高殿円のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレめっちゃテンションあがる小説!成り上がり小説の面もあるけれど、成り上がったあと何を考えているのか、何を大切にしてきたのかに焦点が当たっているのも、とても良かった。
冒頭、社長であり主人公・夕映野のインスタライブから始まるのも斬新。
そして「せどり」とはもちろん、傷ついたり、黒ずんだブランド品を安く買い、リペア(修復)して輝きを取り戻させて、高値で売ることなのだが、転売ヤーと違ってモノに愛情があるのも素敵。さらに読んでいくうちに、「せどり」という言葉自体がダブルミーニングだったと気がつき、物語は奥行き深く、重くなっていく。お見事すぎる。
【あらすじ】
インスタライブ。
『はーい今日も元気に底辺からブチ上がろ〜』『二十代で起業して今は大手ブランド買取チェーンの社長やらせてもろてます、夕映野でーす。年商は50億、だから50億の女』
と、ノリの軽い自己紹介から始まる。
雑談のあと、最後にはエルメスのバーキンのプレゼントコーナーがあって『わたしは50億の女、私は売るのがうまいのよ』で締める。
これは夕映野のルーティンで、これまでも社長のキャラクターと、太っ腹なバーキンのプレゼントが話題となり、業績を伸ばしてきた。
しかし、今日のインスタライブは平穏なまま終わらなかった。彼女はあまりにも狂気的な宣言をする。
「わたし、ずっと殺したい奴がいる」
「そのための情報提供者には、1億円を差し上げます」
画面の向こうに1億円の現金を晒し、視聴者を煽りだした。すぐさま、【50億の女『殺したいやつがいる』と発言】と、ネットで拡散され炎上してしまう。
気が気でないのは、社長の右腕・左千夫だ。創業当時から夕映野と苦楽を共にし、夕映野が商売敵に迷惑をかけた時などは尻拭いをしてきた。反対に、左千夫は自己評価が低く、自分みたいなポンコツを役員にしてくれたのは、夕映野のおかげだという気持ちもある。
何より重要なのは、会社が半年後に上場を控えていることだった。よりによって、何でこんな時に炎上させるんだ、と戸惑う。
さらに別日にも夕映野のインスタライブは行われ、幼少期の思い出を語るとともに、教師に殴られた過去を暴露した。すぐさま視聴者にその教師の身元が特定されてしまい……。
左千夫は「成り上がってやりたかったことはこれなのかよ?」と疑問が止まらない。夕映野をどうにかして止めたいと思うが、夕映野は失踪しており、どこからインスタライブが行われているのか突き止められないのだった。
【感想】
学歴なし、家なし、金なし。社会的底辺からのブチ上がりだとの触れ込みだけれど、実は全てに理由があった。バブル崩壊、阪神淡路大震災、就職氷河期といった平成の理不尽を全てモロにくらった世代。何とか「自分は」生き抜いてきたけれど、生き抜けなかった人は?
生き抜けなかった人への補償は?
という、怒りの炎が燃えたぎっているのが、読んでいてめちゃくちゃアツくなった。自分はギリギリ就職氷河期ではないのだけれど、少し上の世代の方々の境遇は聞いてはきている。毎年千人単位で採用していたNTTですら、三年間新卒採用をやめていたことなど、今聞いても信じられないけれど、そんな時代が確かにあった。
新卒至上主義の社会。自分の旬を勝手に決められ、それを逃すと「中古品」として扱われるという地獄は、今でも残っていると思う。
『シングルマザー、氷河期の元主婦、非正規しか選択肢がなかった中年、元引きこもり。世間から三軍・四軍扱いされてきた人々に、手をかけ、価値を引き出し、上場企業の正社員という居場所を与える。遠火の「せどり」の真価と真意はそこにあった。』と左千夫は知っているからこその戸惑い。ラストの、つばめとの対決までは鳥肌モノだった。
実体経済と金融経済の額の差が話題になって久しいけれど、金が金を生む仕組み自体を否定はできないけれど、空売り規制するだけでだいぶ変わると思う。 -
Posted by ブクログ
なんだか何気なく読み始めたこのシリーズだが、とても勉強になる部分が多く、鮫島さんの言ってることも深く理解できる部分が多くて、しっかり読んでしまっている。
きっと鮫島さんは、会社としては扱いにくい人間で、正直に言えば目先の売上だけ見て欲しい部分があると思うが、お客様が何を求めているのかという思いを常に持っていて、それを探求し続けるのがすごいし、それが新しいお客様の獲得になるんだなと思う。
自分も目先の売上なり対策に目がいきがちだが、それと同時に先も見ないといけないなと思った。
また、枡家のお母さんの話は、なんだかすごい心に染みた。
色んな思惑や策略が蠢くなか、母の愛だけは確かなものなんだなと思った。
なんだか色んな人との距離が近くなっていく話なので、そんな人もいるんだなと価値観やら考え方やら知れるのはすごい良かった。 -
Posted by ブクログ
仕事柄外商さんとは関わることがあって、どちらかと言うと競合というイメージだったから憎しという印象があったが、こんなにも大変な仕事だとは思ってなかったので見る目が変わった。
ただ働くだけなのに身なりやら言葉遣い、覚えることや考えることが多すぎて大変ななか、一人一人のお客様に向き合って「欲しいもの」を探すというのはなかなかすごいことだと思う。
ただどんな仕事でも、金額どうこうの前に心構えとして持ってないといけないことだなと思った。
葉鳥さんという絶対的なカリスマが辞める理由というのがわかった時は不覚にもうるっときた。
シリーズのようなので、続けて読んでみたいと思った。 -
Posted by ブクログ
おもしろかったし興味深かった~。著者の息子がフラットにスキンケアに取り組む姿勢に感化された著者の夫の様子がルポルタージュ形式で書かれている。著者がしっかりと取材し、データに基づいた各世代の男性のスキンケア事情や男性向けの美容クリニック、また女性と男性での美容に求めるものの違いなどを分析しつつ、そのうえで男性がスキンケアに手が伸びにくい背景や、手を伸ばす背景などを論じていて、とても興味深かった。出版している早川の男性社員に実際にスキンケアに一定期間取り組んでもらった実験の様子も記録されており、そういった構成の本は出会ったことがなかったのでとてもおもしろく読めたし、興味深かった
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Posted by ブクログ
ネタバレ読んでいる時の感覚がとても心地よかった。
環璃が皇后星として通り過ぎた国を見る時は、世界が視界の端を流れていくよう。
チユギの野宿の様子は、夜の闇の中が思い浮かび、焚いた火を見つめる温かさを感じる。
環璃が星を見て過去のヒトの在り様を知った時の、個人では体験できない長い長い時間の流れに沈み込み、視界が広がると同時に無力感を覚え、個の意識が遠くなる感覚。
チユギが長く生きて繋いできた記憶が、環璃へ繋がり、カミによる刑場の出来事で、ヒトを超越した存在の起こす力の爽快さを感じながらも畏怖するような…最終章で環璃に一度すべてが収束された場面のエネルギーがすごかった。
長く生きる者の見る未来も、変わったようでまだまだ変わらないことも愛おしく感じた。
父権を強化する支配の輪廻は、知性をもって作られたシステムとされていたけど、支配は理性ではなく獣としての衝動に由来するというところ、とても響いた。
力関係に差がある状態は不健全。
瑪瑙のかんむり鹿の女王の名乗り。
月端から果てへの行き方、逆の順に語られる月端への行き方。
繰り返し出てくる連なる言葉が、意味あるものとして物語中でつながった時、読んでいるだけの身の感情が拓けたみたい。