千葉敏生のレビュー一覧
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数学の辿ってきた軌跡を辿り、数学と世界の関係を考える。思慮に満ちた楽しい本だった。
問いを得て想像力と可能性を広げることで心が豊かになる、という教訓的な締め方も個人的に好きだった。
↓以下、この本を読んで考えた私見。
数学は人類の発明であり、世界について知るための有効な道具である。自然に則した認識的な公理に端を発して演繹的に厳密に組み上げられていく数学のプロセスと、対称性をもち秩序に満ちた世界との相性が非常によいために、数学の導く世界と実世界が高い精度で一致する。ただし、数学が表すのは世界のごく一部であり、数学や言語では表せないがゆえに私たちには認識できないものが世界には限りなく溢れているだろう。 -
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クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法
著:デイヴィッド・ケリー , トム・ケリー
訳:千葉 敏生
創造力に対する自信(クリエイティブ・コンフィデンス)とは、「自分には周囲の世界を変える力がある」という信念を指している。別の言い方をすれば、自分のしようと思っていることを実現できるという確信である。そして、自分の創造力を信じることこそ、イノベーションの「核心」をなすものである。
こうした自信は筋肉のようなものであり、努力や経験次第で、強くしたり鍛えたりできる。創造性は、新しいアイデア、解決策、アプローチを生み出すために発揮できる。そして、誰もがその力を使えるようになるべきである。
本書の構成は以下の9章から成る。
①人間はみんなクリエイティブだ
②デザイン思考で生まれ変わる
③恐怖を克服する
④創造性の火花を散らせ
⑤計画するより行動しよう
⑥義務なんか忘れてしまえ
⑦みんなでクリエイティブになる
⑧チャレンジ
⑨その先へ
テレビ番組で尊敬する方がお薦めされていた一冊。
創造力に対する自信は生まれつき備わったもの・才能というものではなく、努力や訓練のような後天的に身に付け、強化することができる。この文からどれほどの勇気が湧くことか。
逆に言えば、気持ちを奮い立たせ・行動し続けることがなければ、その能力は身に付かないし、気づくこともないかもしれない。ただ本書で、私達の頑張りの源の概念を知ることで頑張りに対する勇気を肯定化させたり、習慣化させ継続するモチベーションの礎に気付くことが出来る。
人それぞれ、環境、時によって目指すべきものや、やるべきことは違う。しかし、自分自身が納得するあるべき姿に向けて、成し遂げられるという自信が備わっているかいないかで毎日の過ごし方は大きく変わる。
自信を持って突き進む姿は自分のためだけではなく、周りの方へも良い影響を与える、応援してもらえるということだけでなく、回りまわってその方の自信やポジティブな感情を引き起こすことも出来る。
自分本位の自信ではなく、ギブから構築される自信で仲間と共に前に進みたい。 -
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原題Chip War、(2022年10月刊)。
鉄鋼と石油(と愛国心教育)が20世紀80年代までの軍事の要だったように、チップには一般語で「木っ端≒つまらないもの」の意味があるが縦横10mmぐらいの半導体チップは21世紀の世界支配の要となっている。
65年提唱のムーアの法則「年間2倍」提唱の見事な長期的実現(途中から「2年で2倍」)。回路は三次元となり線幅2nm加工には超紫外線が必要となっている。
中国が世界の覇権国になるには進歩の速いチップ技術で最先端となる必要がある。それは軍事でもAIなど最新の応用に決定的な基幹技術で、早い話が半導体供給を大量生産廉売で押さえれば、産業の生死を押さえられるし、軍事的にもミサイルの命中精度が上がれば破壊力は段違い。ベトナム戦争で、
一つの橋を爆撃ではなかなか破壊できなかったが、現在なら遠方の戦闘機からミサイル一発で十分。
各章が瞠目すべき歴史的展開点となりうるエピソード
序章 原油を超える世界最重要資源
第Ⅰ部 半導体の黎明期
第1章 戦後の技術者たち
第2章 トランジスタの誕生
’48トランジスタ発明、
第3章 シリコンバレーの始祖と集積回路
‘58集積回路発明(キルビー特許)
第4章 軍に半導体を売りつける
アポロ計画が開発を後押し、
第5章 半導体を量産せよ
第6章 民間市場は存在するか
第Ⅱ部 半導体産業の基軸になるアメリカ
第7章 ソ連版シリコンバレー
第8章 コピー戦略
第9章 日本の経済復興
第10章 どこで半導体を組み立てるか
第11章 ベトナム戦争の誘導爆弾
第12章 太平洋を超えたサプライ・チェーン
第13章 インテルの革命
第14章 チップを載せたスマート兵器
第三部 日本の台頭
第15章 成功しすぎた日本
第16章 日米経済戦争
第17章 「最高に熱いハイテク企業」、日本に敗れる
第18章 「1980年代の原油」と化した半導体
