福井晴敏のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
舞台はロシアへ。
M資金の運用は各国のファンドによって分散されていたが、巨大な損失を出して粉飾決算をしているロシア地区のファンドマネージャーがターゲットとして選ばれる。
500億円の緊急融資を申し込むように唆すが、その申請用紙にはウイスルが仕込まれており、申請用紙はM資金財団のネットワークにアップロードされた瞬間に200部のコピーが作られ、10兆円が引き出される。
普通ならそろそろ終わり、となるが、これでまだ半分弱。
犯人側の正義もこのへんで明らかになってくる。
ユダヤ人によって押し付けられた資本主義のルール、金を借りたものは利子を付けて返さないといけない、という仕組みが社会に永遠の成長 -
Posted by ブクログ
「亡国のイージス」などでブレイクした作者の処女作なのだとか。
処女作はその作家の全てをあらわす、というから、おそらく他の作品もこんな雰囲気なのだろう。
ぐいぐいと人を引き込んでいく筆の勢いは、心からこの作品を書きたいのだ、このテーマを書きたいのだ、という意志の強さの現れと思われる。人物設定に少々難があるが、それも許せてしまう勢いのある作品。
ただし勢いがあるため読めるが、正直言ってそんなに面白いとは思わない。
同じような話なら、やっぱりどうしたってフォーサイスやラドラムを読み続けてきたわたしとしては、そちらの作品のほうが面白く感じてしまう。当たり前だけど。
テーマとしてもよくありがちな -
Posted by ブクログ
ネタバレまさかここで性善説、性悪説について考えさせられるとは思わなかった。
M資金の使い道、M資金が生まれる経緯が明らかにされるのだけれど、実在の人物、出来事が織り込まれて話が進んでいくものだから、なんだか小説を読んでいる、というよりは歴史書を読む気持ちになって、「え……これ全部本当のこと……?」と思っちゃいそうになって非常にアブナイ……。ドンパチが起こる巻ではなくて、M資金誕生時の人びとの思いが、それはもう熱く語られる。世界を変えるためにMの考えた方法は本当に価値があるのかを考えること、それは人間をどうとらえるかというその人の思想が関わってきて、私も「人間って……?」と思わず一瞬考えてしまった。