千葉敏生のレビュー一覧
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『THE SINGULARITY IS NEAR』の著者レイ・カーツワイル氏のことを、タレブ氏は「対極にある」(要は「嫌い」)と言っているが、私は両者とも大好きで現代を象徴する思想家であり実践家だと思う。タレブ氏は連続性を断絶させる不確実性を「ブラック・スワン」という概念を以って説明してみせたが、本書ではさらに昇華し、「反脆弱性」という新語を用いて非線形におけるダウンサイドとアップサイドの非対称性を見事に解き明かす。
タレブ氏の発言はやや棘があり誤った認識も見受けられるが、無責任で言いっぱなしのエージェンシーたちへの痛烈な批判は痛快だ。ダウンサイドが限定的かつオプション性がありアップサイドが∞であることを見極められるリスクテイカ―こそ世界を変える者たちだ。『ブラック・スワン』がエポックメイキング的概念であったように、彼らの行動を讃え推奨する『反脆弱性』の理解は転換点をもたらしえるかもしれない。 -
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[多様な顔,統合された人格]世界で最も影響力のある人物とも言われるロシアのプーチン大統領を,6つのペルソナ(人格・仮面の意)を持つ人物として読み解こうと試みた大作。現代ロシアを考察する上で,欧米においては非常に高く評価されている作品でもあります。著者は,トランプ政権下で米NSCのロシア・欧州上級部長に任命されたフィオナ・ヒルとブルッキングス研究所のシニア・フェローを務めたクリフォード・G・ガディ。訳者は,濱野大道と千葉敏生。原題は,『Mr. Putin: Operative in the Kremlin』。
非常に実証的かつ体系的にまとめられているプーチン大統領理解のための必読書といった感のある一冊でした。プーチン大統領を一刀両断的に捉えることなく,その複雑さを受け入れながら解説を進めていく筆に,真摯かつ高度な学究姿勢が伺えるかと。解説書的な記述ではないため,読んでいて面白い点も高評価のポイントです。
〜本書の執筆を通してわかったのは,ウラジーミル・プーチンにとって大事なのは,情報が真実かどうかではなく,彼の言動を相手がどうとらえるかである,ということだ。プーチンにとって興味があるのは,特定の現実を伝えることよりも,その情報に対する周りの反応を確かめることなのだ。〜
分厚いですがロシア入門書としても実は良いのかも☆5つ -
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変わりたくても変えられないという経験を人は皆、何回かしているのではないだろうか。「分かるとできるは違う」とか、「マインドとロジック」が必要とか、変えられない理由、変わるための方法として様々なコメントやアドアイスを耳にしたこともあるだろう。
しかし、それらを聞いて「それなら本当に変われそう!」と思ったことは、どのくらいあるだろうか?実際に変われただろうか?その答えがNoである人こそ、本書を読むべき人かもしれない。
本書では心理学実験や様々なケーススタディをもとに、どうすれば変われるかについて具体的な行動指針が明示されている。また、感情を「象」に、理性を「象使い」に例え、説明も分かりやすい。著者のハース兄弟はビジネスマネジメントの専門家だが、ビジネスパーソンに限らず幅広い層の人々が実践できる内容になっている。
書店で山積みされている自己啓発書の部類の中では、納得感、実践性ともに上位に位置すると思われるが、登録数やレビュー数を見ると、認知度は低いようだ。内容は申し分ないのに、実にもったいないことだ。 -
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進路に悩む大学生、ビジネスマン、重要な選択をしていかなければいけない大人に是非読んでほしい一冊です。
私達は重要な決定にも関わらず、雰囲気や自分の一時的な感情で決めたりしがちで、本当に最善の選択をしたのかと悔いが残ることもあります。
また、組織の行動の決定においても、声の大きい人の意見が通り、それが失敗することもあります。また、そういった意思決定のプロセスが派閥を生んで組織がうまく機能しなくなることもあるかもしれません。
