あらすじ
金出づる国、燦という大国が支配する世界。貧しい土地で育ち、産んだばかりの子を奪われた環璃(ワリ)は、ひとり輿に乗せられ運ばれていた。「皇后星」に選ばれた環璃は、次の燦帝候補である四人の藩王のもとを巡って閨をともにすることになる。その道中で山賊に襲われたところを助けたのは、触れた男を一瞬で塵にする不思議な力を持った女性・チユギだった。その力に憧れながらも、帝までたどり着いて成し遂げるべきことを決意した環璃。運命に抗い、死と隣り合わせの旅を生き抜こうとするが――。彼女がたどり着いた、女が産み、男が支配する世界を変える「忘れられた物語」とは?
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Posted by ブクログ
世界観は東洋の後宮に近いけれど、読んだ感想としてはSFのような感じ。
とても面白かった。
女が女であることをここまで突きつめた作品もないと思う。
虐げられ、奪われ、無力であることを強要される。
それでも、それを強いた男の子供を孕んでしか生きられない。
「なんのために生まれたのかわからないまま死ぬくらいなら、なにかに成ってから死ぬ」
選択についての考え方や支配についての思想が深い。
心理学でもあるし歴史書としての面白みもある。
チユギとワリの関係性が最後まで美しい。
純粋な心の通じ合いを感じました。
Posted by ブクログ
ファンタジーかしら、などと軽い気持ちで読み始めたら歴史大河エンターテイメントで尚かつジェンダー問題を深く突き詰めて考えさせられる本でした。
かといって、立ち上がれ女性たちよ、という内容でもなく長きに渡る人類史、カミとヒトと獣のこれまでとこれからとも。
獣のような男達が一瞬で消え失せる場面に快い胸の高鳴りを感じたのは私だけではないでしょう。
母となり狂う性と呼ばれる女の身で、子どもの事を我が命よりも守りたいと思う女の多いのには納得。
ある意味、歴史書としての楽しみ方も出来たし。ゆっくりこの本を読む時間、大切でした。
Posted by ブクログ
男女で大きく感想が異なる作品だと思う。
昨今のフェミニズム運動が内包する怒りを、異世界ファンタジーという形に変えて爆発させたような物語。
主人公は夫を殺され、産まれたばかりの息子を人質に取られ、子を産むためだけに見知らぬ国々をまわる。人権が無い。
あまりにも酷い人々に酷い世界だと思ったが、その背後に「彼らは獣の末裔にすぎず、かつて主人であった人々の真似をしているだけ」という大きな皮肉があった。
貴志 祐介の「新世界より」を読んだときの衝撃を思い出した。
幕引きがさっぱりとしているので少し消化不良だが、新たに主人公が王として君臨するのではなくてよかったと思う。
Posted by ブクログ
壮大な物語だった。
女と男、支配と服従、変化と停滞……いろんな軸が重層的にこの世界を構成している。どこか多くの幻のような物語であるような顔をしているのに、実は痛いほど現実の物語である。「女は子供を産むことで狂ってしまう。男はいつまでも獣の顔から抜け出せない」本当に覚悟のある表現。
序盤、環璃の理解の早さ・察しの良さにちょっと戸惑ったが、それに導かれるようにしてぐんぐんとのめり込んだ。
全体的にやや説明過多で長いのがちょっと気になった。もう少しシンプルであればもっと手に取るハードルも下がるのに……と。とはいえ、高殿さんの強い意志が、押せては返す波のように、何度も何度も伝わってくるのはこの上なく濃密で心地の良い読書体験だった。
Posted by ブクログ
忘らるる物語
著者
高殿 円
あらすじ
男が女を犯せぬ国があるという。
辺境の王族として生まれ、幸福な結婚をしたばかりの環璃(ワリ)は、突如たったひとりになった。広大な大陸を統べる燦(さん)帝国の次期皇帝を選ぶための籤(くじ)、”皇后星”に選ばれたからだ。一族はすべて皆殺し、産んだばかりの息子を人質に取られ、環璃は候補の王たちと寝るためだけに国々を巡る。絶望の淵に突き落とされた彼女が出会ったのは、触れた男を塵にする力をもつチユギという名の戦士だった……。
女が産み、男が支配する世界を変える「忘れられた物語」とは? 破格のエンタテインメント巨編!
