保阪正康のレビュー一覧
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本書は昭和史の15の歴史的事実を扱った歴史書である。ひとつひとつが大きな課題であり、優に1冊の本となるような事案ばかりであるので、それぞれの事案の詳細は本書のみではわかりにくいところもあるが、昭和史全体を理解するためには良い本であると思った。
日本人は歴史好きの人が多いと思う。幕末の坂本竜馬は日本史最大のヒーローであるし、明治を扱った「坂の上の雲」も人気は高い。ところが、昭和期の歴史は、人気がない。私には、昭和の歴史についての国民全体の共通の認識が今成立しているとは思えない。
日本人は、どこかで間違ったから、あの戦争になったのだろう。本書によると昭和史論争でのさまざまな意見を持つ人たちにひとつの了解点があったそうである。それは、「なんとおろかな戦争を戦ったことか」という了解点であったそうだ。
戦後65年を過ぎて、ようやくあの戦争を冷静に語れる時代が来たのかもしれないと思う。本書は、最近の研究も取り入れて新しい見解も語っている。昭和史の認識を深められる本であると思う。
本書で感じたことをいくつかを取り上げてみたい。
ひとつには「対中国観の歪み」である。日本の政治・軍事指導者、さらには日本の国民が、中国の歴史や風土、中国人の気質、国民的エネルギーについて無知であったことが、中国侵略につながったとしている。これは、現在でも当てはまるのではないか。
「太平洋戦争とその歴史的本質」では、近代日本が行きついた結果の自滅行為ではないかといっている。この時代の日本人の共通認識が成立するためには、さらに成熟した論議が必要なのだろうと思った。
「北方4島、北海道占領をめぐるドラマ」では、スターリンとトルーマンの息づまるやり取りを記載している。国際政治の非情さと残酷さを感じた。日本は、あやうく東西ドイツの悲劇と同じ局面になりかねなかったのだ。他にも本書には興味深い事実が多く記されており、おもしろく読めた。
それにしても日本の記録文書についての認識には怒りさえ覚える。1945年8月14日の閣議で戦争関係の文書を全て焼却するように、行政機構、軍事機構の末端にまで命令を発している。当時の指導者には、文書が国民全体の歴史的財産であるとの認識がなかったのだろうか。あきれ果てる愚挙だ。
日本の昭和期の歴史がこの1冊で全てわかるわけではないが、より深く昭和史を知るためには必須の1冊といえるかもしれないと思った。 -
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ネタバレ・ノンフィクション作家保坂正康氏が、「帝国主義的感情」を捨てて、冷徹な歴史的論理の中において領土問題を考えるよう主張して書かれた作品。
・尖閣諸島、北方領土、竹島という現在領土問題でホットなエリアを取り上げ、露中韓との間での歴史的事実を決してヒステリックにならず丁寧に淡々と記載している。
・サンフランシスコ講和会議における吉田首相(当時)による演説は気骨のあるものであり、きちんと歴史に刻み込まれていかねばならないと感じた。
・我々は敗戦体験を通じて学んだ以下のことに改めて思いを至らせるべきである。
①他国の領土を奪うことによる損と得を計測してみるべきである。(歴史)
②自国の文化や文明が唯一絶対と考えたときにそこに生まれる独善を考える必要がある。(文明)
③国境とは何かを改めて私の問題として捉えなければならない。(国家)
④不当に奪われた自国の領土はどれだけの時間を経ても、その正当性を主張し続けなければならない。(権利)
⑤領土空間の拡大は必ずしも国民の幸福や充足を生むとは限らない。(教訓) -
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ネタバレ[ 内容 ]
東京裁判(極東国際軍事裁判)とは何だったのか!?
勝者による「復讐裁判」と片づけてよいのか?
史実から目を背けるのは「逃避」である。
壮大なる歴史ドラマに隠された数多くの教訓を、どう受け止め、どう伝えるか!?
新史料を得て世に問う、保阪正康流理性史観。
[ 目次 ]
序章 昭和史清算のひとつの形
第1章 裁判の全体図―可視と不可視の部分
第2章 裁いた側の論理と歴史的責任
第3章 裁かれた側の弁明とその義務
第4章 判決のもつ意味と戦後社会
終章 六十年目の東京裁判、歴史への道
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☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
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[ 内容 ]
昭和三十年代の「昭和史論争」を初め、これまで、昭和史をめぐっては様々な論争が繰り広げられてきた。
今日でも、国を超えた歴史共同研究が進む一方、個別のテーマに関して、依然として対立点が存在する。
これまでの論争は果たして本質的なものであっただろうか?
15のテーマに関して、史実を整理し、より本質的な問題点を提示する。
[ 目次 ]
満州事変前後の国家改造運動
二・二六事件と新統制派
日中戦争と「現地解決・不拡大」
南京事件―戦場における残虐行為とは
太平洋戦争とその歴史的本質
毒ガス・原爆・大量殺りく兵器を許した論理
北方四島、北海道占領をめぐるドラマ
「敗戦」と向き合うということ
東京裁判が真に問うていること
占領期に見る宰相の資質
占領は解放か。それとっも抑圧か
強制連行の実態を考える
沖縄県の本質を見つめる
慰安婦問題に見る「戦場と性」
昭和天皇の歴史的役割を分析する
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[ 内容 ]
「富田メモ」や『卜部亮吾侍従日記』をはじめ、昭和史における一級史料の発掘が相次いでいる。
歴史史料は、どう読んだら理解が深まるのか。
ノンフィクションとアカデミズムでは、史料の考え方、使い方はどう違うのか。
側近たちが残した史料が語る昭和天皇の実像とは。
昭和史研究の第一人者と、史料発掘の専門家が「史料の表裏」を縦横無尽に語り合う。
[ 目次 ]
1(昭和史史料の見取り図 史料の空白部分 史料発掘の裏側 歴史をめぐる「記録」と「記憶」 昭和天皇史料をどう読むか)
2(昭和史の転換点を読む 昭和史の虚実に迫る)
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Posted by ブクログ
東京裁判から60年。本来なら歴史の領域に入っていかなければならないのだが、法務省の地下に眠っているとされてきた裁判の検察側、弁護側の証拠文書が平成11年に国立公文書館に実は移されていた。
そして、国立公文書館が平成18年12月からその一部の整理を終えたことを明らかにし、それが徐々に公開されてきている。
著者は、激動を生きた世代の責務として、昭和前期からの軍人、政治家などの行動を分析し、どのようなプロセスで無謀な戦争へと突き進んでしまったのか。
東京裁判の記録、当事者などの証言を元に、詳細に分析したものである。
この裁判が問うていることの真の意味を日本社会は今後に生かしていかなければならない。 -
Posted by ブクログ
8/12が発売日だったらしいのですが、たぶん発売日の丁度1年後に買いました。すごい縁ですね。報道問題と報道を信じたくなる人の心理をどう突くかというプロパガンダ論の一環として手に取ってみた次第。戦時中の日本が欧米諸国から「病的な空間」とそれぞれ自国でキャンペーンするとともにそれを自己実現させ、結果的に異常性を裏打ちしてしまったのが当時の異常な報道のありかただったというのは示唆に富んでいます。根拠は示せないけれど「我が」軍が勝ってるんだ!といってだんだんと煌びやかにデコレートされる報道文とともに報道をある程度コントロールできる者が「これまでの嘘がばれる」のを防ごうとするあまり国家反逆罪級の行動に出てしまうメカニズムは現在においても再現される危険性が高く過去の話と切って捨てるにはあまりに切実な問題だと思います。