この本を読めば、どのように最善の決定をしていけばよいのかがわかります。内容は体系的に書かれていて、例も多く分かりやすいです。内容が濃いので何回か読み直たいものです。
本当に有用な本です。 -
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新聞の書評で見て非常に興味をそそられたので早速読んでみたのですが、やはり正解でした。
ダーウィン、ケルヴィン、ポーリング、ホイル、アインシュタインという5人の科学者について、主要な科学的業績のわかりやすい説明とともに、特にそれぞれの晩年彼らが陥った、結果として誤っていた自説に対する固執を描かれており、科学の勉強になると同時に、非常におもしろい人間ドラマにもなっています。
ただ、自身科学者である作者の一貫した立場は、たとえ結果としては誤っていた説であろうと、世界の有様について深く考えた大きな仮説というのものは、それ自体として大きな意義のあるものであり、世の中に対する影響力の小さな「正しい説」よりもむしろ重要だということで、非常に納得させられるものでした。
アインシュタインの「失敗」に関しては、これまで「一般相対性理論に宇宙定数(宇宙項)を導入したこと」を本人自身が「人生最大の過ち」と言っていたというエピソードを何回か読んだことがあったので、てっきりそれだと思っていたのですが、むしろ逆に「せっかく宇宙定数を発見したのに、それを途中で撤回してしまったこと」だというのが、意外でおもしろいところでした。
進化論、遺伝、地球科学、宇宙論にわたる幅広いテーマを、簡明にドラマチックに知ることのできる、非常な良書だと思いました。 -
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遺伝のメカニズムを勘違いしていたチャールズ・ダーウィン。地球の熱伝導率が一定だと決めつけて地球の年齢を大幅に間違えたウィリアム・トムソン(ケルヴィン卿)。DNAが三重らせんだと主張したライナス・ポーリング。宇宙は定常であると信じたフレッド・ホイル。宇宙定数を自ら否定したアルベルト・アインシュタイン。科学史にその名を残した偉人たちがその業績の裏でどのような間違いを犯し、なぜそのような間違いをしてしまったのかを追求したノンフィクション。
偉人もひとりの人間であり、その間違いもまた至極、人間的でした。特にポーリングのエピソードがなかなか面白く、彼はライバルたちを出し抜くために思いついた「DNAの三重らせん構造」を深く検証もせずに堂々と発表しました。でもそれは化学の基本原理すら無視したトンデモナイ形状で、あのポーリングがどんなDNA形状を発表するのかと怯えていたライバルたちはそれを見て歓喜したとのことです。でも後に二重らせんを発見したジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがポーリングの考え方に影響を受けたのもまた事実なのです。
かのエジソンも「失敗は成功の母である」と言いました。知的好奇心を満足させてくれる良書です。 -
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ローマ帝国の崩壊が崩壊した理由、産業革命後にテイラーが構築した「科学的管理法」の功罪、世界が注目した「トヨタ生産方式」、そしてICTの発達した現代に至るまでの組織コミュニケーションの構造とその変化を振り返り、ソーシャルメディアでおなじみのグラフ理論を使って強い紐帯である凝縮性、弱い紐帯である多様性について前提事項として解説する。
本題は従業員のコミュニケーションをIoT(ソシオメトリックバッチ)を用いて分析した結果で在宅勤務の生産性、専門家の発掘、創造性の発露などから病気の感染まで、働き方やコミュニケーションの調整を図ることで生産性や従業員の満足度の向上に繋がる要因を見つけられると説く。「ピープル・アナリスティック・システム」と名づけられたこの仕組みはまるで、人事のリーンスタートアップです。
実際にピープル・アナリスティック・システムを導入しなくても十分実験された結果を分かり易く解説された本書を読むだけで、組織のコミュニケーションはどうあれば良いかなど参考になります。 -