第19章 シリコンバレーとロビイング
第20章 パックス・ニッポニカ
第V部 アメリカの復活
第21章 アイダホ州のハイテク企業
第22章 インテル再興
第23章 敵の敵は友 韓国の台頭
第24章 ミードとコンウェイの革命
第25章 コピー戦略の末路
第26章 思考する兵器無能
第27章 湾岸戦争の英雄
第28章 日本経済の奇跡が止まる
第Ⅵ部 集積回路が世界をひとつにする
第29章 TSMCの隆盛
第30章全員で半導体をつくるべし
第31章 中国に半導体を届ける
第32章 リソグラフィ戦争
第33章 携帯機器の市場規模
第34章 アメリカの驕り
第Ⅶ部 イノベーションは海外へ
第35章 工場を持つべきか
第36章 ファブレス革命
第37章 モリス・チャンの大同盟
第38章 アップルの半導体
第39章 EUTリソグラフィ
第40章 7ナノメートル・ブロセス
第41章 イノベーションを忘れたインテル
第Ⅷ部 中国の挑戦
第42章 中国指導部の方針転換
第43章 半導体の自給自足
第44章 サーバ向けチップを攻略せよ
第45章 台湾の秘宝
第46章 ファーウェイの隆盛
第47章 5Gの未来
第48章 「知能化」する戦争
第Ⅸ部 武器化する半導体
第49章 半導体の支配という土台
第50章福建省晋華集積回路
第51章 ファーウェイ排除
第52章 中国版スプートニク・ショック
第53章 半導体不足とサプライ・チェーン ま
第54章 台湾のジレンマ -
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2024.4.19、TSMCの四半期決算が発表され過去最高の増収増益決算であった。売り上げは四分の1を占めるアップル向けスマホからエヌビデアなど生成AI向けサーバー需要(24年10%前半から28年までに20%以上に)の高単価先端品に移行中でAMD・メタなどからも広く受託生産を増やしている。最先端の2nm品は25年量産を目指し開発中で台湾で2拠点、米アリゾナで3工場建設中、「先端パッケージング」も台湾で増産・・・『日経新聞』の当日の記事である。
この決算発表の日、この本を読み終えた。
『半導体有事』に続いて面白く読めた。
半導体は人類の未来を左右するキーファクターだ。
序章に書いてある、「典型的なチップは日本企業が保有するイギリス拠点の企業アームの設計図を使い、カルフォルニア州とイスラエルの技術者チームによって、アメリカ製の設計ソフトウェアを用いて設計される。完成した設計は超高純度のシリコン・ウェハーや特殊なガスを日本から購入している台湾の工場へと送られる。その設計は原子数個分の厚さしかない材料のエッチング、成膜、測定が可能な世界一精密な装置を用いてシリコンへと刻み込まれる。こうした装置を生産しているのは主に5社で1社がオランダ、1社が日本、3社がカルフォルニアの企業だ。その装置がなければ先進的な半導体を製造することは基本的に不可能だ。製造が終わると半導体はたいてい東南アジアでパッケージングとテストが行われ次に中国へと送られて携帯電話やコンピュータへと組み立てられる。」、半導体サプライチェーンのあらましである。
又、「台湾製のチップは毎年世界の新たな計算能力の37%を生み出している。2社の韓国企業は世界のメモリ・チップの44%を生産している。オランダのASMLという企業は最先端の半導体の製造に欠かせない極端紫外線リソグラフィー装置を100%製造している。それと比べるとOPECの産油量の世界シェアなどとたんに色褪せて見えてくる。」とも書いている。
世界経済における半導体産業の重要性と開発競争の凄まじさ、地政学的駆け引きと日本メーカー復活の可能性など歴史や技術的細部もさらに掘り下げる。
ATTベル研究所のウイリアム・ショックレーが真空管を凌ぐトランジスタを発明し半導体研究所をパロアルトに設立することが口火を切る。テキサスインスツルメント社(TI)のジャック・ギルビーが半導体集積回路を発明する。ショックレーのもとを離れた「8人の反逆者」がフェアチャイルドセミコンダクター社(FT)を立ち上げシリコンバレーの始祖となる。
ベンチャーキャピタルのセコイアを創業するクライナー・パーキンスもその一人である。
ロバート・ノイスがジーン・ハーニーとメサ型(台形)をプレーナー型(平板)にして複数の電子部品をまとめる集積回路を作りそれを他の電子部品と結合してシリコンチップに統合する。ゴードン・ムーアらがその集積回路をNASAのアポロ計画や軍用ミサイル開発用に技術開発を進める。フォトリソグラフィという工程で配線をプリントし集積度・性能を向上させ「ムーアの法則」といわれる集積化の指数関数的進化が始まる。FT社のアンデイ・グローブやTI社のモーリス・チャン(TSMC創業者)らが集積化を進め、購買者を宇宙開発・軍用から民間の大衆市場向けに転換する。
「金持ちになりたい」をエネルギー源としたエリート達の凄まじい競争が展開される。
大型コンピュータ時代のIBM、PCのIntelとMicrosoft、スマホのARMとAppleとTSMC、AIのNvidea等々人や企業の多彩なビッグネームが次々と登場し、スタンフォード大学やMITも人材供給や技術開発のバックグラウンドになる。シリコンバレー発のドキュメンタリーパノラマは興奮ものだ。