感想
高殿円さんの『トッカン』や『上流階級〜富久丸百貨店外商部〜』が好きで手に取ったのですが、本作はこれらとはまったく異なる世界観で、著者の作品領域の広さに驚かされました。
今回はお仕事小説ではなく、歴史ファンタジーとSF要素が融合したような物語。女性作家ならではの視点で描かれており、設定上は古代風の世界でありながら、女性の社会的立場やジェンダーに関する問題など、現代にも通じるテーマがしっかりと描かれています。
長編であるうえに、独特な世界設定やSF的な展開もあり、1度で物語の全体像を掴むのは少し難しいかもしれません。それでも、単なる異世界ファンタジーとして読むだけでなく、現実世界の問題と重ね合わせて読むこともできる、奥行きのある作品です。
高殿作品のファンはもちろん、骨太な物語やジェンダー観を扱ったフィクションに興味のある方にもおすすめです。
Posted by ブクログ
すごく難しい本だと言うのが第一印象。
人によっては考え方は違うかも。
男尊女卑と言われればそうかもしれないが、なぜそう言われるのかもっと深いところを追及しているような気もする。
私達は繰り返してるんだろうなとは思うし、それはこれから先も変わらない気もする。
それを知るのはカミに選ばれた者のみって事なのかな。
Posted by ブクログ
差別について考えるきっかけを与えてくれるファンタジー小説。
主人公の環璃が人質にされた子どもを取り返すために4つ国を廻る強制的に・・・
4つの国にはルールがあり、それが少し考え方によっては哲学的な気がしました。
ただ、女性への扱いが酷い。
過去(時代を遡る)の女性差別を考えると現在の女性の扱いは良くなっているけど、
それでも女性と男性と同じ人間なのに差があるように感じます。
近いうちに少しでもみんなの考え方が改まったらいいです。
今まで差別について深く考えたことがないですが、この小説を機会にいい経験ができました。
Posted by ブクログ
女性として生まれたことの苦しみと力を手にしたときの葛藤、全てを変えようなんて思っていない、ただ誰にも侵されず自分が自分として生きていきたい、誰にも搾取されたくない、支配されたくない、それだけがなんと難しいことか。
世界に翻弄されながらも、力強く生きようとしている彼女に心を揺さぶられる。
どんな形の世界、社会が平和と呼ぶのか、男にとって都合のいい世界、女にとって都合のいい世界、どちらでもないそんな世界はあるのかな。
Posted by ブクログ
面白いけど「女は奪われ虐げられる性」を強調しすぎててなんだかなー。
でも百合ですよね。
主人公と息子が結局再会せずに遠くから見守るのが良かった。
Posted by ブクログ
ファンタジーに苦手意思があるが、この世界の雰囲気は好みですっと入り込むことができた。面白い部分(果てや各藩の描写)も多かったけど、冗長。説明的な台詞が多くまどろっこしく感じた。
Posted by ブクログ
長い!
環璃の理不尽な運命を描くには、大事なんだろうと思うけど長いなぁ。
女性であるために、決められた運命にどう抗い、受け入れるかに尽きるんだと思った。
Posted by ブクログ
この作品の伝えたいことってなんなんだろうなぁ。最初のうちはついていけたが最後の方、わからなくなってしまった。
物語としては結構面白かったのだけど
2023.7.10
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Posted by ブクログ
辺境の小さな国の王女として生まれ、幸せな結婚をし、息子を授かった環璃。だが、その幸せな暮らしは突如終わりを迎え、広大な大陸を統べる燦帝国の次期皇帝を選ぶ「皇后星」に選ばれ、環璃の国は滅ぼされてしまう。
産まれたばかりの息子は人質に取られ、旦那さんは殺されて、次期皇帝候補の子供を妊娠する為だけに大陸を渡り歩かなくてはならない過酷な旅。そんな中、男に触れただけで塵となる力を持つチユギと出会う事で環璃の運命は大きく変わって行く…
中々ヘビーな展開で、どんよりした気分でしたが、希望を捨てない環璃の強い意識が格好良かったです。
息子も殺されてはいないかヒヤヒヤでしたが、最後まで生き延びていてくれたのは救いでした。
神と共存した環璃の長い年月の先に、また次の物語があるんですよね。次はどんな人に繋がれるのか知りたいです。