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『アイデアのちから』『スイッチ!』の作者の第三弾。
『アイデアのちから』ではどうやったら人を説得できるか、わかってもらえるためにはどう伝えたらよいか、がテーマだった。『スイッチ!』では、自分も含めてひとが、そして組織が今までの行動を変化させるための具体的なやり方はどういうものか、がテーマである。
そしてこの『決定力!』では、何をどう決めていったらいいか、何か決めるときにどういうふうにすればいいのか、をテーマに選んでいる。
自分の考えをひとに伝えるときのよい方法、が最初の本のテーマだった。が、伝えてわかってもらっても行動につながらない、何もかわらない、ということがあるわけで、そこで次の本では、変化を起こしてもらうためのより具体的な方法がテーマになった。
この本では、望ましい変化とはなにか、伝えるべき自分の考えはどう決めるのか、と前の二著の前提をさかのぼって考える本になっている。
どの本も具体的で有用、かつ興味深いエピソードで面白く読めるので文句なくおすすめだが、上記のように三部作としてその関連を考えながら読むとまた面白いと思う。 -
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「象使い」=理性、「象 」=感情、「道すじ」=環境になぞらえて、どのようにして人の行動を変化させていくかを3つの観点から教えてくれる。
行動を変たり変化を起こすポイントは次の3つだ。
①象使いに方向を教える=明確な支持を与える。
②象にやる気を与える=相手の感情に訴えかける。
③道すじを与える=環境を変化させる。
理性の弱点は考え過ぎて空回りすること。
ブライトスポット=上手くいっている例を探す=解決策を探すこと。
変化を起こすには「大事な一歩の台本を書くことが重要」
目標は具体的な行動の目標として設定する。
行動が反射的になればなるほどセルフコントロールが不要になり疲れにくくなり行動を継続しやすくなる。
「true but useles」な事実は無視せよ。姿勢に必要なのは踏み出すための小さな一歩が記された台本なのだ。
子供にやる気を与えるためにはこどもの言葉を使うべし。
近い将来に実現できる鮮明な未来像を「目的地の絵はがき」と呼ぶ。
理性と感情の両方に訴えかける目標が大事。
大規模な問題に大規模な解決策はうまく行かない。小さな一歩を設定することが大事。
理性には、(1)小さな一歩を示す、(2)目的地を指し示す。
感情には(1)変化を細かくする、(2)アイデンティティを刺激する。
環境を変えるためには、(1)習慣を生み出す、(2)仲間を集める。
目標はオールオアナッシングで設定して、曖昧さをそぎ落とす。
理性の強みは先見性。長期的目標のためには短期的な犠牲は厭わない。ただしあいまいさや選択肢に直面すると麻痺してしまう。
感情に訴えるときには、「見て感じて変化する」よう意識する。 -
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ネタバレインフレ14ヵ条と次のステップ:持続的な物価安定が保証されない新時代?
1.貨幣は重要である
政策立案者たちは貨幣供給量の伸びが異常に加速する時期があることを知っておくべき
金融政策が物価上昇を許容すれば、インフレが持続する可能性は高くなる
2.人々の態度は中央銀行の政策と同じぐらい重要である
人々の信用を失う政策立案者たちは、貨幣供給量そのものが当初は猛烈なペースで増加していなくても、計り知れないインフレの被害を引き起こしかねな
3.インフレが永久に抑制されたと信じる人は、歴史を無視している
経済モデルは限定的な標本に基づき、近年の歴史に「適合」するように構築されているから
4.政府があえてインフレという手段に訴えることもある
インフレは債権者(貸手)が罰を受ける一方、債務者(借手)が得をするメカニズムである。どの経済でも最大の債務者の一つは政府であり、インフレは袋小路のような財務状況から抜け出す「魔法」の手段となりうる。(住宅ローンを負担している人が資産を気づくが、収入が増えないと意味ないかも)
金融政策だけではインフレを抑制するのは容易ではなく、財政政策で金融政策を支えてやる必要がある。