技術や人、国の政策や企業の戦略についての徹底した調査と研究をふまえて、正確・冷静な描写で読み手を引き込む表現は絶妙で滑らかな翻訳も手伝いノンフィクションでありながら本格的な科学冒険小説を読んでいるようだ。
急速で不可逆なデジタル社会の進展下、最も重要で本質的な心臓部品である半導体にフォーカスし、将来の社会を洞察するための価値ある一冊であった。
クリス・ミラーのこの作品を五つ星の評価とした。
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クリス・ミラー著の半導体関連のビジネス書。本書はビジネス書として圧倒的な人気を誇っており、加えて、自身が春から半導体関連メーカーで働くため、読まない理由はなかった。本書は戦後から現在に至るまでの半導体の歴史を一冊にまとめた書籍である。産業の中心の米国目線で物語が書かれているため、日本のビジネス書にはない新鮮な目線で楽しみことができた。例えば、日本が米国から半導体の覇権を奪った1980年台では、日本国内では賞賛や歓喜といった喜ばしさ一色の記され方をされると思うが、本書では日本をかなり目の敵にしていて面白かった。本書が素晴らしい理由は圧倒的な文献引用数にあるといえる。そのため、なぜ出来事や発展衰退が起こったかが、あまり専門知識を有さない私にも非常に分かりやすく理解できた。また、現在起こっている半導体バブルの原因も、ただ漠然と記事を読むだけでは決して理解できない理由も、本書を通じて多少理解ができるようになった。このように、様々な分野のインプットを行うことで、世の中の流れの解像度高くなることは非常に会館であり、死ぬまで続けていきたいと再確認した。さらに、本書を通じて半導体や技術の歴史やトレンドに加えて、地政学に対する関心が非常に強くなった。メーカー就職する前に読んでいて本当に良かった思わせる1冊だった。
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現代の国際政治、世界経済、軍事力のバランスを特徴づけてきた立役者は半導体である。では、いったいどのようにして、私たちの世界は100京個のトランジスタと替えのきかない一握りの企業によって特徴づけられるようになったのか?が本書のテーマである。
1945年に真空管を用いて初期の電子計算機が作られてから現在に至るまでの、各国政府や企業、技術者達による、半導体生産に関する熾烈な競争の歴史を知ることができる本だと感じた。
この本を読んで、半導体を使ったコンピューターががアメリカで生まれた経緯や、技術の発展に日本が果たした役割、半導体製造のオフショアリングによるアジア諸国の台頭、半導体製造の技術や装置がたった数社に集中している状況など、半導体に関する非常に入り組んだ複雑なサプライチェーンの成立過程などを知ることができた。
そして、単なる半導体に関わる製品の権利による経済的なことだけでなく、『半導体戦争』というタイトルが示す通り、半導体戦略は国家間の安全保障や国防などの分野にも密接に関係しているということがわかった。 -
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ネタバレ半導体の、短い歴史の濃密な物語を、足早に駆け抜ける。その様を雑だと当初は感じたが、読み終えて今、焦点がどこに定められていたかを知った今ではそう思わない。現在の世界情勢、具体的には米中摩擦を語るためだったのだ。
中国は半導体供給を台湾に大きく依存している。半導体製造は容易ではない。何千億ドルを投入して最先端を目指し、数年後に半導体製造を実現したとしても、そのときにはすでに最先端でなくなっている公算が非常に大きい。この投資に見合わないと競争をやめたかつてのメーカーは自前工場を持たず設計のみを行うファブレス企業へと転身した。半導体の能力の差が兵器の差になる。ロシアがウクライナで使用している兵器は無誘導である率が高くなっているらしく、食洗機に使用するような半導体も兵器への転用が図られているという。
軍事においても半導体に非常に依存している状況において、それでもなお台湾有事は起こり得ると、著者はいう。ロシアのようなカッコ悪いことになった場合、半導体の供給なしで継戦することになるリスクを飲めば。
「人間は水と酸素に中毒している。もうひとつくらい増えてもかまうまい」フランク・ハーバートはデューンでこんなカンジなコトを言った。
現実の人類が罹患したかもしれない新たな中毒の名は半導体かもしれない。
アメリカもまた自前で最先端の半導体を製造することはできず、台湾有事が発生した場合、中国と同程度のリスクを負うことになる。
グローバル化というのはパックス・アメリカーナにおいては良い感じに働くが、世界革命やアナーキズムに天秤が傾くと途端にリスクとなる。
カネでいろいろと解決を図ろうとして自前をやめると、有事に大問題になりえるとわかっていても、やはりカネが大切なのでなにもしないというのは身近な例がいくつもあって、人は状況や歴史に学べないということを身に沁みて知る。