとした時の流れと懐の深い昭和の空気感が文章からあふれてきます。そしてこの本を開くと、一定年齢以上の関西人なら必ず歌える「京橋は♪」で始まるあのCMソングが脳内で再生されます。主人公ルーの執着が悲しく切なく逞しく愛おしい。良い作品でした。