5.デフレリスクに対処するための制度改革は、意図せずインフレ圧力を高めてしまう恐れがある
量的緩和などの緊急金融対策は、政策決定分野の定番の特徴となり、将来的なインフレ率上昇の「早期警戒サイン」を発する国債市場の役割を弱めてしまったように見える。(ユーロの方が深刻)
6.民主的に選出された政府は、インフレの誘惑に逆らえない
中央銀行が独立性を持っていても、政府も財政政策をやらないと意味がない。
政府は紙幣を印刷できるので、増税や支出削減に代わる手段としてこれを使ってしまう。(貨幣の価値を下げる)
7.ひとたび根を下ろすと、インフレはこのうえなく、不公平で非民主的なプロセスになる
物価スライド制の恩恵を受けられるのは一部の人々だけで、残りの人々は何の保護も得られない
8.価格ショックから人々の所得や富を守ることは政治的に必要かもしれないが、それでインフレの問題が解決することはない
減税などの緩和措置よりも、インフレの根本原因に対処する方がはるかにマシである
9.ハイパーインフレのほうが、皮肉にも「緩やかな」インフレより抑制しやすい場面もある
圧倒的大多数の人々が対策を求めるので、やがては制度改革が必然のものになるため。結局は、歴史は中央銀行の独立性と財政支配の解消が欠かせない
10.「ルールに基づく」政策的枠組みは重要であり、人々は政策立案者たちがとりそうな対応を把握しておく必要がある
人々も予想がつくから
11.金融政策が財政政策を支配するべきであり(その逆ではなく)、政府は借入を賄うために「貨幣の印刷」に頼るべきではない
通貨の悪鋳とはつまるところ、王や女王が金貨や銀貨を保有する人々の負担で戦費を調達する手段に他ならない。
一方、金本位制は金融支配の一つの形であり、政府が気ままに借入れできないようにする歯止めだったが、現在はこれがなくなっている。
平時は赤字財政の穴埋めのためにお金を刷るという道を選べないようにしている。量的緩和は「裏口を通じた」財政支配の道を切り拓いてしまったかもしれない。
12.「経験則」は予想よりも重要である
13.政策立案者にとって、インフレの通り雨と長雨を区別するのはやさしくない
14.中央銀行は「4つの検証基準」を用いて、インフレが持続的な問題になる危険性が全体的に高いのかどうかを判断すべきである
(1)インフレ圧力を高めるような制度変更はあったか?
(2)インフレリスクの高まりを示すような過剰な通貨拡大の兆候はあるか?
(3)「タイムマシン」や「外的ショック」などの議論を通じて、インフレリスクの高まりが矮小化されているという証拠はないか?
(4)供給サイドの状況が悪化していないか?
・イングランド銀行(日本に似ている?)
インフレ目標2.0%に達しないため、減税で需要刺激
→国民はウクライナ戦争などでインフレに苦しんでいた
→マーケットでは財政悪化懸念から国債が売られる、金利上昇
→年金基金などは流動性の問題から売却する必要性・・・
・低金利が恒久的であるとは考えないこと
→国債の金利が上がってきたタイミングで問題が表面化する
・インフレ下での資産防衛における6つの格言
1.1つの国または通貨圏に投資しないこと。
インフレ抑制能力に乏しい国や通貨圏をうっかり選び、通貨変動リスクを高めてしまう可能性がある。
2.多くの投資家のように、株式はインフレに強いと思いこまないこと。
実際、1970年代のインフレでは違った。
3.今後インフレが無期限に続くという歴史の転換点に直面している可能性に備え、一定量の金を保有しておくこと
4.現金や銀行預金の利益率はマイナスなので、過度の警戒はジリ貧になるだけ、と肝に銘じること
5.実質利回りがマイナスの場合、資金を借り入れて不動産を購入し、次なるフーゴ―・シュティンネスになるチャンスがないか、じっくり考えること
6.アメリカ南北戦争後の証拠を逆用し、ユーロの未来に対して長期的な賭けをしてみるのも面白い。ユーロ圏中心部でインフレを発端とする政治的混乱の兆しが見えれば、北ヨーロッパの債券市場が高利回りの準通貨へと大化けする。
・財政政策(国家の支出)と金融政策(中央銀行の利上げ・利下げ)は、表面上は「独立している」と言いながらも、実際にはバートンとテイラーの熱烈で波乱万丈な結婚・離婚劇のように、お互いに強く依存し合い、時に経済(インフレ)をコントロール不能な泥沼に陥れてしまう